高嶺の華と路傍の花   作:山本イツキ

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新バンド加入か……………いずれにせよボクは応援してます。

いい曲待ってますので。


本編はというと…………タイトルからしてアレですが、そこまでグロくはないかな?


第41輪 トリカブト〜あなたは私に死を与えた〜

 学校から連行されてはや1日が経過した。

 警察から聞かれることは毎度同じことで、もう聞き飽きてしまった。

 大きくあくびし、耳をほじる。

 

 

 「もういい加減諦めろよ。オレからは何の情報までやしねぇよ」

 

 

 冷たい目をした刑事にそう告げるも、聞く耳を一切持たない。

 

 

 「キミは不良だ。これまでにも数々の暴力事件を引き起こしている。拘束するという意味でも、世間も納得するだろう」

 

 「堂々と冤罪発言か?そろそろここを暴れて飛び出してもいいんだぜ?」

 

 

 指をボキボキと鳴らし、威嚇する。

 

 

 「無駄な抵抗はやめなさい。罪が重なるだけだ」

 

 「まあ、暴れなくても時期に出られるはずだがな」

 

 「どういう意味だ?」

 

 

 余裕の面を見せていると、扉をノックし一人の警官が部屋へと入ってきた。

 耳打ちするように刑事へとことを伝達する。

 

 

 「内容はこうだろう。『これ以上不当な理由で拘束するというのであれば、こちらとしても相応の対応をさせてもらう』といったところか。ハッ、実にあのクソ野郎(おやじ)の考えそうなことだ」

 

 「………………その通りだ」

 

 「さあて、今度はオレのターンだ。昨日アンタに言ったよな?無実が証明された時はオマエを真っ先にぶん殴るってよ」

 

 

 腕をぐるぐると回し、凝り固まった筋肉をほぐす。

 刑事も納得したのか、仁王立ちでその場に立った。

 

 

 「いいだろう。好きにしたまえ」

 

 「北谷刑事!?」

 

 「それじゃあ遠慮なく……………!!」

 

 

 渾身の右ストレートを刑事の頬に当て、激しく体を打ち付ける。

 その場にいた警官は呆然とし、今の状況を理解できずにいた。

 

 

 「あ〜スッキリした!」

 

 

 両腕を上げ、グッと伸びをする。

 

 

 「間違っても、公務執行妨害で逮捕なんてするんじゃねぇぞ?約束は約束だ。アンタも一端の刑事なら守らねぇとな♪」

 

 

 そう笑いながら吐き捨て、部屋を出る。

 長い渡り廊下を歩き証明玄関へと出ると、オレを救った救世主がそこに立っていた。

 

 

 「手続きは済ませた。災難だったな」

 

 「マジで助かったぜ。このままだったらオレは確実に少年院行きだったろうからな」

 

 「腹が空いただろう。何が食べたい?」

 

 「肉。それ以外は却下だ」

 

 「よかろう。いい店を紹介してやろう」

 

 「流石は社長♪」

 

 「学校にも連絡しておいたから、飯を食べたらそのまま送る」

 

 「何から何まで助かるぜ」

 

 

 刑事を殴ったことはあくまで内密。

 いくらこの男といえど警察と一悶着あったとなれば、手を焼くだろうからな。

 

 しかしこの時のオレは気づきもしなかった。

 学校では今、とんでも無い事件が起きているということを。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 みんなと屋上で話した次の日、やはり月島君の姿は教室にはなかった。

 それに花音も。

 先生からは体調を崩したという連絡しかもらえなかったけど、やることは全てやってもらった。

 何が起きてももう頼る人がいない。

 私たちだけで、やるしかないのだ。

 

 昼休み、クラスメイトたちが散らばる中席についたままの杏井くんの前に立つ。

 

 

 「何か用かな?」

 

 

 笑みを浮かべ問う杏井くん。

 

 

 「ええ。少し付き合ってほしいのだけれど」

 

 「わかった。白鷺さんのお願いは断れないからね」

 

 

 彼はそういい立ち上がり、私の後ろをついて歩く。

 そしてバレない程度に紗夜ちゃんに視線を送り作戦決行の合図を出す。

 廊下を歩いている最中も不用意に彼は言葉を発したりはしない。

 私が口を開くまで何もしないつもりなのだろう。

 だとすれば好都合。

 今から行く場所に行けば確実に彼を終わらせることができる。

 

 しばらく歩くと、空き教室へとたどり着く。

 事前に職員室で借りていた鍵を差し込み、ロックを解除する。

 

 

 「どう言う名目で借りたのかな?」

 

 

 彼がそう尋ねるのは理由がある。

 去年までは鍵の管理なんて一切していなかったけど、とある空き教室でイジメが起きた為に規制が厳しくなったのだ。

 

 

 「ドラマの演技の練習で使うためと言ったら喜んで貸してくれたわ」

 

 「今放送しているやつだね。キミは出番も多いし、嘘をついてもバレなさそうだ」

 

 「嘘だとわかっていてついてきたの?」

 

 「ああ。キミが僕に何をするのか楽しみだからね」

 

 

 余裕の表情を浮かべる杏井くん。

 扉をガラッと開け、教室に入る。

 埃が少し被ったこの教室には嫌な思い出がある。

 さっき話したイジメは私がこの教室で行われたもの。

 今思い出すだけでも吐き気がする。

 

 

 「大丈夫かい?顔色が悪いけど」

 

 「気にしないで。それに、もう他に誰もいないわよ?」

 

 「そうかい?じゃあ……………」

 

 

 彼は笑顔を崩し、私だけに見せるハイライトの消えた空っぽの目を向ける。

 

 

 「腹が減った。さっさと要件を言え」

 

 「わかったわ。まず言わせてもらうけど─────あなたの秘密をクラスメイトたちに公表させてもらうわ」

 

 「はあ?」

 

 

 首を傾げ理解できない彼に構わず話を続ける。

 

 

 「およそ5年ほど前。私と別の芸能事務所に所属していたあなたは、あるドラマの撮影後に私に告白してきた。そうよね?」

 

 「また随分昔の話をするんだね。ああ、その通りさ」

 

 「もちろん私は振ったけれどあなたはしつこく付きまとった。たまたまそれを見た同じ事務所の子があることないことを吹聴し、あなたの悪評はあっという間に知れ渡った」

 

 「…………………」

 

 「思えばあのドラマ以降あなたの名前は聞くことがなくなったわね。それも当然よ。世間のニュースでは "少年A" という名で報道されたけれど、あなたはその芸能事務所内で大暴れし多数の重軽傷者を出した()()()なのだから」

 

 

 私の言葉に彼は口を閉ざす。

 肯定、と見ていいだろう。

 

 

 「失明に過剰出血、幾多の骨の骨折に加えて下半身付随。これは全部その時に被害に遭った人たちの負わされた傷よ」

 

 「………………………」

 

 「芸能事務所もボロボロにされた挙句、スタッフや芸能人たちも怪我を負わされた為にその事務所は潰れてしまったわ。一体、あなたにいくらの賠償金が請求されたのかしらね」

 

 「………………どこで調べた」

 

 「匿名希望の被害者さんよ。長く芸能界にいるから顔が広いの」

 

 「そうか。それをバラされたら俺の居場所は無くなっちまうな」

 

 「そうね。あなたは人気者から嫌われ者に大逆転。残り半年の学校生活は陰でひっそり過ごすしかないわね」

 

 「嫌な未来だ」

 

 「自業自得よ。あなたが月島くんに何もしなければ、私もこんなことをしなかった。全てはあなたの責任よ」

 

 「だが、それを話したところで誰が信じる?俺は信頼に溢れた無敵の生徒だ。そうなる為になんだってしてきたんだ!俺の信頼は揺るぎない。あのバカなクラスメイトたちは俺の演技に騙されチヤホヤしてくる。最高の気分だ。やっぱり俺は演技の才能があるらしい。主役を張れるほどの才能がな!!」

 

 

 うちに秘めた想いを全て吐露する杏井くん。

 偽りもない真実は、彼の表情を見ればすぐにわかった。

 

 

 「才能、ねぇ……………」

 

 「あの事件さえなければ俺は今頃『実力派俳優』としてテレビに出続けていただろう。俺が堕ちたのも全部、俺の魅力に気づかなかったお前のせいだ!!」

 

 「ふざけないで。あなたの勝手な考えに付き合えるほど、私はお人好しじゃないわ」

 

 

 自分のことしか考えていない杏井くんに呆れて、冷たく言い放つ。

 

 

 「そこまで知ってるなら俺がわざわざ大阪からここに引っ越した理由もわかるやな?」

 

 「わかるもなにも、誰だって気づくわよ。つまらない復讐でしょう」

 

 「復讐、その通りだ。お前だけは苦しんでもらおうと思っていたんだが、このクラスには邪魔者がいる」

 

 

 邪魔者。きっと、月島くんのことだ。

 

 

 「アイツをまず追放し、お前と一対一になる状況を画策した。だが、好都合だ。お前と接点を持つにはどうやったって警戒される。お前から話を持ちかけてくれて助かったぜ」

 

 「それはどうも」

 

 「今からバラすんだろ?別に構わないぜ?その前にお前をここで殺す寸前まで痛めつけるんだけどな。ハーっハッハッハ!」

 

 

 高笑いする杏井くん。

 私はあくまで冷静な態度を貫く。

 

 

 「この教室に監視カメラはない。廊下にもな。俺たちの話は今、誰にも聞かれてないからアリバイ工作だって簡単にできる。お前は所詮、月島 奏(あのおとこ)がいないと何もできねぇんだよ!!」

 

 「本当に、そうかしら?」

 

 「はあ?」

 

 

 私は黙って3時の方角に指を指す。

 そこには普段先生たちが使う教壇があって、その中央に埃を被った黒い立方体が置いてある。

 そう、彼をここまで連れてくるまで全て私たちが仕組んだことだ。

 

 

 「あれは……………まさか……………!?」

 

 「あそこから、今までの出来事を全てクラスメイトたちは見ているわ。もちろん、音声は拾ってる」

 

 「い、いつのまに……………」

 

 「昨日の放課後、紗夜ちゃんと花音がやってくれたわ」

 

 

 話は昨日の昼休みに遡る。

 どうやって彼を追い詰めるか考えていたところ、私は過去に月島くんに助けられた時の案を持ち出した。

 彼は私が何もできないと油断する。

 あの空き教室なら誰も見ていないと考えるだろうし、廊下、教室に監視カメラはない。

 まさにうってつけの場所だ。

 黒の小さいカメラは紗夜ちゃんが以前風紀委員の時に犯人から取り上げたものを使い、花音はクラスメイトたちにグループラインでこのことを予め伝えていた。

 あの時と同じことをやるのは気が引けたけど、彼の報いを受けさせる為にも、彼の考えたこの作戦を使わせてもらった。

 現にこの映像も携帯越しにみんな見ていることだろう。

 

 月島くんがいない。

 私に度胸がない。

 自分は完璧だ。

 

 その積み重ねで引き起こした現状だ。

 

 

 「信じられないのなら、これで確かめるといいわ」

 

 

 私は携帯を見せ、今まさに私たちが写っている映像を見せる。

 閲覧人数も月島くんを除く全員がしており、唯一見てないのは杏井くんただ一人。

 彼は自ら堕ちたのだ。

 

 

 「なぜあの時私はあなたの告白を断ったと思う?それは魅力がないからよ」

 

 「………………」

 

 「あなたからは決して何も感じられない。実力派俳優になれた?バカにしないでちょうだいあなた程度の実力じゃあ到底不可能よ!」

 

 

 今まで溜めていた感情を吐き出す。

 

 

 「悪いことは言わないわ。月島くんを無実の罪で警察に引き渡したこと、私の悪質の手紙、そして羽丘の女帝さんとのつながり────全て自分の口で吐きなさい」

 

 

 ようやく追い詰めた。

 昔からの因縁、と言っても一方的なものだけれどこれで終わりを迎えたんだ。

 

 

 「……………………ス」

 

 「えっ?」

 

 

 小さく何かを呟いた彼は私の眼前に近づき、頬に向かって拳を振るう。

 大して体は大きくないのにすごい力で、並べてあった机や椅子もろとも体が吹き飛んだ。

 

 

 「痛っ…………!」

 

 

 痛みが全身を駆け巡る。

 立つことすらままならない。

 

 

 「………………………」

 

 

 無言のまま私の前に立つ杏井くん。

 声を荒げることも、叫ぶこともなく、静かな怒りを秘め直立する。

 

 

 「ふふっ、やはり花音は正解だったようね」

 

 

 初めはクラスで暴露するつもりだったけど、優しい花音はそれを拒んだ。

 いくらなんでも、事実を知らない人を巻き込むのは違う、と。

 私が彼と対峙することも望んでなかったようだけど、それは致し方ない。

 そのせいで準備に手間がかかったけれど結果、彼は今こうやって標的(わたし)を目の前にして拳を振るっている。

 

 

 「殺すつもり?いいわよ。一緒に死にましょう」

 

 

 私は物理的に、彼は社会的に殺される。

 まだまだやり残したことがあるけれど、それは将来の話。

 大事なのは今だ。

 

 

 「………………?」

 

 

 突然ガチャリっと金属音が鳴り、彼の手首と両足を拘束具のような物で固定する。

 ずっと教室の外で待機していた紗夜ちゃんの仕業だ。

 

 

 「白鷺さん!大丈夫ですか!?」

 

 

 紗夜ちゃんはそう言い、私に駆け寄る。

 

 

 「大丈夫よ。気にしないで」

 

 「まさか本当に暴れるとは……………すみません、彼が暴れ出す前に捕縛すると言ったのに…………」

 

 「無理もないわよ。殴られた瞬間、私だって何が起きたのか分からなかったのだから」

 

 「すぐ保健室へ連れて行きます。立てますか?」

 

 「ええ。ありがとう」

 

 

 紗夜ちゃんの方を借り、立ち上がるもまだ痛みが全然引いていなくてよろけてしまう。

 下手をしたら、どこか骨が折れているのかも…………。

 これじゃあドラマの撮影は難しそうね。

 

 

 「杏井くん」

 

 

 紗夜ちゃんは睨みつけるように杏井くんを見る。

 

 

 「あなたが良い生徒だと私は本気で信じていました。昔の恨みだとか、そんな理由で人を痛めつけるなんて……………最低です」

 

 

 彼は俯いたまま、紗夜ちゃんは言葉を続ける。

 

 

 「既に先生は呼んであります。もうすぐでここへくるでしょう。大人しくそこで待っていなさい」

 

 

 本当の意味で終わる。

 そう心の中でホッとした時だった。

 

 

 「……………………まだ」

 

 「…………?」

 

 「まだ…………………終わって、ねぇぞ…………?」

 

 「何を言って─────」

 

 

 振り返ると、彼は手首についた錠を力ずくで外し、脚についたものも同様に破壊した。

 

 

 「そんな!?月島くんですら壊せなかったのに…………!」

 

 「お前も……………殺してやるよ」

 

 

 大きく目を見開いた彼は紗夜ちゃんに飛び蹴りし、紗夜ちゃんから離れた私はその場に膝をついた。

 紗夜ちゃんは腹部を抑え動けない。

 追撃を加えんとばかりに、杏井くんは彼女との距離を詰める。

 

 

 「ま、待って!」

 

 

 必死の思いで彼を呼び止める。

 

 

 「紗夜ちゃんは関係ないわ。やるなら──────私をやりなさい!」

 

 

 せめてもの抵抗だった。

 彼は近くの窓ガラスを素手で破り、その破片を私の額に当てる。

 彼は元芸能人。

 顔が一番傷つけられたらダメだとわかっている。

 

 

 {……………私の芸能生活も、終わりね)

 

 

 心でそう嘆き彼の復讐を受けた。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 「奏、ひとつ聞いてもいいか?」

 

 「なんだ?」

 

 「この世で一番、絶対的な力とはなんだと思う?」

 

 

 肉を頬張る俺に投げかけられた唐突の問い。

 考えることもなく即答する。

 

 

 「"情報" だろ?」

 

 「正解だ」

 

 

 親父は嬉しそうに微笑む。

 

 

 「相手を掌握するには必要なことだからな」

 

 「情報は時に人を殺すことだってある。弱み、クセ、過去─────人はいろんなもんを背負ってるから、突かれたら嫌なことだってある」

 

 「見えない刃というべきか。そんなモノ、握られた時点で終わりだろ」

 

 「刃どころか爆弾だな。とある大企業だって、パワハラや超過労働という秘密をバラされ大問題に発展したことがある」

 

 「そうやって世間に暴露し続けて、今の地位に成り上がったのか?」

 

 「人聞の悪いことを言うな。うちはあくまで健全だよ」

 

 「どうだか」

 

 

 そんなクリーンな会社があるなら見てみたいものだな。

 

 

 「いくら腕力があろうと、拳銃(ピストル)で撃たれれば人は死ぬ」

 

 「いくら頭脳があろうと、その知識を応用できなければ意味がねェ」

 

 「ククッ。私たちが合わされば、完璧な人間になれそうだ」

 

 「よせよ。気色悪ぃ」

 

 

 完璧な人間なんてこの世に存在しない。

 どれだけ極めようが人は所詮、煩脳の塊。

 神は自分に似せようとして人を作ったと言うが、限りなく不出来になるようにできているんだからな。

 

 

 「……………おっと、失礼。電話だ」

 

 

 構わず肉を食らっていると、電話をしている親父の顔がこわばった。

 しばらく相手の話を聞き電話を切った後、すぐに立ち上がった。

 

 

 「どうした?」

 

 「緊急事態だ。奏、落ち着いてよく聞いてくれ」

 

 

 ネクタイを締め、とんでもないことを口にする。

 

 

 「白鷺が…………クラスメイトに暴行を受け緊急搬送された」

 

 「………………!?」




千聖さんの運命やいかに!?


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