アムロの帰還   作:ローファイト

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沢山の感想ありがとうございます。
返信せずに申し訳ございません。
全部読ませていただいております。
沢山あり過ぎて、どう手を付けたらいいのかと……すみません。
誤字脱字報告ありがとうございます。
非常に助かります。

もう一つ謝らせてください。
前回の最後に記載しましたが、戦闘シーンは、次回にお預けに……。
すみません。

途中挿絵を追加しております。
この時期の地球圏の勢力図です。
作ってみました。だいたいこんな感じかなと。
下手なのはお許しを。



嵐の前の静けさ

モノケロースが地球圏外延部で高速機動輸送艦と接続してから2カ月が経過しようとしていた。

モノケロースでは、今後の行く末について、頻繁に会議が開かれていた。

メンバーは艦長のレアリーを筆頭に、モノケロースの主要部署やサナリィの上役12名で構成されている。そこにブライトがご意見番として参加していた。

モノケロースで月基地を脱出する際、年若い人員が優先的に選ばれていたため、上役と言っても36歳のアムロよりも若いメンバーが殆どだ。

 

そんな上層部会議だが、会議を重ねこの2カ月でようやく今後の方向性が纏まったのだ。

『新サイド6に合流する』

連邦でもコスモ・バビロニアでもなく、これから独立し新興勢力となるだろう新サイド6と共に戦い歩むという物だった。

 

理由としては、2カ月前の接触時に、新サイド6は連邦政府からの独立する意思が強く、さらにその準備も着々と進んでいるように見えた事。

新サイド6は連邦からお尋ね者のレッテルを張られたモノケロースを歓迎してくれた事。

さらに率直に戦力としてほしいと請われた事により、モノケロースを連邦やコスモ・バビロニアとの裏取引や政治的に利用する意思はなく、純粋に独立のための戦力として必要とされていると判断できる事。

レアリーは、新サイド6側の代表格であるオードリー・バーン、シュトレイ・バーンとの会談に当たって、2人は信頼できると判断し、何よりも二人の人柄はブライト・ノアのお墨付きであった事。

勿論、オードリー・バーンがミネバ・ラオ・ザビである事と、シュトレイ・バーンことバナージ・リンクスが、ジョブ・ジョンと昵懇の関係であった事は、モノケロースの上層部には伝えてある。

 

色々と理由はつけているが、そもそもモノケロースが取れる選択肢の幅は狭い。

理不尽な理由で逆賊のレッテルを張られた連邦に投降するなどという選択肢はもはやない。

そうかといってコスモ・バビロニアのコスモ貴族主義は得体がしれない上に、レアリーがスペース・アークで経験した、無差別殺人兵器バグによるコロニーの住人抹殺、難民船信号を発し実際難民を乗せていたスペース・アークを弄ぶように攻撃を仕掛けて来た等、コスモ・バビロニアも信用できるものでは無かった。

ならば、第三勢力となり得て、モノケロースの事情を知って受け入れてくれる組織ということとなると、現段階では新サイド6ぐらいなものだ。

 

 

モノケロースは新サイド6との合流という目標は決定していたが、具体的な方法や戦略等、実際の行動について、これから練っていく必要がある事項は多岐に渡る。

サナリィは現在でこそ、モビルスーツや兵器研究開発で名高い組織であるが、もともとは戦略研究に特化した組織ではあり、それが派生してモビルスーツの開発に携わることになった歴史がある。

だが、モノケロースのように単艦で、しかも最大勢力の組織を敵に回した行動を起こす様な戦略シミュレーションを行った事はない。

過去に近い事例はあるが、一年戦争のホワイトベースはバックアップには一応連邦軍がついていたし、グリプス戦役のアーガマはエゥーゴのバックアップや艦隊が存在した。第一次ネオ・ジオン抗争の際のネェル・アーガマも囮役ではあったが、バックアップにエゥーゴがついていた。

現在、補給を受けられる状態ではあるが、モノケロースを戦略的にバックアップする組織は無い状況だ。(実際にはアムロがここに居る事で、長距離移民船団が裏についているようなものだが)

しかも、モノケロースで脱出したメンバーは年若く経験も少ない。

ある程度の戦略は立てられるが、机上の空論となる可能性が高い。

これからのモノケロースの実際の行動には武力だけでなく、外交能力や政治能力等も必要不可欠となる。新サイド6と合流を目指すだけでも、外交能力が必須だからだ。

彼らにはそのような実務的な経験はほぼ無い。

 

特にレアリーは自身の実力不足とこの事について痛感していた。

モノケロースが月から脱出し、ここにたどり着くまでにも、各種行動に移すタイミング、新サイド6での交渉などなど、細かい所から大きな事柄まで、自分の力だけではとても成しえなかったと………。

ブライト・ノアの存在が如何に偉大かと………

 

ブライトは司令官としてロンド・ベルという最前線の軍事組織をまとめ、連邦政府や連邦軍上層部や財閥からの政治的案件や思惑にも、柔軟に対応してきた。

いわば、生き字引のような存在だった。

現在の地球連邦にこれ程の人物は中々見当たらないだろう。

 

レアリーは常に思っていた。

ブライトに表に出て貰い、モノケロースを、自分達を導いてほしいと……

 

そんな時だ。

レアリーに、ブライトとアムロから正式にモノケロースの一員として参加させて欲しいという話が合ったのは。

 

 

 

 

 

「訳あって偽名を使っていた。本名はアムロ・レイ、元連邦宇宙軍大尉、ロンド・ベル所属モビルスーツ隊隊長を務めていた」

アムロはモノケロース上層部会議の冒頭で本名を名乗ったのだ。

アムロ自身今迄、外部協力者という立場上、モノケロース上層部会議には参加していなかった。

だが、モノケロースの一員として戦う決意をしたアムロは、今後共に戦う者として、本名を名乗った。

 

上層部会議に参加していたブライトとレアリー以外の12人の上役たちは、ある者はポカンと口を開け、ある者は目を大きく見開き、皆一様にそのような驚きとも困惑とも、とれないような表情をしていた。

 

「……アムロ・レイってあの伝説のパイロットの?ハヤセさんが……そのアムロ・レイ大尉ということですか?」

参加メンバーの一人であるモビルスーツ隊隊長のサラサ・マイル中尉は呆けた表情でこんな事を聞く。

それを皮切りに、皆は首を傾げたり考え事をしながら次々と言葉が飛び交う。

「違うわ。戦死されて、二階級特進で中佐になられたはずよ。教科書に載っていたわ」

「でも、目の前に生きておられるから……」

「いやいやいや、こんな若いはずないだろ。大尉の息子さんか何かだろう」

「でも、ロンド・ベル所属のモビルスーツ隊隊長と……」

「ハヤセさんってブライト元司令とため口だし、何かおかしいと思ってた……」

「でも、あの戦闘スキルはある意味納得できるというか」

「戦死されたはずでは?」

「正式にはMIAだから、どこかで生き延びられて、……でも若すぎる」

 

皆がざわつく中、ブライトはアムロの代わりに皆の疑問に答える。

「皆が混乱するのは分かる。だが、彼は間違いなくアムロ・レイだ。30年前の戦いで死にかけ、当時の医療技術では回復不可能だったためコールドスリープ処理を施し医療技術の進歩を待っていた。まだ技術定着していないコールドスリープ処理を行ったのはある意味賭けだった。そして数年前、漸く目途が付き、賭けに勝ち回復したというわけだ。この事は連邦軍にも知られていない。本名を名乗れなかった事は察して欲しい」

流石にアムロが、平行世界に転移し船団を率いて戻って来たとは言えないため、こうして生きて、しかも若い状態なのは、大怪我のためコールドスリープ処置を施され、数年前目覚めたばかりだというでっち上げた嘘を話すしかなかった。

しかし、一年戦争時からアムロと共に戦って来たブライトが言うのならば、説得力は非常に高い。

 

「俺はこの民間軍事会社に拾われ、九死に一生を得て今ここに居る。皆を騙すつもりはなかった。すまなかった。……それと正式に君らの戦いに参加させてほしい」

アムロは皆に詫びを入れてから、皆に参加意思を伝えた。

民間軍事会社(マクロス)に拾われたと言うのはあながち間違いではない。

但し、平行世界のだが……。

 

すると、先ほどよりも大きなざわめきが起きる。

「本物のアムロ・レイ大尉!?」

「あの伝説のエース・パイロット!!」

「地球連邦軍歴代最強艦隊と呼び声が高いロンド・ベルのブライト・ノア元司令に、地球連邦軍歴代最強のエースパイロット、アムロ・レイ大尉がご一緒に?」

「これは凄いわ……」

「何とかなるんじゃないか!?」

「しかも、アムロ大尉はお若いままで!?」

「やはり、只者じゃないとは思っていたわ。でもまさか、アムロ・レイ大尉だなんて!!」

 

レアリーは軽く手を叩き、皆を静めてから話し出す。

「皆さん、静粛に……ブライト准将閣下もアムロ・レイ中佐も正式にモノケロースの一員になって下さります。そこで私から皆さんに提案です。戦力としてモノケロース一隻しかありませんが、ブライト・ノア准将閣下には艦隊司令を、アムロ・レイ中佐には、モビルスーツ隊隊長及び副司令を務めて頂きたく、皆さん、どうでしょうか?」

レアリーは既に退役及び戦死扱いで効力もない二人の最終階級を、あたかも現役であるかのように呼び、こんな提案を皆にする。

 

「何も聞いていないが?」

「いや、ちょっと待ってくれ」

ブライトとアムロはそのレアリーの提案に慌てる。

ブライトとアムロはレアリーには、事前に正式にモノケロースと共に戦う意思を伝えてはいたが、レアリーのこの提案を二人共、聞いてはいなかったのだ。

 

レアリーは二人から正式参加の申し出を受ける前から、この事について考えていた。

 

新サイド6に合流するに当たって、元サナリィ所属の新造戦艦というよりも、勇名をはせたブライト・ノアが指揮する戦艦である方が、モノケロースの立場が優位になるだろう事は、

明らかだからだ。

レアリー本人としても、自分自身が実力不足であることは痛感していた。

この艦と乗組員が今後の戦いにおいて生き残るためにも、ブライトに指揮を執って貰いたかったのだ。

だが、肝心のブライトが一歩も二歩も下がった態度で、この上層部会議に参加していたため、

もしかすると、モノケロースと共に行動してくれないのではないかと、不安に思っていたのだ。

その不安はブライトとアムロの正式参加意思を伝えられ取り除かれるが、今までのブライトの態度から、指揮を執ってもらいたいと事前に願い出たとして、自分一人ではブライトやアムロの説得は困難ではないかと踏み、レアリーと同じような立場のモノケロース上層部が居るこの場のこのタイミングで提案したのだ。

 

レアリーの狙い通り、上層部会議に参加していたメンバー全員が拍手をし、レアリーのこの提案に賛成と歓迎の意思を示した。

 

「ちょっと待て、確かに君らと共に戦う事を決めたが、この艦はサナリィの君らの艦だ。そもそも私はジョブ・ジョン氏とはプライベートで付き合いがあり、この艦のオブザーバーとして乗船したが、飽くまでも外部の人間だ。君らが指揮を取るべきだ」

ブライトはレアリーと上層部のメンバーを見渡し、反論する。

 

だが、レアリーはそのブライトの反論に真っ向から意見を述べた。

「ブライト司令は当艦の一員に正式になられると仰っていただけました。当艦は新造艦であり、私も含めた元連邦軍乗組員やサナリィ月基地から共に脱出した職員、技術者は皆経験も浅く、若輩者ばかりです。退役されたとはいえ、百戦錬磨の艦隊ロンド・ベルの司令官であったブライト准将閣下が、当艦の指揮をとられるのは当然であると考えます」

レアリーがこう述べると、上層部のメンバーは皆、頷きながら、ブライトに期待の目を向ける。

 

「………だが」

 

「当艦は既に連邦から逆賊の誹りを受けております。現在私共の階級や立場ははく奪されていることでしょう。それでしたら、最終階級が最上位者でいらっしゃる准将閣下が指揮をとられるのは、極自然の流れだと愚考いたします」

レアリーは追い打ちを掛けるように続けて述べた。

 

「………」

 

「ブライト、負けだ」

アムロは、レアリーの意見に沈黙し渋るブライトの肩にポンと手を置き、こう言った。

 

「アムロ……しかしだな」

 

「レアリー艦長も中々頼もしいものだ」

 

「出過ぎた事を申しまして、申し訳ございません。ですが、私共は能力や経験も乏しく、この難局を乗り越えるには、歴戦の勇士である准将閣下に頼るほかありません。お聞き届け願いませんでしょうか」

レアリーは少々だまし討ちのような形となってしまった事に謝り、改めてブライトに艦隊司令を引き受けてくれるように願い出る。

モノケロースの上層部メンバーも皆立ち上がり、真剣な表情でブライトに願い出る。

 

「ブライト、年長者が若者を導くのではないのか?」

 

「……ふう、アムロ、そう言うお前も副司令と言われているぞ」

 

「どちらにしろ俺はモビルスーツ隊の指揮をとらせてもらうつもりだった」

 

「良いだろう。了解だ。艦隊司令としての役目は果たさせてもらう。……但し、条件がある。モノケロースの艦長は飽くまでもレアリー少佐だ」

ブライトは観念したかのように了承するが、レアリーにこんな事を言う。

 

「え?私がですか?それに少佐とは?それはどういう事でしょうか?」

レアリーはブライトが了承してくれた事にホッとするが、それも束の間、ブライトの口から思わぬ話が出てきて戸惑う。

 

「君は艦長代理として、艦の指揮を二度行っている。艦長となりこの艦の最高責任者として今迄任を全うしている。佐官教育を受けてはいないが、君は連邦軍における佐官の要件を大雑把ではあるが一応満たしている。そんなものが無くとも、君が優秀な士官であることは誰もが認めるところである。私が准将としての最初の任は、君を略式ながら少佐へと昇進させ、一隻しかない艦隊ではあるが、旗艦モノケロースの艦長に正式に任命する」

 

「……私がですか?」

レアリーは、戸惑いの表情を浮かべたままだ。

まさか、このような流れになるとは思っても見なかったのだ。

 

「君は十分その素質は持っている。旗艦モノケロースと乗員の指揮は任せたぞ。レアリー・エドベリ少佐」

 

「いえ、それでは……」

 

「何かあれば私が今迄通りフォローする」

ブライトはレアリーにそう言うが、これでは今迄のオブザーバーと艦長代理の立場とたいして変わらないのだ。

 

「その……」

これでは、ほぼ今迄通りと同じなのだ。

一応、上下関係ははっきりし、それぞれの役割が明確化はされるが……。

レアリーは、ブライトに艦の指揮をお願いするためにちょっとした駆け引きを行ったのだが、逆にそれを利用され、元の鞘に収まってしまったのだ。

これが経験の差という物だろう。

 

「レアリー・エドベリ少佐、艦の行く末は艦長である君に掛かっている。頼んだぞ」

ブライトはレアリーの正面に向かい、威厳のある声色でそう告げて、敬礼する。

これが正式な辞令となるだろう。

 

「了解いたしました。期待に応えられるよう、謹んでお受けいたします」

レアリーも敬礼で返すが、こうなってしまった以上、心とは裏腹に、こう返礼するしかなかった。

しかも、レアリーは上層部メンバーに拍手を送られる事に……。

 

 

この後、ブライトは艦隊司令として、上層部メンバーに改めて辞令を行う。

上層部メンバーはそれぞれ、身が引き締まった思いをしたことだろう。

勿論、アムロは艦隊副司令兼、モビルスーツ隊隊長に就任。

階級は中佐という事になる。

大尉のつもりでいたが、ブライトに強く言われれば従わざるを得ない。

 

ブライトが先ず行った事は、モノケロースの組織再編だ。

モノケロースの現在の乗員700人のうち5割がサナリィの研究者や技術者関連で、さらに調達部や総務関連の事務方職員が2割程度いる。

更に、スペース・アークから脱出した難民の民間人が数人乗っていた。

シーブックの友人と妹もその中に含まれている。

本来、難民は月面都市フォン・ブラウンに送ったのだが、諸事情によりサナリィの基地に残っていた内のさらに数人が巻き込まれて、モノケロースに乗る事に……。

因みにサナリィの研究員であるシーブックの母親のモニカ・アノーもモノケロースに乗艦していた。

よって、実際に艦を運用できる人員は現在3割の200人もいなかった。

モノケロースの標準運用人員は480人程度、最低運用人数は180人だが、やはりモノケロースが100%のパフォーマンスを維持させようとすると、480人の運用人員の確保は必要だ。

 

パイロット又は元パイロットは現在、シーブックとセシリーも含め15名程いる。

モノケロースのモビルスーツ最大運用数は18機だが、現在稼働できるモビルスーツは全部で12機、タカトク中将のお陰で、組み立て中や解体中、開発中の機体が完成し、月を脱出した当初に比べ、追加で4機程運用可能状態となった。

但し、追加の4機の内の1機であるF92は、とてもじゃないが普通のパイロットでは乗りこなせない。

一応、セシリーが候補に挙がっているが、今漸くF90Nタイプのファンネル運用に慣れてきたところのため、新たな全く異なったコンセプトの機体を預けるのは、彼女に負担が掛かり過ぎる。

よって、F92は現在乗り手がいないことになり、運用できる機体は11機となる。

これにアムロのHi-νガンダムが加わり、12機のモビルスーツ中隊が編成可能だ。

パイロット15名+アムロを加えて16名、運用可能なモビルスーツ12機と、とりあえずは今の所モビルスーツ人員はこれで行くしかない。

 

各種整備人員については、サナリィの研究者や技術者が有り余るほど乗船しているため、人員転換は直ぐにでも出来るため、全くの問題がない。

 

兵器調達・生活物資調達配給関連や乗員の生活環境管理は、サナリィの総務や調達部の人員で賄った。

 

ブライトは新たに参謀戦略室を設け、多数の人員配置を行った。

役割は情報収集と作戦立案と戦術シミュレーションだ。

モノケロース一隻とはいえ、相手どる事になる敵は地球圏最大勢力の連邦軍と二番手のコスモ・バビロニアだ。人員はいくらあっても困らない。

 

更に新たに正式に設けたのは、研究開発室だ。

言うまでもなく、ここは希望者が多かった。

サナリィから開発中のモビルスーツや兵器、その部品や、連邦やアナハイムに渡せないようなものが、所狭しと搬入されている。

これらの中から使えるものの再検証や整理、開発中の物の完成等を行う部署だ。

当然ながら、アムロの副司令としての管轄下となった。

タカトク中将に影響された人員が多数在籍しており、彼らの暴走を抑えるのもアムロの役目だ。

 

 

新サイド6への合流へ向け、準備が着々と進む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、地球圏では……

連邦軍はコスモ・バビロニアへの対応を巡り、連邦議会の承認が得られぬまま、時が過ぎていた。

今、連邦軍はコスモ・バビロニアへの警戒はもとより、各サイドや月面都市の独立運動の取り締まりや監視を全力で行っていた。

 

だが、そんな中、新たな不安要素が上がってきたのだ。

それは、ブライト・ノアの失踪だ。

 

連邦宇宙軍はこの緊急事態において、退役将校であるブライトに対し再招集を行うべく、フォン・ブラウンのブライトの家に直々に制服組を訪問させたのだが、もぬけの空だったのだ。

妻であるミライだけでなく、娘の家族も失踪していたのだ。

 

特にこの報告を受けた連邦軍本部の将校達は焦りを覚えた。

 

もしかすると、あのブライト・ノアがコスモ・バビロニア側に付いたのではないかと……

 

それは由々しき事態だった。

現連邦軍本部の将校はブライトと同世代の人間が多く在籍している。

当時、ブライトの華々しい活躍に対し、嫉妬や妬みと同時に恐れも抱いていた。

その表面上の戦果を見るだけでも異常なのだ。

一年戦争から第二次ネオ・ジオン抗争まで、どれを見ても圧倒的に不利な状況からの奇跡的に近い戦果と言わざるを得ない。

当時の連邦軍本部が極端にブライトを恐れていたのも頷ける。

そのブライトがこの事態のこのタイミングで失踪。

最悪な事態を想定しないわけには行かなかった。

 

もし、ブライト・ノアがコスモ・バビロニアに付いて、連邦にその鋭すぎる牙を向けたのなら………

それを考えるだけでも頭が痛いどころではない。

 

連邦軍本部は、元ロンド・ベル艦隊の士官や将校を、コスモ・バビロニア関連の防衛戦略から外し、権限を違和感ない程度に下げ、各サイドや月面都市の独立運動取締等に回した。

 

更に、ホワイト・ベースやアーガマの生き残りの監視まで指示を出す。

 

 

また、ある噂が連邦宇宙軍の将兵の間で出回っていた。

アムロ・レイの亡霊が出たと、まことしやかに囁かれていたのだ。

噂の出どころは勿論、L5宙域新サイド6の外れでの宙域戦闘に関わった艦からだ。

『白い旧型のモビルスーツが一機突如として、宙域に現れ、艦隊は手も足も出ずにやられた』と……。

 

実際の戦闘記録データを確認すると、突如現れたνガンダムと目されるモビルスーツ一機に3隻の戦艦と24機のモビルスーツが行動不能状態にされていたのだ。

これだけでも相当な異常事態だ。

モビルスーツ単機で戦艦3隻とモビルスーツ24機を破壊せず行動不能にするなど、常識的にあり得ないのだ。

 

だが、噂どおりの人物であれば……アムロ・レイならばあり得ると。

 

アムロは過去に、一年戦争時の最終決戦(ア・バオア・クー)、第二次ネオ・ジオン抗争において、これに匹敵又はそれ以上の撃墜スコアを上げていたのだ。

 

だが、アムロ・レイは30年前にMIA(戦時行方不明)とされ、既に連邦軍内では死亡が確定されていた。

 

この報告を受けた連邦宇宙軍の上層部は直ぐに箝口令を出すが、目撃者が多すぎる。

何せ、行動不能にはされたが、艦の乗務員やモビルスーツパイロットは全員生きているのだ。

箝口令を出す前にも、既に噂が広がり始めていたのだ。

 

この事態を重く見た連邦宇宙軍は改めて戦闘データの検証を行い、νガンダムを制作したアナハイム・エレクトロニクスにも問い合わせる。

 

アナハイム・エレクトロニクスからの返答により、モビルスーツは間違いなくνガンダムだと判明する。

しかも、パイロットは高度なニュータイプ能力を発揮していたと、それもアムロ・レイに匹敵するほどの能力だと言うのだ。

 

当初、連邦宇宙軍では、ニュータイプと目しているシュトレイ・バーンが関わっているのではないかと疑っていた。

何処からか得た嘗ての英雄の乗機であるνガンダムを新サイド6独立の旗頭にするために、シュトレイ・バーンが搭乗していたという可能性だ。

だが、そのシュトレイ・バーンは同じ頃に、近い宙域ではあったが、キルケーユニットのレーン・エイムの部隊とユニコーンガンダムで交戦していたのだ。

 

 

『νガンダムには誰が乗っていたのか?』

 

 

本当に亡霊なのか?

 

実はアムロ・レイが生きていたのではないか?

 

生きていたとして、何故連邦軍の艦隊と敵対行動をとったのか?

 

結論が出ない中、噂だけは広がって行った。

 

 

 

 

一方コスモ・バビロニアでは、元クロスボーン・バンガード、コスモ・バビロニア国軍のトップだったカロッゾ・ロナの死亡により、軍上層部の再編を行っていた。

カロッゾ・ロナの後は、そのままマイッツァー・ロナが臨時に引き継いだ形を取り、ルナツー及び地球方面軍をそのまま№2の歴戦の勇士然としたレオナルド・ファルガー将軍が率い、グラナダ駐留軍はカロッゾ・ロナの懐刀と呼ばれていた、顔の上部を覆う仮面を常に被っているシアノ・マルティス大佐が任につく。

フロンティア・サイドに駐留する本軍は、マイッツァーの代理として、エドガー・ロンデル将軍が率い、本軍第2師団にカロッゾの連れ子で、セシリーの異母兄にあたるドレル・ロナが中佐に昇進して就任した。

大佐に昇進したザビーネ・シャルが引き続き親衛隊の指揮を執る。

 

コスモ・バビロニア国軍は、サイド7及び連邦の宇宙要塞ゼダンの門(ア・バオア・クー)、コンペイ島(ソロモン)、ドーザへの攻略の準備を着々と進めていた。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

更に1か月が経過する。

アムロは現在YF-5に乗り、新サイド6に向かっていた。

シュトレイ・バーンことバナージにモノケロースの合流の意思を伝え、交渉するためだ。

なぜνガンダムではなくYF-5なのか?

ステルス性や持続航行能力の高いYF-5ならば、連邦やコスモ・バビロニアの警戒網を人知れずに突破が可能であるからだ。

アムロはこの戦いに身を置く事を決意し、YF-5を使うつもりはなかったのだが……。

 

アムロはモノケロース参加に当たって、メガロード01上層部や未沙に話しをつけてはいたのだが……、条件を出されていた。

YF-5シューティングスターと無人機24機を携行する事、ハロとのリンクは常に行い、状況をリアルタイムでメガロード01に送信する事だ。

さらに、アムロがピンチに陥った場合、メガロード01の長距離移民船団を動かすとも……。

最後のはアムロにとって、脅しのような物だ。

長距離移民船団をアムロ個人の問題で、戦乱に巻き込むわけには行かないと言う思いが強い。

さらにこの世界の問題はこの世界の人間が解決すべきだと思っていた。

 

だが未沙に……、夫を心配しない妻はいないと……、貴方の妻は夫が苦境に陥る所を黙って見ているような女に見えますか?と……微笑みながらそう言われた。

アムロは微笑む未沙から、何故かプレッシャーのような物を感じ、承諾するしかなかった。

 

そんなアムロだが、戦いにおいてはνガンダムで前に出る腹積もりである。

この世界でやり残した事をνガンダムでやり遂げたいという思いが強い。

既にタカトク中将にHi-νガンダムに改造されてしまってはいるが……。

 

 

 

この1カ月、ブライトが艦隊司令に就任し新体制に移行したモノケロースは、ブライトの指揮の元、新サイド6への合流に向けて各種準備を進めてきた。

特に戦略については何度も検証を重ねる。

既に新サイド6合流については、凡その戦術は決まっていた。

後は新サイド6との交渉を行い双方の同意が必要となる。

今丁度アムロがYF-5で向かっており、ほぼ確定だろう。

ブライトは新サイド6との合流後の戦略について、検証を重ねていたのだ。

 

現在、地球圏の勢力図では、地球は全て地球連邦が握っている。

宇宙では、コスモ・バビロニアが主に、月と地球の間のL1宙域新サイド4フロンティア・サイドと、月とは正反対のL3宙域の宇宙要塞ルナツー、そして月面都市グラナダを押さえている。

それ以外のサイド、月面都市、主要宇宙要塞は地球連邦の勢力圏ではあるが、これがひっくり返る可能性がある。

各サイド、月面都市が地球連邦から独立しようとしている事はどこの勢力も把握済みだ。

今は、サイド7以外の各サイド・月面都市は独立の機会を伺い、コスモ・バビロニアは各サイド・月面都市の取り込み又は独立を促す戦略を進め、地球連邦はそれを阻止するために動いている状況だ。

 

コスモ・バビロニアは事実上の独立を果たした状態なのが現在で、勢力図から見ると、たかだかサイド一つに、月面都市一つと宇宙要塞一つのコスモ・バビロニアは何時でも連邦に潰されるように見える。

だが、各サイド・月面都市が独立を果たした場合。

宇宙は国家が乱立する群雄割拠の時代に突入する。

それでも勢力としては連邦が一強であることは変わらない。

しかしながら、宇宙における勢力図は完全に翻り、予断を許さない状態となる。

コスモ・バビロニアの目論見通り、コスモ・バビロニアが宇宙の独立したサイドを束ねれば、地球圏を地球と宇宙を二分する勢力図が出来上がる。

この後は地球と宇宙、アースノイドとスペースノイド、連邦とコスモ・バビロニア率いる宇宙サイド連合軍という構図になる。

一年戦争時の連邦は圧倒的な資源と物量差により、力ずくでジオンをねじ伏せたが、今回はそうはならないだろう。

初期兵力の物量差はあるだろうが、資源という意味では、今や宇宙全体の方が上である。

さらに、連邦は月面都市アナハイム、アナハイム・エレクトロニクスを抑えられると、戦力の増産が困難に陥る。連邦がモビルスーツ生産をアナハイム一社に任せていたツケである。

元々モビルスーツの性能差もある上に、兵力の物量差も埋まってしまうのだ。

 

そう単純なものでは無いが、凡そコスモ・バビロニアのマイッツァーが描いた戦略通りに事が進むことになるだろう。

 

そうなってしまっては、連邦政府とコスモ・バビロニアの二強となり、地球圏の人々は、このまま連邦の腐敗した支配制度か、もしくはコスモ・バビロニアのコスモ貴族主義のどちらかに属する選択を迫られる事になる。

最終的にどちらかが地球圏の覇権を握ったとしても、人々に平和と安寧が得られるのだろうか?

 

ブライト、いやアムロも、少なくとも彼女『オードリー・バーン』の理想なら、賭けても良いだろうと思えていた。

オードリー・バーンの理想とは宇宙から新たな統治制度を作る事、そのためには宇宙の各サイドが連携を取り、経済交渉などで、宇宙における連邦の支配体制を緩め、最終的には連邦政府に地球からの統治を捨てさせ、新たな統治機構に生まれ変わる事を望んでいた。

だが、今となっては戦わずしてそれらを得る事はまず不可能だろう。

コスモ貴族主義を掲げているコスモ・バビロニアがオードリーの民主的な構想に賛同するわけもない。となると宇宙全体で連携が取れなければ、連邦政府の力を削ぐこともかなわないからだ。

彼女自身もそれは理解しているし、何よりもいつも隣にいるバナージがそれを一番理解しているだろう。

オードリーとバナージは、その理想を胸にしまい、今は新サイド6の独立運動に力を注いでいる。

 

だが、ブライトは新サイド6が第三の勢力となる可能性を見出していた。

オードリー自身のカリスマ性や新サイド6の政治的要因だけではない。

宇宙における新サイド6の位置についても関係している。

 

新サイド6の独立後に、コスモ・バビロニアに取り込まれず、一勢力として維持するにはどうすべきかと、連邦とコスモ・バビロニアとどう対抗すべきかと……。

ブライトは24年前の、ハサウェイが地球に降りる前に撮った二人で肩を並べている写真を眺めながら、思考を巡らせる。

 




次回こそは戦闘シーンを!
NEWキャラ登場予定。
ヒントは今回のお話にちょっとありますね。

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