アムロの帰還   作:ローファイト

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1話より、時間を遡ります。
宇宙世紀に戻る前からのお話になります。
なるべく、前作を読まなくてもわかるようにはしたいと書いてます。


アムロ再び宇宙世紀へ

西暦2060年2月

とある第一級機密情報が開示される。

それは星間に激震が走る事実だった。

技術将校 アムロ・レイ准将の真実の経歴だった。

それはとても信じられないような経歴だったのだ。

西暦2009年~2010年

人類の99%を死滅に追いやったゼントラーディ軍との第一次星間戦争にて、数々の開発に携わり、更にバルキリーのパイロットとして、幾度もその類まれなる戦闘センスでマクロスを窮地から救う。

最終決戦では、ボドル基幹艦隊400万の艦隊の凡そ100万から200万の艦隊の中をアムロは専用バルキリーを駆り、無人機数機を引き連れた単独編隊で突破し、ボドル基幹艦隊旗艦1400㎞級超巨大空母を単独撃破の快挙を成し遂げ、圧倒的な不利な状況を覆し勝利に導く。

僅かに生き残った地球人類を救った、まさに英雄だったのだ。

そこでの撃墜スコアはもはや、今まで撃墜王だったマクシミリアン・ジーナスの桁を遥かに上回る物であった。

 

そう、ゼントラーディ人の間に伝わる恐怖の象徴、白い悪魔は実在したと……

 

ただ、一点彼について、真実が伝えられていなかった。

彼は、平行世界から転移した人間だったということを……

その真実を知る人物の3人のうち2人は既にこの世にはいなかった。

 

そして、アムロ・レイは西暦2016年7月に突如として歴史から姿を消す。

 

 

 

メビウスの輪が再び廻り出す。

 

 

 

西暦2012年9月

人類の種の補完と第2の母星を探すべく、第一次超長距離移民船団はメガロード-01を旗艦とし地球を出発する。

メガロード-01はSDF-1マクロスの後継機ではあるが、居住空間や備蓄などを優先し、透明スクリーンに包まれた都市区画を中心とした作りとなっている。

更にSDF-1が全長1200mに対しメガロード-01は1770mと巨大化されている。乗員は25000人と減少しているが、民間人収容人数は最大50万人とマクロスの凡そ10倍の収容が可能であった。但し、実際には乗り込んだ人数は30万人と少ない。

メガロード-01の艦長及び船団の提督に早瀬未沙大佐(代将)。

船団の技術開発部門のトップは最近結婚したばかりの未沙の夫のアムロ・レイ准将。

直衛防衛部隊バルキリー隊のトップに一条輝少佐が就任している。

その他に、メガロード-01を護衛する戦艦が地球製とゼントラーディ製あわせて十数隻となっていた。

 

民間人と乗務員はゼントラーディ人と地球人の融和計画の一環として、全体の凡そ4割ものマイクローン化したゼントラーディ人が乗船している。

最初の長距離移民船団は地球人だけにする意見も出ていたが、それでは中々融和政策が進まないとして、最初からこのような割合となった。

彼らは箱庭のような空間での生活を余儀なくされる。

その中で、お互いを認め合って生活するしかないのだ。

色々なトラブルはあるだろうが、それを一つ一つ解決していけばいいと……

初めての長距離移民船団。すべてが手探りの状態だ。

このような試みや案件は幾つもあった。

 

 

色々な問題を一つ一つ解決し、大きな問題も無く4年の月日が経った。

 

 

西暦2016年7月

「艦長、予定通り2000m級護衛艦二隻がフォールドで地球圏に戻りました。改めて明日、代わりの護衛艦がフォールドで到着する予定です」

 

「わかりました。一時速度を緩め、その護衛艦を待ちましょう」

艦長席に座る早瀬未沙大佐は、若い女性のブリッジオペレーターの報告を聞き、指示をだす。

 

「了解です。艦長」

 

ここはメガロード-01の発令所ブリッジ。

マクロスのブリッジに比べれば一回り狭いが人員も少なくて済むように簡略システム化されていた。

 

「地球へ定時連絡を行います」

「フォールド通信の準備完了いたしました。艦長」

「結構」

「相互通信ON」

未沙はブリッジオペレーターと言葉を掛け合い、地球への定時連絡を始める。

 

「こちらメガロード-01早瀬です。応答願います」

『新統合政府情報部クローディア・ラサール。通信良好です』

地球側の通信者に新統合政府の要職についているクローディア・ラサール大佐が出る。

メガロード-01が地球から発ってからの定期連絡は未沙とクローディアの間で行われていた。

 

最初は定時連絡のための堅苦しい話をよそよそしく行っていたが、後半は……

「クローディア、悪阻はどう?」

『大分ましになったわ。安定期に入ったみたいね』

「よかったわ」

『未沙の所の双子ちゃんもお母さんが恋しい時期じゃないかしら?勤務中はどうしてるの?』

「艦内の託児所に預けてるけど、アムロさんがなるべく勤務時間をずらして見てくれてるわ」

『いいわね。未沙の旦那様は。ロイはどうかしらね。子供が出来たと知った時は大喜びはしてたけど』

「ふふっ、フォッカー中将もきっとそうなるわ」

『だといいけど』

未沙とクローディアの世間話にいつの間にか変わっていた。

ブリッジオペレーターもこの事にとやかく言う事も無く、聞かないふりをしてくている。

 

『未沙……休暇で……球へ……戻り…』

「クローディア?……通信状況が安定しないわね」

突如としてフォールド通信が乱れだす。

 

「艦長!前方に重力波及び時空反応あり!!」

ブリッジオペレーターの一人が未沙に大きめの声で報告する。

 

「え?まさかゼントラーディ軍基幹艦隊がフォールドアウトして来る?直ちにスクランブル警報を!!」

 

「フォールド反応とは異なります!反応が急激に大きく……計器が異常反応を示しております!!次元波と予想されます!!」

 

「宇宙に亀裂が…エキセドル参謀閣下が仰ってた宇宙の次元波?いえ次元断層!?こんなところで!メガロード-01居住区に緊急避難勧告!!メガロード-01は緊急回避!!各護衛艦にも通達を!!」

正面の宇宙空間に亀裂が現れた事に、未沙は驚きを露わにするが、冷静に各担当に命令を下す。

 

「「「了解!」」」

 

「艦長!!重力及び時空反応さらに上昇!!このままでは巻き込まれます!!」

 

「各員!!ショック体勢を!!」

未沙は艦長席にしがみ付きながら叫ぶ。

 

 

 

 

体感的に10分程度だろうか、メガロード-01に激しい揺れが襲う。

 

そして、揺れが収まる。

 

「……各員状況報告を!」

未沙は誰よりも早く言葉を発し指示を出す。

ブリッジ強化ガラスの外は、先ほどとは打って変わって宇宙は静けさを取り戻していた。

「時空反応正常値」

「各種センサーは正常値です」

「メガロード-01居住区及び各ブロック電源及びライフラインはすべて正常値」

「護衛艦隊すべて確認。大きな被害はありません」

ブリッジオペレーターから次々と各部署クリアな情報が上がって来る。

今の所、問題は見当たらなかった。

 

だが……

「……艦長。……現在地。99.7%の確率で太陽系、……火星圏内です」

 

「え?……どういう事?太陽系に戻って来た?次元の波に飲まれてワープしたとでもいうの?」

未沙はその報告に驚きながらも冷静に考えをまとめようとする。

 

さらに……

「艦長…時間軸が異常値を……西暦2166年…」

ブリッジオペレーターの一人が恐る恐る未沙に報告したのがこれだった。

 

「計器の異常ではないの?」

未沙がこう言うのも無理はない。

つい先ほどまでメガロード-01の計器類は西暦2016年7月を示し、間違いなくその時を過ごしていたのだ。

 

「計算を数度実施しましたが……同じ答えしか……」

 

「まさか……未来へ次元跳躍を?…フォールド通信で地球に通信を!」

銀河の中心に向かっていたはずの第一次長距離移民船団及びメガロード-01が次元断層に嵌り太陽系に飛ばされるという事態は、まだ起こりえると頭で理解できる。

だが、計器類が指し示している西暦2166年という異常な数値は非現実過ぎる。

その数値は150年先の未来へと飛ばされた事を示しているからだ。

未沙は困惑しつつも、計器類が指し示した150年先の未来に飛ばされた事を否定する材料を探し、首を振り、次の確認をする。

そう母星である地球に通信し、現状の確認をとる事だった。

 

しかし……

「艦長!フォールド通信に返答ありません」

 

「通常通信は?」

 

「反応はありますが、暗号受け入れられません」

 

「どういう事?」

未沙は次々と起こる事態に焦りを感じながら、冷静に考えをまとめようとする。

 

だが……

「か、艦長……超望遠で確認……ち、地球が青いです」

ブリッジオペレーターの一人は驚きを隠せず、上ずった声で報告する。

超望遠で確認した地球が青かったのだ。

なぜ地球が青い事に驚くのか。

6年前の第一次星間戦争で地球はボドル基幹艦隊によって徹底的に破壊され、緑は消滅、海は蒸発し、茶色い大地に覆われた死の星さながらとなり、とても青いとは表現できない状態だった。

多少の海の水が戻り、点在しているとはいえ、宇宙から見た地球は茶色の天体と言った方が良いだろう。

これらが回復するには、人工的に行ったとしても100年以上はかかるとされていたのだ。

 

映像に映し出される青く輝く地球を見た未沙は、背中に冷たい物を感じた。

これで、現在の時空が西暦2166年という時間軸であることに信憑性が出てきたのだ。

 

「未来へ本当に飛んだとでも言うの?……皆さん只今を持って箝口令を敷きます。現在起きてる事象はすべて解除命令を下すまで口外無用とします」

未沙は目の前の現実を否定したい気持ちをグッと抑え、冷静に判断する。

太陽系に戻り、さらに未来へ飛んだ可能性があるという非常にデリケートな案件に対し、ブリッジオペレーター要員に箝口令を敷く。

 

「只今から一時間後、最上位会議を開きます。レベルクラス8に通達を」

未沙はさらにこの緊急事態に対し非常呼集を掛ける。

クラス8とは、第一次長距離移民船団各部署の未沙を含めたトップ8名の事である。

提督の早瀬未沙、副提督、居住区管理責任部長、資源管理部部長、参謀部部長、護衛艦統括部長、バルキリー防衛部隊長の一条輝、そして第一次長距離移民船団の最上位階級の准将であるアムロも含まれていた。

 

 

そして、最上位会議が始まり、未沙から現状報告を行う。

参加者皆は一様に、太陽系に戻り、さらに150年後の未来に飛ばされた可能性が高い現状に驚きを隠せないでいた。

こんな異常事態だが、超望遠で映し出される現在の青く輝く地球の様子を見れば、皆は納得せざる得なかった。

場の空気は静まり返る。

 

沈黙を最初に破る声…

「地球の映像をもっと拡大できるか?」

アムロは何かに気が付き地球の詳細映像を求める。

会議室の超大型スクリーンに映し出された地球の様子を更に拡大する。

 

「……こ、これは……スペースコロニー群だと……」

アムロは珍しく焦ったような表情で手元のタブレット端末を動かし、さらに手元で画像を拡大し始める。

 

「レイ准将、聞きなれない言葉ですが……何かありましたか?」

 

「………いや、まさか」

アムロは手元のタブレットの画像を見ながら今二つの可能性を頭に思い浮かべていた。

手元の画像には画質が荒いながら、アムロが良く知る宇宙世紀のコロニー群が見て取れたのだ。

一つの可能性は第一次長距離移民船団が150年後の未来に飛び、150年後の世界にはアムロの居た宇宙世紀と同じような歴史を辿り、宇宙世紀と似たようなコロニー群が地球圏に誕生した可能性である。

だが、西暦2000年以降の歴史が余りにも宇宙世紀とこの世界では異なっていた。

この世界の人々は辛い戦いを経て、異星人と手を携える事を決めた。

広い外宇宙に目をやり、外へ外へと新天地を目指す意思が強い。地球に縛られる宇宙世紀の人々とは根本的な意思の違いを見せていたのだ。

そんなこの世界の人々が地球の周りに箱庭のようなコロニー群を作るだろうかという根本的な疑問があるのだ。

もう一つの可能性はアムロが元居た世界、宇宙世紀の平行世界に第一次長距離移民船団が飛ばされた可能性だ。アムロはこちらの可能性が高いと踏んでいたのだ。

 

「レイ准将?」

未沙は心配そうにアムロの顔を見つめていた。

自分の最愛の夫であるアムロのこれほど困惑した顔を今迄見た事が無かったのだ。

 

「すまん。みんな少し時間をくれ……考えをまとめたい」

アムロはそう言うと、未沙は10分間の休憩を取った。

 

アムロはスッと席を立ち会議室を出る。未沙もそれに続く。

隣の空いてる談話室に入り……

「アムロさん…どうしたの?」

「未沙…落ち着いて聞いてくれ。地球の画像を拡大し映しだされていたものに、俺が良く知る物があった。スペースコロニー。地球を周回する数千、数百万人規模の人間が生活できる巨大居住施設だ。……俺が元居た世界の……」

「え?……アムロさんが元居た世界という事は平行世界の……」

「ああ……まだ確証は得られないが恐らくは」

「そんな事が……」

「もしメガロード-01の計器が指示した西暦2166年で、俺の元居た世界とリンクしているという前提であれば、元居た世界の元号に直せばUC0123年か0124年という事になる。俺が飛ばされた年はUC0093年。元居た平行世界の30年後の世界の可能性がある……これも確証が得られない推測ではあるが」

「え?」

「もしかすると、俺という存在が次元の座標軸となって、ここに船団が飛ばされた可能性がある……すまない」

「アムロさんが悪いわけじゃないわ。アムロさんが元の世界にそのまま戻ったと仮定したならば、座標軸で言うとその元のUC0093年から私達と過ごした時間の7年後のUC0100年に飛ばされているはずよ」

未沙はアムロを優しく抱きしめる。

「ありがとう未沙……だが、皆には俺が平行世界から来た人間だという事を話した方がいいだろう。そうすれば理解も速い……」

アムロはそう言って未沙を抱きしめ返す。

アムロが平行世界から飛ばされた人間だという事実を知ってる此方の人間は、未沙とグローバル、ロイ・フォッカーの3人だけだった。

「大丈夫よアムロさん。例えアムロさんが平行世界の人間だと知ったとしても何も変わらないわ。私達はゼントラーディの人々も受け入れたのよ。平行世界のアムロさんよりもよっぽど大変な事だわ。しかもアムロさんは私達人類を救った英雄なのだから……」

未沙はアムロが不安に思っている事を先読みし、優しく諭す。

「そうだな……君にはいつも救われる」

 

 

 

未沙とアムロは程なく会議室に戻り、アムロは語り出す。

アムロが平行世界の人間である事と、第一次長距離移民船団は次元断層に巻き込まれ、アムロがいた平行世界の30年後の世界に飛ばされた可能性がある事を……

クラス8の面々はアムロが平行世界の人間である事をどこか納得したような表情を浮かべ、平行世界に飛ばされた可能性がある事も容易に受け入れる。

彼らは第一次星間戦争を生き延び、地球潰滅の目に遭い、さらにゼントラーディと手を携える事を受け入れて来た人間だ。

このような非常事態が起きようとも、それを柔軟に受け入れる度量があった。

 

そして、これからの動きについて話し合う。

その結果、移民船団は火星と地球の間にあるアステロイドベルトに身を隠し待機。

アムロの推測の確証を得るべく、アムロが地球圏におもむき、情報収集を行うことが決定される。

宇宙世紀では地球〜火星間は2~3ヶ月の道程を要するが、マクロス時空の技術では高速航行で1週間とかからない。

転移先空間状況を把握できる場所ならばフォールド航法で一瞬だろう。

さらに、アムロがゼントラーディの技術を応用しバルキリー用に開発した試作フォールドブースターが有れば、バルキリー単独でもフォールド航法で一瞬で戻ってこられる。但し使用回数は1回のみと制限がある。

 

船団上層部では次元断層で平行世界に飛ばされた可能性があり、現在調査中とする。

居住区の住民には次元断層に巻き込まれ、想定外の場所に出たとし、現在調査中と説明した。

流石に確定事項ではない平行世界に飛ばされたという推測は住民にはまだ言えなかった。

 

第一次長距離移民船団はアステロイドベルトへと移動を開始。

アムロは地球圏に赴くため、護衛艦の一艦であるゼントラーディ製の800m規模の高速機動輸送艦に乗り込み、途中まで送ってもらう事になった。

なぜこの艦が選ばれたかというと、護衛艦の中で一番小さいからだ。輸送艦と言えどもミサイルやビーム砲を搭載し、高速移動が可能だ。

ゼントラーディの技術が盛り込まれ、ステルス性能も高く、フォールド航法も搭載されている。さらに艦内部はマイクロンサイズに変更され、居住空間も十分にある。

護衛艦の中で一番小さな規模と言えども、宇宙世紀の軍艦でいうとラーカイラムの凡そ倍の大きさがある。

高速機動輸送艦にはバルキリー用試作フォールドブースターとYF-5 シューティングスター、ゴーストVQ-4000無人機12機そして、護衛大隊として12機のVF-4ライトニング、16機のVF-1Jを再改修し強化バージョンアップさせたVF-1Z スーパーパック部隊を乗せ出発する。

 

高速機動輸送艦はフォールド航法で地球圏ギリギリの座標にワープする。

 

高速機動輸送艦はこの場で待機し、地球圏の様子を伺い情報収集を行う。

この情報はリアルタイムでメガロード-01に届けられる仕組みだ。

アムロのYF-5は補給用無人機3機と工作用無人機2機を引き連れ、生まれ故郷である地球に向け、高速機動輸送艦を出発したのだった。

 




後2話で完結したい病。
投稿は随分後になりそうです。

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