高嶺の華と路傍の花   作:山本イツキ

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好評なら、このまま続けていこうと考えています。

まずは、オリキャラの生い立ちをご覧下さい。


プロローグ

 恋愛というものは実に残酷だ。

 

 この超少子高齢化の時代、運命の人と出会うなんてそうあることじゃない。

 例え出会ったとしても、相手が自分に相応しいと思わなければ、結ばれることは決してあり得ることの無い話だ。

 

 

 オレもその経験をした1人である。

 

 オレには、中2の頃に好きになった女の子がいた。

 

 クラスの人気者だったその子は、美女の見本とも言える顔つきで、栗色の長い髪を風に靡かせるその姿は、美しいという言葉では表現しきれないほどだ。

 

 オレからしたらその女の子は、高嶺の花。 

 道端に咲く、あまりにも醜い花のようなオレには、その存在があまりにも眩しいものだった。

 

 当時のオレは、親の影響もあって気性が荒く、揉め事もしょっちゅう起こす問題児だった。

 だけど、その子に好かれようと必死に抑え、大人しい性格を演じてきた。

 

 

 知り合って暫くが経ったある日。

 

 

 誰もいない教室にその子を呼び出し、勇気を振り絞って告白をした。

 

 結果は惨敗だったが、告白したこと自体に後悔はなかった。

 

 

 後日、その事がクラス及び学年で知れ渡り、ちょっとした騒ぎになった。

 噂を垂れ流したのは、オレが告白した女の子で、面白おかしく話していたとクラスメイトが言う。

 

 今まで抑えてきたものが一気に爆発し、殺意と怒りを身に纏い、教室に入る。

 クラスメイト、止めに入った教師、男女関係なく次々と殴り飛ばし、教室の窓ガラスをあらゆる手段を持って大破。

 

 これらの暴挙を経て、重軽傷者を数十名出す大参事となり、遠い学校への転校を余儀なくされた。

 

 

 これがオレ、月島 奏(つきしま かなで)が起こした、最初の大事件だ─────。

 

 

 

 

 転校先では、あのような過ちを繰り返さないように明るいキャラに徹した。

 

 流行りのギャグを堂々と披露したり、話の内容の引き出しも多かったことから、転校生ながらクラスの中心になるのはそう時間がかかることじゃなかった。

 腹が立つツッコミをしてくるやつには多少イラつきはしたが、あの時に比べれば些細なものだ。

 

 しかし、オレにとって友達と言える人達の中で、女は存在しない。

 話しかけられても、素っ気ない態度をとったり酷い時は無視もしていた。

 

 

 女という存在全てが、あいつと同じように見えたから……………仕方なかったのだ。

 

 

 執拗に理由を聞かれても、まぁ不器用なりに上手くかわしていただろう。

 それもこれも、全部あの女の所為だ。

 オレは何一つ悪くない。

 

 女子生徒なんて、存在しているようで存在していないもの・・・・・・・・・空気でいうと窒素といったところか。

 ホモだと言われようが、趣味の合う友達と話したり遊んだりする日々が楽しくて仕方なかった。

 

 

◆◆◆

 

 

 3年生になり、オレにも進路に悩む時期が訪れた。

 

 

 「なるほど・・・・・・男子高校希望か」

 

 「ああ、家から近いし、オレにお似合いな学校だと思うからな」

 

 

 自業自得ではあるが、遊び過ぎて勉強をほとんどわしてないせいで成績はあまり良くない。順でいうと、下の中といったところだ。

 例え偏差値が悪くても、男子校にさえ行ければなんでもよかった。

 先生は頭を抱え、少し不満そうに答える。

 

 

 「お前の成績から考えても、問題ないだろう。しかし、お前が女子生徒を毛嫌いしていることは、学年の先生も生徒も、みんな知っている」

 

 「自他共に認めるぐらいだから当然だ。自分で言うのも何だが、オレは学校の有名人だからな」

 

 

 はははっと、わざとらしく照れた素振りを見せると、先生は小さくため息をついた。

 

 そんな先生に一つ、オレが最近仕入れたとっておきの情報を流す。

 もちろん、内容は今話している先生についてだ。

 

 

 「そんなことより、せんせーは自分の心配をしたらどうだ?」

 

 「なんだ、突然。そんなことよりお前についてだな─────」

 

 「ここだけの話、せんせーは最近、奥さんと上手くいってないという噂を聞いてな。40歳も半ばを迎えたとはいえ、些細なことで喧嘩ばかりしていては中学生になられたばかりの娘さんからも嫌われ─────おっと、これ以上は何も言わねぇよ」

 

 

 せんせーの鋭い眼光を見て、思わず口を閉じる。どうやら、本人もあまり触れて欲しくない話題だったらしい。

 先生は額から出た汗を、ハンカチでずっとぬぐい続けている。

 

 やはり学年の有名人ともなると、こういう噂が絶えず流れ込んでくるから面白い。

 

 

 「わたしのことはどうでもいい。心配しているのはお前の将来についてだ。女性とはどうあっても関わる世の中だ。今、諦めてしまっては必ず後悔することに─────」

 

 「アンタ、オレの前の中学でどんな目にあったか、知らねぇのか?」

 

 「・・・・・・・・・」

 

 

 せんせーの言葉を遮り、オレが食いつくように話すとコイツは黙り込んだ。

 勿論、オレの経験したことは母親を通じてだがこの学校の教師陣はみんな知っている。

 クラスメイトをはじめ、同級生たちが知らないのは、オレが言わないでくれと止めたからだ。

 

 こんな格好悪い過去をみんなに知られたくないだろ?

 

 

 「誰が何と言おうと、オレは男子高校に行く。頭も悪いからな。しかもうちは母子家庭でお金がないから最低限公立には受かるように頑張るつもりなんで。それじゃっ」

 

 「おいっ、待て! ・・・・・・・・・全く、好き勝手に言ってくれるな」

 

 

 半ば強引に進路相談を終え、1人で帰路に立つ。

 学校から家まで、歩いて1時間の道のりは本当に憂鬱だ。

 自転車通学禁止のうちの学校は、本当にどうかしている。

 前の学校なんて歩いて10分もあれば余裕でついてたはずなのにな………。

 

 しかし、住んでる家自体に不満はない。

 周りには、でかいスーパーマーケットと、二つの高校があり、一つはオレの受験予定の男子校で、もう一つは長い歴史があるお嬢様校。

 おふくろは、そこの女子校出身らしい。

 

 そこで起こした数々の伝説は、今でもこの近所で語り継がれているがこれは後々話すことにしよう。

 

 

 

 家の扉を開けると、そこには仕事に行っているはずのおふくろが鬼の形相で似王だちしていた。

 腕に青筋を浮かべ、今にも襲い掛かってきそうな猛獣のようだ。

 あまりの恐ろしさに外へ引き返そうとするも、制服の襟を掴まれリビングに引きずられ、正座させられる。

 

 

 金髪に染めた短めの髪はさながら、元ヤン感をかもちだす。

 まぁ、実際にそうなんだが・・・・・・・・・。

 若くして結婚、出産を経験したおふくろの佇まいは、一切の老いを感じさせない。

 

 この人の旦那、もといオレの親父は、オレが5歳の時に浮気がバレて即離婚した。その時のおふくろは今でも覚えている。

 手をぼきぼきと鳴らし、顔がパンパンなるまで殴り続けたその拳に恐怖したものだ。

 

 その前に、こんな女房がいるのに浮気をする父親の神経もどうかしていたな。

 

 

 しかし、女手一つでオレを育ててくれたことには本当に感謝してる。

 ワガママも散々言ってきたが、そのほとんどを叶えてくれた優しい人でもある。

 2人でいるときは、常に笑顔だったしオレはその笑っている顔が好きだった。

 

 そして現在─────おふくろの目の前に正座しているオレは、親父の二の舞になりかけている。

 

 

 「あんた、進路相談を投げ出したって本当か?」

 

 

 静寂に満ちた部屋に母は、静かながらも怒気に満ち溢れた男口調の声を発する。

 燃えるような真っ赤な怒りのオーラを纏ったその姿はまさに豪鬼。

 あまりの恐ろしさに、顔も上げられない。あまりの重圧に意識が刈り取られそうだ。

 なんだこりゃ、覇◯色の覇気か?

 

 

 「投げ出してはない。ちゃんとオレの気持ちを伝えて─────」

 

 「言い訳無用!!」

 

 

 そう言うと、物凄い勢いの平手打ちがオレの頬に炸裂する。

 あまりの痛みに思わず苦痛の声を上げた。

 クソっ、このババァ・・・・・・武◯色も身につけてやがるのか・・・・・・!

 

 

 「先生が親身になって相談してくれてるのにその態度はどう言う事だ!! 男子校を受けるなんて絶対に認めないからな!!」

 

 「なっ!? どう言う事だよおふくろ─────」

 

 「話の腰をおるなぁぁぁ!!」

 

 

 おふくろの怒号が部屋中に響き渡る。

 腕を大きく振りかぶり、いつ平手打ちが来てもおかしくない状況にある。

 

 

 「あんたが辛い思いしたのは重々知ってるけどね、みんな心配してるのよ? 前の学校の時はあまり言わなかったけど、あんまりナヨナヨしてたら舐められっぱなしだぜ?」

 

 「あの頃は、喧嘩や殴り合いが好きだと知られたくなかったからな」

 

 「それでも、女から逃げてきたんだろ?」

 

 「逃げたんじゃない、避けてただけだ」

 

 「どっちも同じことだろ」

 

 「いや違うね。オレにとって女は必要ないだけ・・・・・・あ、おふくろは別な。料理上手いし」

 

 「その図太い神経は、多分旦那のだろうね。全く、変なところ引き継ぎやがって」

 

 

 オレがわざとらしくおだて、おふくろはため息混じりにそう言うと、木椅子に腰掛ける。

 

 

 「じゃあ、あんたは一生、女という存在を避け続けるっていうんだな?」

 

 「あぁそうだよ。ホモだと言われようが知ったことか。オレは、男たちとつるんでいたらそれでいいんだよ」

 

 「ふーん。なるほどねぇ・・・・・・」

 

 おふくろは組んだ片側の足に肘を置き、顎を手のひらに乗せて何かを考えるように沈黙した。

 

 そして部屋に再び、静寂な時間が流れる。

 

 

 「まぁ、あんたがそこまで言うんならアタシに言うことはないな。・・・・・・・・・わかった、先生にはちゃんと伝えるから、受験勉強しときな。ただでさえ頭悪いんだから」

 

 「へいへい分かりましたよ・・・・・・」

 

 

 気怠そうに返事を返し、狭い1人部屋に入ると、力なくベッドに背中から飛び込む。

 

 そして、ふっと前の中学の思い出が頭をよぎる。

 

 

 「あぁ、考えるのもめんどくせぇ・・・・・・」

 

 

 オレの口からは、そんな投げやりな言葉しか出てこなかった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 あれからというと、おふくろが先生を説得してくれて、オレの男子校への受験が正式的に決まった。

 

 悲しいことに、その男子校を受けるのは学校でもオレだけだ。

 

 理由は一つ。その学校の受け入れ人数が1校に1人で、全校生徒は100にも満たないかららしい。これも、超少子高齢化の影響か・・・・・・・・・。

 

 

 受験することが決まってからは早かった。

 

 

 塾に行く金もなかったからファミレスで友達から勉強を教えてもらい、家で勉強して寝そうになったらおふくろにハリセンで叩き起こしてもらう、そんな日々が続いた。

 

 その甲斐あって、高校には余裕で合格。

 中学も無事卒業して、また遊びまわる生活が始まった。

 髪も金のメッシュを入れ、カラオケやらボーリングやら………思いつく限りの楽しいことをして、春休みを謳歌していた。

 

 オールで遊びまわって帰ってきたある日、

家に着くとおふくろから衝撃の事実が伝えられる。

 

 

 「男子校、無くなるらしいぞ?」

 

 「そうか、男子校がなくなるのか。それは残念な・・・・・・・・・はっ?」

 

 

 おふくろの言っていることが理解できずに、ポカンと口を開ける。

 

 

 

 「なんか突然決まったことらしくてね。昨日の夜に、先生から電話があったよ」

 

 「ちょちょっ!? ちょっと待てよ!?!?オレの進学先はどうなるんだよ!!」

 

 「そう慌てるな。まぁ、まずは座れ。話はそれからだ」

 

 

 オレは無言で頷くと、おふくろからコーヒーが入ったカップを手渡される。

 ありがたく受け取ると、それを机に置き木椅子に腰掛けた。

 

 

 「簡単に説明するとだな、男子校と女子校が統合されて共学になったらしい」

 

 「共学ってことは………まさか………!?」

 

 「必然的に、女子と同じになるな。それも、比率は圧倒的に女子が上で」

 

 

 なんということだ…………オレの、オレだけの、オレのためのパラダイスが………。

 あまりの衝撃の出来事に、落胆し肩を落とす。

 

 

 「まぁ気にするな。先生も喜んでたぞ? 奏の女嫌いを克服できるチャンスだってな」

 

 「人ごとだと思いやがって、あのクソ担任!!」

 

 「因みにだが、あんたと同じ中学の人も何人かそこに入学するらしいぞ」

 

 「マジかよ………」

 

 「マジだな」

 

 「はぁ…………仕方ねぇ、行ってやるよ!女の園に!!」

 

 「おぉ、それでこそ男だ!さっすが私の息子〜♪」

 

 

 やけくそで燃え上がるオレに、おふくろは嬉しそうに肩を叩く。

 カッコつけたはいいが、突如変わった理想の学校生活にとてつもない怒りを感じる。

 

 オレを入学させたことを、精々後悔するといい─────。

 

 

 桜が満開に咲き誇る並木道に、新しい制服に身を包んだ生徒たちが歩み行く。

 家のベランダから見える学校には、入学式と書かれた看板が立ち、新入生を迎え入れる。

 

 時刻は8時10分。集合時間まであと20分もある。

 オレは寝巻きのまま、優雅にコーヒーを飲み、朝のひと時を堪能────

 

 

 「してる場合じゃないだろ、バカッ」

 

 

 突如、おふくろの鉄拳が飛んでくる。

 

 

 「早く支度して学校行きな。入学早々遅刻なんてするものじゃないよ」

 

 

 

 オレは気怠げに返事をし、ハンガーにかけられた制服に袖を通す。

 制服はベージュのブレザーで、中学の時のようなかっちりとした黒の学ランとは違い、ゆったりと着れそうだ。

 冷めた残りのコーヒーを一気に飲み干し、おふくろに一言伝え、家を出る。

 

 アパートを出て 信号を一つ超えるともう学校に着く。やっぱ、もう少し朝のティーブレイクを堪能したらよかったな………。

 正門を潜り、中庭にデカデカと佇む掲示板には新入生のクラス分けが表示されていた。

 群がる新入生たちに構わず前へ出る。

 

 さて、オレのクラスは…………。

 

 

 「なるほど、A組か」

 

 

 自分のクラスを確かめると、足早にここを去る。

 校舎に入ると、在校生含め何十人もの生徒とすれ違う。

 そして何より、女子率が高い。2、3年生は全員女子だとしても、男子生徒の姿が一向に見えない。

 全く、先が思いやられる…………。

 

 教室に入ると、既に大半の同級生がクラスにいた。

 そして、オレが入る度視線が集まる。

 まぁ、無理もないか。高校生らしくない髪色と髪型、鋭い目つき、どれをとっても普通とは程遠いからな。

 そんな視線を完全に無視し、自分の机に腰掛ける。

 

 しばらくすると、担任の先生が入ってきて入学式の説明を行い、体育館に移動する。

 目を見渡せば、視界には必ず女子が映り、嫌悪感に見舞われる。

 本当に男子生徒が入学したのかよ…………。

 

 殆ど寝てて覚えてない入学式が終わると、再び教室に戻り、親睦を深めるための自己紹介タイムが始まった。

 出身校はどこだとか、部活はどこに入るのだとか、かしこまった挨拶に全く興味を示さない。どこか上の空で聞き流す。

 

 

 「次、お願いします」

 

 「………………」

 

 「…………?月島くん?次、あなたの番ですよ」

 

 「……………あぁ、オレか」

 

 

 クラス中の視線がオレに集まる。

 明らかに異質な存在に少なからずの興味があるのだろう。

 

 オレは臆することなく堂々と言い放つ。

 

 

 「名前は、月島 奏。家はすぐそこのアパート。本当なら隣の男子校に通うはずだったんだが、不本意ながらここに通うことになった。嫌いなものは女。正直、この学校に馴染む気は一切ないし、絡む気もない。以上だ」

 

 

 この挨拶に誰も、何も返せなかった。

 クラスはしんと静まり返り、異様な空気が漂う。

 あーっ………これは、男子生徒からも嫌われたか。

 

 まぁ、今はどうでもいいか。

 頭の中を瞬時に切り替え、着席をする。

 

 

 

 こうしてオレの高校生活は、過去に例を見ない最悪なスタートを切った。




花音さん及び原作キャラは次回から登場予定です。
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