誤字脱字多いかもしれませんが………ご了承ください。
事件が発覚してからと言うものの、オレと氷川は懸命に捜索を続けているが手掛かり一つ掴めない。
昨日氷川に話した通り、各部活の女子更衣室にも盗撮カメラと盗聴器が数十個発見された。
しかしそれ以降なんの発展もすることなく、ただただ時間だけが過ぎている。
「それでは、始めさせていただきます」
そして今日も放課後の教室に2人で集い、無意味な会議が開かれる。
「まずは私からですが、相変わらず盗撮機器が見つかりません。おそらく犯人は、この犯行を辞めた可能性が非常に高いものと思われます」
「まぁそう考えるのが妥当だろうな」
氷川から手渡された書類を片手に、缶コーヒーを一口飲む。
この紙に書かれている内容はどれも憶測でしかなく、確実なものとは言い難い。
ちなみにだが、オレの調査も全く進捗していない。
『盗撮・盗聴犯がいた』とは言えない為、言葉を濁しながら説明してるが怪しい人物の目撃証言は一向に得られずにいる。
この際だからはっきり言おう。
事件は迷宮入りの一歩手前まで来ている。
「盗撮機器が見つかってから3週間弱。犯人もビビって動けないんだろうな。学校側にバレたと気づいているわけだし」
「ええ。少しでも手がかりを得る為にも残しておくべきでしたね………」
「そういえばだが、松原にも協力を依頼した」
「えっ?何故そのようなことを?」
「これ以上オレたちだけで動いても何もできねえ。苦肉の策ってやつだ。察しろ」
「…………松原さんには説明したんですか」
「もちろんだ。ただ、じっと待ってるより自分で少しでも解決に導きたいと意気込んでる」
「松原さんには感謝しなければいけないですね。それで、彼女にはどんな指示を?」
「
「あのっ、それはどういう………?」
「後々分かることだ。オレの仮説が正しければ、犯人は時期動き出す」
仮説………と言ったが、これもあくまで憶測であり妄想だ。
人に言いふらしても何も得をすることなんてないだろう。
「私にはその仮説を聞かせないと言った口ぶりですね」
「その通りだ。お前は引き続き、盗撮機器の有無だけ確認してくれたらそれでいい」
「…………わかりました。これで会議は以上とします。今日は部活動に行きますので、学園長に最終報告をお願いします」
「はいはい、分かりましたよ」
氷川はやや不満気に教室を後にする。
そんなに聞きたければ教えてやる─────と言うには遅すぎた。
全く、氷川の真面目すぎる性格は面倒だ。
全てを知ろうとする必要はないだろうに、奴はそれでも食い下がらない。
オレにはその手が通じないと最近やっと学習したようだが、それでも奴は決して引こうとしない。
だが、そういう姿勢が無ければ今回のような一向に進まない事件でも諦めず捜査を続けていられるんだろう。
オレは感謝せざるを得ない。
松原も含めて、気持ちの良い学校を過ごさせてやれるように尽力しないとな。
◆◆◆
「─────というのが今日の調査報告だ。何か質問は?」
「いや、特にはないよ。書類も見やすくて分かりやすい。何も言うことはないよ」
「そりゃあ氷川が製作してるんだ。当然だろ?」
学園長と向かいあい、足を組みながら話す。
こいつ自身何か策を論じてるんだろうが、こちら側に一切語ろうとはしない。
きっとオレと同じタイプの人間なんだろうな。
「念のため聞いておくが、オレたち以外に口外したりしてないだろうな?」
「もちろんだよ。もし外部にでも漏れれば、学園の評判はガタ落ちだからね」
あくまで学園長は学園の評判が落ちないか否かで頭がいっぱいなようだ。
こいつも1人の大人。
学園の為と言いつつ、結局は自分の保身が目的で口外を禁止してるに違いない。
「もういっそのこと女子校に戻したらどうだ?」
「少子化のこの時代だとなかなか厳しいんだ。それに、犯人が男の子って決まったわけでもない」
「確かにその通りだ」
「それで、進捗はどうなのかね?」
「書類に書いてる通り、なーんの進展もねぇよ。お手上げ状態だ」
わざとらしく、両手を上げて降参のポーズをとる。
「はははっ、どうも長年教員生活を続けていると生徒の考えてることがわかるようになってね」
「………なんの話だ」
唐突の学園長の話に全く理解できないが奴は構わず話し続ける。
「キミは私に
「なんのことだか、さっぱりだ」
「具体的にいうと "なんの進展もない" という発言。2人での調査は上手くいかなくとも、キミ独自では順調に進んでいるんだろう?」
確かに、学園長の言ってることは事実だ。
さっき言った "仮説" の実証に向けて、オレは準備をし始め、現段階では良い具合に進んでいる。
オレの仕草か言葉遣いからかどこで察したかは知らねぇが、こいつの見る目は確かだ。
これはもう認めるしかない。
オレは本当に観念したかのように、ケラケラと笑いながら答える。
「流石は学園長、と言ったところだな」
「君は素直で良い子さ」
「はっ、どこが。ただの捻くれだろ」
「顔に全て出ているんだよ。少しはポーカーフェイスを覚えたらどうかね?」
「そうだな、善処する─────って、オレの話はどうだっていいんだよ!」
「ああ、すまない。脱線してしまったね」
学園長も同様に笑い、話を戻す。
「生徒の考えてることがわかるなら、一人一人アンタが尋問してやればいいんじゃねぇの?」
「それも一つの方法だろうね。それを踏まえて、ここで一つ質問しよう。この私が生徒のことをじっと見てる姿を見て、キミはどう感じる?」
「シンプルにキモい。何かヤラシイことでも考えていそうで」
「そうだろう?」
「分かりやすい例えだこと」
「そんな方法より、キミが考えてる計画の方がよっぽど確実じゃないかな?」
「…………そこまでわかるんだったら、アンタはエスパーだろ」
「なら、この一件が解決次第答えよう。紙にでも書いて保存しておくよ」
「おお、それは面白れぇ。楽しみにしてるぜ」
「もし私が正解していたのなら、一つ約束を聞いてもらおうかな」
「金を要求するのと、オレが圧倒的不利に陥ること以外ならなんでもどうぞ」
その話は半分聞き流し、学園長室を後にする。
部屋を出たと同時に、何事にも動じず動いてくれている松原に携帯で一報入れる。
『周りに誰もいないことを確認してから始めてくれ』
すぐに既読がつき、クラゲのキャラクターのOKスタンプが返ってきた。
松原だから少し心配だが、これさえ上手くいけば後は芋づる式で次々謎が解けていくだろう。
過去に放送した有名なドラマの名台詞を拝借するなら、きっとこういうだろう。
やられたらやり返す。
被害にあった生徒の人数分だ。
◆◆◆
秘密裏に練った策もいよいよ大詰め。
学園長の持つ生徒の個人情報が載っているファイルから、犯人と思われる人物の経歴を調べ上げた。
そして、松原の勇気ある行動のおかげで犯人を特定することに成功。
そしてこの事件の犯人は今、確実に指定した場所にいるはずだ。
なんの確証もなかった仮説を、確実なものに仕立て上げるまでに費やした期間はおよそ1ヶ月。
期末試験を目前にしたその日、いよいよ行われる。
時はきた。ただ、それだけだ─────。
放課後を迎えてから1時間たった16時半ちょうど。
犯人と思わしき人物が、下駄箱入れ付近の壁にもたれ掛かり携帯をいじっている。
身長はオレと同じぐらいだが、体型は明らかに違う。ぽっちゃり……いや、アレはもう完全にデブの類か。
どこか清潔感を感じさせない髪型も、近寄りがたい印象を受ける。
オレはそいつに向かってゆっくりと歩み寄り、肩を掴み声をかける。
「よお、探したぜ。盗撮&盗聴犯さんっ!」
ニカっと笑うオレとは対照的に、その人物は驚きを隠せないとおった表情を見せた。
それもそのはず。
ここへ来るのは本来オレじゃない。
このデブを釣るために仕掛けた罠だ。
そんなことをお構いなしに、話を続ける。
「ここで話すのもなんだ、場所を変えようぜ。もし逃げ出しでもすれば…………わかってるよなっ?」
さっきの笑いとは一転、威圧するように語ると、奴は暑さと違った汗を流しながら黙ってついてきた。
歩いてる最中もオレたちに会話はない。
そこにあるのは今から取り調べを行う捜査官と、尋問されることに怯える容疑者の図だけだ。
いつも氷川と集うオレの教室に招き入れ、適当な場所に座らせる。
「まずは、お前の言い分を聞こうか。一言目、お前は何を話す?」
容疑者はポケットからハンカチを取り出し、額の汗を拭き取りながら震えた声で答える。
「ボっ、ボクは何も知らない!ここへきた理由も、キミが怖くてついてきただけだ!」
よく聞く言い逃れから話し始めた容疑者にイラッとしながらも、オレは平常通りのトーンで返す。
「まぁ、何とか誤魔化そうとするその度胸だけは褒めといてやる。だが今から行うのはお前が犯人だと実証するための尋問だ。心して答えろよ」
「うっ、うぅ…………」
「それじゃあ、まずオレがどれだけお前のことを知っているか教えてやろう」
ここで言葉を区切り、あらかじめ教室の机に置いてあった書類を取り出し読み上げる。
「名前は丸岡 大輝。2年B組、写真部所属でバイトもしているようだな。10人家族の長男坊で親や兄弟からも慕われている………か。ここまでで間違っている点は?」
「あ…………ありません」
「これはオレの推測なんだが、お前の家、生活が苦しいんじゃねぇの?」
「……………!!」
オレの言葉に、容疑者は目を大きく見開いた。
「肯定、と考えて良さそうだな」
「ど、どうしてそのことを…………」
「家族構成を知ってるぐらいだぜ?家の住所も当然調べてある。さっきの言葉を思い出してみろ。"両親や兄弟からも慕われてる" っていうのは、実際に聞いたからだぜ?」
両親から聞いたというのは嘘になるが、口が固そうな次男坊には確認済み。
あまり小さいのだと、口を滑らせる可能性があるから怪しまれないようにするのに苦労した。
一つ聞いたら十個返ってくるような弟君で助かった。
「お前よぉ、何で盗撮や盗聴なんてマネをしたんだ?」
「ま、まだボクが犯人だと決まったわけじゃないじゃないか!勝手にボクだと決めつけて………せ、先生に言いつけるぞっ!」
必死に足掻こうとする容疑者に心底呆れる。
家族にまで接触しといて、犯人だという証拠がないわけないのに。
オレはため息まじりでゆっくりと実証する。
「いいか?お前が犯人だという証拠をひとつ一つ挙げていく。まずはお前の脳内に語るとしよう」
「ぼ、ボクの脳内………?」
「今から1週間前、お前が接触した人物を思い出せ。それも、顔を合わせてでは無く、
「手紙…………あっ!もしかして!?」
「お前に女子生徒の下着写真を要求した人物がいるな。そいつはオレの
学園長室を後にした出来事を思い出してほしい。
オレはこの学園唯一の友達に、あることを頼んでおいた。
それがこの容疑者に向けて手紙を差し出すことだ。
内容は至ってシンプル。
『ある女子生徒の下着写真をください。お金は用意しています』というもの。
容疑者はそれに応じ、金と引き換えに写真を提供した。
つまりは、オレがこの事件を最初に聞かされたときに浮かんだ最悪のシナリオ通りになってたというわけだ。
約1ヶ月もの間、オレたち風紀委員に見つかるのを恐れて売買できなかった容疑者にとって、この案件は受けざるを得なかったのだろう。
相手が誰であろうと、やるしかなかった。
何故ならそこに何千円という金が舞い降りてくるのだから。
オレの学園の友達でこれら全てを行った張本人は、松原花音その人だ。
「実際に、金は指定された口座に振り込み済みのはずだ。お前の銀行口座さえ調べれば容易にわかる」
「そ、そんなマネさせるわけないじゃないか!人の銀行を覗こうなんて………最低だよっ!」
「人の下着姿を覗いておいて何を言ってるんだか………。なら、お前が犯人だという決定的な証拠を見せてやる」
手に持っている書類と共にクリップで挟まれた茶封筒から数枚の写真を取り出し、容疑者に差し出す。
そこには、容疑者の一連の行動が全て写されている。
奴の顔は真っ青に変わり、手渡した写真をこれでもかというぐらいに破り捨てた。
「そんなことしても無駄だ。パソコンの中に全てバックアップしてある」
「な、何故この写真を!?」
「お前、下駄箱の奥をちゃんと見てなかったな?」
「下駄箱の…………奥?」
「真っ暗でほとんど何も見えなかったはずだ。そこに黒塗りの隠しカメラが仕込まれてることに気づかずに写真を置くなんてな」
「うっ………嘘だ〜〜〜!?!?」
松原の下駄箱には少し細工を施した。
黒い隠しカメラをより見えにくくする為に、下駄箱の奥を丁寧に黒く塗りつぶし、写真を置く時間も下校間近にしておいた。
残り少ない下向時間と日が落ちてることも相まって、全く見えなかっただろう。
「さあ、証拠は以上だ。観念しろ」
容疑者は椅子から崩れ落ちて、泣き始めた。
これで丸岡 大輝は一連の盗撮・盗聴犯だと確定した。
「それにしても、何でこんなことをしたんだ?下手したら警察沙汰になるところだったんだぞ?」
「…………お金が欲しかったんだ」
「家が貧しいからか」
「ああ、そうだよ………。真っ当なバイトをしても、高校生が稼げるバイトなんて限られてる。ボクの特技が活かせて、稼げる行為は…………盗撮と盗聴で売買することしか考えられなかったんだ…………」
「盗撮と盗聴で得られた金で賄われて、親や兄弟が喜ぶと思うのか?」
怒りを含んだ声を発するが、奴は興奮したかのように語り出した。
「それだけじゃないんだ!その写真を渡した人と友達ができた!!ボクの陰湿な特技を通じて欲しいものが次々と手に入った………!もうやめられな─────」
奴が話し終わる前に、鼻っ柱に力を込めた右ストレートを思いっきり振り抜く。
4〜5メートル飛んだところで止まり、苦痛の声を上げ、悶え転がり回る。
血のついた握り拳を緩めることなくゆっくりと歩み寄ると、奴の姿はどこか哀れみに満ちていた。
鼻からは大量の血が流れ、額からは汗が止めどなく溢れ出る。
濡れた髪を鷲掴みにしてから引っ張り、奴の顔近くで怒鳴りながら語る。
「そんなクソみたいな関係の何が楽しい!?友達ってのは、一緒に笑って、楽しんで、思い出を共有しあえる関係だ!!そんな人間関係も、犯罪行為で得られた金も、全て捨てちまえ!!」
手を離し立ち上がる頃には、奴はピクピクと痙攣し言葉を発せない状態になっていた。
ああ、ダメだ。まだ怒りが収まらねぇ。
今回のヤロォは下劣すぎた。
とりあえず、学園長室にこいつを連れ出して事情を説明するか………。
オレは動かない奴の首根っこを掴んで、学園長室まで引きずりながら歩き出す。
◆◆◆
事件が解決してから後日。
オレと氷川と松原で、ささやかながら学校の屋上で祝杯をあげていた。
嫌がる氷川を無理やし連れ出し、炭酸ジュースやお菓子を持ち寄るミニパーティー。
夏の日差しも鎮まり、夕方を迎えたところで開催した。
「いやぁ、ほんっと松原には助けられた」
「ええ、本当にありがとうございました」
「うんうん、2人の苦労に比べたら、私なんて…………」
笑顔で頬をかきながら照れる松原にチョコスティックを差し出す。
「それにしても、月島くんの身勝手さにはほとほと呆れます。私にだけでも、教えてくれてもよかったのに…………」
「だから言ったろ?確信はないって。あそこでオレがベラベラ話しても、所詮は憶測でしかねぇんだよ」
不機嫌そうな表情を見せる氷川にもチョコスティックを差し出す。
だが奴は頑なに受け取ろうとはしない。
「それに、構内でお菓子を食べるだなんて………」
「紗夜ちゃん、今日ぐらいはいいんじゃないかな?」
「松原さんまで………!」
「だって、紗夜ちゃんが頑張ってくれなかったらカメラは放置されたままで今も被害が続いていたかもしれないんだよ?」
「そうそう、お手柄だ氷川」
「そう言われましても………」
氷川の口が開いた瞬間を見逃さず、チョコスティックを無理やし押し込む。
「いいから食え!この菓子類は松原の奢りだぞ?食わなきゃ損損!」
「そこまで言われたら………仕方ないですね…………。しかし、後片付けはちゃんと行い、ゴミは持ち帰ること。いいですね?」
「うんっ!わかった!」
「うーい」
風紀委員長の許可も下りたことで、ようやく本題に入る。
最初に切り出したのは松原。
「それで、犯人はどうなったの?」
唐突に投げかけられた疑問に氷川が答える。
「学園長に謝罪を行い、これまで盗撮や盗聴で得たお金は全て返金。わからない分は福祉団体に寄付することになりました。もちろん、それらのデータは完全消去し二度とこんなマネをしないように誓っていただきましたよ」
「売買で渡した写真は出来るだけ回収しているが、全部とまではいかなそうだ。なにせ数が多すぎる」
「そっか………でも、これからはそんなことをされるのはなくなったんだね!」
「少なくとも、それは保証する」
丸岡から買い取った写真でまた売買が行われるとなると、また面倒ごとになるだろう。
だが、奴がその一件に関わらないと周りに知れたら少なからず学校側にバレたと考えるはずだ。
これで迂闊に行動できまい。
まあ、売買に参加した男子生徒から逆恨みされることは間違いないが、今更しれたこと。
オレにとってはどこ吹く風だ。
「ちなみにだが、松原」
「うん?どうしたの?」
「お前は丸岡に誰の下着姿を所望したんだ?」
「ええっ!?ふえぇぇぇ!?」
手紙を差し出すとき、誰でもいいから適当に下着姿の女の名前を書いておけと伝えたんだが、急に思い出した。
「月島くん………それを聞くなんて、最低ですよ」
「まあそれもそうだな。松原、無理に答えようとするな。オレは全く気にしてない。
「そ、そうしてくれるとありがたい………かな」
「さあっ、仕切り直して再開するぞー!期末テストなんて糞食らえだっ!」
「そんなことさせるわけないでしょう!」
氷川のツッコミに、オレたちは笑い声を上げ、小さな宴会場は笑顔に包まれた。
いかがだったでしょうか?
高校生でも、犯罪で警察沙汰になることなんて大いにあり得ることです。
気をつけましょう