本当にごめんなさい!!!
長らく放置された二人の恋路の結末、どうぞご覧ください。
こちら、千聖さんになります。花音さんのもぜひどうぞ!
大学受験を間近に控え教室の空気は少し張り詰めている。
不安がないというわけではないが、そこまで悲観してもいない。
受かればよし、落ちればまた来年受け直せばいい。
そのスタンスでオレは現在の学園生活を謳歌しているのだ。
「次の授業なんだっけか」
「英語表現、だったかしら?」
「うん。確か、小テストがあったはずだよ」
「サボりたくてもサボれねぇな」
「許すわけがありません」
オレの机に群がる三人の女。
今思えばオレの学園生活はコイツらと歩んできたと言っても過言ではない。
松原は路地裏で不良たちに絡まれてるところで出会い、この学園での初めての友達になってくれた。
白鷺は入学してからずっとウザ絡みしてくるクソみたいな女だったが、今となってはマネージャーを務めるほどの仲にある。
氷川は仕事上のパートナー。学園長からの無理難題にも共に解決に導いた戦友のような存在だ。
そのうちの二人、中学からの付き合いでもある松原と白鷺は運命の悪戯か、同じ相手を好きになった。
オレとしても二人の恋路を応援したいところだが、その相手というのがオレ。正直なところ本当に参っている。
俺がこの先誰かと付き合うとしたら間違いなくこの二人のどちらかになるんだろうが、未だ決めかねている。
卒業するまでにはどちらかの気持ちに答える。
とりあえず今はそのことしか頭にない。
始業のチャイムが鳴りそれぞれが席につき先生が入室すると、早速と言わんばかり英語の小テストが始まった。
内容は簡単な英単語。
さっさと終わらせて眠りにつこうと、スラスラと解き始める。
Unrequited、片思い
Passion、恋情
Fate、運命
Trust、信頼…………っておいっ!!
なんなんだこのテストは!
今のオレの煩悩を映し出すかのような内容じゃねぇか!
ふざけやがって。こんな問題、サッと書いてすぐに裏を向け机に突っ伏す。
なぜオレは恋愛に対してここまでひよってるのかオレ自身わからん。
今のままの関係がそれほど大事なのか?
二人の気持ちはどうなんだ?
氷川と話して吹っ切れたとはいえそんなことが脳裏にチラつく。
(恋愛って、難しいんだな………)
形の見えない敵ってのはこうも恐ろしいものなのか。
得意の蹴りや殴打もできやしない。
オレにとって恋愛はテストなんかより難題な問いなのかもしれないな。
◆◆◆
私は、月島くんのことが好き。
何度も口にしてきたことだけど、それはどれだけ時間が経とうと変わることはない。
願わくば今すぐにでも彼の恋人になりたい。
そんな妄想を繰り返すけれど今のこの平和な日常が壊れることを恐れている自分もいる。
もしかしたらこのままの関係の方がいいのではないか?
そんなことが頭をよぎるのだ。
「はぁ………ほんと、どうしたらいいのかしら」
独り部屋の天井を見ながらため息と共に吐きだす。
花音もそんなことを考えているのかしら。
少なくとも今は彼のこと以外全く頭にない。
ドラマの撮影でもよくセリフを飛ばすことがあるし、集中していないと監督から注意されることもある。
原因はわかっている。
今の私に必要なもの、それはきっと。
「…………覚悟を決める必要があるわね」
体を起き上がらせ、グッと握った拳を胸に当てフゥっと息を吐く。
そして携帯の電源を入れ電話をかけた。
3コールもしないうちに彼女は電話に出る。
『もしもし?』
「夜遅くにごめんなさい。花音」
『ううん、大丈夫だよ』
気にしないで、と言葉を続ける花音に自らの想いをぶつける。
「明日、月島くんに告白しようと思ってるの」
『えっ………?』
戸惑った様子の花音。彼女も彼女なりにタイミングを見計らっているだろうけど、私は限界を迎えていた。
好きという気持ちが溢れて収まらない。
ふとした瞬間も彼のことを考えるし、ほんの些細なことでもときめくことがあるほどに。
「二人で彼を取り合おうと決意したあの日からちょうど三ヶ月。随分と時間が経ったわね」
『うん。そうだね………』
「もう、我慢できないの……!!」
花音には本当に申し訳ないと思ってる。
けれど、それ以上に彼に対する気持ちが抑えられない。
好き、好き、大好き。
何度だって言える。彼への愛の言葉。
今すぐにでも家を出て伝えたい。
私の決意はどんな鉱石よりも硬い。
「………ごめんなさい」
謝罪の一言を入れ、深呼吸し冷静になったところで話を続ける。
「この三ヶ月で私は何度も彼にアプローチしたわ。正直、手応えも感じてる。残り少ない高校生活だけど、私は月島くんと恋人関係となって最後を過ごしたいの」
『千聖ちゃん………』
「これは私の
考えようによっては脅しとも取れる最低な発言。どれほど蔑まれようともかまわない。
それ以上に、彼への愛が強いのだから。
『私も………奏くんが好き、大好き。今すぐにでも、この気持ちを伝えたいって思う』
どうやら花音の意思も硬いようね。
これで心配することも、遠慮する必要もない。
「ふふっ、決まりね。明日、全ての決着をつけましょう」
『緊張、するね………』
「あらっ、それだと月島くんは振り向いてくれないわよ?」
『ち、千聖ちゃん!!』
花音を少し揶揄い場を和ませる。
「…………負けないわよ。花音!」
『こちらこそ!』
宣戦布告をしたところで電話を切り携帯を抱きながら背中をベッドに預けた。
たった十数分の会話だったけど少しばかり疲労感が込み上げる。
「はぁ………彼になんて告白したらいいのかしら………」
その言葉が頭の中をぐるぐると駆け回る。
素直な気持ちを伝えればいいと思うのだけれどそれだとありきたりだ。
私らしくて彼に一番伝わりやすい言葉。それがなんなのかわからない。
明日が本番だというのにどうしようもないわね………。
そんなことを考えていたら一睡もできず朝を迎えてしまった。
体は重く感じベッドから起き上がることが辛い。できるならこのままもう少し考えていたいけれど、時間は刻一刻と迫っている。
いつも以上に気合を入れて部屋から出て支度を済ませて家を出た。
空を見上げれば雲ひとつない晴天でこの季節にはふさわしくない気温が覆う。季節はすでに冬に差し掛かってるというのにこれも地球温暖化の影響かしら?
いずれにせよ睡眠を取れなかった私にすれば最悪の環境だと言わざるを得ない。
眠い目を擦りながら学校の門を潜る。
「よぉ。白鷺」
軽く手を上げ挨拶を交わす月島くん。彼の顔を見て眠気はすぐに吹っ飛んだ。
「ええ。おはよう」
何気ない様子で挨拶を返す。隣には紗夜ちゃんもいて生徒会の活動なんだろうとすぐに察した。
「朝早いのにちゃんと仕事ができて偉いわね」
「まあ、朝っぱらからコイツにモーニングコールされるわ、家まで向かいにこられるわで無理矢理な」
「今回は従順で助かりました。最悪の場合は武力行使も考えていたので」
「オマエが?オレに勝てるとでも?」
「ええ。今からやってみますか?」
紗夜ちゃんは表情を変えることなくどこからか取り出した手錠の金具をチラつかせ、殺気立つ月島くんを静める。
「………仕方ねぇ。それだけは勘弁だからな」
「なら諦めてください」
「へーへー」
二人の絡みも随分と見慣れた。最初は私同様険悪なようだったけれど今となっては名コンビだ。
さながら長年行動を共にしてきた刑事たちのよう。これも一つの証、というのかしら?
恋愛ではなく友情に近い関係。
そういう意味では紗夜ちゃんの他に並ぶものはいないわね。
「あっ、そうだわ。月島くん。今日は放課後予定はあるのかしら?」
「強いていうなら屋上でのんびり昼寝するつもりだが」
「もしよかったら放課後教室に残っていて欲しいの」
「なんで」
「あなたに告白するからよ」
淡々と話したその言葉が周りの空気を凍り付かせる。
「何かしら?」
「いや、何かしらじゃなくてだな………」
「とにかくそういうことだから。忘れちゃダメよ」
ヒラヒラと手を振り背中を向けた私を指差し、風紀委員の子たちから質問攻めされる彼を置いてこの場を去る。
少し強引ではあったけれど約束は取り付けれた。あとはもう私の想いを伝えるだけ。
けれどその言葉だけが未だに思いつかないでいる。
「あらっ、おはよう。花音」
靴を履き替えていると花音が姿を現した。
「おはよう。千聖ちゃん」
いつも通りといった様子で挨拶を交わす花音。そのまま二人並んで教室へと向かう。
「月島くんには伝えたわ。今日の放課後、全ての決着がつく」
「そう、だね………」
浮かない様子の花音は俯き口をつぐむ。
「負けないわよ」
牽制するような言葉を投げかけ私は足早に教室へと入る。これは戒め。
親友であると同時に恋敵でもある花音と今日だけ、少なくとも決着がつくまで仲良くするのは違う。私はそう思った。
ごめんなさい、と心の中で謝りながら腰を下ろしその時を待つ。
◆◆◆
放課後。いよいよその時は訪れた。
わらわらと群がっていた教室内はしばらく経つと私たちだけになり、全員がいなくなったのを確認すると二人で奏くんの前に立った。
「月島くん。覚悟はできたかしら?」
その言葉に月島くんは腕を組み、俯きながら無言で頷いた。彼も答えを見出したようだ。
「まずは、こんなことになって本当にごめんなさい」
「気にするな。オレも遅かれ早かれ決めるべきだとは思っていたからな」
もう後戻りはできない。
この先の未来を捻じ曲げることも、この先訪れるであろうどのような結末だろうと。
「私は屋上で」
「私は教室で」
『あなたを待ちます』
それぞれの思い出の場所。
私は文化祭の時に二人で話した屋上で。
花音は静かな空間で和やかに二人で過ごした茶道室で告白することを決めた。
ここから先は神のみぞ知る。
それぞれの運命は神に委ねられた。
「それじゃあ、私たちは行くから」
「奏くんの好きだと思う方に来てください」
二人で教室を後にし公言した場所へと向かう。
なぜだかわからないけど、互いの顔を見合ってしまってはいけないと思い決して振り向くことなく足を進める。
普段何の考えもなく通る階段だけど今日はいつもと違く感じた。
まるで、これまでの私の人生を振り返るような………そう、私の始まりは暗いどん底からだ。
父親はサラリーマン。母親も元OLで芸能界とは全く関わりのない状態からスタートした白鷺千聖の芸能生活は、コネや頼る人物さえおらず独りで歩み始めることになった。
親の絶大な期待に反する周囲の嘲笑が非常に辛かったのをよく覚えている。わかっている、私は才能がない。
努力に努力を積み重ね、芸能人となって早十数年。失敗や挫折を幾度となく味わってきたけれど今の私はアイドル兼女優。唯一無二とも言える立ち位置を獲得した。
そんな私でも努力だけでは手に入れられないものをこの3年で知ることになった。初恋の男の子。月島奏くんの存在だ。
将来に何の希望もなくその日をのうのうと生きている彼に対して、最初は心の底から嫌悪していたのだけれど度重なる関わりを経て今は恋心を抱いている。
現実主義者の私が聞いて呆れる。
月島くんと関わっていてはいずれ自分の身を滅ぼす危険があると言うことも重々承知済み。それでも尚、この数年味わった刺激的な毎日は冷め切った私の感情を昂らせてくれた。
これからも彼と共に。今はただその願いが強い。
「…………さて」
長い階段を渡り歩き屋上へと辿り着く。
この扉はいわば、これからの人生への幕を開ける未来の扉。
もう引き返すことなんて許されない。なんの躊躇いも戸惑いもなくドアノブに手をかけガチャリと開く。
「やっぱりここはいいわね」
普段は危険だからと言う理由で立ち入り禁止の屋上。月島くんが勝手に解放したことにより極数人しか知らない花咲川高校の静かなスポットの一つとなった。
図書室もその一つに入るのだけどあそこは人が多くて居心地はあまり良くない。誰もいない屋上だからこそ、より一層魅力に感じる。
「いつ、来るのかしら………」
そう溢しフェンスに背中を預ける。
視線を背に向ければグラウンドで部活動に励む生徒たちを一望することができ青春を謳歌する学生たちにフッと小さく笑い視線を戻す。
部活、部活動か………。
帰宅部の私からすれば非日常的な生活の一つ。多忙であるからずっと何もせずにいたけれど大学では何かのサークルに入るのも悪くなさそうね。
ガチャリッ。
「…………!?」
誰も来るはずのない屋上に聞こえるドアの開閉音。それだけで誰が来たのか顔を見ずともすぐにわかる。
「よぉ。待たせたな」
「ふふっ。待ってたわ」
軽く手を振り立ち上がると、表情を一切変えることなく月島くんはこちらに近づく。
「寒くないか?」
「ええ。大丈夫」
今日は冬の季節に見合わずポカポカと陽の光が暖かい日を迎えていた。
雪が積もった様子もなく、部屋に篭るなんて勿体無いほど。
「それで、覚悟は決めたのかしら?」
「まあ、な。………なあ─────」
「待って」
手のひらを前に出し彼の言葉を遮る。
「ここは嫌。上へ行きましょう」
私が指を指すところ。よくみんなでお昼ご飯を食べた懐かしの場所へ向かい足を進める。
少し錆びついた梯子を一段一段ゆっくりと登り、花咲川の街を一望する。
雲ひとつない快晴の空の下、先ほどとは比べ物にならない景色が目に映った。綺麗、と呟きながら辺りを見渡す。
「今日は晴れてよかったな」
軽快に登り切った彼はポケットに手を入れたまま私の隣に立つ。
「最近は雪が多かったものね」
ヒューっと吹く風で髪が靡く。
唐突に吹いたその風で月島くんは身を震わせる。
「やはり冬は好かん」
「どうして?」
「寒いのが嫌いだからな。路面が凍結してバイクだと事故りやすいのもあるけどな」
「車には乗りたいと思わないの?」
「バイクにはバイクだけにしかない魅力があんだよ」
「うふふっ、かっこいいこと言うのね」
「忘れろ。恥ずかしい」
鼻を啜り照れた様子を見せる月島くんを見て笑みを浮かべる。今の私にはその魅力はわからないけれど、いずれ共有できたらいいわね。
女番長が主役のドラマがあればきっとバイクに乗れるだろうから受験が終わったタイミングで教習所にでも通ってみようかしら。
「……………」
「……………」
二人揃って口を閉ざす。
「………どうだった?この3年間は」
思い出を振り返る形で彼が話を振る。
「すごく楽しかったわ。仕事も、プライベートも」
「そうか」
「月島くんは?」
「楽しかったぜ。後半は特にな」
「まさかあなたとこんな関係になるなんて想像もしていなかったわね」
「ああ。同感だ」
「覚えてるかしら。去年の秋、ここであなたと話したことを」
懐かしむような様子で告げる。
「文化祭の時だったか。今思えば、あれがオマエとまともに会話した初めての機会だったかもな」
「ええ。あのときは本当に辛い思いをしたわ」
あれは仕事が忙しかった時期。
学校に出席することが少なくなり文化祭で主演をするというのだから一部のクラスメイトたちから酷い嫌がらせを受けていた。暴言を吐かれ、あまつさえ暴力も振るわれた。
今となってはただの思い出話である出来事も当時の私からしたらすごく辛くて苦しんだけれど、それを救ってくれたのが私の隣に佇む彼。
恩人にして最愛の人。今思えば、この頃からだったかしら………私が彼に好意を抱き始めたのは。
「良くも悪くも、あれが分岐点だったのかもしれないな」
「どうしてあの時、私を見捨てなかったの?」
今だからこそ聞ける話。それを思い切って彼にぶつけてみる。
「ん?ああ」
俯きながら後頭部を掻き照れくさそうに頬を赤く染める月島くん。
「友達を大切にする奴に悪い奴はいない。だからこそ助けたくなった、っていったらいいのか………」
「え?」
あれほど嫌悪していた私を、どうして?
そんな疑問が溢れ出る。
「と、とにかく!見捨てるなんて選択肢はオレにはなかったんだよ!言わすなっ!!」
そっぽを向き照れながら怒る月島くんを横目につい頬が緩む。
そっか、そんなこと思ってくれてたんだ………。
時間が流れ、当時の心境を話しているとあの時に挫けることなく耐え切った自分を褒めてあげたい。
決して無駄ではなかった。彼の言葉が今こうして私の心は満たされているのだから。
「それで、本題にはいつ入るのかしら?」
「テメェがあそこじゃ嫌だっつったからここにきたんだろうが!」
「そうだったわね。うふふ♪」
月島くんを揶揄いつつ話を戻し向き合い直す。
「それじゃあ、あなたの気持ちを聞かせて」
ドキドキと鳴り響く鼓動をグッと抑え込み、平常心を保つ。
「…………正直、悩んだ」
「?」
「二人の気持ちは痛いほど伝わってる。だからこそ、オレの言葉ひとつがどれほど重いのか自覚してるつもりだ。もう、保留にするつもりはない。答えは決めた」
私は表情を変えることなく、その言葉を待つ。
「────すまん」
「えっ?」
「白鷺。オマエの気持ちに応えることはできない」
「……………」
頭を下げ申し訳なさそうな声を出す月島くん。その言葉を受け、頭が真っ白になる。
「…………そう」
かろうじて、短く吐く。
「顔をあげて。月島くん」
肩に手をそっと置きそう投げかける。
「白鷺………」
「あなたが謝ることなんて何ひとつないわ。それがあなたの気持ち。その結論を私はずっと望んでいたのだから」
毅然と。そして笑顔すら浮かべて口を開き続ける。
ダメだ………まだ、その時じゃない………。
「一つ。一つだけ、私のお願いを聞いてくれるかしら」
「ああ」
「一度だけ、私のことを
それは私がずっと望んでいたこと。
他人行儀ではなく、本当の友人である証を記すために。
「おやすいごようだ」
咳払いし、私の目を見て口を開く。
「3年間、世話になったな────千聖」
「…………私の方こそ。ありがとう、奏」
その言葉に笑顔で返す。
月島くんが屋上に来てから30分ほどが経った。きっと花音が待ちくたびれているはず。
「ほらっ、私のことはもういいから早く花音のところへ行きなさい。間違っても寄り道するんじゃないわよ?」
「当たり前だ」
彼はそう言い残し、梯子を伝うことなく颯爽と飛び降り扉の方へ向かう。
彼は私を見上げ手を軽く振って別れの挨拶を交わすと花音の元へ走って向かった。
「……………」
月島くんが見えなくなるまでその姿勢を貫く。
そして─────
「……………っ」
身体から力が抜け、その場に背中をつけ横になる。
「……………はぁ」
腕で目元を覆い隠す。
「仕方ないわ。これが運命なのよ」
自分にそう言い聞かせ天を仰ぐ。
雲ひとつない快晴の空。微かに聞こえる部活動に励む生徒たちの声。
また私は一人になった。今は誰も私を見ていない。
「……………あーあ」
「失恋………しちゃったわね…………」
突きつけられた、いや、待っていた現実。必然の運命。
これはドラマなどではない、ノンフィクションの物語。決してこの結末を書き換えることなどできはしない。
「本当っ、残念だわ………」
ただ、その一言に尽きる。けれど後悔はしていない。私にできることは全てしたし想いも伝わった。
それだけで十分満足。悔いなんて、あろうはずが─────
「……………ねぇ、奏。私の分も、花音と幸せになって、ね…………」
ずっと溜め込んでいた雫が眼から流れ出る。
私は、
いかがだったでしょうか?
結果は………まあ言わずもがな、という感じでしょうか。最後の最後まで執筆者自身非常に悩みました。
千聖さん同様決して後悔などありません。
同時投稿した花音さん編もどうぞご覧ください。
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