高嶺の華と路傍の花   作:山本イツキ

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お気に入り、しおり、感想ありがとうございます。

心の底から喜んでおります!


今回はいつもより少し長めです。


第5輪 枯れかけの花

 ある日の朝、事件(それ)は起きた。

 いつも通りの時間に起床しおふくろが作り置きした朝食を食っていたそのとき、家のチャイムが鳴り響いた。

 朝っぱらから一体何の用だ。

 突然の訪問に苛立ちを覚える。

 おふくろは鍵を持っているから、チャイムを鳴らすことなんてまずありえない。 

 

 ではいったい誰が?

 

 予想がつくのは、回覧板の受け渡しか某テレビ局の集金。

 もし後者ならとっちめてやる。 

 

 「いったい何の用……………だ?」

 

 少し荒めに扉を開けると、そこには予想だにしない人物が姿を現した。

 オレと同じ高校の制服を見にまとう女子高生。

 生真面目な風紀委員長こと、氷川 紗夜が何食わぬ顔で頭を下げる。

 

 

 「おはようございます。月島くん。あなたを迎えにきました」

 

 

 淡々と話す氷川の真意がわからない。

 だがまず、どうやってオレの家の場所を突き止めた。

 オレは一度だって家に招いたことはないし、教えたこともない。 

 ストーキングされてたか?

 いや、そんな姑息な手段を奴が取るとは思えない。

 

 だとしたらもう、考えられるのは一つ。

 あの学園長「ハゲ」が耳打ちしたに違いない。

 今日あったら問い詰めてやる。

 オレは後頭部を掻き、大きなため息をつきながら言う。

 

 

 「…………何しにきやがったんだ」

 

 「さっき言った言葉の通りです。貴方がサボらないように私から出向かせてもらいました。その様子だと………寝起きでしょうか?」

 

 「残念だったな。朝飯食ってる途中だ。あーっ、そうだな、8時には校門に着くようにするから学校まで待─────」

 

 「信用できません」

 

 

 氷川は表情を変えず即答する。

 どうやら、オレのことを一切信用していないらしい。

 まぁ日頃の行いが悪いから認めるしかないな。

 

 

 「ったく、仕方ねぇな………。なら玄関で待ってろ。それなら文句は─────」

 

 「やはり信用できません」

 

 

 またしても即答。

 オレとこいつの間に信頼関係など無いという口ぶりだ。

 

 

 「おいおい氷川さんよぉ。オレがここからどうやって逃げると言うんだ?お前が玄関を陣取ってる時点でもう詰んでるんだぜ?抗う気すらおきねぇよ」

 

 

 間近まで詰め寄り、挑発するように問いかける。

 それでも奴は凛とした態度を崩さない。

 

 

 「そう言ってあなたはベランダから飛び降りる気なのでしょう?」

 

 「バカかっ!?ここはアパートの5階!飛び降りたら骨折だけですまねぇだろうが!」

 

 「貴方の身体能力なら可能かと」

 

 

 氷川の考えた策に驚きを隠せない。

 オレはスパ○ダーマンではない。普通に怪我をする一般人だ。

 確かに下の階のベランダを伝ったら降りれなくも無いが、そんな無理をするほど頭は悪くない。

 逃げるなら堂々と逃げるわ。

 

 

 「………わかりました」

 

 

 氷川は不服そうな顔を見せる。

 ようやく観念したか…………。

 

 

 「なら、リビングで待たせてもらいます。もし逃げるようなそぶりを見せたら強硬手段に出ます」

 

 

 こいつ何も分かっちゃいねぇ! 

 

 氷川は強引に家へ入り靴を揃えてリビングへ向かう。

 いくら信頼してないとは言え、ここまでの管理体制を敷かれる必要はないはずだ。

 大前提として留年しなければそれでいい。

 法を犯さない限り、学校生活および風紀委員活動で何をしようがオレの勝手だと思うんだが………。

 

 オレは氷川の後を追い、テーブルに残された朝食の残りを食べ始める。

 氷川はソファに腰掛け自分のカバンから一冊の本を取り出し読み始めた。

 朝食を食べてる最中も、皿を片付けている時も、歯を磨いている時も、制服に着替えている最中もオレたち二人の間に会話はない。

 聞こえるのはテレビから流れるニュースだけ。

 

 締め切った部屋の中に異様な空気が漂う。

 

 

 「待たせたな。いくぞ」

 

 

 オレが口を開き、数十分の沈黙を破る。

 

 

 「わかりました。それでは─────」

 

 

 氷川はオレの背後に立ち、突如何かで両手首を拘束された。

 それに気を取られていると、今度は首輪をつけられ締め付けによる強い圧迫感に襲われる。

 振り返ると無の表情を浮かべる氷川の姿があった。

 

 

 「…………イテェじゃねぇか。なんのマネだ……………?」

 

 

 いつも以上に低い声を出し、怒りを露わに問いただす。

 こめかみに浮き出た血管がその度合いを物語る。

 それに対し氷川は平然とした態度を保ち淡々と答える。

 

 

 「あなたを逃さないために拘束させてもらっただけですが?」

 

 「オレは見せ物じゃねぇぞ……………おぉ?」

 

 「もちろん分っていますよ。なら、私の言うことに従っていただけますね?」

 

 

 どれだけ詰め寄ってもこいつの顔色が変わる気配がない。

 認めたくはないが、今のオレにはどうすることもできないようだ。

 脅しを諦め渋々こいつの言いなりになる覚悟を決める。

 

 

 「…………おいっ、せめて首輪だけは─────」

 

 「ダメです」

 

 「即答かよ」

 

 「逃げられては元も子もありませんから」

 

 

 覚悟を決めると同時にオレは心の中で決意した。

 オレをペットにしたがる主犯の全身を縛り上げて、火で炙り、ヒィヒィ言わせてやろうと。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 家を出てから学校に着くまでの短時間で、すれ違う人皆に痛々しい視線を送られる。

 首輪に手錠をかけられる男子高校生。

 首輪に繋がれたロープを握りしめる女子高生。

 側から見ればアダルトビデオの撮影とかだと、変な妄想をされているのだろうか。

  

 言っておくがオレはMではない。

 そしてこういうアダルティなプレイも一切興味がない。

 至って普通。ノーマルパーソンだ。

 背後にいる氷川は─────。

 

 

 「言っておきますが、私も健全な高校生です」

 

 「何も言ってねぇだろ」

 

 「いえ、何かあなたが良からぬことを考えていそうな顔だったので」

 

 

 こいつはエスパーか、はたまた人の心を読む第六感の持ち主か………。

 オレの考えなどお見通しのようだ。

 

 

 「お前はそんな格好をした男を連れ出して、恥ずかしくないのか?」

 

 「これも委員会の為です。この程度、どうってこともありません」

 

 「オレは明日からご近所さんに何を言われるか、不安で仕方ねぇよ」

 

 「自業自得です」

 

 「これで今日一日過ごすとか、オレの学校生活は終わりを迎えるな」

 

 「安心してください。朝の挨拶運動が終わり次第外します。それまでは決して、逃げることのないようにお願いしますね」

 

 「へーへーわかりましたよ、調教師様(ごしゅじんさま)

 

 「その言い方やめてください!」

 

 

 平然を装っていた氷川がついに恥じらいの声を上げた。

 その様子に生徒たちは驚き視線を向ける。

 してやったり、と少し頬が緩む。

 だが氷川はそのことにものともせず、コホンと咳き込み冷静を取り戻す。

 

 オレたち以外の風紀委員も続々と集まり、活動が始まる。

 その異様な格好に登校してきた生徒はもちろん、風紀委員、朝練の連中、男女問わず視線が集まる。

 指を差し小声で何かを話したり、フッと小声で笑っう奴もいれば、ただただ引いてるのもいた。

 どう考えても今のオレは風紀委員の恥さらしだろうな。

 一切動じることなく、オレの横に立ち風紀活動に勤しむこいつのメンタルは鋼かそれとも冷え切った氷か…………。

 ホント恐ろしいやつ。

 

 この無様な姿を知り合いの生徒には見られたくないものだが─────。

 

 

 「あっ、月島くん!おはよ…………?」

 

 

 はい、フラグ回収。

 小さい体から発せられた松原の声は、だんだんと遠くなる。

 そして、オレの姿を見るなり青ざめた表情を浮かべる。

 

 

 「よっ、松原」 

 

 

 オレは何事もなかったかのように、平然と挨拶を交わす。

 

 

 「な、なんでそんな格好してるの!?」

 

 「それがだな─────」

 

 「松原さん、おはようございます」

 

 

 松原の疑問に答えようとしたその時、氷川が割って入ってきた。

 

 

 「あっ、紗夜ちゃん!何が一体どうなってるの!?」

 

 「オレが朝飯食ってたらこいつが乗り込んできてな」

 

 

 氷川に向けられた疑問を、今度はオレが割って入り簡潔に説明する。

 

 

 「人聞きの悪いことを言わないでください」

 

 「それでなんやかんやあってオレは今、こいつの下僕になってるというわけだ」

 

 「だから!そもそもあなたが悪いんですよ!」

 

 

 とうとう氷川は怒りを露わにし、右手に握っている首輪のロープをぐっと引っ張る。

 

 

 「………ッテェな!!テメェいい加減にしろよ!!」

 

 「なら私が悪者みたいな言い方をしないでください!」

 

 「け、喧嘩はダメだよ〜!」

 

 

 松原がオレ達を止めに入ったその時だった。

 

 

 「何ですかその髪色は!?あなたはそんな髪で登校して我が校の恥晒しになりたいんですか!?」

 

 

 突如聞こえた耳がキーンとなりそうなデカイ声が響き渡った。

 声のする方に顔を向けると、一人の女子生徒の頭を鷲掴みにし怒鳴り声を上げる女教師の姿が目に入る。

 見たところ生徒指導の一環だろうが、アレはどう見ても()()()()()()

 ただの()()だ。

 女子生徒も涙を流し、ビクビクと震えその教師に怯えているのがわかる。

 

 

 「………おいっ、氷川。あの教師の名前は?」

 

 

 怒気を含んだ小さな声で氷川に問いただす。

 

 

 「生徒会顧問の藤村先生です。この学校の卒業生で、とても厳しい指導をすることで有名ですね」

 

 「特に髪型の検査は厳しいんだ…………。髪色は学校に申請する書類を持ってなかったら問答無用で怒ってくるよ」

 

 

 二人の話を聞く限りだと、このお嬢様学校にピッタリな人材だと言える。

 

 だが、その考えはすぐに覆された。

 

 服装はスーツじゃなくてどこぞのブランド物で、首にはネックレスを引っさげ、髪色も地毛とは思えないほどの金色。

 生徒にああだ、こおだ言うには説得力に欠ける。

 指導される生徒も納得できないだろう。

 

 

 「矛盾してやがるな」

 

 

 オレが下したあの教師の印象。

 

 

 「そうですね。しかし、これはどうしようもないことです」

 

 「おいおい、風紀委員長ともあろう者が随分と弱気だな」

 

 「権力において、教師と生徒では雲泥の差があります。私では力不足です」

 

 「あっそ。お前が行かねぇならオレが論破していてやるよ。だから手錠を外し─────」

 

 「そんなことさせません」

 

 

 オレの言葉を遮り氷川は首輪の紐でオレを静止させる。

 互いに痛みにも、扱いにもだいぶ使い慣れてきた。

 

 

 「おいっ………!まさかこのまま見過ごせって言うわけじゃねぇだろうな?」

 

 「ええその通りです。もし、あの生徒が髪色に関する書類を持参していれば防げたはずです。一概に藤村先生が悪いとは言えません」

 

 「だとしてもだな…………!?」

 

 「それに、あなたも人のことは言えないでしょう?」

 

 

 氷川はオレの目線より上、頭を凝視する。

 松原は苦笑いで誤魔化しているが、氷川に賛同しているように見える。

 

 言われてみれば、ど正論。

 こんな髪型で制服もちゃんと着こなせないオレが何を言っても無駄だろう。

 まぁ、その時はその時だ。

 黒染めでもなんでもしてやる。

 

 だが、問題は今だ。

 あの教師に対抗できる手段が必要不可欠。

 そのためにも、あの学園長(ハゲ)にも協力を要請するしかなさそうだな。

 

 

 「おいっ、氷川。放課後すぐに学園長室前に集合だ」

 

 「あなたはまた強引に………!」

 

 「いきなり家に押しかけて拘束する奴よりマシだ、ボケッ。お前の選択肢は、はいかYES。それ以外は認めねぇ」

 

 「…………わかりました。学園長には私からアポイントメントをとっておきます」

 

 「あぁ、助かる。松原もくるか?」

 

 「えっ!?わ、わたしは遠慮しておこうかな………」

 

 「そうか、なら仕方ないな。もうすぐでチャイムなるし、先に教室に行っててくれ」

 

 「うんっ!また後でね!」

 

 

 松原は笑顔を向け、教室に向かって走り出す。

 

 

 「随分と気に入られてるんですね」

 

 「うるせぇ」

 

 

 氷川の冷やかしを交わし、挨拶運動に戻る。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 授業中、オレはずっと今朝の出来事を振り返っていた。

 

 怒鳴り声を上げる教師。

 それに怯える女子生徒。

 そして傍観するオレたち。

 

 あの時何かしらの行動を起こせば状況が変わっていたのかもしれない。

 氷川の拘束があったとはいえ、オレは何も出来なかった。

自分自身に苛つき、あの時のオレを殴り飛ばしてやりたい衝動に駆られる。

 

 それに対する氷川の淡々とした言動も不可解だ。

 いくら教師とはいえ間違った指導をしていれば、何かしらの感情は湧いてくるわずにもかかわらず、奴からはそんなものが一切感じさせなかった。

 寧ろいつも以上に冷静でいるようにも見えたほどだ。

 オレには全く理解できない。

 後頭部を掻き大きくため息をつく。

 

 今日の授業が終わり、オレは一目散に学園長室に向かう。

 拘束された手足は朝のうちに解放され、今もその感覚が残っている。

 もう二度とあんなプレイはごめんだ。

 変な癖がついたらどうしてくれるんだ、全く…………。

 

 学園長室に着く頃には、すでに氷川の姿をあった。

 2人で部屋に入ると学園長はニパーッとした笑みを浮かべる。

 待っていたと言わんばかりのその顔に氷川は一礼、オレは無視していつものソファに腰掛ける。

 まずは、オレから話を切り出す。

 

 

 「今日この場を設けた理由はわかっているだろうが、その話をする前に一つ。何故あんな真似をした?」

 

 

 怒気がこもった声で話しても、学園長が表情を崩すことはない。

 

 

 「今となってはもうあのことでキレる気はない。だが、あそこまでする必要がどこにある?その理由を説明しろ。オレの納得するようにな」

 

 

 多少矛盾しているだろうが関係ない。

 その理由さえ理解できれば、だがな。

 

 

 「実は氷川くんからキミのサボり癖について相談されてね。逃げるようであればいっそ捕らえてみてはどうだろうかと提案したんだ。まさか、やってのけるとはね。実に驚いたよ」

 

 

 ─────やはりこの学園長(ハゲ)が真犯人だったか。

 分かってはいたが、こうも堂々とされていると、どうも気にくわない。

 オレの隣に座る氷川は学園長の態度に苦笑いする。

 

 

 「オレがサボる度にこんなことを続けるつもりか?」

 

 「んーー、そうだねーー…………」

 

 

 考えるフリをする学園長を他所に、氷川は即答する。

 

 

 「私は続けるつもりですよ。今度はもっと酷い仕打ちを─────」

 

 「ははは、氷川くんは見かけによらず面白いことを言うねー」

 

 「笑えるか!!やられる方の身にもなってみろ!」

 

 「ならば明日からも風紀委員として活動に尽力することだね」

 

 「学園長の言う通りです。次は容赦しません」

 

 「しょうがねぇなぁ…………」

 

 

 半ば強制的に今後サボらないと誓わされる。

 氷川の口述による恐ろしさはお袋並だ。

 そう痛感させられる。

 

 だが、拘束してくる氷川を殴り飛ばすことも可能だがオレにそんな趣味はない。

 女に手をあげる男はゴミかそれ以下だ。

 脳裏に白鷺千聖「あいつ」の姿が浮かんでくるが奴は別とする。

 非力な人間がする挑発行為ほど醜いものはない。

 奴は身の程をわきまえたほうがいいだろう。

 そして喧嘩を売る相手を慎重に選ぶべきだ。

 

 

 「それじゃあ本題に入らせてもらう」

 

 

 オレがそう言うと、学園長から笑みが消え真剣な眼差しを向ける。

 

 

 「オレたちが今朝に見た金髪教師について教えてくれ」

 

 「金髪の…………教師…………?」

 

 「生徒会顧問の藤村先生です」

 

 「………あぁ!藤村くんか!彼女がどうかしたのかい?」

 

 

 氷川の言葉でオレの言いたかった人物が一致したようだ。

 奴が何をしたかわからず首を傾げる学園長に今朝起きた出来事を全て話す。

 多少オレ独自の見解もあったが、氷川がそれを上手くまとめ補足も入れる。

 

 

 「なるほど、そんなことが……………」

 

 

 全てを話し終えてからは、学園長はそれ以上何も言わず腕を組み何かを考えるそぶりを見せる。

 

 

 「酷い話だろ?地毛だと主張しても書類がないと言ったらその仕打ちだぜ?」

 

 「私自身、見てて気持ちの良い光景ではありませんでしたね」

 

 

 思い出しただけで腹が立つ。

 どう考えてもあれは理不尽だ。

 あの光景を言葉にするなら、権力という名の暴力。弱いものいじめ。

 力無き生徒が権力を持つ教師から一方的に責め立てられる。

 これがこの学校の指導方針だというなら、根本的な原因は目の前の男だということになるだろう。

 

 だが、そんな考えを持つ人物でないことは重々理解しているつもりだ。

 そんな危険思想の持ち主なら今すぐにでも全身をロープで縛り、残り少ない髪の毛を全て剃り上げる。

 

 まぁ、そんなことをしたら退学どころの騒ぎじゃないだろうな。

 

 

 「キミたちの考えはよく分かった。そこでだが、私から一つ君たちに問いたい」

 

 「─────藤村先生のことをどう思う?」

 

 

 真面目な質問に、オレと氷川は顔を合わせ数秒間シンキングタイムをとる。

 

 

 「いけすかない。矛盾ヤロォ。反面教師。声量お化け」

 

 「生徒側も非があるとはいえ、先生の指導は正しいとはいえません。まずは自分から手本となるように服装や髪型を整えるように心掛けるべきだと考えます」

 

 

 幼稚な言葉遊びのように答えるオレに対し氷川は大人な回答をする。

 そこで学園長はオレたちが予想だにしない言葉を放つ。

 

 

 「率直にいうとだね、私もキミたちと同じ意見なんだ」

 

 

 オレたちはその言葉に驚き目を見開く。

 

 

 「おいおい、この学園のトップであるアンタが否定するのかよ?こりゃ傑作だ!」

 

 「そんなにおかしいかい?」

 

 「こんなに面白いことはなかなかないぜ?」

 

 あまりにも面白すぎて笑いが止まらない。

 学園長にまで否定されるってことは、よっぽど嫌われているんだろうな。

 

 

 「彼女かなり頑固だからどれだけ注意しても治らないんだよねぇ………」

 

 「学園長もですか?」

 

 「それでも優秀なのは確かだよ。彼女が受け持つクラスは成績がいい上に礼儀がしっかりとしているからね。一概に否定できない」

 

 「間違っている中にも正しいものはある、ということでしょうか?」

 

 「ま、そういうことになるだろうな」

 

 

 氷川と学園長は、ため息をつき頭を抱える。どうやらお手上げの様子だ。

 

 この件をハッピーエンドで迎えるためには、オレたちが無傷で勝利することが必須条件。

 その上で、反面教師藤村を改心させることができれば尚よし…………という感じか。

 1日2日で達成できる難易度じゃないな。

 

 

 

 ─────だが、だからこそ面白い。

 心の底から高揚感が溢れ出る。

 

 

 

 起こしてやろうじゃねぇか。

 

 

 

 弱者が強者を打ち倒す革命を─────。

 

 

 

 「学園長。この一件、オレに任せてもらってもいいか?」

 

 「正気ですか!?相手は教師ですよ!太刀打ちできるわけないでしょう!?」

 

 

 隣で座っていた氷川が声を荒げる。

 奴の考えてることは今ならわかる。

 

 

 オレがこの革命に失敗して返り討ちに遭い、退学させられるのを恐れているんだろ?

 

 

 そんなこと百の承知だ。

 オレ自身教師に楯突くなんて無謀だとは思う。

 だが、このまま放置し続けたらさらなる被害者が出るのは確実だ。

 人間、時には賭けに出ることも重要。

 平凡な人生にロマンは無い。

 

 逃げ腰なんてもってのほか。

 いつでも勝負し続けるのがオレ、月島 奏の生き様だ。

 

 

 「…………わかった。私も出来る限りのことは協力しよう」

 

 「おう、1ヶ月でケリをつける。楽しみに待ってな」

 

 

 オレはニッと白い歯を見せて笑い、学園長室を後にする。

 

 さぁ、楽しくなってきたぜ。

 

 早速行動開始だ。

 

 

 




現実で教師に楯突くなんて行為はやめましょう。

絶対後悔します。(経験者は語る)
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