やはり俺のGBNはまちがっている。   作:八重垣八雲

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こうして、俺たちのGBNが始まる。

ゴールデンウィーク最終日

 

俺は今、いつもの模型屋に来ている。

 

お一人様でと言うわけではない。オプションみたいな一色は別として、小町に、雪ノ下、由比ヶ浜も一緒である。

 

小町のガンプラが完成し、一息ついていた俺に一色からの呼び出しがかかった。やはり雪ノ下と由比ヶ浜もGBNを始めることになり、休みの間にガンプラを作っていたそうだ。完璧主義の雪ノ下のことだから問題はなさそうだ。由比ヶ浜は……大丈夫、ガンプラに大切なのは愛よ。

完成したのでお披露目+初ダイブをするそうだ。小町にはとっくの昔に話を通していたらしい。通りで完成してもダイブに行こうと言わなかったわけだ。

女性陣からのお達しに俺が拒否権を発動出来る筈もなく、小町に引き摺られ千葉駅に向かう羽目になった。

 

 

 

「やー、みんなの後に出すのは勇気がいるから、あたしから見せるね」

 

どこか自信なさ気に由比ヶ浜が取り出した。

特徴的な四足歩行のシルエット。ファンからはガンダムのZOIDSと呼ばれるMS・バクゥである。青紫だったカラーが褐色になり、由比ヶ浜の飼い犬を連想させる。なんつー名前だったっけ……クッキー?クラッカ?

 

「どうかな?あたしのモビルサブレは」

 

あぁ、そうだサブレだ。

武装は背中の旋回式のビーム砲一門に連装ミサイルと、口部のビームサーベルか。使い勝手のいいスタンダードな組み合わせになっている。

 

「まぁ、初めてにしては悪くないんじゃねーの?」

 

そう評価すると、

 

「あたしもみんなとじーびーえぬやりたかったもん。ゆきのんといろはちゃんにはいっぱい手伝って貰ったけど…」

 

「でも、ありがと。ヒッキー」と、由比ヶ浜ははにかみながら答えた。

 

さてお次は、

 

「次は私の番ね」

 

どこか自信あり気に、雪ノ下が取り出す。

ずんぐりむっくりとしたボディーに白黒カラー。鋭い目付きに凶悪な爪。オイ、コイツは……

 

「パンダッガイさんよ」

 

と、得意気な顔をし控え目な胸をそらしながら答えた。

ベアッガイⅡをリデコしたそれは、我らが千葉の東京ディスティニーランドマスコットにそっくりである。

 

「や、最初はもっと本物に近かったんですけど、なんとかここまで抑えて貰えました……」

 

と、疲れ気味に一色が答えた。よく見れば特徴的だった星形の隈は通常のパンダのものになり、マフラーもしていない。いくらガンプラは自由だといえ、流石に他社の著作物は不味い。最強のディスティニー法務部が来てしまう。これぐらいならまだ誤魔化せる。一色、G.J.である。

労いを込めて一色の頭を撫でながら、改めて雪ノ下のガンプラを見る。丁寧に塗装され、はみ出しも塗りむらもない。

 

「流石、雪ノ下だな」

 

そう言うと、由比ヶ浜とともに微妙そうな顔でこちらを見ている。えっ、なんで?

 

「いつまで一色さんの頭を撫でてるのかしら、セクハラ谷くん」

 

おっと、スマン……

 

「最後は小町ですね」

 

ふっふっふっ、と不敵に笑う。なんでお前が自信あり気なんだよ。

取り出したのは、2体のガンプラ。

 

「小町ガンダムとダイアモンドカー君です!」

 

ネーミングセンスぅ――――――

 

 

気を取り直して、小町のガンプラを紹介しよう。

祝融ガンダムをベースにした小町ガンダム(笑)自体はそこまでカスタムはされていない。精々、塗装と可動域の調整ぐらいである。

だが、このガンプラの本領は別にある。ダイアモンドカー君(笑)である。金剛夜迦をベース――我が家の飼い猫・カマクラっぽく――にしたそれは、小町ガンダムの武器であり強化パーツである。普段はMDの如くオートに動くが、合体することにより小町ガンダム自体をパワーアップさせる。浪漫に満ちた期待である。ぶっちゃけ、こいつの調整に一番時間がかかった。いくら可愛い小町のためとはいえ、もう二度とやりたくない……

 

これを見せた反応はというと、雪ノ下は目をキラキラさせてダイアモンドカー君を手に取り、由比ヶ浜は「ふわー」と口を半開きにしてアホの子になっている。

 

「なんかわたしのより手が込んでません?」

 

……気のせいだよ。

 

 

 

× × ×

 

 

 

お披露目も終わり、本来の目的であるGBNへとダイブする。

 

アバターの設定もあることだし、俺は一色――

トリナとひと足お先にロビーで待っていた。俺たちの特徴は伝えてあるから大丈夫だろう。

 

しばらくすると、一人の少女が近付いてくる。

 

「およ?もしかして一番乗り?」

 

この口調は、

 

「もしかして小町ちゃん?」

 

「はい、お姉ちゃんと、ついでにお兄ちゃんの妹の小町あらためリトル・マチです!」

 

ねぇ、小町ちゃん。お兄ちゃんの方が本当のお兄ちゃんだからね……

 

リトル・マチ、長いからリマチでいいか――の姿は小さなシルクハットをちょこんと頭に乗せ、どことなくサーカスの猛獣使いを思わせる格好である。また、特徴的なアホ毛も健在だ。俺のアバターにもついているからお揃いだ。

 

残りの二人はと思っていると、また一人近づいてくる少女が。さて、どちらが―――

 

「やっはろー!」

 

あっ、ガハマさんでしたか。

 

「って!ヒッキーの目が腐っていないし!」

 

「来て早々失礼なやつだ」

 

あと、ダイバーネームで呼べ。

 

ごめんごめんと言いつつ、俺とリマチを見比べると、

 

「やー、こうやって見るとそっくりだね」

 

ウンウンと大きく頷く。それに連動して、二つの立派なものが…… おぅ、電脳空間でも健在でしたか。

 

「先輩、目」「ヒッキーマジキモい!」

 

ごめんなさい。

 

由比ヶ浜の姿は「あ、名前はユイユイにしたよ」、ユイユイの姿は犬の特徴を持つ獣人の姿である。といっても、ふさふさな耳と尻尾だけだから人間成分は高めだ。ケモノレベル1というところか。

 

 

あとは雪ノ下だけかと思っていると、

 

「お待たせしたわね」

 

という声が聞こえた。しかし、まわりを見てもそれらしき人物はいない。はて?

 

「ここよ」と、低い位置から声が聞こえ視線を下げてみると―――

 

二つの足で立つ猫がいた。人間に猫の特徴があるだけなんてものではない。飼い猫に服を着せた様なものだ。ケモノレベル4である。

 

「もしかして、ゆきのん?」

 

恐る恐るユイユイが問うと、

 

「ええ、そうよ。今はネコノだけれども」

 

と、得意気に猫背を反らし答えた。

 

動物のアバターを使う人はそれなりにいる。有名どころでは、第七機甲師団のロンメル隊長がフェレットの姿をしている。しかし

 

「まさか知り合いが選ぶとは……」

 

当の本人?は女性陣に撫でられ、ゴロゴロ喉を鳴らしご満悦である。ユイユイは「うぅ…猫だ…でも、ゆきのんだし…」と尻込みをしていたが、今ではおっかなびっくりながらも撫でている。

 

「あら?ずいぶん賑やかね」

 

いつの間にか近付いて来たのか、マギーさんから声がかかった。見た目がリマチと同じ年頃の少年少女を連れている。

 

「約束通り紹介するわ。といってもはじめましての人が多いから、自己紹介の方がいいかしら?」

 

マギーさんの一言により、自己紹介が始まった。俺が噛んで微妙な空気になったりしたが、おおむね順調に終わった。

少年のうちなんとなく主人公ぽい方がリク、眼鏡を掛けた方がユッキーと名乗った。リクは運動センスが良く、ユッキーは近所の模型店で賞をとったことがあるらしい。ああ宜しく。だが、リマチに近づくなら容赦はしん―――

箱入りお嬢様な雰囲気を持つ少女はサラ、リトルガハマさんな感じの少女はモモと名乗った。サラはガンプラなし、モモは今日から本登録だそうだ。

話した限り年齢は見た目通りか。リアルの小町と同じか下ぐらいか。

 

同年代が増えて一気に華やかになったためか、今も女性陣(マギーさん含む)できゃいきゃいと盛り上がっている。かわいいが正義と言うが、ネコノを代わる代わるだっこしご満悦そうだ。

男性陣?こういうときは苦笑いして見守るしかないだろ……

 

マギーさんに別れを告げたあと、格納庫へ移動する。お互いのガンプラを見るためだ。ガンプラに込められたビルダーのこだわりを感じとる、それだけで勉強になる。

先ずはリクからか。

 

「これが俺のダブルオーダイバーです」

 

そう紹介されたのはダブルオーガンダムをカスタムしたガンプラであった。見た限りでは大掛かりな改造は施されていないが、両肩のGNドライブ基部に追加されたウィングにより機動力が上がっていそうだ。何より、

 

「このガンプラへの強いこだわりを感じるな」

 

一緒に強くなる相棒的な?そんなことを言えば、リクは「ありがとうございます」と元気良く返事をした。意外と礼儀ただしいね、きみ。

 

お次はユッキーか、

 

「次は僕のジムⅢビームマスターです」

 

控え目にだが、どこか自信あり気に紹介された

ガンプラ。コンテストで賞を取っただけあり非常に出来がいい。ジムⅢという渋いチョイスながら、名前の通り追加されたビーム兵器と足回りの安定感により、機体の堅実さが現れている。

 

「やるなユッキー」

 

その年齢でこの技量は大したものだ。

 

「最後はモモのか」

 

さて現役JC(推定)の腕はどんなものかしら―――って

「クォリティー高っ!?」

 

え、何?このカプル出来が良すぎない?下手したらどころか、確実に俺より上だよ!?腕はどんなものかしら、とか言ってた俺が恥ずかしいんですけれど!今時のJC(推定)ってこんなレベル高いのん?今のトレンドはガンプラなのん?

 

想定外の事態に若干挙動不審になっていると、

 

「あー、わたしが作ったんじゃなくて、レンタルなんですよ」と気まずそうに言う。お兄さん早く言って欲しかったな。

 

まぁ、誰が作ったかは別として、古いキットしかないカプルをここまで作り込むのは並大抵の腕ではない。いつか現物を見たいものだ。

 

 

マギーさんの知り合いを訪ねるというリク達に別れを告げ、ミッションエリアに移動する。「あたしたちも負けてられないよー」と気合い十分なユイユイを先頭に新人組は飛んでいく。

「元気がいいな」俺が始めた頃はどうだったか…ふと、そんな事を思う。ちらりと横を見れば、トリナはそんな俺を見つめふわりと微笑んだ。

「ま、まぁ、肩肘張らず、この世界を楽しむことが先決だな」上擦る声を誤魔化しつつ、俺はトリナとともに後を追いかけた。

 

 

 

 

 

× × ×

 

 

 

 

 

ゴールデンウィークが開けても、俺たちは部活終わりや休日にちょくちょく集まりミッションをこなしていった。

 

数をこなしていくうちに、動きにぎこちなさも消えていく。操作になれる頃には、役割分担みたいなものが出来上がっていた。リマチ&ユイユイの四足コンビが機動力で翻弄し追い込む、そこにネコノがステゴロで突貫する。後者にツッコミどころ満載であるが、本人が楽しんでいるから良しとしよう。

 

俺とトリナは最初はアドバイスや援護に徹していたが、次第に同じミッションを一緒にするようになった。 ソロか、精々トリナとのタッグだけだった俺にとって、ここまでチームを組んでゲームをするのは初めてのことだった。

 

3人が着実に力を付けていき、個人ランクがDになる頃、

 

「ねぇ!みんなでフォースっていうのを組まないかな?」と、ユイユイが言い出した。どうかな?と各々に問う。

 

「はい、リトル・マチは賛成です!」真っ先に答えるリマチに、

 

「えぇ、いいんじゃないかしら」なんだかんだでユイユイに甘いネコノ、

 

「わたしも賛成です。フォースを結成すれば専用の部屋も手に入りますし」即物的なことを抜かすトリナ、

 

最後に俺に視線が集まる。どうせ今更なに言っても決まってんだろ。ため息ひとつをつき、了承の意を伝える。

 

たちまちにわぁ―――!!と上がる歓声。たかだかフォースひとつでここまで喜ぶか?そう思いつつも、微かに口角が上がる俺がいた。

 

 

 

――― こうして、俺たちのフォースが結成された。

 

 

 

 

 

 

ところで、フォース名はどうするんだ?




オリジナルガンプラ解説

機体名:小町ガンダム&ダイアモンドカー君

比企谷小町のガンプラ。
祝融ガンダムを改造している。
いろは直伝のおねだりにより、兄・八幡に作らせた。SD故に初心者の小町にも扱いやすい。バーサーカーモードはオミットしている。
金剛夜迦を改造した猫型のダイアモンドカー君を装備している。むしろそちらが本体。普段はMDの如く自立稼働しているが、変形し小町ガンダムに装着することにより戦闘能力を引き上げる。



機体名:パンダッガイさん

雪ノ下雪乃のガンプラ。
ベアッガイⅡを改造している。
当初は雪乃の好きなパンダのパンさんその物な見た目であったが、版権云々等の度重なる説得により普通のパンダの塗装に変更された。せめてもの抵抗か、腕部はゴックのアイアンネイルになっている。
なんでも高水準でこなせる雪乃の腕もありかなりの出来を誇る。ファンシーな見た目と裏腹にステゴロ仕様。水陸両用機故の重装甲を生かした突貫には目を見張るものがある。



機体名:モビルサブレ

由比ヶ浜結衣のガンプラ。
MSバクゥを改造している。
自宅で飼っている愛犬のサブレをモデルにしている。カラーリングと背部の武装以外特に改造はされていない。
チームの他の機体に比べて特徴となるものはないが、犬の飼い主の観察力による実際の獣じみた動きによるトリッキーさで翻弄するため意外と勝率は高い。
拙いながらもガンプラへの想いは込められている。
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