アムロの帰還   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。


ちょっと文章で分かりにくいので、宇宙圏の勢力図を作ってみました。
文章の途中にチョイチョイ挟んでますので、参考までに……
因みに今回のお話前の勢力図をここに貼っておきます。


【挿絵表示】



ブライト立つ

アムロは一人、地球圏外縁部に待機するモノケロースから発ち、YF-5で連邦の警戒網を気づかれる事なく突破し、新サイド6の33バンチコロニーに到着する。

目的はモノケロースが新サイド6に合流する意思がある事を伝えるためだ。

そして、33バンチコロニー周囲に浮遊する農業用プラントの一つにて、オードリーとバナージと3カ月ぶりの再会を果たし、古びたレンガ造りの一軒家で話し合いの場が設けられた。

 

アムロは先ずは、モノケロースがブライトを頭に置き、一勢力の名乗りを上げ、その上でオードリーとバナージ達新サイド6独立運動派と合流する旨を伝えた。

 

「わたくし達に協力していただけると……ブライト艦長、……ブライト准将は立ち上がってくださいましたか……」

「ああ、俺もアムロ・レイとして、ブライトと共に戦うつもりだ」

「アムロさん……よく………」

オードリーは胸元で小さく祈る様な仕草をし、目を瞑りながら静かに言葉を口にする。

バナージもアムロのその言葉に感慨深かったのか、言葉が続かない。

 

この後、特殊な通信ルートで地球圏外縁部に待機中のモノケロースのブライト達と、通信による会談が行われた。

現在、連邦軍が全力で警戒している中では、通常通信や最新型のレーザー通信でもハッキング又は妨害される可能性が高い。

だが、中型高速輸送船とYF-5の間にフォールド通信を行う事で、中型高速輸送艦と接続しているモノケロースと、YF-5が待機しているこの農業用プラントとのリアルタイム通信を可能とした。

フォールド通信技術とは電波を空間転移させ通信可能とする技術である。

ワープ航法(空間歪曲型ワープ)の通信版と認識すればわかりやすいだろう。

超時空間内を通して電波を送るため、途中の障害物だろうが、妨害電波だろうが、通常空間での障害は全く受け付けない。

接続する超時空間に、時空波等を利用した直接超時空間に作用させるような妨害方法でなければ阻害出来ないのだ。

そもそも通常空間で電波を飛ばしていないため、宇宙世紀の技術ではハッキングどころか阻害すら不可能だ。

だが、この施設に直接盗聴器などを仕掛けられていたならば、ここでの会話は筒抜けとなるだろう。

バナージはここでの盗聴の心配はないとは言ってはいたものの、アムロは念のためYF-5に待機しているハロを通じて周囲の電波や通信網を監視させていた。

 

モノケロースの合流についての交渉は問題無く進み、次に情報交換を行う。

オードリー達は連邦宇宙軍の監視が厳しい中でも各サイドとも、連絡を取り合っていた。

凡そ、各サイドは独立を行う事が決定しているらしいが、連邦の監視や締め付けが厳しいため、中々困難な状態だと言う事だ。

バナージ達の独自調査によると、L4宙域のサイド2及び新サイド5はコスモ・バビロニア側に付く可能性がある事が判明している。

実際に、コスモ・バビロニアはサイド2、新サイド5と盛んに交渉を行っていた。

多数の交渉カードを巧みに使い、議会を抑えにかかっていたのだ。

特に軍事支援という交渉カードは大きい。

サイド3にもコスモ・バビロニアに追従しようとする大きな勢力があるとの事だ。

元々、ジオン公国を名乗っていた頃のサイド3は階級社会であり、当時の上流階級達にとって、コスモ貴族主義は魅力的に映ったのだろう。

サイド1はコスモ・バビロニアに対し明らかに拒否反応を示していた。

サイド1は労働者層が多いサイドだ。

元々連邦の支配に対しても反発が大きく、階級社会を構築するコスモ貴族主義を受け入れるような事は無いといえるだろう。

連邦の支配に各サイドに比べ抵抗は少ない月面都市も、この機に独立を目指している事は判明している。

但し、連邦側なのかコスモ・バビロニア側なのか、さらには単独での独立なのかは各都市で意見が割れているという。

だが、バナージ達も月面都市については噂程度の情報しか手に入れる事が出来ず、正確な内情を把握しきれていない。

 

 

 

実際には月面都市は、各サイドとは別の動きを見せていた。

アナハイム市を実質支配しているアナハイム・エレクトロニクスがこの戦争を大いに利用するために、各月面都市において暗躍していたのだ。

 

月において、アナハイム・エレクトロニクスの力は絶大だった。

アナハイム市以外にも月面大都市 アンマンやフォン・ブラウン、グラナダにも工場があり、その他の月面都市にも何かしらの部品工場などが存在している。

月面都市の殆どが、何らかの形でアナハイム・エレクトロニクスと関りがあると言っていいだろう。

 

特にコスモ・バビロニアが占拠したグラナダにはアナハイム・エレクトロニクスの大工場があり、占拠される十数年前からコスモ・バビロニア(クロスボーン・バンガード)製のモビルスーツ主要部品の殆どを生産していたのだ。

勿論、連邦政府や連邦軍はこの事を把握などしていない。

しかもアナハイム・エレクトロニクスは、コスモ・バビロニアがグラナダを占拠する事を事前に知っていたどころか、情報を流し、手引きすらしていたのだ。

この事からも、アナハイム・エレクトロニクスは既にコスモ・バビロニアとも相当深いつながりがある事がわかる。

 

アナハイム・エレクトロニクスの暗躍はこれだけではない。

月面最大都市 フォン・ブラウンと関りが深いサナリィがコスモ・バビロニアと繋がっていたというデマを広げ、サナリィ本部基地を解体に追い込み、さらにフォン・ブラウン市議会議員を買収し、実効支配を着実に進めていたのだ。

 

月面都市の殆どを経済で支配しているアナハイム・エレクトロニクスだが、月に自分たちの新たな国を作ろうなどとは考えていない。

目的は月面都市を個々に独立させる事だった。

一見アナハイム・エレクトロニクスには利益は無いように見える。

だが、独立させた月面都市には役割を与える。

アナハイムを中立都市としアナハイム・エレクトロニクスは表面上中立の立場を維持する。フォン・ブラウンには連邦側に、アンマンをこれから独立するだろう各サイド側に付けさせる。

これに既にコスモ・バビロニアに実効支配されているグラナダとで、地球圏の各勢力に各月面都市から安定的に兵器を売りつける算段をつけていたのだ。

最終的に連邦が倒れようが、コスモ・バビロニアが倒れようが、アナハイム・エレクトロニクスは生き残り、利潤を得られるようにと……。

企業の生き残りを掛けた壮大な戦略ではあるが、巻き込まれる月面都市の住人からすればたまったものではない。

それどころか世界の人々からすれば、地球圏全てに武器を売りさばく死の商人そのものに見えるだろう。

 

 

 

それはさておき、バナージが得た情報とアムロが無人機で収集した地球圏の情報を突き合わせ、新サイド6の独立のタイミングについて話し合いが進む。

 

バナージ達は既に新サイド6の独立のタイミングを凡そ決めていた。

決めてはいたが、具体的な日時は計りかねていた。

それはコスモ・バビロニアが動き、連邦の宇宙要塞やサイドに攻撃を仕掛けたタイミングであるがためだ。

コスモ・バビロニアの動き次第という事だが、独立を行うには絶好のタイミングであり、成功する可能性が極めて高い。

新サイド6の駐留艦隊や周囲宙域に展開する連邦宇宙軍はコスモ・バビロニアが戦端を切れば、迎撃や防衛に戦力を送り込むだろう。

新サイド6が手薄になった頃を見計い、残った連邦駐留軍の動きを抑え、独立宣言を行うという物だ。

大方他のサイドも同じ動きをするだろう事は予想済みだ。

ほぼ、同じタイミングで各サイドが次々に独立を行えば、コスモ・バビロニアの行軍対処と合わさり、連邦も手が回らなくなる事は想像に易い。

コスモ・バビロニア側も、コスモ・バビロニアが動けば、十中八九各サイドが独立に走ると予想しているだろう。

今コスモ・バビロニアと深いつながりがあるサイド2、新サイド5には、コスモ・バビロニアの行軍が事前通達され、独立のタイミングを測るため歩調を合わせている可能性が高い。

それどころか、その他のサイドにも独立を促すために、何らかの方法で行軍予定を事前通達する可能性もある。

 

ただ、コスモ・バビロニアがどこを攻めるかで、詳細な戦術は変わって来る。

バナージ達は、コスモ・バビロニアが何処を攻めたとしても、対処できるように複数のプランを練っていた。

 

そんなバナージ達の計画に対し、ブライトからは意外な戦略が示される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宇宙世紀0123年8月19日

コスモ・バビロニアが建国宣言を行ってから5カ月、宇宙は静けさを保っていたが、遂にコスモ・バビロニアが沈黙を破り、隠し研いでいた爪を振るった。

新サイド4、現コスモ・バビロニア本国からL4宙域に向けて3師団クラスの艦隊(艦船36隻相当)、コスモ・バビロニアの全戦力の半分弱と想定される艦隊が出撃を開始したのだ。

 

対する連邦はその動きを早期に察知し、迎撃態勢を整える。

現在L4宙域には宇宙要塞 ドーザには3師団程、サイド2、新サイド5にはそれぞれ2師団クラス(艦船24隻相当)の戦力が整っており、L4宙域だけで7師団クラスの艦隊が待機していることになる。

コスモ・バビロニアの侵攻と各サイドの独立運動に備え、連邦軍は地球に待機する艦船を宇宙に上げ、各宙域の戦力を増強させたのだ。

さらに連邦は月周回軌道に遊撃艦隊4師団を待機させ、新サイド4のコスモ・バビロニアに対し、警戒網を敷くと同時に他の宙域をいつでもカバーできる体制を整えていた。

 

コスモ・バビロニアは3師団で、最大11師団クラスを相手どることになる。

奇襲でL4宙域のサイド2・新サイド5・宇宙要塞 ドーザのいずれかを攻撃したのならば、制圧可能だったかもしれないが、早期発見された時点で連邦は迎撃態勢を整え、宙域での艦隊戦となるだろう。

いくら最新の小型モビルスーツを擁するコスモ・バビロニアとはいえ、この戦力差では不利は否めない。

 

長引けば、月面都市や他のサイドや宇宙要塞からも援軍が現れるだろう。

そうなれば、コスモ・バビロニアは敗退を免れない。

 

 

 

L4宙域外縁部に、コスモ・バビロニアの艦隊を迎撃すべく、宇宙要塞ドーザ、サイド2、新サイド5、月軌道遊撃艦隊が次々と合流ポイントに到着。

サイド2と新サイド5には1師団弱の戦力を、宇宙要塞 ドーザには僅かな手勢を残し、大凡9師団相当の戦力が集結した。

迎撃艦隊の指揮官となったディーロ・マサン大佐は、コスモ・バビロニアの艦隊が接触予想時間となっても現れない事に、副官のミケロ・スコビッチ中佐に愚痴をこぼしていた。

「まだ現れないのか?まさかやつらめ、こちらの動きを察知し、撤退したのではあるまいな」

「確かに、ここに来て敵の進行速度が鈍っておりますな」

「まあいい、向こうの進行が遅れればそれだけ、こちらが有利になる」

「そうですな。レバント中将はこの隙に、コスモ・バビロニア本国である新サイド4包囲艦隊を形成するとの事でしたが……、」

「ふう、レバント中将は少々功を焦っているのではないか?」

「確かに、未だ議会の承認が得られず、敵本国には直接攻撃は出来ませんからね。ただ、向こうから攻撃を仕掛けてくれば別の話です。こちらの迎撃艦隊と敵艦隊が交戦状態になれば、それを口実に、包囲網を敷く予定の艦隊で新サイド4に直接攻撃を仕掛けるかもしれませんね」

「………中将ならばやりかねん。議会の承認が得られず、今迄歯痒い思いをしておられたからな。言い訳など後から付け足す事がいくらでもできる」

「ただ、心配なのは戦力をつぎ込みすぎれば、各サイドの防衛が手薄になります。そうすれば、各サイドのスペースノイドに独立の隙を与える事になりかねないと……」

「その位は中将も考えておられる。出撃は地球のオークリーとコンペイ島、ゼダンの門からだ。気にかけて置くべきサイドは新サイド6ぐらいだ。それでも各サイドには最低でも一師団レベルの戦力は残すだろう。宇宙要塞が手薄になるだろうが、ルナツーはサイド7が睨みを効かせてある。グラナダの戦力はそれほど多くはない。コスモ・バビロニア本国以外で、宇宙要塞を攻略出来る程の戦力を保持している勢力など、どこにもないだろうからな」

現在、コスモ・バビロニアは正式に独立国として認められていた。

しかも、連邦議会側はコスモ・バビロニアに対し宥和政策まで打ち出していたのだ。

(妥協点を探り、協議と譲歩によって武力衝突を避ける外交政策)

実際に、連邦議会は使節団を送り、捕虜交換以外に、複数の資源衛星譲渡や幾つかの利権と引き換えにルナツーとグラナダの返還を求めていた。

コスモ・バビロニアと和平交渉を進めようとしていた連邦政府から、連邦軍はコスモ・バビロニア本国への攻撃はおろか、敵対行動を慎むようにとまで通達を受けていたのだ。

連邦宇宙軍を指揮する強硬派のレバント中将が、この事に歯軋りをしていたことは想像に易い。

連邦軍首脳も、コスモ・バビロニアとの和平交渉が纏まる可能性は低いと考え、いつでも対処できるようにと防衛戦略はしっかりと組んでいた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

そして……

「大佐!緊急通信です!………ド…ドーザがモビルスーツ大部隊に襲撃を……すでに内部まで侵入を許し、陥落寸前です!」

迎撃艦隊を指揮するディーロ・マサン大佐の元に緊急事態を知らせる暗号電文で送られてきたのだ。

宇宙要塞 ドーザが突如としてモビルスーツの大部隊に襲われたと言うのだ。

しかも、陥落寸前と……。

 

「な……なんだと!?どういうことだ?敵は!?」

ディーロ大佐は突然の事に動揺を隠せない。

宇宙要塞 ドーザから出発しこの宙域に到着するまで、ドーザ及び周辺宙域には異変が無かったのだ。

 

「いえ、詳細は……次の電文が来ました!コスモ・バビロニア製のモビルスーツです!」

 

「バカな!?どういうことだ!?奴ら、どうやってドーザに!?……目の前の艦隊はどうなっている!?」

 

「新サイド4から進軍した艦隊はゆっくりとこちらに向かったままです」

 

「奴らは囮か!?狙いはドーザだったか?しかし、どうやって!?……反転!!進路をドーザに!」

 

「大佐、落ち着いてください。今反転すれば、後方から狙われます!」

ミケロ中佐はドーザに救援に向かう指示を出すディーロ大佐を諫める。

 

「ええい!4個師団はここで殿だ!後はドーザに救援に向かう!!」

迎撃艦隊は9師団の内4師団をこの宙域に残し、宇宙要塞 ドーザに向かった。

 

だが、既に遅かった。

救援に向かった艦隊は道中半ばで、宇宙要塞 ドーザが、コスモ・バビロニア製モビルスーツを扱う集団によって陥落したことが判明した。

 

宇宙要塞 ドーザはどうして落ちたのか?

宇宙要塞 ドーザ周囲宙域は警戒を怠っていなかった。

敵艦隊が近づけば、射程範囲に入る前に判明するはずだ。

だが、緊急電文からはモビルスーツ大部隊が突如現れ、大した抵抗も出来ずにドーザ内部に入り込まれたような有様だった。

 

実際の状況はこうだった。

コスモ・バビロニアの艦隊がL4宙域に向かっているという情報が入ると同じ頃、木星からヘリウム3を2年かけて輸送するジュピトリス級超大型輸送艦ジュピトリスVが定期輸送のため宇宙要塞 ドーザに到着し、ドーザの外郭指定個所に接岸する。

宇宙要塞 ドーザから、コスモ・バビロニアの艦隊を迎撃するために、9割以上の戦力が迎撃のため出撃。

迎撃部隊がL4宙域外縁部に到着の頃を見計らい、ジュピトリスVからコスモ・バビロニアのモビルスーツ大部隊と制圧機械歩兵部隊(歩兵と小型艇や戦闘車両)が出現し、ドーザ内に容易に侵入を許し、瞬く間に制圧されたのだ。

ジュピトリスVは4カ月前の段階で火星圏から地球圏に向かうアステロイド宙域で、コスモ・バビロニアに掌握されていたのだ。

コスモ・バビロニアはジュピトリスVには予めスパイを送り込んでおり、既に内部掌握もほぼ済ませ、戦闘もなしにモビルスーツ部隊と制圧部隊を潜り込ませる事に成功していた。

その後、何もなかったかのように、予定通りに地球圏へ向かい宇宙要塞 ドーザに到着。

そして、事を起こしたのだ。

 

この計画は、コスモ・バビロニアが建国宣言を行う前から実行されていたものだった。

その間、状況に合わせ戦術の細かな調整や修正は行っていたが、既にドーザの命運は決していたと言う事だ。

 

 

更に、サイド2と新サイド5は連邦政府からの独立宣言を順次行ったのだ。

駐留していた連邦軍の艦隊は、コロニーの宇宙港内に閉じ込められ、身動きが出来ない状態に陥る。

艦船が駐留していた幾つかのコロニーは、コロニー側の工作員とコスモ・バビロニアのMS小隊により宇宙港を完全にロックし、さらに艦船が停泊しているドックに事前に爆薬を仕掛け、降伏勧告を行い、次々と艦船を無力化していった。

宙域の巡回警戒を行っていた艦船は、何処からか現れたコスモ・バビロニアのMS部隊に攻撃を受け撃沈又は行動不能となり、コロニーや住民に被害を殆ど出す事もなくあっさりと駐留艦隊は制圧されたのだった。

これはコスモ・バビロニアが新サイド4制圧時に、連邦の無謀な反撃により、コロニーや住民に被害が拡大したことを教訓に練られた戦術であった。

 

 

コスモ・バビロニアに宇宙要塞 ドーザが占拠された直後、コスモ・バビロニア側から占拠宣言は無かった。

よって、現段階では正式には宇宙要塞 ドーザは何らかの賊かジュピトリスVの反乱によって占拠されたと言う事になっている。

コスモ・バビロニアがサイド2、新サイド5の独立に関わったという確たる証拠もない。

コスモ・バビロニア製のモビルスーツが確認されたとしても、本当にコスモ・バビロニアの手の物なのかは正式に証明できないのだ。

現在の認識では、コスモ・バビロニア側は新サイド4の本国からただ艦隊を動かしただけ、しかも連邦が支配する宙域には踏み込んでもいない。

 

これでは新サイド4のコスモ・バビロニア本国をどさくさに紛れて攻撃することも出来ない。

 

それどころか1日も経たずに、地球連邦は宇宙要塞 ドーザ、サイド2・新サイド5とL4宙域の全てを失ったのだ。

 

レバント中将は歯ぎしりしながら新サイド4周辺へ展開しつつあった大規模艦隊を戻し、宇宙要塞 ドーザ奪還へ向けたのだった。

 

だが、宇宙要塞 ドーザをモビルスーツ部隊での奇襲で奪取したコスモ・バビロニア側だっただが、所詮は寡兵だ。

連邦宇宙軍の大規模艦隊にはなすすべもなく、宇宙要塞 ドーザの奪還は容易に進んでいく。

艦船が多数ドーザに取りつき、要塞内での制圧戦に移行し、奪還間近に迫ったその時。

宇宙要塞 ドーザは大爆発を起こし、粉々に粉砕したのだ。

勿論、ドーザに取りついた艦船は全滅、ドーザ周囲に展開した艦隊も大ダメージを受ける。

 

これは、宇宙要塞 ドーザの移動用核パルスエンジンを暴走させたのだ。

更に核反応に使用する燃料は、現在多量に存在していた。そうジュピトリスVだ。

それだけでなく、ドーザ内に残っていた連邦の艦船もエンジンを暴走爆発させ、連鎖的に大規模爆発を起こさせたのだ。

 

ここまでがコスモ・バビロニアの今回の作戦だった。

サイド2、新サイド5の独立だけでなく、今回の作戦の中枢は連邦宇宙軍に大打撃を与える事だったのだ。

 

 

 

 

 

しかしこの時、別宙域ではコスモ・バビロニアにも予期せぬ事態が起こっていた。

 

「元連邦宇宙軍准将 ブライト・ノアだ。故あって、貴軍と敵対する事となった。敵対の意思無き者は直ぐにこの場を離れよ。降伏する者は地球連邦政府の規約に準じた扱いを約束しよう。敵対の意志ある者は全力を持って相対しよう。以上だ」

ブライト・ノアは連邦軍管轄の宇宙要塞 コンペイ島(旧ソロモン)に対し、オープンチャンネルでこう宣言したのだ。シンプルではあるがブライトらしい宣戦布告だ。

 

モノケロースは単騎で宇宙要塞 コンペイ島の直下Sフィールド外縁に突如として現れ、攻撃の構えを見せたのだ。

 

この宣言の直後、慌てて、コンペイ島から映像通信がモノケロースに入る。

『わ、私はコンペイ島基地司令代行のベルファル・フェルナンド大佐です。ブライト・ノア准将、正気なのですか?貴方ほどの方が何故、連邦に反旗などを』

 

「ブライト・ノアだ。先ほど宣言した通りだ。今の連邦に義は無い。貴官に対し遺恨は無いがこれは将兵の定めだ。抵抗するならば全力を持って粉砕する」

ブライトの鋭い目つきが、画面越しのフェルナンド大佐に突き刺さる。

 

『……そ、それにたった一隻の戦艦で何が出来ると言うのです。貴艦を一瞬で宇宙の藻屑に出来る戦力は十分にこちらにあるのですぞ。降伏をされるのが賢明です』

フェルナンド大佐は、ブライトの眼光に怯みながらも、説得しようとする。

 

「貴官の懸念には及ばない。一年戦争、グリプス戦役、ハマーンにシャア、このような状況は幾度も経験してきている。勝算無くしてここには立たん。さあ、覚悟を持って全力で来るがいい」

数多の戦いに勝利した歴戦の勇士 ブライト・ノアが醸し出す雰囲気と眼光、さらには言葉の圧力は凄まじい物だった。

その圧力は、ブライトの隣の艦長シートに座るレアリーやブリッジ要員も気圧される程だった。

 

『か………、こ、後悔めされるな」

その圧力にフェルナンド大佐は思わず息をするのを忘れ、発令所司令官席から崩れ落ちそうになるが、何とか堪え、こう言って通信を切る。

通信を終えたフェルナンド大佐は、全身から冷や汗が吹き出し、息も絶え絶えであった。

あのブライト・ノアが敵として目の前に現れた……。

これだけでも十分動揺すべき問題ではあるが、宣戦布告を映像越しではあるが目前でされたのだ。

この映像通信を見ていたコンペイ島の発令所要員も、同じく動揺の色が濃く、意気消沈していた。

 

 

そして……

コンペイ島とモノケロースとの戦闘が始まった。

コンペイ島の兵力は現在1師団クラス。艦船13隻、モビルスーツ78機だ。

コンペイ島の主戦力はコスモ・バビロニア本国、新サイド4の包囲艦隊に組み込まれ、現在L4宙域の宇宙要塞 ドーザ奪還戦に参加していたため、戦力は最低限であった。

それでも、この戦力差は普通に考えれば戦艦一隻など一瞬で塵となるものだ。

 

コンペイ島からの一斉射撃によるビーム攻撃がモノケロースに飛んでくる。

ミノフスキー粒子は戦闘レベルまでに達しつつあり、ビームの射線がぶれる。

幾つかのビームはモノケロースに掠るが、展開されている高出力Iフィールドに弾かれ又は貫通することができず、ダメージを与える事が出来ない。

 

続いてコンペイ島から艦船が出撃を開始した。

だが、そのうちの2隻がモノケロースの正面宇宙港から出撃開始したのだ。

普通ならば、艦隊戦が行われているフィールド面から出すものでは無い、戦闘が行われていないフィールドから出すのがセオリーだ。

だが突如として起こった戦闘だった。

他のドックに内部移送する時間が惜しかったのだろう。

艦の艦長も敵が一隻と侮って現在停泊しているドックからそのまま出てきたのだ。

 

「主砲発射!」

レアリーの掛け声と共に、モノケロースの主砲が火を噴く。

高出力ハイパー・メガ粒子砲の直撃により、迂闊に正面から出て来た艦船は爆散。

 

「レアリー艦長!直下に潜り込め」

「司令、了解です。主砲は宇宙港に狙いを定めたまま、ポイント22に移動開始」

 

 

その頃、モノケロースの反対側に位置するNフィールドでは、コンペイ島から艦船が続々と出撃を開始していたが、突如として一隻の艦のメインエンジンと主砲が攻撃され、行動不能状態に追いやられたのだ。

 

とある艦のブリッジでは……

「何?どこだ!?どこからの攻撃だ!?」

「艦長!!また一隻やられました!!」

「観測士!!敵は見つからんのか!!」

「いえ………発見しました!!直上です!!映像だします」

「………白いモビルスーツ……まさか!!噂のアムロ・レイの亡霊か!?ぐっ……何があった!!」

「当艦メインエンジン被弾!!沈黙!!左右主砲沈黙!!」

「な、なんだと……」

「……艦長……当艦戦闘継続不能です」

「ば、ばかな」

「ダメージコントロール……当艦は爆散の危険性はありません」

「……どういうことだ……助かったのか?……まさか、ピンポイントに急所だけを狙ったのか……」

 

 

 

アムロが駆るHi-νガンダムは、モノケロースがコンペイ島に到着するかなり前に出撃し、単独でモノケロースの侵攻予定であるSフィールドの正反対位置であるNフィールドへと向かっていた。

奇しくもこのルートは、デラーズフリートの反乱時にアナベル・ガトーがコンペイ島に核を放つために通った道筋だった。

 

アムロの役目はNフィールドから出撃するだろう艦船とモビルスーツの無力化だった。

Hi-νガンダムから放たれる12基のフィンファンネルは次々と出撃する艦船のメインエンジンと主砲を貫き、いとも簡単に行動不能に陥れていく。

アムロの戦闘センスもあるのだが、出撃前後の艦ほど無防備なものは無い。

 

「ソロモンがこれ程脆いとは……」

アムロは複雑な気分であった。

嘗て、このコンペイ島がソロモンと呼ばれた一年戦争時、連邦とジオンはここで死闘を演じてきたのだ。

双方にかなりの犠牲が出た。

勿論当時のホワイトベースも手痛い犠牲を被ったのだ。

だが今回は……。

 

Wフィールドには、今もシーブックのF91とセシリーのF90NF(ニュータイプ仕様ファンネルラック搭載)が陣取り、出撃する艦船とモビルスーツを次々と無力化する。

シーブックとセシリーはアムロの教導により、確実にパイロットの腕は上がっており、この重要な場所を任せられるまでに成長していた。

 

こうして、コンペイ島の戦力をあっという間に無力化し、コンペイ島司令官代行のベルファル・フェルナンド大佐は白旗を上げたのだった。

 

モノケロースがコンペイ島の索敵に気が付かれずにSフィールドに現れた時点で勝敗は決

していたと言っていいだろう。

 

この後、待機させていた制圧人員を乗せた新サイド6輸送艦2隻がコンペイ島に入り、ブライトの指示の元、コンペイ島を掌握し占拠せしめたのだ。

 

コンペイ島のモノケロースによる単独攻略。

これが、ブライトのバナージ達を驚かせた戦略だった。

賭け要素も大いにあった。

コスモ・バビロニアと連邦の戦闘ありきの戦略であるからだ。

コスモ・バビロニアが次に攻め込むの場所はL4宙域か月だと、膨大な情報から予想していた。

そして、コスモ・バビロニアが実際攻め込んだのはL4宙域、ここまでは予想通りであった。

だが、大きな誤算もあった。

コスモ・バビロニアが半日もかからずに、宇宙要塞 ドーザを占領するなどとは思ってもみなかったのだ。

計画ではコスモ・バビロニアと連邦の戦闘が長引いている間に、コンペイ島を漁夫の利で掠め取る算段であったのだ。

しかし、結果的に連邦軍はドーザ奪還の為にコンペイ島から戦力を割いてくれたため、最速で行動に移すことにより、コンペイ島を攻略が可能となった。

 

 

 

その頃、新サイド6では……

連邦軍の駐留艦隊の半数が出撃を開始。

宇宙要塞 コンペイ島で戦闘が行われている事を観測したためだ。

通信はミノフスキー粒子にて遮断され、それ以外の妨害電波もあり、コンペイ島とは音信不通状態であったため、直接援軍を送りだしたのだ。

 

これもブライトの戦略通りであった。

 

新サイド6からの援軍がコンペイ島に到着する頃を見計らって、バナージ達が残った駐留艦隊を掌握。

コスモ・バビロニアが行った作戦とほぼ同じで、コロニー内のドックに艦船を閉じ込める作戦だ。

駐留軍艦隊の中には協力者も存在し、あっさり決着がついた。

 

コンペイ島に向かった援軍の中には、元ロンド・ベル艦隊の士官であったライル・パーシャル中佐率いる艦隊も含まれていた。

コンペイ島を占拠したのは、あのブライト・ノアだと知り、ブライトの呼びかけにより、ライル・パーシャル中佐の艦隊は降伏。

事実上の恭順だった。

残りの艦隊とは戦闘にはならず、月へと撤退していく。

同じくして、サイド1からの連邦軍の援軍が到着するも3隻は降伏。

残りの艦隊はゼダンの門へと撤退していった。

計7隻の艦が降伏したのだった。

ブライト・ノアの呼びかけにより、降伏した艦はいずれも恭順の意思を示しているが、降伏という処置を行ったのは、艦内には恭順をよしとしない将兵も多数いるからだ。

降伏した将兵を一時的に全員降伏捕虜扱いとし、恭順の意思を確認し、恭順の意思のある者はそのまま登用し、恭順の意思のない者は捕虜扱いとし、そのまま月等に送り届ける処置を行うことにしていた。

恭順を示した艦には、元ロンド・ベル出身の艦長が5人居たとは言え、如何にブライト・ノアの勇名が連邦宇宙軍にとって影響力が高かったという表れだろう。

 

 

 

この二日間でサイド2、新サイド5に続いて、新サイド6、サイド1、サイド3も独立宣言を果たし、地球圏の勢力図は大きく塗り替えられる。

後に、二日間動乱と呼ばれる歴史のターニングポイントとなった。

 

 

 

 

 

 

 

そして5日後……

連邦政府、コスモ・バビロニアも予想だにしない事態が起こったのだ。

 

新サイド6とサイド1が世界に向けて共同声明を発信。

「サイド1、新サイド6は新たな共和制連合国家、宇宙連合を建国いたします」

オードリー・バーンはサイド1の代表と共に壇上に立ち、高々と建国宣言を行ったのだ。

 

 

 

 

月面都市 グラナダ、コスモ・バビロニア駐留軍基地の一室では、目元を覆う仮面を装着した男がアンティーク調の執務席に座り、投影機で壁一面に映し出されたこの宇宙連合建国宣言の映像を見ながら、薄ら笑いを浮かべていた。

「裏切者のお姫様が良く言う、君もそう思うだろう」

 

「…………」

執務席前に立つ男は、そう尋ねられたが、無言でその映像見ていた。

 

「この展開は読めなかった、L5宙域の連合国家とは。……しかもあのブライト・ノアが表に出て来るとは面白い。連邦は手ごたえが無くていかん」

映像では丁度、ブライトが宇宙連合の軍のトップとして演説を行っていた。

 

「………」

執務席前に立つ男はその様子に拳を強く握っていた。

 

「君にはこの男を倒して欲しい。近い将来、必ず我が艦隊の障害となろう。連邦にはアムロ・レイの亡霊が現れたと言う噂が立っているが、アムロ・レイはこの世にいない。さしずめ奴の仕業だろう。この男の名はシュトレイ・バーン」

映像には宇宙連合の初代首相となったオードリーの横に肩を並べるバナージの姿が写っていた。

 

「………」

 

「奴は君と同じニュータイプだ。しかも高位の力を振るい、モビルスーツパイロットとしても一級品だ」

 

「………」

 

「君だったらできるだろう?」

 

「………」

 

「君が嫌というのであれば、彼女を行かすことになるが?」

 

「やってやるさ」

執務席の前に立つ男はようやく口を開く。

 

「いい返事だ」

 

「但し、俺を生かしておいた事を貴様に後悔させてやる」

 

「そう睨まないでくれ、君はこうでもしないと、言う事を聞いてくれないだろう?」

 

「くっ、やればいいのだろう!」

その男は唇を強く噛み、拳を戦慄かせながら、捨て台詞のように言葉を吐き、執務室から出て行った。

 

 

執務室で一人残った仮面の男は、映像を見上げながら……。

「グリプスの隠れた英雄と、ラプラスの一角獣のナイト……時を超えた死闘とは、いささか出来過ぎているか………ふふふふっはーっはっはーーーっ!」

酔いしれるように高々と笑っていた。

 

 

 

 

【挿絵表示】

 




前回NEWキャラ登場と宣言いたしましたが……
すみません。
名前をだすまでに至りませんでしたが、皆さん誰だかお判りですよね。


因みに、連邦軍のディーロ・マサン大佐、ミケロ・スコビッチ中佐、レバント中将はオリジナルですよね。

あっ、仮面のあの人はまだ秘密です。


それと、前作の番外編みたいな今作ですが、前作より長くなりそうなのはご愛敬。
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