高嶺の華と路傍の花   作:山本イツキ

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みなさん、ハロハッピー。

ドレミファロンドの追加が決まりましたね。
カーストルームのカバーは来ないかなぁ…………。


あっ、本編は花音さん中心の回となっております。


第4輪 牙をむく荒くれの花

 風紀委員の朝は早い。

 朝の8時から校門に立ち、登校する生徒の服装や髪型、その他諸々のチェックをしなければならない。

 生徒の模範となる風紀委員会は皆、異常はなく生徒会役員と共に朝の挨拶運動を開始する。

 

 ただ1人、オレを除いて─────。

 

 

 「おはようございます、月島くん。時間ギリギリですよ」

 

 「うるっせぇなぁ、間に合ったんだから別にいいじゃねぇか。ふわぁ〜〜、ねむっ…………」

 

 

 大きなあくびをし、涙を袖で拭う。

 氷川を筆頭とした真面目生徒の集団に属するオレは、どこか異質な存在として扱われる。

 見た目からして、明らかにおかしいとは自覚してるから、どう思われようが知った事か。

 

 

 「貴方以外の風紀委員は既に活動に移っています。服装を正してから、合流してください」

 

 「わーったよ…………」

 

 

 気怠げに返事を返し、緩んだネクタイを締め、シャツをズボンに入れる。

 教室に戻ったら、元に戻すか……。

 

 そういえば、ずっと気になっていた事がある。

 この学園の生徒はどこか、髪色が派手な傾向にあるように思う。

 黒は当然として、青、橙、黄、白。もう何でもありだな。

 恐らく、こいつらはハーフの類なんだろう。

 もしも地毛だったら、とある高校生の超能力者がマインドコントロールで操作したに違いない。

 

 

 「おい氷川。お前のその髪、地毛なのか?」

 

 「えぇ、もちろん。それが何か?」

 

 「いや何でもない。気にするな」

 

 「気にするのは私の方です。貴方のその髪、どう見ても染めているでしょう。校則で禁止されているはずですよ?」

 

 「あーはいはい、その内直しまーす」

 

 「ちょっと!ちゃんと話を─────」

 

 「じゃっ、今日は顔出したから先あがるぜ。おつかれさ〜ん」

 

 「ま、待ちなさい!月島くん!!」

 

 

 呼び止める氷川を振り切り、教室までの階段を逃げるように駆け上がる。

 日々の鍛錬…………という名の喧嘩のおかげで、教室までの道のりは決して苦ではなく、息切れひとつ起こさず到着する。

 

 あぁ、体を動かすというのは、なんと素晴らしいことか。

 そうひしひしと感じるオレの背後を見ると、驚きの表情を浮かべる奴の姿があった。

 

 

 「あらっ、おはよう、月島くん。最近は遅刻しないのね。感心だわ」

 

 「………………最高の朝が台無しだ」

 

 「ふふふっ、それは私のセリフよ?朝から貴方みたいな()()と遭遇するなんて、こっちの身にもなって欲しいわね」

 

 「なら関わってくるんじゃねぇ。いい加減にしねぇと、風紀委員の権限でお前を血祭りにあげるぞ」

 

 「何度も言うけれど、私に脅迫しても無駄よ。それに、もしそのようなことをするならば、私の権限で貴方の存在を無かったことにするのも可能よ?」

 

 「……………おもしれぇ。地獄で後悔しろよ!くたばりやが─────!!」

 

 「ふ、二人とも、喧嘩はダメだよーっ!!」

 

 

 右腕を振り上げた瞬間、オレとこいつの間に入り仲裁を図ったのは誰であろう、松原だった。

 目をギュッと瞑り、ビクビクと震えるその姿はまるで生まれたての小鹿のようだ。

 

 

 「おいっ!!オレは今こいつと───」

 

 「それでも手を出しちゃダメッ!千聖ちゃんも、あんまり人をからかったらダメだよ!」

 

 「ごめんなさい、花音。貴方まで巻き込む気はなかったのだけど…………」

 

 「私は大丈夫だよ。2人が仲直りしてくれるならね」

 

 

 松原は安心した表情を浮かべる。

 すると奴は、冷めたパープル・アイでオレをチラッと見た後、深いため息をついた。

 やっぱこいつ、とことんオレをおちょくってやがる。こう言うタイプは、力の差を見せつけるのが一番だ。

 全身から殺意のオーラを発し、威嚇する。

 第二ラウンドを始めようとしても、松原はオレの前から退こうとしない。

 無理やりにでも退かすことはできるが、オレの友達第一号を傷つけるわけにはいかない。

 

 しかし、松原は何故こんな女を庇うのか?

 奴を名前呼びする辺り、仲がいいのは間違いないはずだ。

 それを差し置いても、こんなお高く止まった奴に友達がいるなんて信じ難い。

 実際、奴は1人でいることが多く、自分から誰かと関わろうとはしない。

 

 こいつは、孤高の女王様。悪く言えば、孤独(ぼっち)

 奴の表現方法なんて、いくらでも思いつく。それほど憎い相手なのだ。

 

 

 「……………わーったよ。殴らねぇから早く席につけよ。担任に見られたら面倒だろ?」

 

 「う、うん!落ち着いたならよかったかな」

 

 「ふふふっ、命拾いしたわね」

 

 「こっちのセリフだ、ボケッ。いつか必ず、お前の顔面に右ストレートをぶちかます」

 

 「そのいつかが、くるといいわね♪」

 

 

 不敵な笑みを浮かべ、奴は自分の席についた。オレも、松原に宥められる形で無理矢理席につく。

 

 

 「おいっ、なんでお前はあいつのことを庇うんだ。友達だからか?」

 

 「そ、それは…………」

 

 

 口を開かない松原にも苛立ちを感じる。

 オレは奴に何かをしたわけでもない。むしろ、関わらないように避けているはずなんだが、毎度毎度オレの前に現れやがる。

 

 例えオレが女だったとしても、こんな奴とは仲良くしようとは思わない。

 他のクラスメイトも、誰も奴に近づこうともしない。高嶺の女王。人を見下す人間には誰も心を開かない。

 

 その点において、松原は謎の多い女だ。

 オレのような不良生徒も、奴のような歪んだ性格の持ち主でも、平等に接しようとする。

 そのせいか、オレも奴も松原のことを嫌いになれない。決して目立つような人柄じゃないはずなのに………不思議な奴だ。

 

 

 「おい松原」

 

 「ど、どうしたの?」

 

 「昼休みに屋上で待っている。奴の話を聞かせてもらうぞ」

 

 「う、うんっ。わかった」

 

 

 そう松原に告げ、オレは机に突っ伏し遅れながらの二度寝を堪能することにした。

 昼休みまで後4時間。それまで決して起こすんじゃないぞ。

 

 それでは、また後で会おう。

 

 おやすみ──────。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 本日四度目の授業を終えるチャイムが鳴り、オレたちは昼休みを迎える。

 この時間の利用方法は千差万別だ。

 学食・教室で昼食を取る生徒、部活の昼練に参加する部員、委員会等で先生にこき使われるパシリ。

 

 オレはそれらのどれにも属さず、学校で一番高い場所で横になり、ただボーッと雲を眺めている。

 ここは、オレのサボりスポット。危険だからと言って、近づく奴はいないから先生が探しに来ても見つかることは決してない。

 

 そして今日、この場所に高校生活初の友人を招き入れようとしている。

 オレのおもてなしの心を全開に、盛大に迎え入れるとしよう。

 

 

 「月島くーーん!松原ですーー!」

 

 

 早速、オレを呼ぶ声が聞こえる。

 長い水色の髪をふわりとなびかせ、おどおどとオレを探す様子は、まるで群れから逸れた小動物のように見えた。

 

 

 「上だ、松原!」

 

 

 少し距離のある松原に対し、声を張って自分の居場所を知らせる。

 案の定奴は、オレの姿を見るなり、降りるように諭してきた。

 

 

 「ふぇっ!?そ、そんなところにいたら危ないよ!?」

 

 「安心しろ、落ちはしねぇよ!そこに梯子があるから登ってきてくれ!」

 

 「う、うんっ…………わかった!すぐ行くから待っててね!」

 

 

 松原はそう言うと、手に持っていた水色の小さい手提げ袋を手首に引っ掛け、屋上の入り口付近にある長い梯子をよじ登る。

 女だから登るのに一苦労するかと思いきや、こいつは息切れひとつ起こすこともなければ、平然な顔をしてオレの元へたどり着いた。

 そして、寝転がるオレの横に立ち、街を一望できるここの景色に感動の声をあげる。

 

 

 「すごく綺麗だね!ずっとずっと、遠くまで見えるよ!」

 

 「今日は晴れているからだな。お前はついてる。夜は、これと比べ物にならないぐらい綺麗だぞ」

 

 「えっ!?夜の学校に忍び込んだの!?」

 

 「ちげぇよ。去年の文化祭の準備で、大半のクラスメイトが徹夜してたのを利用しただけだ」

 

 「要するに、サボってたんだね…………」

 

 「まぁこの話はどうでもいい。そんなことより、松原、あの梯子を登るのは大変じゃなかったか?」

 

 「えっ、全然なんともなかったよ………?」

 

 

 純粋な目で不思議そうにこっちを見つめる松原の反応を察するに、自覚していないらしい。

 見た目からは全く想像できない腕の筋肉、ブレない体幹の強さ、そしてスタミナ。

 こいつは、現在進行形の運動部員か元部員。もしくは校外のクラブチームに所属している可能性もある。

 

 松原の謎は、深まるばかりだ…………。

 

 

 「何かスポーツでもやってるのか?この梯子、女なら登るのは困難だと思うんだが」

 

 「スポーツはやってないよ。部活も茶道部だから…………。あ、でもドラムはよく叩いてるよ。あまり上手くないけど……………」

 

 「なるほど、ドラムか…………はっ?ドラム!?」

 

 

 松原からの衝撃の発言に面をくらう。

 この華奢な体でままなるのか?全く想像がつかないどころか、真実かどうか疑ってしまう。

 某有名ドラマーの姿を連想しても、松原からはあの熱のこもった音は一切聞こえてこない。オレの妄想の中ではなんか、バタバタしてやがる…………。

 

 

 「意外、だったかな…………?」

 

 「意外すぎるわ!?だってドラムだぞ!?YOSHI───(ピー)とか山田○矢みたいな、ロックな奴らが蔓延る中で松原が…………。意外性からしたら、話題沸騰間違いなしだな」

 

 「あはは………。今はまだバンドのメンバーを集めてる途中だけど、いつか月島くんに聞いてほしいなぁ」

 

 「その時が来たら、な。……………腹減ったし、飯でも食うか」

 

 「うんっ!」

 

 

 オレは側に置いてあったビニール袋からコロッケパンを取り出し、一口かじる。売店で適当に選んだものだが、結構美味いな。

 前に選んだ激辛カレーパンは、まるでカレーに喧嘩を売られているかのような酷い味だった。

 しかし、あのカレーパンはこの学園でも人気に分類されるメニューらしく、リピーターも多いと聞く。

 あれを食べ続けたら舌がバカになるだろうに。お嬢様学校が聞いて呆れる。

 

 オレの隣に座った松原は、手首に引っ掛けていた青の小さな手提げ袋から、これまた小さな二段の弁当箱を取り出し食べ始めた。

 中も、女らしさ満載のメニューが詰め込まれていた。

 

 

 「お前、普段は学食じゃないのか?」

 

 「食堂には一度だけ行ったことがあるけど、人が多くてもう行ってないかな…………」

 

 「確かに、あれじゃあ落ち着いて飯も食えないだろうな」

 

 「月島くんはいつもここで食べてるの?」

 

 「あぁ、オレは嫌われの身だからな。一人で、この特等席で楽しく食ってるよ。そう言うお前も、いつもは奴と一緒なんだろ?」

 

 「奴?えっと、千聖ちゃんのことだよね…………?いつもじゃないけど、一緒に食べてることが多いかなぁ」

 

 「やっぱりそうか」

 

 「う、うん。でも最近、千聖ちゃんはすごく忙しいみたいなんだ…………。今度、アイドルバンドも兼任することになったらしくて…………」

 

 「女優、そしてアイドルか。芸能人ともなると、それだけの仕事をこなさないといけないんだな。全く、ご苦労なことだ」

 

 

 オレはここで言葉を区切り、残ったパンを全て腹に収める。

 再度ビニール袋から、自販機で購入した紙パックのヨーグルト飲料を取り出し、一気に飲み干す。

 

 これでオレの昼飯は終わり。身体も頭も大して動かしてないから、腹はほとんど空かない。

 おふくろから渡される、1日の昼食費用500円を有効活用するには、これが一番ベストだ。 

 釣り銭は返さず、将来買うバイクのためにオレの手元に置いておく。

 これを一年続けて、たまった金はざっと5万円。道のりはまだまだ遠い…………。

 

 

 「ちなみになんだが、二人はどんな話をするんだ?」

 

 「え、えっと………千聖ちゃんのお仕事の話とか、美味しいお茶の話とか、()()()()()()()()()かな?」

 

 「その学校の話についてだが、奴はオレのことについて、何か話していなかったか?」

 

 

 オレが松原を呼んだ1番の理由は、これを聞き出すためだ。

 クラスで一番仲のいいこいつになら、奴は必ずオレへの愚痴を零すと確信していた。

  

 奴がオレに高圧的な態度を取る理由をどうしても知りたい。気に入らないところがあれば治すし、顔面が嫌なら整形だってやってやる。

 とにかく、あの女王様と今後一切関わることのない学校生活を送りたいんだ。

 

 松原はオレの質問に対して、目を瞑り深く考えるそぶりを見せる。

 

 

 「月島くんについて…………?」

 

 「何かあるはずだろ?逆に、松原から奴に聞き出したことでもいい。なんでも教えてくれ」

 

 

 松原は更に眉間にシワを寄せ、腕を組む。

 過去を遡り、遡った結果思い出した記憶は─────。

 

 

 「そういえば、高校一年生のとき…………。千聖ちゃんに聞いたことがあったんだった!『なんであの怖い人を挑発するような言い方をするの?』って…………」

 

 「それで、奴はなんと答えた?」

 

 「たった一言だけ、『彼の無鉄砲さがとてつもなく気に入らない』とだけ言ってくれたんだ…………。その時の千聖ちゃんの顔、今まで見たことのないぐらい怖かったなぁ…………」

 

 

 松原の "あの怖い人" と言う表現は置いといて、奴がオレを嫌う一端が見えた。

 無鉄砲────つまり、後先考えずに本能の赴くままに動くオレの身勝手さを疎ましく思っているんだろう。

 

 理解はできる。

 芸能界の住人として、将来のことを常に考え今を生きるリアリストにとって、オレの考えが理解できない上に認めたくないはずだ。

 

 

 レールの敷かれた人生なんて何が楽しい?

 

 

 先のことばかり考え、無駄に苦しむのはどこの誰だ?

 

 

 奴の考えが全て間違っているとは言わない。だが、オレの考えを否定される筋合いはない。

 

 この世は自由だ。

 己の人生を満喫し、楽しんだ者こそが真に正しいと言える。

 オレはそんな人間でありたいと心の底から願う。

 

 

 「…………奴のことが少し分かった気がする。恩にきるぜ、松原」

 

 「う、うんっ!月島くんの役に立てたなら私も嬉しいよ!」

 

 

 松原が満面の浮かべ返事をしたと同時に、昼休み終了まであと5分を告げるチャイムが鳴り響く。

 オレからしたら、このままサボるのも悪くないが、休みすぎておふくろにバレるのも面倒くさい。

 

 次の授業は、確か現代社会。

 はぁ、仕方ない、教室に戻るか………」

 

 

 「それじゃあ行くぞ、まつ────」

 

 「あ、あのっ!もしよかったら…………その…………」

 

 

 オレの言葉を遮り、松原はいつも以上に大きな声を出し、モジモジと焦ったい態度を取る。

 

 

 「…………何だよ。早くいかないと遅刻するぞ」

 

 「わ、わたしと…………連絡先、交換…………してくれませんか…………?」

 

 

 松原の言っていることと考えてることがわからず、首を傾げる。

 それを察したのか、言葉を続けた。

 

 

 「その………携帯ならいつでもはなせるし、月島くんが良ければ……………わたしの相談にものって欲しい……………です」

 

 「…………よく分からんが、オレは構わんぞ」

 

 「ほ、ホントにっ!?ありがとう!!」

 

 「ただし、風紀委員長の氷川にだけは黙っていてくれ。『学校で携帯電話を触るなんて許せません』なんて言われかねないからな」

 

 「あはは………紗夜ちゃんの尻に敷かれてるんだね」

 

 「怒らせたら面倒なだけだ。ほらよ、QRコードだ」

 

 「…………うんっ、読み取ったよ!今からメッセージ送るから、追加しておいてね!」

 

 

 松原は、オレから携帯に目線を移し文字を打つ。

 数十秒後に着信が鳴り、携帯を開しメッセージの内容を見る。

 

 

 『月島くんと二人きりで話せて楽しかったよ!また誘ってくれたら嬉しいな♪』

 

 

 送られたメッセージには、感謝を告げる言葉が綴られ、ニコリと笑うスタンプが添えられていた。

 

 

 『………オレも楽しかったぞ。またそのうちにな』

 

 

 そう返信を返し、オレたちは大急ぎで教室へと戻る。

 

 この時オレの携帯に初めて、同級生の女の連絡先が追加された。




ドラマーのあの人を○で表そうとしたら、よしおさんになったのでピー音にしました笑
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