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今回は千聖さん視点と奏視点の両方です
「はぁ、ダリィ…………」
晴天の青空の下、病院の屋上で寝転びため息まじりに呟く。
もう入院生活も飽きた。
傷だって塞ぎきってるし、違和感もない。
なのに病院側は『まだ心配だから』だとか『もう少し検査が必要だから』とか抜かしやがる。
おふくろも、『入院ついでに悪いとこ全部直してもらえ、特に頭の中な!』って笑いながら言ってきた。
もう明らかに息子にかける言葉じゃないよな。
オレの身体の状態はオレが一番わかってる。
だからこそ一刻も早く退院したいんだが……………それを奴らは許さない。
今頃、花咲川の連中は終業式を受けていることだろう。
面倒な式にでなくていいのはラッキーだが、入院し続けるのと天秤にかけるなら、オレは断然前者を選ぶ。
それほどにオレは退屈してるのだ。
「誰でもいいから相手になってくれよ」
オレの嘆きに誰も答え─────
「私でよければお話聞くわよ?」
「……………ッ!?」
突如顔を表したこの女。
白鷺千聖は、ドッキリ大成功!と言わんばかりに腹を抱えて笑う。
確か、前にもこんなことあった。
コイツが入院してる時、病院の壁をよじ登って窓から侵入して驚かせたことがあった。
数ヶ月たった今。
こんな形で仕返しをされた。
実に屈辱的。一発分殴ってやろうか。
「何でオマエがここにいる?まさか、式をサボったって言うんじゃねェよな?」
「あなたと一緒にしないでほしいわね。私はドラマの撮影前にお見舞いにきただけよ?」
「はいはい、わざわざどーも」
「ふふっ、素直じゃないんだから」
「うっせぇ」
白鷺は揶揄うように話しオレの隣に座る。
腹が立つのは確かだが、いないよりマシだ。
コイツの戯れにも少しばかり付き合ってやろう。
「それで、なんでオレがここにいることがわかった?」
「看護師さんに聞いたのよ。あなたはよくここで日向ぼっこをしているって」
「日向ぼっこ、随分可愛らしい言い方じゃねェか」
「他に何かあるの?」
「光合成」
「…………植物か何かかしら」
白鷺は呆れ顔をする。
「と、言うのはまあ冗談だ。実際のとこ、病院のベットは落ちつかねェ。ただ、それだけだ」
「落ち着かないって………あなた仮にも患者でしょう?少しは安静にすることも覚えたらどうかしら」
「安静も何も、オレはもう完治してるんだ。今更リハビリなんて──────!?」
オレがそう話していると、白鷺は包帯で巻かれた左腕をギュッと握ってきた。
腕に激痛が走り、思わずその手を振り解く。
「ほらっ、やっぱり」
「テメェ……………ッ!!」
「痩せ我慢する方がカッコ悪いわよ?全く、男の子ってどうして見栄を張りたがるのかしら」
「傷は塞がってんだから十分だろが。これ以上入院なんてしてたら余計身体が悪くなるわ、クソッ」
「一つ気になっていたのだけれど、その右目……………ちゃんと見えているの?」
白鷺は神妙な面持ちで右目を見る。
「ああ?くっきりと見えるぜ?見たくもねェオマエの顔面がな」
「眼球には傷はなかったの?」
「直前で頭を引いて目も閉じた。北谷は失明させたと勘違いしてるだろうが、まあ、あのまま斬られてたらマズかったかもな」
「さすが月島くんね」
「よせよ。1週間も寝たきりだった奴なんてたかが知れてるだろ」
「仕方ないじゃない。これほどの傷を負ったのだから」
「オレが目覚めなかったのは傷のせいじゃねェ」
「じゃあ、なんで…………?」
不思議そうに首を傾げる白鷺。
わかりやすく説明するために、左腕に巻かれた包帯を取り、傷口を見せながら答える。
「 "流した血の量" だ」
「血の、量?」
傷口に顔を逸らすも、少しづつではあるがちゃんと目にするようになる。
「オレの体には矢が四本刺さっていた。それにバットやら鉄パイプで頭を殴られ、口から出したものも含めると、1Lはゆうに超えていたらしい。なんせ、オレの足元が血溜まりになるほどだったからな」
「なるほど、人は4〜5Lほどの血液があると言われてる。そのうちの1Lが外に出たとなれば、命の危機に陥っておかしくない」
「そう。実際どれだけ殴られようが、臓器を傷つけない限りオレの体はどうとでもなる。オレ自身これほど血を流したのは初めてだったからな。正直かなりヤバかった」
「そう…………無敵と思われたあなたでも、死にそうになることはあるのね」
「アホか。オレだって人間だ。痛ェもんは痛ェし、刃物で刺されたら死ぬ一般人だ」
「うふっ、臓器さえ守れば大丈夫なあなたを世間は一般人と呼ぶのかしら?」
「世の中には、腕にナイフが刺さったまま犯人を薙ぎ倒す高校生の空手家や、土手っ腹をぶち抜かれても戦い続ける爺さんもいる。オレなんて、所詮はただの高校生だ」
「…………それは全部 "アニメ" の話でしょう?」
「ハッ、確かにその通りだ」
オレはニカっと笑う。
白鷺はまたしても呆れた顔をしてため息をついた。
この時オレの腹が鳴り、寝返りをしたら見える時計に目をやる。
今の時刻は十二時ジャスト。
味気ない病院食が運ばれる時間になった。
オレは立ち上がり、鉄梯子に向かおうとしたら白鷺がオレの手を掴む。
「月島くん、もうすぐ私も行かないといけないから、最後に一つだけ、聞かせて」
「なんだ?」
「
抽象的すぎる言葉に意味がわからず眉を顰めると、白鷺は今日の中で一番真面目な顔つきでオレを見ていた。
「何が言いてぇ?」
「先週、あなたのお母様とお話しさせてもらったの。私たちは今回の事件に違和感を感じたの」
「違和感も何も、多対一なんて無傷で生還できるわけねェだろ。素手の喧嘩じゃなかったんだ。わかるだろ?」
「いいえ。たとえ大人数でも、あなたは一人ぐらい倒していてもおかしくないほどの強さを持っている。でも、警察は
白鷺の推理にオレは口を閉ざす。
最後まで聞きたい、そう思ったからだ。
「ねぇ、教えてちょうだい。あなたは一体何を考えてこれからどうする気なの?」
いつもに増して真剣な白鷺。
そんな奴にふざけて返すのは失礼だと思ったオレは抱え込んでいたことを全てぶちまける。
「オレが中学でしたことは知ってるよな?」
「え、ええ」
「北谷はそれで癒えることのない一生の傷を負った。だから、奴が復讐するのは当然のことだと思ったんだ。だから、オレは丸腰でそれを受けた。まあ、松原を使ったのは流石にブチ切れたけどな」
「でもそれって────」
「まあ最後までは聞けよ」
「…………………」
オレの言葉に白鷺は黙る。
「アイツがどんなに汚ねェ手を使っても、オレが咎める理由はねェ。まして、女であるアイツがオレに勝てる可能性なんて一ミリもないからな。だから取り巻きを呼んだんだろう。一人一人がオレに倒されない程度の実力を持った奴を…………だがな!!」
オレの握り拳に力が入る。
「取り巻きたちから恨みをかった記憶は一つたりともねェ!」
北谷にやられる分は仕方ない、そう割り切ったあの倉庫での事件だったが、奴はオレに縁もゆかりもない取り巻き、第三者を連れてきた。
そしてそいつらは奴の命令の元に動きオレを殴り、射り、斬った。
おかしいと思わないか?
何故関係のないやつがでしゃばってオレを攻撃した?
これはオレと北谷、二人だけの問題のはずだり
取り巻きを読んだ北谷もそうだが、それに賛同したアイツらは絶対許さん。
これがオレの "今" の考えだ。
「関係ねェ取り巻きたちをぶっ飛ばして、北谷の報復を受けようと思っていたが、流石に矢が数箇所も刺さったら動けなかった。オレがこの怪我を負わされたのはそれが原因だ」
「けれど、その人には何をされても抵抗しようとしなかったんでしょう?」
「ああ。その通りだ」
「ましてやナイフを持っていた…………あなたはあの場で殺されていたとしてもおかしくなかったのよ!?」
白鷺の言葉に力がこもる。
確かに奴の言う通り、アイツが心臓を刺しでもすればオレはここにはいない。
だが、あの女の考えてることはオレにでもわかった。
それだけで復讐が終わるわけない、と。
オレを殺すのは簡単だ。
手に持ってるナイフを、オレの心臓に向けて、前に、突き出す。
幼稚園児のクソガキでもわかる単純作業だ。
だが、それが目的ならチャンスはいくらでもあったはずだ。
下手に呼び出しなんてせず、校舎から出てきたオレを不意打ちでもすれば簡単に済む話。
ここまで手の込んだことをするなら、奴にも何か考えがあると察知すべきだ。
だが、激昂した今の白鷺にそこまで考えるのは不可能だろう。
オレは白鷺を宥めるように頭に手を置く。
「気にすんなよ。今オレはこうやって生きてるんだから別にいいだろ?」
「あなたね!?」
「オマエがいくらここでキレたところで何も変わんねェよ。その思いやる気持ちだけで十分だ」
急に静かになり俯く白鷺にオレは殆どかけたことのない言葉を送る。
「心配してくれてサンキューな」
ごく普通の感謝の言葉。
だが、白鷺に対しては全くと言っていいほど使ってこなかっただけに、効果的面らしい。
赤く染め上がった顔は、耳までその範囲を広げる。
「ほらっ、今から仕事があるんだろ?遅れず行けよ。オレの責任みたいになったら溜まったもんじゃないからな。アバよっ!」
オレは高速で鉄梯子を降り、昼飯を食いに部屋に戻る。
「──────バーカ」
◆◆◆
昼飯を食い終わったオレは看護師に許可を取る。
当然却下されたわけだが、伝えるだけ伝えたし別にいいだろう。
止めに入る看護師たちを振り切り、オレは病院の外へと飛び出した。
────久々に踏みしめるコンクリート。
しゃばの空気は美味い、と出所したヤクザたちは口にするけどオレには今、それと同じ感情が芽生えている。
これほど大地を踏みしめて歩くのは、歩けるようになったばかりのガキ以来か。
外に出るや否や、オレはある場所へと直行する。
携帯に記された、とある高架下。
暗く静まりかえってこの場所に屯する影を見つけ、足音をたてず近づき、一番近い距離にいた男の後頭部に思い切り蹴りを入れる。
ドゴッ!、と鈍い音をあげると同時に顔面から床に叩きつけた。
頭から足を退けると、男はピクリとも動かなくなり、顔面から大量の血が流れる。
唐突のオレの登場に、たむろしていた男たちは一斉に後退りオレとの距離を取る。
オレの顔を見た男たちは驚愕した表情を浮かべた。
「よぉ、会いたかったぜ……………!」
眉間に青筋を浮かべ、怒りを込めた笑顔に全員が怯む。
もちろんオレはストレス発散のためにこんなことをしているわけではない。
目的はただ一つ─────。
復讐だ。
「な、何故それほどの傷を負いながら生きてるんだ!?」
一人の男が声を上げる。
確か…………そう、木刀でオレをぶん殴った奴だ。
驚くそいつにオレは優しく応答する。
「何故って、殺してもねェのに、オレが死ぬわけねェだろ?」
訳がわからないと言った様子の一同。
オレは、顔面血まみれになった男の頭を掴み晒す。
「コイツ、スタンガンを持ってた奴だよな?どうだ?オレもこんな感じで血を吹いていたか?」
何も言わない一同に腹が立ち、男の頭を離すと脇腹を思い切り蹴り飛ばし、まるでサッカーボールのように宙へ舞い、五メートルほどの距離を数回バウンドしたのち静止する。
「さあて、次はどいつだ?」
指をボキボキと鳴らし威嚇する。
震え上がる一同に、一人の男が前に出た。
「よくも…………よくもおおぉぉぉ!!」
怒るこの男にも見覚えがある。
鉄パイプでオレの足に傷を負わせた男だ。
雄叫びを上げながら拳を振りかざしオレの顔面目掛けて振り下ろす。
二度、三度、何度も繰り返すがオレは全て一歩ずつ後退し顔を傾けるだけで躱して、息が切れたところを狙い顔面に右ストレートを放つ。
鼻からド派手に血飛沫をあげ、後ろにいたニ人もろとも壁にめり込ませた。
「まったく、武器がなかったらまともな喧嘩ができねェのか?」
殴った際に付着した血を払い、再度指を鳴らす。
すると、一人の男が先頭に立った。
「一度、話し合わないか?」
「あぁ?」
男は腕を横に伸ばし停止させる素振りを見せる。
応じるつもりはさらさらなかったが、コイツの顔を見てその考えが一変した。
オレの体をクロスボウで狙撃した奴だ。
「キミには聞きたいことがいくつもある。何もしないから、そこに座ってくれないか?」
優等生ぶった話し方をする男に素直に従い、腰をかけようと───
「ハッ、
オレはその提案を拒否し、足元に転がっていた石を拾い、立ち上がろうとする男たち目掛けて放り投げた。
広く開いた額に綺麗にヒットし、ピクリとも動かなくなる。
鉄パイプの男を殴った時に一緒に吹き飛ばした奴らだったが、どうやら爪が甘かったらしい。
腹を押さえながらもまだ立とうとする男たちを今度はしっかり戦闘不能に陥らせた。
「き、キサマ……………!」
クロスボウの男は鋭い目でオレを睨み、拳に力を入れる。
いい子ぶっていても所詮は不良の端くれ。
頭に血を登らせることなんて実に容易い。
「こっちは単独、そっちは複数。話し合うには少し人数調整がおかしいと思ってな」
「それにしても─────」
「卑劣、とでも言うつもりか?」
オレが睨むと、男は口を閉ざす。
「いつオマエがオレより偉くなった?身の程を弁えろよ。テメェの指図を受けるのは癪だからこっちから命令する──────座れ」
残された四人は顔を合わせ、観念するかのようにその場に座る。
オレも奴らに続き腰を下ろした。
「話し合う、とオマエは言ったが………オレの何が聞きたい?」
クロスボウの男に指を刺す。
「…………まずは、キミ─────」
「言っておくが言葉には気をつけろよ。こちとらオマエたちと話す間もなく滅多うちにされたんだ。本来、あの場で全員血まみれにする権利は俺にあったが………それだと意味がねェ。情けをかけてやるから、意味のある単語を文にして説明しろよ?さあ、話せよ」
「…………先ずは、キミがどうやってここに辿り着いたのか教えてくれ」
「そうだなあ、警察でも見つけられなかったオマエらを病院着のオレがどうやって見つけたか…………これを見たほうがわかりやすいか?」
オレはズボンのポケットから携帯を取り出し、チャット画面を見せる。
そこには、今コイツらが潜伏している現在地を表した写真と共に、捜索し続けてくれた中学の友達との会話ログが記されていた。
「これは…………?」
「見たらわかるだろ?L○NEだ。オレの頼れる仲間の、な」
「なっ!?一体、どうやって…………!」
「やり方は知らねェよ。だがコイツは、オレにとって大切な、警察たちで言うところの"
現に、オレが連絡をよこすと一日とかからずに見つけやがった。
今はごく普通の公立高校に通ってるらしいが、将来は "探偵" というピッタリな職があることを教えてやろう。
「話は終わりだ。他に聞きたいことは?」
「…………キミはないのかい?」
「はぁ?オレが?」
「あぁ。この際だ、互いに腹を割って話そうじゃないか」
「テメェらモブに聞きたいことなんてねェよ。話が終われば全員血祭りに上げる未来に変わりはねェんだからよ」
オレがニカっと笑うと全員が肩をビクつかせた。
クロスボウの男はそれでも食い下がり、立ち上がる。
「モブなんて失礼な!ボクには "
「ほー、ならばしんどーくん。今すぐ沈められたくなかったら心を落ち着かせて、その場に座れ。誰が立っていいと言った?身の程を弁えろ」
「い、いったい何様─────」
更に言葉を続けようとする進藤の鳩尾目掛けて右フックをかますと、その痛みに耐えかね嘔吐する。
「二度は言わん。座れ、今すぐに」
何度も咳き込み、呻き声をあげる進藤。
結構力を入れたから、まあこの反応には納得する。
オレが膝を立て腰を下ろした。
「ガハッ………………オオオオッ……………!」
未だ落ち着かない様子でゲロを吐く。
「話にならんな。誰か代役しろ」
「なら、オレが…………」
進藤の後ろに座っていた北谷の取り巻きの一人、木刀を使っていた男が名乗り出た。
「オレは暴力だけで解決しようとする野蛮な奴は嫌いだ。何せ、オレは結構お喋りだからな。相手が冷静で、オレと言葉を交わせる利口な奴なら話し合いだけで解決したいと思っているんだ。さあ、なんでも答えてやるぞ」
「じゃあ、オマエの目的は………」
「ここにいる全員を血祭りに上げること」
「そ、そんなサラッと!?」
「他にはねェの?なかったらもう話し合いとやらはお開きにするが?」
オレが立ち上がろうとすると、息を切らしながら進藤がこちらに視線を飛ばす。
「なんだ、何か言いたいことがあるなら言ってみろ」
「キ…………キサマ、は…………許さない…………!」
「そうかい。そのしわくちゃなブッサイクな顔で言われても哀れみしかわかねェよ」
嘲笑うオレに鬼の形相で睨む進藤。
ここでオレはフッとある考えがよぎる。
「……………あっ!一つ聞きたいことを思いついたから、しんどー、オマエに尋ねよう」
オレはゆったりと立ち上がり、尻についた埃を払い一呼吸置いた後こう告げる。
「過去、オレはオマエらに恨みをかうようなことをしたか?」
オレの問いに答えようとしない進藤。
────がっ、答えない代わりに、不敵な笑い声を上げ始めた。
なんだ?痛みで正気を失ったか?
血眼になる進藤は笑みを浮かべながら告げた。
「キミがボクらに何をしたか?
「ほぉ、なら北谷に唆されたからやったというのか?」
「その通り!別に彼女に特別な感情はない。ただ、むしゃくしゃしてたんだ」
ようはストレス発散のためにオレは痛めつけられたってことか。
OK。もう遠慮する必要はなさそうだ。
オレが間合いを詰めようとすると、進藤はさらに言葉を続けた。
「実はここにいるボクたち全員、部活動ではエキスパートだったんだ!けれど、高校でその道を断たれた……………何故だかわかるかい?」
妙にハイテンションな口調に腹が立つがオレは冷静に返す。
「わからん。是非教えてもらおうか」
「─────生徒会の介入さ」
「生徒会?」
「そう、奴らは人気がありイケメンたちが揃う部活動にのみ部費を渡し、ボクたちみたいなパッとしない、日陰者の所属する部活には何の手当もよこさなかった。いくらその競技において実力があってもね」
「酷い独裁政権だな」
「ボクたちも必死に抗議した。だけど、彼らは何と言ったか知ってるかい?『全国にも出たことない、地元でだけ有名なキミたちに投資する価値はない』とね。次の日には抗議しに行った部活は廃部されたよ。生徒会だけじゃない、生徒会によって唆された教師たちの手によってね!!」
これが本当だとするのならば、その学校が間違っているのは明らかだろう。
しかし、それとオレにどう関係があるかまったくわからない。
引き続きオレはコイツと話をする。
「それで、泣き寝入りしたってのか?」
「部活を失ったボクたちなんて、その辺に転がる石同然だ!顔もブサイクだし、女子にも相手にされない……………もはや、学校に在籍するのも烏滸がましい汚点だ!そういえばキミ、生徒会に所属してるんだろ?風紀委員長だっけ?」
「へぇ、知ってるのか。その通りだ」
「相当な権力を持っているよね…………どうだい?予算会議だって、キミが一声掛ければどうとでもなるんじゃないのかい?喧嘩も強いし、顔もいいし、背も高い!逆らう人間なんていやしないだろう?」
「オレにそんな権限なんてねぇよ、バーカ。どこのアニメの世界だよ」
「ボクはそんな横暴な生徒会を許さない。そして、女にチヤホヤされるキミも…………絶っっ対に許さない!!!」
コイツがオレに妙に突っかかってくる原因はよーくわかった。
一つは生徒会への復讐心。
理不尽極まりない軍団、"生徒会" と名のつくものを一切許せないと言った口ぶりだ。
もう一つは己の容姿の醜さ。
正直どうでもいいとは思ったが、コイツにとっては重要事項らしい。
どこから聞きつけたか、オレはイケメン認定されているらしい。
おまけに女子に好かれていると言う。あの三人以外とまともな話をしたことないオレがだ。
全く、呆れるほどの "逆恨み" だ。
そんなことが理由で北谷に手を貸したのか…………ホントッ、単純な奴ら。
「許されなくて結構。顔も性格もブサイクなテメェに言われても怖くもなんともねェ。オマエらも同じ理由か?」
オレがそう問いかけると、各々が頷く。
類は友を呼ぶ、とはまさにこのことだな。
「どうせテメェらは、廃部になったから『はいっ、そうですか』で終わらせたんだろ?ホントバカな連中」
「ば、バカっ!?」
「どうして手を考えなかったんだ?どうしてそれを簡単に受け入れた?どうして生徒会に反抗しなかったんだ!?」
「ええい!うるさい!!それ以上何も──────言うなああぁぁぁ!!!!」
進藤が突如奇声を発する。
顔は怒りで真っ赤になり、息切れはしているものの、先ほどまでの痛みはすっかり消えて無くなっている様子だ。
「それにな、オマエたちがオレに対して何か恨みでもあれば仕方ねェと思ってた。北谷のようにな。だが、テメェの
オレの言葉に誰も言い返さない。
「じゃあ、オレが今からオマエたちを血祭りに上げてもいいというわけだ。やられっぱなしはやっぱ性に合わねェ…………北谷にやられた分もテメェらに倍で返してやるよ。こう言うのを、なんていうか知ってるか────?」
オレは後ろにいた取り巻きとの距離を一気に縮め、顎をバク宙の要領で蹴り上げた後、右左に拳を放ち、最後は浮いた男のその体を両手を合わせて地面に叩きつけた。
一瞬の出来事で困惑する残りの男たち。
返り血を浴びたその顔で睨み教える。
「 "八つ当たり" だ」
残るは三人。
メリケンサック男、木刀男、そして進藤だ。
三人が固まりオレから距離を取ると、数メートル離れたところに置いてあった武器をそれぞれが手にする。
どうやら、武器さえ持てばオレに勝てると踏んだらしい。
奴らは不敵な笑みを浮かべる。
「全く、不良の風上にもおけん連中だ」
「ヘヘヘッ、手負いのあんたじゃあ、おれたちに勝つことなんて不可能なんだよ!!」
「まずはオレからだ!いっくぜえぇぇ!!」
メリケンサック男が突進してきた。
振り上げる右拳を受け止め、思い切り握りしめる。
男は悲鳴をあげ、握るオレの拳に手を当て必死に引き剥がそうとする。
もちろんオレは手を緩めることなく握り続け、挙げ句の果てにはメリケンサックが変形し、奴の手にめり込んだ。
「ギャアアアアアア!!」
痛みにもがくメリケンサック男
しかし、たまたまそばに転がっていた鉄製バットを拾い上げ、大きく振りかぶった。
それをオレは仰反るようにしてかわし、鉄バットを横取りすると、膝を使って一瞬で折り曲げた。
そのまま宙に回転をかけて放り、驚くメリケンサック男の頭上にヒットさせる。
「さあて、どーちーらーにーしーよーおーかーなっ!」
二人を指差し判断を神に委ねる。
最終的には木刀男の方へ指が止まり、次にのしてやる相手が決まった。
返り血で染まる服が、ダッシュすると共に靡く。
男は木刀をオレに向けると、面を狙い振り下ろした。
迫る木刀に向かって回し蹴りを見舞い真っ二つにへし折る。
その勢いのまま男の顎にアッパーカットしてKOする。
「ラストはオマエか」
最後に残った振動を前に、再び腰を低く構えると奴もそうに呼応し、矢を射る構えをする。
どうやら、またオレに向かって放つらしい。
「い、いくらキミでもクロスボウの矢の速さには対応できないだろう!?」
「そうか。んじゃ試すか?」
オレが手招きし矢を誘う。
「どうした?ビビってできねぇってか?」
そう挑発すると、進藤は意に介さず矢を放つ。
一直線にオレへと放たれたその矢を半身になって躱し、胴の部分を体を回転させながら掴んだ。
「に、人間技じゃないだろ……………!?」
「油断さえしなけりゃ余裕でできる。まだ矢は残ってるだろ?ほらっ、どんどん放てよ」
オレはゆっくりと進藤に向かって歩き出す。
やけになった進藤はもう一発オレに向かって矢を放った。
当然オレは躱してへし折り、また放たれては躱してへし折る。
そんなやりとりが数度行われたら持っていた矢が全て無くなった。
鬼の形相で近づくオレにビビり散らす進藤。
腰を抜かし倒れたやつの顔に足を乗せ、軽く踏みつける。
「オマエで最後だ。何か言い残す言葉はあるか?」
オレの問いかけに答えられず頭が真っ白になってる様子の進藤。
奴の回答は、"拒絶" ということでいいだろう。
オレは虫けらを踏み潰す感覚で奴の顔面に圧をかけた。
白目を剥きもう抵抗はしなさそうだと判断したオレは足を退け、進藤の服から携帯を盗るとある人物に着信を入れる。
『もしもし?ちゃんと逃げれてるかしら?』
声の主は北谷 桃子。
事件を起こした張本人だ。
『よお、元気そうじゃねぇか』
オレの声に一瞬驚いたようだったが、すぐに毅然とした態度に戻る。
『ウフフッ、あなたこそ、死に損ないのクセして随分元気そうね』
『ああ、元気すぎてついオマエの大事な取り巻きたちを壊しちまった。それに、この右目が疼いていたのは、オマエと関わりのあった奴だったからか?』
『…………別に壊れても構わないわ。どうせ、いらない人間なんだもの。警察にでも病院にでも連れて行けばどうかしら?』
『ハッ、強がるなよ。時期にオマエも捕まるだろうよ』
『残念だけど、私は絶対に捕まらないわ。罪は全部そいつらが被ってくれるから』
ホントッ、コイツは人を人とも思わないゲス野郎だ。
取り巻きだった男たちに同情する。
『言っておくが、これで
『ええ、構わないわ。次会う時は──────』
『ああ。次会う時は──────』
『『殺すつもりでかかってきな』』
そう言い捨て電話を切る。
ふぅ、と一息つくと、左腕に激痛が走る。
「ッ
オレは再度電話を鳴らし、救急車を要請した。
これでオレの八つ当たりは終了。
残るは女王のクビ、ただ一つだ。
いかがだったでしょうか?
本編、かなり長くなりましたが、細部まで執筆したいと思い文量が多くなってしまいました………。
最後になりますが、本日で執筆者のお盆休みが終了したため、またしばらく投稿が遅れる場合がございます。
どうかご了承ください。