アムロの帰還   作:ローファイト

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ご無沙汰しております。
漸く続きを書けました。

今回はアムロ本人はでません><
アムロの話なのにすみません。
だから、中々アップするのに躊躇を……。
思いっ切りつなぎ回だと思って読んで下されば助かります。



群雄割拠へと

コスモ・バビロニア国王 マイッツァー・ロナは、シアノ・マルティス大佐率いるグラナダ駐留艦隊による宇宙要塞コンペイ島の攻略失敗の一報を聞き、珍しく驚きの表情を隠せないでいた。

 

シアノ大佐が立案した宇宙連合瓦解作戦案は、対宇宙連合戦略を一気に進めるための軍事作戦だった。

それは宇宙要塞コンペイ島奇襲攻略から始まり、連邦との交渉中にある宇宙連合旗艦艦隊との直接対決による殲滅までに至る作戦だった。

旗艦艦隊にはオードリー・バーン及び宇宙連合の主要メンバーが搭乗しており、彼女らを捕縛又は殲滅となれば、宇宙連合は軍事力だけでなく政治的求心力、指導者のオードリーを失う事で精神的にも追い詰められ、大幅に弱体化は避けられないだろう。

その後は弱体化した宇宙連合首脳部をじりじりと切り崩し懐柔し、宇宙連合そのものをコスモ・バビロニアに取り込む事が容易にできるだろう。

マイッツァーはこの立案を受理し、コスモ・バビロニア本国作戦室にて何度もシミュレートを重ね、様々な戦術を練り込み、精巧な作戦へと仕上げたのだった。

この作戦で一番の不安要素は、旗艦戦力との直接対決のタイミングだった。

連邦との交渉中にある宇宙連合旗艦艦隊がコンペイ島の奇襲の知らせを受け、どの様な動きを取るかのシミュレートが一番難航したと言っていいだろう。

コンペイ島の奇襲の知らせが交渉中のどの段階で知られる事になるかによって、大幅に攻略難易度が変わるからだ。

コスモ・バビロニアにとって最悪のシナリオは、交渉中の連邦艦隊と宇宙連合旗艦艦隊が連合を組み、グラナダ駐留艦隊がコンペイ島攻略中又は攻略直後に戻って来る事だ。

この場合、グラナダ駐留艦隊はコンペイ島攻略中断又は占拠後破棄して撤退となるだろう。

最高の出来では、交渉中の宇宙連合や連邦に知られる事なくコンペイ島を攻略占拠し、何も知らずに帰還する宇宙連合旗艦艦隊を奇襲同然で叩く事だ。

少なくとも、交渉終了し帰還中の宇宙連合旗艦艦隊にコンペイ島の占拠を知られたとしても、宇宙連合旗艦艦隊をそのまま叩く事は可能だと踏んでいた。

その為にもグラナダ駐留軍は隠密行動でコンペイ島に近づき、交渉終盤時に攻略を開始し、即落とす必要があった。

だが、旗艦艦隊が出払ったコンペイ島に余力戦力は無い事は確実視していたため、コンペイ島攻略自体は問題ないと踏んでいた。

少なくともこの作戦の緒戦とも言えるコンペイ島攻略占拠までは確実視していたのだ。

 

だが、蓋を開ければグラナダ駐留艦隊はコンペイ島攻略もままならず艦隊戦力の半数を失う大敗を喫したのだ。

敗退も計算に入れ作戦を立てていたが、マイッツァーでさえこれ程の大敗を喫したのは想定外もいいところだった。

しかも、コスモ・バビロニア軍がクロスボーン・バンガード時代も含め、初めての大敗となる。

 

今回の作戦自体、誰が見ても精巧な作戦であると言えるだろう。

あのブライト・ノアでさえ、見事な作戦だと称える程だ。

 

では、何故大敗を喫したのか?

 

要因はたった一つの見落し……

 

シアノ大佐もマイッツァーやコスモ・バビロニアの作戦室も、そのたった一つの要因を見逃したがために、大敗を喫したのだ。

 

 

 

マイッツァーは大敗を喫し月面都市グラナダに帰還したシアノ・マルティス大佐を即本国に召還し、直に説明と報告を求める。

マイッツァー自身シアノ大佐の手腕を高く評価し、さらにはコンペイ島攻略までは確実視していただけに、この大敗の要因が何であったかを把握し戦術分析しなくてはならなかった。

 

「貴公、たった一機のモビルスーツに敗退したというのか!?」

シアノ大佐の口から大敗の要因を直接聞き、マイッツアーは衝撃を受ける。

 

そして、戦略室でシアノ大佐や主だった戦略官、情報官と共にコンペイ島攻略時の映像などのデータから戦術分析を行うが……。

どう考えても、一機の光を纏う白いモビルスーツが圧倒的な力を振るい、コスモ・バビロニアが用意した戦術ごと噛み切ったとしか言いようが無かったのだ。

 

「……なんて事だ。これは」

マイッツアーはこれらの映像データや分析データを目の当たりにし、ある記憶が蘇る。

 

作戦室の面々はたった一機のモビルスーツに自軍のMSや艦船を次々と行動不能され、グラナダ駐留艦隊二個師団を翻弄させられる様を映像データで見せつけられ、しばらく声もでなかった。

その一機のモビルスーツはまるで戦場を支配しているかの様に……

 

そんな中、情報官の一人がデータベース端末からこの一機の白いモビルスーツを検索にかけ、報告を行う。

「データベースから検索した結果が出ました。この機体は30年前アナハイム・エレクトロニクスで開発されたガンダムタイプ、RX-93 νガンダムに間違いありません」

 

「なんだと?それは本当なのか?30年前の機体だと?ガンダムタイプとは言え、我が軍の最新鋭モビルスーツや戦艦がやられたというのか?」

作戦室室長である准将が情報官の報告に疑問の声を上げる。

 

「映像の機体情報とほぼ一致しております。ですが、中身は最新鋭の技術が使われているかもしれません。さらに、データベースにはこの機体に関しては多量の情報が掲載されております。第二次ネオ・ジオン抗争の立役者である連邦宇宙軍独立機動艦隊ロンド・ベルに収められ、………いや、これは……なにがなんだか」

情報官はデータベースに記載されてるデータを目で追いながら報告するが、徐々に顔が青ざめ、言葉がうまく出せないでいた。

そのνガンダムの異様な戦績と搭乗パイロットの経歴に……。

 

「第二次ネオ・ジオン紛争のガンダムタイプだと?……まさかパイロットは?」

作戦室室長がその報告を聞き何かを思い出し、さらに情報官に聞き返すが……

 

「アムロ・レイか……」

情報官が返答する前にマイッツアーがその名を口ずさむ。

宇宙連合殲滅作戦の唯一の敗因要因であるその存在の名を……

 

 

 

マイッツアーは過去の記憶を遡る。

マイッツアーは二十数年前、コスモ・バビロニア軍の前身であるブッフォ・コンツェルンの私設軍隊クロスボーン・バンガードを立ち上げる際、一年戦争から第二次ネオ・ジオン抗争まで、戦争から局地的な紛争まですべての情報を手に入れ、戦略研究室なる物を立ち上げ、戦時戦略や戦術について熱心に研究を行っていた。

将来的には地球連邦打倒もこの時から既に視野に入れてのことだった。

 

その際、必ず出て来る名前がアムロ・レイだった。

一年戦争時のターニング・ポイントに必ず彼の名前が出て来るのだ。

たった一人の戦士が戦場を一変するなどセオリーではあり得ないが、マイッツァーはどう考えても、アムロ・レイが絡む戦場ではそのセオリーが全く通じていない様に思えてならなかった。

オデッサでの戦術核ミサイルの撃破から始まり、コンスコン艦隊の撃破、敵のニュータイプ用戦略モビルアーマーの撃破、ドズル中将の撃破、ア・バオア・クーの最終決戦まで、全てアムロ・レイが携わっていたのだ。

どれも、これら要因が無ければ一年戦争は更に長引き、最悪ザビ家のジオン公国が今も独立国として存在し、更には地球連邦を追い込んでいる可能性まであった。

 

マイッツァーはアムロ・レイを何時しか戦術キラーと心の中でそう名付けていた。

 

マイッツァーは一時期アムロ・レイについて、さらにはニュータイプや強化人間についても大いに調べる事となる。

アプローチの一つとして、単独で戦術を切り裂く個の力が存在すれば、少ない戦力でも連邦に対抗できるのではないかと……。

この時、既にアムロ・レイは第二次ネオ・ジオン抗争において、大戦果を挙げながらも帰らぬ人となっていた。

 

さらには第二のアムロ・レイとして優秀なニュータイプを人工的に作れはしないかという検討も行っていた。

アムロ・レイのデータを入力し、AIで疑似ニュータイプ能力を得る方法や強化人間による人工的なニュータイプそのものを作る等などと……。

 

当時連邦でも同じ様な検証や研究が様々な角度から行われて来た。

最高の兵器を作成するために……。

 

マイッツァーはそれらの研究データを裏ルートから入手。

人工AIについては、連邦が既に作成研究していたアムロ・レイのAIへの転用検証データとMSシミュレーター用のプログラミングデータを入手する事ができた。

入手したアムロ・レイ関連の研究情報には一年戦争時のサイド7からジャブローまでのデータを学習コンピュータに反映させたものは検証が完了し、実際にMS用AIやシミュレーターAIに組み込まれていたが、ジャブロー以降のアムロ・レイのデータは取り込むことができなかったと記されていた。

その検証記録によると、ニュータイプとして覚醒したと思われるジャブロー以降のアムロのデータをAIに組み込むとエラーが続発し正常に機能しないというものだった。

ニュータイプとして覚醒したアムロの戦闘機動はAIからすると戦闘セオリーから逸脱した動きとなり、AIが論理的な思考が出来なくなりパンクしてしまう事が詳しく書かれている。

ジオンとのア・バオア・クー最終決戦で見せたアムロの一つ一つの動きをシミュレートしてみると、ビームライフルを撃つ動き一つをとっても通常では考えられない様な機動をしていた事が分かる。

メインカメラやサブカメラに映らず、各種センサーにも敵が示されていない状況で、ビームライフルを放っている。この際、ガンダムに組み込まれている学習型コンピュータは敵の存在を把握していない。

だがその直後、サブカメラにガンダムがビームライフルを放った方向で、ゲルググが爆散する映像が微かに映し出されていた。

この撃墜は学習型コンピュータには把握できずに撃墜記録としては残ってはいないが、間違いなくアムロが撃墜したものだった。

アムロが作成した報告書とガンダムに組み込まれた学習型コンピュータのデータとの撃墜数の差異が出ているのはこのためだ。

学習型コンピュータでは、アムロが撃墜したMSや艦船のすべてを把握できなかったのだ。

 

これはガンダムに搭載されているカメラやセンサーでは感知できなかった敵を、アムロ自身が把握していたとしか言いようが無かった。

 

仮に、先ほどのビームライフルを放つ動きをAIに入力すると、AIにとって敵の居ない場所にビームライフルを放つ無駄な動きと捉えてしまう。

実際アムロ・レイが何をもってそこに敵がいるのかを判断し、ビームをそのタイミングで放っているのかが全く分からないのだ。

 

ただ単にアムロの動きをトレースさせ学習させたとしても、アムロの動きをマネるだけで、敵を正確に撃ち落とす事が出来ないのだ。

少なくとも、ジャブロー以前までのアムロのデータを学習させたAIに負けてしまう結果となるのだ。戦場に耐えうるものにはまるでならない。

 

これらのアムロの動きはニュータイプ能力による未来予測、または空間把握能力と仮に位置付けていた。

アムロ、強いてはニュータイプ能力はAIで再現できないと結論付け、ニュータイプを人工的に作り出す他の手立てとして、連邦の各研究所では強化人間の研究が盛んに行われるようになった。

その後、強化人間として人工的なニュータイプを作成することに成功しているが、アムロ・レイに匹敵する程の者は出来なかった。

 

マイッツァーはそれでも第二のアムロ・レイに拘り、ラプラス事変以降にはネオ・ジオン系の残党やニュータイプ研究所の人間を積極的に取り込み、研究を活性化させていく。

余談だが、ネオ・ジオンの残党の中には名を変える前のシアノ・マルティスの顔もあった。

その後、しばらくニュータイプや強化人間に関しての研究は頭打ちとなり停滞していたが、そんな中、マイッツァーの娘であるナディア・ロナが大学在学中に恋人としてカロッゾ・ビゲンゾン、後の鉄仮面を紹介したのだ。

当時カロッゾは大学の研究機関で人間の意識を拡大制御するコミュニケーションツールとしてバイオコンピュータの研究を行っていたことにマイッツァーは目をつけ、カロッゾの実直な性格も気に入り、ロナ家の婿養子として受け入れ、莫大な研究予算をカロッゾに与え、バイオコンピュータだけでなく強化人間についての研究を行わせたのだ。

これが後のネオ・サイコミュシステムやラフレシア・プロジェクトへと変貌していく。

ネオ・サイコミュとラフレシアの完成は戦術キラー、兵器としての第二のアムロ・レイの創造という理想を、ある意味体現したと言っていいだろう。

強化人間 カロッゾ・ロナとラフレシアはルナツー攻略戦に置いて、師団クラスの艦船を単騎で壊滅させたのだ。

そんなカロッゾ・ロナも最後には憎悪や嫉妬と言った人間的感情を捨てきれず、シーブックに討たれる事となるのだが……。

 

 

話を戻すと、マイッツァーはアムロ・レイについて、綿密に調べていたのだ。

 

 

「閣下、確かに連邦最強と言われたモビルスーツパイロット アムロ・レイを彷彿させますが、アムロ・レイは30年前の第二次ネオ・ジオン抗争にて死亡しております」

50代半ば程度の神経質そうな顔立ちの情報部部長が、考えに更けているマイッツァーにこう意見を言う。

 

「正確にはMIA(戦時行方不明者)だ、生きていたという可能性があるのではないか?」

作戦室室長が情報部部長に聞き返す。

 

「仮に生きていたとしても、既に還暦です。あれ程の機動に耐えうるものではないかと」

情報部部長は、アムロが例え生きていたとしても、60前後の人間に映像データのような機動に体が耐えきれないだろうと言い、映像のνガンダムのパイロットはアムロではないと判断する。

 

「うむ」

マイッツァーは二人のやり取りを聞き、静かに頷いていた。

 

シアノ大佐がここで挙手をし、とある情報をこの場に上げる。

「閣下、連邦宇宙軍に潜伏中の諜報員からの報告の中に、アムロ・レイの亡霊が現れたという噂が軍内で囁かれているとありました」

 

「その噂の信憑性はどうなのか?」

マイッツァーはシアノ大佐の情報に対し興味深そうに聞き返す。

 

「確かにそのような噂がありましたな」

情報部部長の耳にもアムロの亡霊について情報が入っていたようだが、その時は特に重要視していなかったのだ。

 

「検索します……ありました。作戦中に突如現れたνガンダムと思しきモビルスーツ一機に、艦船三隻、モビルスーツ24機が行動不能に陥ったとの事です……」

情報部官の一人が端末を操作し、情報を開示し、その戦績に驚く。

 

「……続けよ」

 

「連邦宇宙軍はアナハイム・エレクトロニクスにこの件について見解を求めていました。その返答は、νガンダムで間違いないとの事で、さらに高レベルなニュータイプが搭乗していたと推測されております」

 

「偶然にしては出来過ぎているではないか……、アムロ・レイの亡霊か……」

 

「閣下、アムロ・レイの亡霊などありえません。連邦の腰抜けどもの戯言です」

 

「ふむ、だが実際に我が軍の一個師団を屠っておる」

 

「それは……」

 

「シアノ大佐。直接対峙した貴公はどう思う」

 

「はっ、初めはシュトレイ・バーンが搭乗していたものと思っておりました。かの者は凄まじいまでのニュータイプ能力を秘めております」

 

「貴公がこだわっていた男だな。バナージ・リンクス。ラプラスの箱、ビスト家の血筋を持つサイコミュを操る男か……」

マイッツァーはバナージの事も相当調べていた。

ニュータイプやサイコミュ兵器を語るのに、ラプラス事変での戦闘記録を外すわけにはいかない。

勿論ニュータイプキラーであるユニコーンガンダムについても調べ尽くし、その技術についても研究を行ってきている。

 

「ですが……、バナージ・リンクスはコンペイ島には居ませんでした。連邦との交渉の場に出席していたことが判明しております。あれ程の力を発揮するニュータイプの存在となると、アムロ・レイの亡霊の噂はあながちデマとは言い切れません」

シアノ大佐自身もアムロ・レイが生きていている事を疑問視はしていたが、そう判断せざるを得なかった。

 

「シアノ大佐、しかしアムロ・レイの生存情報どころか噂すらこの30年全くと言っていいほどなかった。これは如何に?」

情報部部長がこう疑問を持つのももっともだ。

この30年間アムロ・レイの生存の痕跡すら全くなかったのだ。

 

「ふむ、アムロ・レイが生きていようがいまいが、何れにしろアムロ・レイに匹敵するニュータイプが宇宙連合には二人も存在するということだ。ラフレシアを撃墜した存在も気になる。今更ながらカロッゾを失ったのは大きな痛手であったな」

マイッツァーは大きく頷き、宇宙連合には驚異的なニュータイプが存在することを認め、それらに匹敵する存在であり、パイロットだけでなく軍を預かるカリスマ的なリーダーとしても優秀だったカロッゾ・ロナを失った事に嘆いていた。

因みに、ラフレシアを擁する鉄仮面カロッゾ・ロナを討った存在についてはまだ、調べがついていなかった。

 

「………」

「………」

マイッツァーのこの発言で作戦室の面々は沈黙する。

この場の面々はマイッツァーのこの嘆きを痛いほど理解していたからだ。

 

「うむ。宇宙掌握戦略を大幅に修正せざるを得ないようだな。宇宙連合への対応について、意見を述べよ」

マイッツァーは沈黙を破り、この議論の結論を述べ、宇宙掌握戦略の練り直しを指示する。

 

 

 

 

数日後、シアノ・マルティス大佐はコンペイ島攻略作戦の敗退の責任を取る形で、月面都市グラナダとアンマンの都督代行及びグラナダ駐留艦隊司令の任を解任され、本国への帰還命令を受ける。

だが、これは表面上の処置であり、実際は次の作戦への配置換えであった。

 

 

更に1か月半後、コスモ・バビロニアは宇宙連合に対し、捕虜返還及び停戦協定を申し出た。

コスモ・バビロニア上層部でもこの決定には流石に反対意見もかなり出たのは言うまでもない。

一個師団を失う大敗は喫したが、コスモ・バビロニアと宇宙連合との戦力差は現段階で4倍から5倍以上あると見積もっているからだ。

確かに、宇宙連合と全面戦争を行えば、コスモ・バビロニアが十中八九勝利するだろう。

宇宙連合のサイド1と新サイド6を物量で包囲し攻めれば、いくら一個師団を相手取る優れたニュータイプが二人いようとも、全てを守る事は出来ない。最終的には物量で押され、宇宙連合の本国であるサイドは落ちるだろう。

しかし、コスモ・バビロニアの最大の敵は地球連邦であり、宇宙連合との全面戦争は出来ないのだ。

宇宙連合に大戦力を注げば、その隙に地球連邦軍は必ず動くだろう。

腐っても地球連邦軍の物量は大きい。

コスモ・バビロニアは大きな痛手どころか、新サイド4フロンティア・サイドの本国やルナツーなどが落とされ、回復不能な痛手を負うだろう。

 

地球連邦側から見ても、最大の敵はコスモ・バビロニアだ。

連邦宇宙軍の全戦力を集中させれば、いとも簡単に宇宙連合を屠る事が出来るだろう。

だが、その隙にコスモ・バビロニアに月面都市や宇宙要塞やサイド7などが奪われ、宇宙での連邦の力は地に落ち、コスモ・バビロニアにその後は宇宙連合も併合され、宇宙での覇権を完全に握られてしまう。

 

宇宙連合は連邦軍とのコンペイ島攻略戦、コスモ・バビロニアとのコンペイ島防衛戦で、コスモ・バビロニアや地球連邦の両陣営に戦力としては小さいが、片手間で倒せる様な相手ではないと認識させたのだ。

 

更に宇宙連合は地球連邦との停戦協定に逸早く取り組み成功させている。

これはコスモ・バビロニアにとって、宇宙での戦力バランスの優位性が損なわれる結果となる。

地球連邦にとって、後顧の憂いが一部解消され、連邦宇宙軍は戦力をコスモ・バビロニアに大きく向ける事が出来るからだ。

それを理解しての、早期決着のためにコスモ・バビロニア、グラナダ駐留艦隊による宇宙連合のコンペイ島急襲だったのだが、結果的に返り討ちに合った。

 

こうして、宇宙連合は現在たった三個師団しか擁しない小さな戦力ではあるが、宇宙の軍事バランスを見計らい、何とか主権独立国家として立場を守る事が出来ているのだ。

裏を返せば、かなりの綱渡りを経てようやく、独立国家として成り立っていると言えるだろう。

 

 

 

防衛戦力もままならない宇宙連合にとって軍備増強は何よりも急務である事は周知の事実である。

そもそも、宇宙連合の前身であるサイド1、新サイド6には本格的な兵器生産施設が存在せず、連邦の目を逃れ、アナハイムの横流し兵器やジオンや連邦の旧型のモビルスーツ等の兵器を改造整備し、隠し持っていた程度だ。

それらの生産施設を一からの立ち上げが必要な状態であった。

幸いにも、ジョブ・ジョン以下元サナリーのスタッフが多数宇宙連合に合流したため、モビルスーツや戦艦などの兵器生産工場建設の目途が早々にたつことは出来た・

だが、兵器増産よりも軍の人員確保が何よりも困難であった。軍人育成には時間がかかる。モビルスーツパイロット一人育てるにも少なくとも半年は要する。

育てたところで実際に使える戦力となるのに更に時間が必要となるのだ。

それだけではない、宇宙連合軍ではモビルスーツパイロットだけでなく、ありとあらゆる人材が不足している。

地球連邦やコスモ・バビロニアとの戦闘で奪った鹵獲兵器群が凡そ二個師団分あるとしても、それを運営する人員がいないのだ。

十数年も水面下で準備を行って来たコスモ・バビロニアと異なり、宇宙連合軍はほぼ一から、軍を構築しなければならない状況だ。

鹵獲兵器群を運営させるだけでも人員確保にも少なくとも1年以上は要するだろう。

宇宙連合軍総司令となったブライトは少しでもそれらを解消するために、元連邦軍兵士や元エゥーゴ、更には元ジオン残党等の伝手を使って人員確保に動いてはいるが、全く間に合わない。

更にコスモ・バビロニアの捕虜にも手を伸ばすが、コスモ貴族主義にどっぷりつかっている彼らは、全くと言っていいほど懐柔にはのってこなかった。

 

軍備増強や人員確保もままならない現状である宇宙連合にとって、このコスモ・バビロニアからの停戦協定は渡りに船であったのだ。

 

 

 

コスモ・バビロニアと宇宙連合の停戦協定交渉は、地球連邦との交渉とは異なり仰々しいものでは無かった。

お互いレーザー通信を使っての交渉だ。

コスモ・バビロニア側は新サイド4の本国から、宇宙連合は宇宙要塞コンペイ島から、それぞれのトップが顔を出す。

「ご無沙汰しております。マイッツァー国王陛下」

「久しいな。オードリー首相、お互いこのような立場で再び話し合うとはな」

「そうですね。これも時世というものではないでしょうか?」

「いや、違うな。貴女の力量によるものだ。貴女の力量を十分買っていたが、まだ過小評価していたようだ。表舞台には出したくはなかったのだ」

「わたくし一人ではとても、成しえなかった事です」

「ふっ、貴女の様な娘がおれば、もう少し楽が出来たのだが、そううまくはいかないということなのだろう」

こうしてオードリーとマイッツァーとの挨拶から和やかに交渉が始まる。

しかしながらマイッツァーの娘云々の話は本音だった。

目の前の凛とした佇まいのオードリーを目の当たりにし、つい漏れてしまった言葉だった。

優秀だった長男は議員として連邦議会に発言力を高めていたが、それを良しとしない勢力の政変に巻き込まれ、十数年前に亡くしている。

実の娘のナディアは何かとマイッツァーと反目し合い、遂には男と家を出て行ってしまう始末であった。その娘の役割を孫娘のベラ(セシリー)にと思っていた所、父親カロッゾとの戦いで行方不明となった。状況から生きている可能性は低いと判断せざるを得ない。

マイッツァーの落胆は言うまでもない。

 

このトップ会談に至る前に既に交渉内容はほぼ決定している。

前段階に於いて、既に数度外交官や官僚による交渉を行っていた。

その初期の交渉に於いて、捕虜返還だけでなく鹵獲兵器の返還も入って来ていたのだが、コスモ・バビロニア側が最初に提示してきた条件の中に驚きな物が入っていた。

月面都市アンマンを引き渡すという物だった。

今回の交渉、そもそも優位に立っているのは宇宙連合側だ。

宇宙連合側はコスモ・バビロニア側に捕虜などのマイナス面が全く存在しないため、宇宙連合の要求が通りやすい状況ではある。

流石に向こうから月面都市を引き渡すという話が出たのには驚きを隠せない。

宇宙連合にとって喉から手が出る程ほしいものである。

だが、宇宙連合は閣僚会議により月面都市アンマンについては却下することに決定した。

確かに月面都市アンマンを得る事で、月の地下資源及び兵器工場まで手に入る事になる。

経済的にもその地理的な意味合いでも欲するだろう。

だが、防衛面を考慮すると、今の宇宙連合の軍事力では、防衛戦力を回せないのだ。

無理に回したとしても戦力の分散により、本国のL5宙域の防衛能力が著しく低下するというリスクがある。

もし、アンマンを得て、防衛能力が低下した本国に地球連邦やコスモ・バビロニアが停戦協定を破って攻め込んできた場合、それこそ片手間の戦力でも落とされてしまう可能性が十分にあるのだ。

この辺は、コスモ・バビロニアの強かさが垣間見える。

結局、資源衛星の提供と月と火星、木星航路の確保を条件に、鹵獲兵器の返還はせず、捕虜返還と、期限を1年とした停戦協定を結ぶことになる。

停戦協定については、連邦と比べ事細かく条件を付ける事となる。

 

この後、マイッツァーは名指しでブライトに正式に会談を申し込んだのだ。

ブライトも勿論この交渉に顔を出していたが、まさか名指しに会談を申し込まれるとは思いもよらなかったが、断る理由もなかった。

停戦協定締結後直ぐに、異例であるがそのままブライトは会談に臨む。

個人的な会談とはいえ、実際に話し合うのはブライトとマイッツァーではあるが、周りには補佐官等もおり、勿論、顔を出さないがオードリーや両陣営の官僚クラスがこの会談を見守る。

 

「マイッツァー国王陛下に於かれましては、ご健勝のことと……」

「良い、既に挨拶は交わした身だ」

「ではご無礼を承知でお聞きいたします。何故私を名指しで会談を望まれたのですか?」

「これを言いたかったのだ。ブライト・ノア将軍、その手腕あっぱれである」

「……恐縮であります」

「まさか、あのブライト・ノアが再び世にでるとは読めなかった。いや、連邦は貴公を冷遇し、押しとどめていたのが理解不能である。今更ながら、貴公を早く引き込むべきだったと後悔しておる。どうだ?こちらに鞍替えしないか?貴公ならば、軍部のトップの席を用意する」

マイッツァーは公式な会談の場で、堂々とブライトへ引き抜きの言葉を発したのだ。

これには、流石に宇宙連合の面々は面を食らう。

本来なら相手国に対して相当無礼な話ではある。

 

「それ程の評価を頂き恐縮の極みです。しかし、今の立場は宇宙連合の軍事を預かる身であり、慎んでお断り申し上げます」

「今の宇宙連合の戦力では貴公にはもったいない。我が軍の軍力であれば、貴公ならば地球連邦打倒も可能であろう。同じ地球連邦打倒を掲げるのであれば、当然我が軍の方が有利であろう」

「本来、わたくし程度のものは師団をまとめるのがやっとです。貴国の大兵団をまとめる等身に余ります」

「ふむ、袖にされたか、まあよい。だが、貴公を欲したのは本心である」

マイッツァーの本心ではあったが、ブライトが今更こちらに靡くとは思ってはいない。

マイッツァーなりのブライトへのユーモアを交えた賛辞なのだろう。

ブライトはブライトで冷静に対処する。

宇宙連合側からすれば、たまったものでは無いが……。

 

「ところで、貴公の朋友アムロ・レイは健祥か?」

「はて」

「コンペイ島で我が軍を悉く屠った白色のモビルスーツは、アムロ・レイを彷彿させた」

「彼は30年前の第二次ネオ・ジオン抗争にてMIAとなりました」

ブライトはアムロの名が出たが顔色を変えずに、冷静に答える。

アムロの存在は対外的にはなるべく隠していたい。

何れは判明するだろうが、特に連邦に対しては、生存しているのか居ないのかと思わせる程度の亡霊という事にしておいた方が効果的であると判断していたからだ。

 

「ふむ、そうであったな。貴公にとっても辛き思い出であった。無礼を許されよ」

マイッツァーはブライトにこの話をぶつけ、反応を見てアムロ・レイの存在を確認したかったのだ。

だがブライトの冷静さに、どちらか測りかねた。

 

この後は、当たり障りのない話が続き、会談を終える。

 

ブライトやオードリー達は、コスモ・バビロニアがアムロの生存をほぼ確信していることだろうと判断せざるを得なかった。

 

 

 

 

 

宇宙連合はこれにより、地球連邦とコスモ・バビロニア両陣営と停戦協定を結ぶ事ができ、当面の軍事的脅威は去り、人材育成に力を入れる事が出来る。

だが、コスモ・バビロニアに付いては停戦協定を1年とは言え結んだが、まったく油断が出来ない。

いつその鋭い牙を向けてくるかわかったものでは無い。

こうしている間でも、コスモ・バビロニアは水面下では経済面などで圧力をかけて来ていた。

軍事に関しても、停戦協定ギリギリの所で何かと偵察機などを送り込んで来る始末。

コスモ・バビロニアとは近い内にまた一戦あるだろう事は明らかだ。

 

宇宙連合はそんな中、次なる戦略としてサイド3ジオン共和国との協定若しくは同盟まで視野に入れた関係構築を模索し、進めていくのだった。

 

そのサイド3ジオン共和国では、上層部で主権争いが盛んに行われていた。

独立国家として単独で突き進むにしても、コスモ・バビロニアと同盟又は庇護をうけるか否かが論争の中心だが、この頃台頭してきた宇宙連合との共闘を訴える勢力も徐々に表れる。

 

そして、地球連邦は連邦宇宙軍の再建に力を注ぎ、コスモ・バビロニアは宇宙連合と停戦協定を結んだ直後、次なる動きを見せる。

そこにはシアノ・マルティス大佐とリリー・ビダンの姿があった。

 

 

こうして宇宙世紀における群雄割拠時代が始まる。

 




次こそはアムロでます。
カミーユとシーブックも!

次で一度話を終わらせたい病です。

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