2話連続、同時刻に投稿という初の試みになりますがどうぞ最後までご覧ください!
オレの楽しい学園生活も残りわずか。
数ヶ月もすればオレたちはバラバラの大学に進むことになるまできていた。
なんだかんだ、別れを感じると辛くなるもんだ。
今はただ、コイツらと何気ない日常を味わいてェ。
「次の英語、サボるから…………氷川、メモ頼んだ」
机に突っ伏し、ノートを氷川へと渡そうとするが手で払われる。
「自分でやってください。次欠席するようなことがあればまた首輪で繋ぎますからね」
「まだ持ってるのかよ」
「当然です」
生憎、オレと氷川は同じ大学を志望している。
高校よりは自由になるとはいえ、またこの女に縛られるのは勘弁してほしい。
「小テストもあるのだけれど、ちゃんと勉強はしてるのかしら?」
「
「信じられないわね」
「でも、成績はすごくいいんだよね。奏くんって」
「本気出したらこんなもんだ」
オレの机に群がった女たちにピースサインをする。
学力において流石に氷川には敵わないが、松原とはいい勝負をしているだろう。
特に白鷺なんて、芸能活動に勤しみすぎたせいで出席日数が足りず留年する危険性があるくらいだからな。
「言っておくけど、あなたに心配されるほど私、バカじゃないのよ?それに、これまでのことを考えて卒業が危ういのは月島くんの方じゃないかしら?」
「ほざけっ。他人の過去を掘り返す暇があったら足りない学力分内申点でも稼いどけ」
「内申点のかけらもないあなたに言われても………」
「んだとコラッ!」
この言い争いも日常になってきた。
かつてのような一触即発、といったビリついた空気はもうどこにもない。
そして予鈴のチャイムが鳴ると、英語の教師が入ってきて号令、そして着席する。
早速と言わんばかりにその教師は英語の小テストを配り始め、その紙がオレの元へも回ってきた。
その内容は簡単な英単語問題。
僅か十数問しかないからこんなもの、1分もかからず終わるだろう。
はじめ、と言う合図と共にテストは始まりオレは別のことを考えていた。
白鷺と松原からの告白の件。
それが今のオレにとって期末テストなんかよりも難しい難題だ。
もちろんオレは二人のことを友達として信頼しているし、他の何を差し置いても一番大切な存在だと言い切れる。
そんな二人の間も中学からの関係性があり互いを1番の友達だと信じている。
そんな二人の、ひょんなことから始まった恋物語は全く違う道を歩んできた。
片や不良に絡まれているところを助けたことで始まり、片や歪みあってきたが何度も助けられて好意を抱き始めたり。
本来なら互いの恋愛話で悩みを相談しあったり、付き合うまでのサポートをしたりなどをしていたんだろうが、親友同士の二人にはそれができなかった。
何故なら、恋した相手が同じだったから。
運命の悪戯か、白鷺と松原は親友から恋敵のような関係になってしまった。
そのことで三人は深く悩み、各々がハッピーエンドを迎えられるような展開を考え続けた。
しかし、恋愛はそう甘くはない。
どちらかが笑えばどちらかが必ず泣く。
誰もが幸せになれる選択肢なんて存在しないのだ。
(さて、そろそろ始めるか)
心の中でそう呟きようやくテストに目を通す。
Dearest、親愛なる。
Fondness、愛情。
Sweetheart、恋人。
Marriage、結婚…………っておいおい、もしかして狙ってやってるのか!?
今のオレの煩悩に当てはまる英単語ばかりじゃねぇか!
ふざけやがって。
尚更集中できねぇじゃねェか………。
煩悩に支配されることなくスラスラと単語を書き終え、紙を裏返し机に突っ伏した。
(恋愛って、クソ難しいな)
殴り蹴ることもできない。
形のない敵ってのはなかなかどうして面倒なのか。
オレにとってはテストなんかよりこっちの方が難題だ。
◆◆◆
それは突然の出来事だった。
部屋でクラゲのクッションを抱きベッドに横になっていると携帯の着信音が鳴り響いた。
発信源は千聖ちゃんで私はすぐ電話に出る。
「もしもし?」
『突然ごめんなさい。今大丈夫かしら?』
「うん。どうしたの?」
『実は相談したいことがあって…………』
何か思い詰めたような様子で千聖ちゃんは話を始める。
『二人で彼を取り合おうと決意したあの日からちょうど三ヶ月。随分と時間が経ったわよね』
「そうだね」
『私………もう我慢できないの』
「えっ?」
『私は明日、彼にもう一度告白する』
「ええっ!?」
千聖ちゃんの唐突な独白に戸惑うが、構うことなく話を続ける。
『この三ヶ月で私は何度も彼にアプローチしたわ。正直、手応えも感じてる。残り少ない高校生活だけど、私は月島くんと恋人関係となって最後を過ごしたいの』
「千聖ちゃん…………」
彼女の意思は相当に固い。
もちろん私だって、ただボーッと毎日を過ごしていたわけじゃない。
水族館や遊園地、カフェでお茶をしたりと何度も彼を誘い二人だけの時を過ごした。
もちろん私だって彼へ告白する気持ちは整っている。
それをしなかったのはただタイミングがなかっただけ。
言い訳にはなるけど、抜け駆けして告白が成功するのも失敗するのも絶対に嫌だったのだ。
やるなら一緒に。
私の心の中には常にそれが存在していた。
『彼を愛してるという気持ちをもう抑えることはできない………花音はどうなの?』
「私は…………」
グッと握る拳を胸に置き、決意を表すかのように告げる。
「私もーーー奏くんが好き、大好き。今すぐにでも、この気持ちを伝えたいって思う」
『ふふっ。なら決まりね。明日、全ての決着がつけましょう』
「緊張………するね」
『負けないわよ。花音♪』
「こ、こちらこそ!」
そう宣戦布告し電話を切る。
いよいよ明日が決戦の日。
あまりに唐突に決まったけど気圧されることなんてない。
少しでも躊躇すれば敗北する。
それほどの気持ちを胸に私は深い眠りにつく。
鳥の囀り声が聞こえてくると共に起床し、覚めきっていない目を擦りグッと伸びをする。
少し乱れた布団を正し両親に挨拶し、朝食、身支度を済ませ家を出る。
決して変わることのないいつも通りの朝。
今日、全てが決まるというのに妙に落ち着いている自分に驚く。
鼓動も正常で一切の乱れもない。
勝っても負けても、私は絶対に後悔しない。
それほどまで、彼との恋愛に本気になったからだ。
「よお。松原」
校門をくぐると奏くんは生徒会の仕事で紗夜ちゃんと共に立っていた。
「奏くん。紗夜ちゃん。おはよう!」
「朝から元気だな」
「うん。よく眠れたからかな?」
「オレなんて朝から
「目を離したら絶対サボるでしょう?」
「否定はしねぇ」
「なら諦めてください」
「あはは…………」
紗夜ちゃんは相変わらず手厳しい。
私は二人に別れを告げ、校舎へ入ろうとすると下駄箱前で千聖ちゃんと遭遇する。
「あらっ、おはよう。花音」
「千聖ちゃん!おはよう」
何気なく挨拶を交わすけど、千聖ちゃんの顔色はあまりよくなかった。
「何かしら?」
「な、何でもないよ!」
きっと昨日電話した時から寝られなかったのだろう。
私とは対極。それほど今日の告白にかけているということだ。
「月島くんにはさっき伝えたわ。放課後、教室に残っていてほしいって」
「そうなんだ」
「花音はいつも通りね」
「そ、そうかな?」
「私は…………すごく悩んだわ。彼にどのような言葉を伝えるかを、ね。けれど私はありのままを話そうと思うわ」
「うん。私もそのつもりだよ」
互いに後悔をしないように。
それぞれの恋の行方はすぐそこだ。
◆◆◆
放課後。いよいよその時は訪れた。
わらわらと群がっていた教室内はしばらく経つと私たちだけになり、全員がいなくなったのを確認すると二人で奏くんの前に立った。
「月島くん。覚悟はできたかしら?」
千聖ちゃんのその言葉に奏くんは腕を組み、俯きながら無言で頷いた。
彼も答えを見出したようだ。
「まずは………こんなことになって、本当にごめんなさい」
「気にするな。オレも遅かれ早かれ決めるべきだとは思っていたからな」
もう後戻りはできない。
この先の未来を捻じ曲げることも、この先訪れるであろうどのような結末だろうと。
「私は屋上で」
「私は教室で」
『あなたを待ちます』
それぞれの思い出の場所。
千聖ちゃんは文化祭の時に二人で話した屋上で。
私は静かな空間で和やかに二人で過ごした茶道室で告白することを決めた。
ここから先は神のみぞ知る。
それぞれの運命は神に委ねられた。
「それじゃあ、私たちは行くから」
「奏くんの好きだと思う方に来てください」
二人で教室を後にし公言した場所へと向かう。
なぜだかわからないけど、互いの顔を見合ってしまってはいけないと思ったから決して振り向くことなく足を進める。
長い渡り廊下を歩く私は走馬灯のような光景を目にした。
それはこれまで私と奏くんが歩んできた道。
楽しかったこと、辛かったこと、そして幸福と感じたこと。
どれも私にとっては大切な思い出。
そして長い渡り廊下を歩き終えた先に見えるのは屋上の扉。
私はその扉の前に佇む。これは言わば今の私の現状。
この扉を超えた先には私の未来が待っているのだ。
「…………よしっ」
ドアノブを掴みながら呟き扉を開く。
普段立ち入り禁止ということもあってここには誰もいない。これから来るとすれば奏くんのみだ。
風がヒューっと強く吹き髪が靡く。金網越しに映る景色は部活動に励む生徒たちの姿。頑張れ、と小さくエールを送り金網に背を預け腰を下ろす。
どんな結果になろうと私に後悔はない。
奏くんを好きになったことも、千聖ちゃんと争うことになったのも…………。
私は────絶対負けない。
「奏くん。待ってる、よ…………」
……………………
……………
屋上にきてから30分ほどが経過したが想いを寄せる彼はまだ姿を現さない。
私はもう、この時点で察していた。
初めての恋が成就することはなかったんだと。
けれど私に涙はない。後悔をしていないからだ。
やり切った。ちゃんと言葉にして伝えたし、行動もした。
悔いなんて………あるはずがない。
(泣かないよ……………私、絶対、泣かないもん……………)
心でそう呟き、暗い表情で薄く笑みを浮かべる。この後千聖ちゃんたちにどんな言葉をかけようか?
『おめでとう』それとも『お幸せに』かな?いずれにせよ二人の幸せを願う言葉をかけることは決まっている。
思えば、高校3年生になってからは千聖ちゃんと奏くんはずっと一緒にいた気がする。学校外、特にマネージャーになってからはプライベートでの関係も濃くなっていた。
それらを通じて千聖ちゃんは私の知らない彼の姿もきっと知っているのだろう。ほんの少しだけど、羨ましく思う。
「…………そろそろ、降りようかな」
二人に贈る言葉は考えた。精神も安定してる。今の私なら表情を崩すことなく二人を祝えるはずだ。
私はスッと立ち上がり扉に向かう。
ガチャリッ。
「よっ、待たせたな」
急に扉が開き私の想い人が姿を現す。いつもの通りの軽快さで軽く手をあげ私に言葉を投げかける。
「ううん。大丈夫、だよ」
私は笑顔を貼り付けそう答える。
「さっきまでちさ………白鷺のところに行ってたんだ。すまんな。遅くなると連絡すればよかった」
「気にしないで。来てくれたことが、嬉しいんだから………」
「………?なんだ、泣いてたのか?」
「ち、違うよ!そうじゃ、ないの」
手をブンブンと振り誤魔化して見せた。
ふーん、と口を尖らす彼は私の隣を横切りフェンス越しに屋上から目にすることのできる景色を一望しながら口を開く。
「一度はここから一望できる夜景を見してやりたかったんだけどな」
名残惜しそうに話す奏くん。
卒業まで残り数ヶ月あるけど、実際に登校するのはほんのひと月程。時間なんてあっという間に過ぎる日数だ。
「ダメだよ。夜に学校に侵入するのは」
「監視カメラの位置は全て把握してるから問題ねぇよ」
「もう。そういう問題じゃないよ」
景色を眺める奏くんの横に並んで立つ。
少し腕を伸ばせば彼の手を握れるほどの距離。その距離およそ10センチ。それが遥か遠く、とても触れられるような感じがしない。
「奏くん、3年間の学校生活はどうだった?」
「ああ、楽しかったぜ。特にオマエらと出会えてからは特にな」
「そっか」
彼が嬉しそうな表情を浮かべるのを見てこちらも同じような気持ちになる。
「松原はどうだ?」
「私は………すごく刺激的な毎日で新鮮だったよ」
「ククッ。その殆どがオレのせいだったろ」
「そうだね。ふふっ」
「おいおい、そこは否定してくれよ」
「もちろん、嫌な意味じゃ無かったんだよ?」
「知ってる」
何気ない日常の会話。それが今はただ楽しくてしょうがない。それはこのまま幸せな時間が続いてほしいと願うほどに。
しばらくその会話をしていた時だった。後頭部を掻きバツが悪そうな表情を浮かべながら彼は話の内容を変えた。
「あーー…………その、だなっ………」
言葉を詰まらす奏くんをキョトンとした顔で覗く。
「さっき、白鷺のところに行ってだな………」
唐突に始まったあまりに重い話。そうだ、私たちは今日、決着がつくんだ。
もうわかりきってる。私は、
「告白───断ってきた」
「えっ…………」
何故、どうして?
そんな疑問が思考を支配する。
「オレが好きなのは、松原花音。オマエだ」
ずっと待っていた愛の言葉。真剣なまなざしでそう伝えてくれたけど今の私には全く耳に入らない。
嬉しいというより疑問の気持ちが何よりも強い。まずはその経緯を訊くことにした。
「なんで、私を………」
「前にも言ったが、松原は誰よりも人当たりが良くていい意味で裏表のない女だ。人のことを悪く言わない。誰に対しても優しく接することができる。そんなところにオレは惚れたんだ」
「…………っ!」
「オレといたら迷惑をかけ続けるし、性格もひねくれてる。全国的に有名になっちまった悪童でもいいというのなら………オレと付き合ってくれ」
片膝をつき手を差し伸べる奏くん。
まるで届きそうに無かった愛しの彼の手がもう目の前にある。ゆっくりとその手の上に自分の手を添え涙を流しながら答えた。
「こちらこそ、よろしくお願いします………!」
絶対泣かないって決めてたのに自然と涙が溢れてくる。嬉しくて仕方がない。
今はもう幸せすぎて胸がいっぱいだ。
「そこまで泣かなくていいだろぉ?」
「だ、だってぇ…………!」
指で涙を拭う私を奏くんは優しく頭を撫でる。まるで子猫でもあやすかのように。
「奏くん、ズルイよ」
「何がズルいんだよ」
「私ばっかりドキドキしてるから……」
「つってもオレも付き合った経験がないからよく分からんけどな。まぁこれから長い付き合いになるんだし、ゆっくりでいいんじゃねぇの?」
恋人関係になったにも関わらず奏くんはいつもと態度を変えない。いや、変わらないと言った方がいいのかな?
ムーっと頬を膨らませた私は、
「ねぇ、奏くん。お願いがあるの」
背の高い彼を見上げながら目を見る。
「珍しいな。なんだ?」
「私のこと、これからは………名前で呼んでほしいな」
ずっと一方的だった名前呼び。今は私たちも恋人関係にあるのだからそのような証明が欲しいと思った。
別に契約してるわけじゃないんだけど、それでも私は彼に、好きだ!って思えてもらってる実感……というのかな?そういうのがあればと考えている。
「名前、名前か………」
奏くんはそう呟きながら頬を掻きながら視線を逸らす。どこか照れ臭そうな、そんな表情だ。
「まあ、せっかくの頼みだ。やってやる」
もう一度向き合い真っ直ぐな瞳で私の名前を口にする。
「──────花音」
出会ってから数年。ようやく私の名前を呼んでくれた奏くん。嬉しくて今にも踊り出しそうな高揚感で溢れる。
それを行動で表すようかのように彼の頬に手を添えそっと唇を添えた。チュッ、と数秒のキスを交わし驚いた様子の彼にイタズラな笑みを浮かべこう告げた。
「奏くんの初めては全部、私がもらうからね♪」
「コイツ………!!」
優しい怒りと恥じらいが入り混じる感情を昂らせる奏くんはわしゃわしゃとサファイア色の髪を乱す。乱暴だけど心地いい。私は彼に全てを捧げるつもりだ。
水族館や海などをデートで行ったり、バイクを乗せてもらったり、恋人らしいことをたくさんやりたい。もう、やりたいことだらけだ。
将来のことなんて今は考えない。今はただ、この幸せな時を彼と共に過ごしたいから。
いやーー、本っ当に悩みましたよ!もう、最後までどちらにするか何パターンも展開を考えて………執筆者として描き切ったと自負しています!
次回で最後になりますが、どうぞ最後まで楽しんでいただけたらと思います。
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