アムロの帰還   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。

今回はアムロ側から見た1話の話+αです。

後1話で終わりたかったのですが……もうちょっと続きそうです。


アムロの帰還

高速機動輸送艦を地球圏境界宙域の現在地に止め置き、アムロはYF-5 シューティングスターに乗り込み、補給用無人機3機と工作用無人機2機を引き連れ、地球に向け出発する。

 

アムロは青く輝く地球を目の前に思いを馳せる。

推測が正しければ、今から戻る地球は自分が知る地球の、しかもシャアと戦った宇宙世紀0093年の30年後の世界なのだ。

そしてこの地球の様子を見るに、巨大隕石が落ちた様な影響は見られない。

アクシズは地球に落ちなかったのだろうと。

νガンダムでアクシズを押し返そうとしたあの時、意識を失う直前に確かに感じた。

アクシズが地球から離れていく感覚を……

 

(あの後、ロンド・ベルはどうなったのか?皆は無事なのか?あいつは、シャアはどうなったのか?)

平行世界に飛ばされた当時、アムロは元の世界に戻れるなど思ってもいなかった。

残してきた友人やシャアとの決着の後のことも気してはいたが、宇宙世紀での自分の役割は既にあの戦いで終わったと、マクロスの世界で骨を埋める事を決心していたのだ。

だが、30年後の世界とはいえ、元の世界に戻って来た可能性が出て来た事に、割り切っていたはずの当時の思いが沸き上がっていた。

 

 

そんな時……

アムロは急速に人の命が奪われて行く感覚に囚われる。

アムロの鋭敏なニュータイプとしての感覚は、まだ遠く離れた地球軌道上のコロニーで今現在起こってる戦いを感知したのだった。

(……何だこれは?戦い……戦いが起きてる。悪意だ。これは明らかに人を害する悪意だ)

(まさか、奴か!シャアなのか!?……いや、奴じゃない、これは誰だ?誰なんだ?まるで殺戮マシーンのような冷たい感覚は?……)

今、アムロが感じた感覚は、フロンティア・サイド(新サイド4)にクロスボーン・バンガードが侵攻し占拠、さらには無人殺戮兵器バグを使い、幾つかのコロニー内に住まう人間の無差別虐殺を敢行したことを感じたのだ。

 

(……この世界の地球はまだ人間同士が争いを行っているのか)

アムロが飛ばされた平行世界の人々は地球壊滅の憂き目にあったのだが、人々は手を携え、敵であった異星人とも共に明日を生きようとしていたのだ。

だが、自分の故郷であるこの世界の地球人類は未だ同じ星の人間同士で戦い、争い傷つけあっていた。

 

アムロは導かれるかのように、戦場と化しているフロンティア・サイド(新サイド4)へとYF-5 シューティングスターを向ける。

 

徐々に近づく地球。

新たにアムロは何かを感知する。

(仄暗い欲望がサイド全体を覆い被さっている。……いや、光だ。そこに小さな光が見える。二つの光が一つに重なり、より強い光に……。)

まさに今、新サイド4 フロンティア・サイドの宙域では、鉄仮面が操る大型モビルアーマー ラフレシアとシーブック・アノーが駆るF91、セシリー・フェアチャイルドが操縦するビギナ・ギナが死闘を繰り広げていた。

(光が大きな欲望の闇を切り裂いた……希望の光はまだある)

そして、シーブックが駆るF91がラフレシアを打ち破ったのだった。

 

 

 

アムロがフロンティア・サイド宙域に接近する頃には既に戦いは終わり、クロスボーン・バンガードによって抵抗していた連邦軍部隊やゲリラ活動を行っていた部隊はすべて駆逐され、排除されていた。

 

(………間に合わなかったか…いや、今の俺が介入していいものか。……それよりも今は、情報を得ることが先決だ)

アムロはこの混乱の乗じて、フロンティア・サイドのどこかのコロニーに降り立ち情報を得ようかとも考えていたのだが、戦端が開かれた詳細が不明であり、戦乱に巻き込まれる可能性を考慮し、他のサイドに移動を決める。

ここまでの道中、アムロのYF-5や追従するVQ-4000無人機工作バージョンは飛び交う通信電波を傍受し情報取集を行い、高速機動輸送艦にフィードバックし解析をリアルタイムで行っていた。

詳細は不明だが、現在地球圏は連邦軍の統治下にある事が凡そ推測することが出来た。

これは、アムロが宇宙世紀に戻って来た可能性が非常に高い事を示している。

そして今現在、このフロンティア・サイドはクロスボーン・バンガードなる軍に占拠され、建国宣言を行った事までは把握していたのだ。

 

アムロはフロンティア・サイドから近い月を避け、新サイド6に舵を取ろうとする。

月は監視体制も厳しく降り立つのは容易ではないためである。その点コロニー群は何らかの監視の穴があるため、潜伏しやすいのだ。

 

 

 

新サイド6へと移動開始するため、月とフロンティア・サイドの中間宙域にアムロはYF-5を進めるが、難民船の救難信号を傍受する。

 

「救難信号がここまで届く、電波干渉も少ない。ミノフスキー粒子も殆ど散布されていないのだろう。難民船の可能性は高いな。どうするか?介入してもいいものか。……ふっ、未沙であれば直ぐに救助に向かうだろう」

アムロは今の自分の立場で介入していい物か悩むが、アムロはメガロード-01で今も指揮を執る最愛の伴侶を思い出し、自嘲気味に救助に向かう事を選択する。

 

「ハロ、無人機を非干渉宙域に移動、ダミーバルーンでデブリに偽装し待機。救難信号を発信し続けている艦に通信開始だ」

アムロはYF-5の進路方向を、救難信号を発信し続けている艦に向け、コクピットシート後部台座に体半分埋め座するハロに指示を出す。

 

「リョウカイ・リョウカイ」

ハロはアムロの指示に従い、引き連れていた5機の無人機を移動開始させ、救難信号を発している艦に通信を開始した。

 

「貴艦は追われてる様だが、貴艦の所属次第では援護する」

アムロは難民船の救難信号を発してる先の艦に、音声通信のみでこう声をかける。

本来こちらの身分を明かして通信すべきではあるが、流石に今の自分の身分(マクロスでの身分)をさらすわけにも行かず、そうかといって自分が元居た宇宙世紀の30年後の世界である可能性が高い状況下で、30年前の連邦軍士官時代の身分をさらすわけには行かなかった。

 

『本艦は地球連邦軍海軍戦略研究所(サナリィ)所属、モビルスーツ試験運用艦 スペース・アーク。現在多数の民間人を収容し撤退中、クロスボーン・バンガードを名乗る賊に襲撃されています。先の賊によるフロンティアサイド襲撃によりモビルスーツを全て失い、戦力は皆無、救援願う』

 

(モビルスーツか、懐かしい響きだ。サナリィ、聞いたことが無い部署だが地球連邦軍所属か、接触は最低限の方がいいようだな。……戦力皆無に民間人の収容。軍艦の様だが、ミノフスキー粒子の散布も無し、難民船の要綱には抵触しないか……ん?この艦には……)

アムロは若い女性の士官らしき人物からの返信を聞きながら、考えを巡らせていたのだが……、アムロはこの艦から何かを感じる。

 

(先ほど感じた光がこの艦に)

 

「了解した。直ちに援護に向かう」

アムロは返事を返す。

アムロが感じた光とはシーブック・アノーとセシリー・フェアチャイルドの存在だった。

 

アムロはYF-5 シューティングスターを加速させる。

既にYF-5は敵の軍艦2隻と小型モビルスーツ12機に追われるスペース・アークを、有視界センサー及び高性能望遠カメラで捉えていた。

ミノフスキー粒子という例外があるにしろマクロス世界の索敵関連技術は、明らかにこの宇宙世紀の技術を凌駕している。

銀河を舞台に星間戦争を行ってきたゼントラーディ軍の応用技術が凝縮されているからだ。

未だ太陽系を脱していないこの世界とのスケール感の違いは否めない。

 

 

(従来のモビルスーツに比べ随分と小さい。15m前後、スピードはジェガンを上回っている。だが、行動不能にさえすればいい。…そこか!)

アムロは隊列を組んでいるクロスボーン・バンガードの12機のモビルスーツ中隊を確認し、ファイター形態のまま突撃を敢行する。

YF-5の機体胴体下部に装着されたVF-5専用狙撃連射兼用ガンポッド改を狙撃モードで単発発射し、隊列後方に位置するデナン・ゾンの背後から背部外部パックジェネレーターと連結された胴体内部に存在するジェネレーターコントロール部を一発で射貫く。

核融合ジェネレーターは誘爆することなくデナン・ゾンは停止状態に陥った。

ガンダリウム合金と同程度の装甲を持つと言われたクロスボーン・バンガード(ブッホ・コンチェルン)製次世代型モビルスーツと言えども装甲の薄い場所が存在する。装甲の可動域やスラスター部、背部ジェネレーターとの連結部等だ。

ジェネレーター本体を撃ち抜き爆散させることなく、コントロール部に弾を達せられるには、絶妙の角度でのピンポイント射撃が必要だったのだが、まさに神業の如く狙撃で打ち抜いたのだった。

現在装備してる高威力の高集束ビームキャノン×2門では、口径を絞っても、他の場所まで焼き切ってしまうだろう。

貫通威力は低くなるが実弾を選んだのはそのためだ。

 

アムロはさらにもう一機、背後から襲い掛かり、デナン・ゾンを機関停止状態に陥らせる。

 

そこでようやく敵部隊は、背後からアムロのYF-5 シューティングスターに襲われていることを認識し、迎撃態勢をとるのだが、既に手遅れだった。

 

(認識が遅い。……だが機体の反応速度は速い。VF-1Zに匹敵する。いや、あの指揮官機の機動性はVF-4に近い。小型化高機動をモビルスーツに実現させたか。だが練度が甘い……迂闊な!)

 

アムロは迎撃態勢をとろうとするデナン・ゾンと指揮官機ベルガ・ダラスに反撃の機会をほぼ与えずに、次々と背後に回り、ファイター形態のまま、YF-5専用狙撃連射兼用ガンポッド改だけで、12機すべてを機関停止に陥らせ、制圧したのだった。

 

クロスボーン・バンガードの中隊部隊は敵襲を受けた事は認識できたが、何が起こったのか分からずに、自分のモビルスーツが停止してしまった事に、茫然とするしかなかった。

 

 

(この部隊は実戦経験が浅いようだが、機体はかなりの高スペックだ。30年前のモビルスーツとは段違いだ。小型化高機動モビルスーツか……VF-1初期中期型では少々荷が重い。航行速度は遅いが旋回能力、機動性はかなりの物だ。近接戦闘では分が悪いだろう)

アムロは素直にこう感想を漏らす。

次世代VFシリーズの開発に携わってきたアムロだからこそ、この1分程の戦闘で正確に小型モビルスーツの性能を図る事が出来たのだ。

 

 

アムロはこの後、スペース・アークとの通信で民間軍事会社の者だと咄嗟に答えると、スペース・アーク艦長代理レアリー・エドベリ中尉に月までの護衛を依頼される。

アムロは一瞬考えこむが、幾つかの条件を付け、この依頼を受けいれる。

 

(月の重力圏内にリスク無しで入れるのは大きい。民間軍事会社を名乗ったのは咄嗟とは言え良かっただろう。いい距離感だ。疑われはするが、向こうも踏み込んだことは聞いてこないだろう。それが暗黙の了解というものだ。それに、勘だがこの艦に便乗した方が良いような気がする)

アムロが依頼を受けた理由として、低リスクで月に潜り込めるのと通信者であるレアリー・エドベリ艦長代理に好感を持てた事、さらにアムロのニュータイプの勘がこの艦に留めさせたのだ。

アムロは待機させている無人機をハロを通じて、月軌道上のデブリに身を潜めさせる指示を出し、YF-5 シューティングスターをスペース・アークに着艦させる。

 

YF-5を着艦させた後、約束通り簡単な天幕のバリケードで外部からこの機体を隠してくれたが、パフォーマンスに近い。アムロの意向に沿う形を示したという事だろう。

こういうモビルスーツ試験艦には検査設備は多数存在する。撮影などはされて当然だろう。

アムロはアムロでハロにこの艦についての調査を指示していた。

抜き出せる情報は抜き出すようにと、但しバレない事が前提でだ。

同時にYF-5がもし何者かに触られることがあれば、抵抗していいとも。

 

 

アムロがYF-5を降りると、丁度連邦の士官服を着た若い女性が1人で天幕の中に入り、出迎えてくれていた。天幕の外には勿論護衛か控えの兵士が付いている。

「地球連邦軍海軍戦略研究所(サナリィ)所属 モビルスーツ試験運用艦 スペース・アーク艦長代理レアリー・エドベリです。本艦を助けて頂き、ありがとうございます」

アムロと通信のやり取りを行っていた艦長代理のレアリー中尉が握手を求める。

 

「早瀬レイいや、レイ・早瀬だ」

アムロは握手をしながらも咄嗟に偽名を名乗る。自分のセカンドネームと妻の未沙の苗字を組み合わせただけのものだが……

 

「民間軍事会社の方、少なくとも今回のクロスボーン・バンガードの方ではない事はわかります。見事な操縦技術ですね。戦闘機のようにお見受けしましたが……」

 

「そのようなものだ。それも詮索は無しにしてくれ」

 

「わかりました」

そう言って、レアリーはアムロを格納庫の付属する休憩室に案内する。

 

「すみません。このような場所で、此処ならばハヤセさんも安心できるかと」

この休憩室は整備班が使う場所がら、少々雑多である。

だが、ここからはYF-5を覆った天幕が見える位置にあった。

これはレアリーの気遣いだろう。

 

「いや、かまわない」

 

「補給はいいのですか?」

 

「それもかまわない。いや、何か飲み物があれば……」

 

「失礼しました。食事も持ってこさせます」

 

「民間人もかなりいるようだな……」

アムロはここの休憩室に歩む道中にも民間人と思われる人々が格納庫で項垂れる姿を見ていた。

 

「はい、何せ本艦は試験艦でして、移住性は低く、居住ブロックにも入りきらない有様です……敵はコロニーの住人だけを無人兵器で殺戮を……残った人々はこれだけです」

 

「………そうか」

 

「本艦は既に弾薬は底を尽きました。食料やモビルスーツ用の補給物資は現地協力者のお陰でふんだんにあるのですが、肝心のモビルスーツは……」

レアリーが差し示した先にはハンガーに無残にも頭部の一部や足や手が欠損したモビルスーツが一機立てかけられていた。

フォーミュラ計画でサナリィが建造した現時点での最高機体F91だった。

 

「ガンダム……か」

 

「ハヤセさんもガンダムをご存知でしたか。正式にはガンダムの名を冠してはいないのですが、私が士官学校時代の資料で見ました44年前の一年戦争時のガンダム2号機や36年前のグリプス戦役で活躍したZガンダム、30年前の第二次ネオ・ジオン紛争のνガンダムや歴代のガンダムと顔が似てますよね」

 

「ああ……少しは知ってはいる」

アムロは内心苦笑しながら、そう答えるにとどめる。

ガンダム2号機とは凡そアムロが一年戦争時に乗機としていたRX-78-2ガンダムの事だ。

そして、アムロが最後に乗った機体はνガンダムだ。誰よりも知っているはずなのだ。

 

「少しですか……あの機体のエンブレムは?」

 

「ああ、……これは憧れのようなものだ。表に出ない民間の試験機だからな自由さ」

アムロはその質問に焦りを覚える。多分彼女はあのエンブレムが誰の物なのかを知っていて、そして自分が疑われているのではないかと、あのアムロ・レイだと。

だが、今の自分があのアムロ・レイだとは考えにくいだろう。もし生きているのであれば、59歳の還暦前だ。今のアムロはどう見ても30代そこそこにしか見えない。

 

「士官学校時代に憧れたものです。あのユニコーンを象ったエンブレムの主、伝説のガンダムのパイロット、アムロ・レイを」

レアリーはまだこの話を続ける。

 

「ああ、だがアムロ・レイは戦死した」

 

「でも、あのシャア・アズナブルと相打ちでです。実際にはMIAらしいですが」

 

「シャア・アズナブルもエースパイロットだった」

 

「レイ・ハヤセさんの先ほどの戦闘はその伝説のパイロット達にも勝るとも劣らない活躍でした」

 

「そうかな?流石にそれは言い過ぎだ。それに俺の場合は機体のお陰だ」

アムロはまさかここまでこの話を引っ張られるとは思っていなかった。

相当怪しまれてるのではないかと……この話題は切った方がいいのだが、アムロは口が達者な方ではないため、中々話題の切り替えタイミングを得られない。

 

そこに丁度、大人しそうな少年と美少女が二人分の食事を運んで来た。

 

「ハヤセさん紹介します。彼があの半壊したモビルスーツに乗って、彼女と共に本艦を救ってくれた、本艦の英雄です」

 

「レアリー艦長、英雄だなんて言い過ぎです。シーブック・アノーです」

「セシリー・フェアチャイルドです」

少年は謙遜気味に、美少女の方は少々困ったような顔をしながら自己紹介をした。

アムロはこの二人からニュータイプの力を感じていた。

 

「こちらはハヤセさん」

 

「レイ・早瀬だ」

 

「先ほどの戦闘機に乗ってた人ですよね。戦闘機でモビルスーツを12機も、しかも、パイロットを生かしたまま!どうすればそんな事ができるんですか!」

シーブックは興奮気味にアムロに訪ねる。

 

「お客人なのですから……シーブック何故それを?」

レアリーは半ば驚きながらシーブックに訪ねた。

レアリーはシーブックらには先程のアムロの戦いを知らせてはいない。

知っているのはブリッジ要員だけのはずだったからだ。

 

「F91のコクピットで一応待機してたので、バイオコンピュータで確認を」

 

「そうですか……二人ともありがとう。下がって良いわ」

レアリーがそう言うと、シーブックとセシリーは軽く頭を下げ、休憩室を後にした。

 

「すみません。今のシーブックの話は聞かなかったことにして頂けませんか?」

レアリーはアムロに苦笑気味にお願いする。

バイオコンピュータはサナリィが開発した独自のシステムだからだ。

サイコミュシステムの一種で操縦者の意思をモビルスーツにダイレクトに伝える装置だった。因みに開発者はシーブックの母親でモニカ・アノー。

元々は、軍事利用目的で開発したものではなかったが、サナリィがモビルスーツ管制システムとして組み込んだ最新技術だった。

また、パイロットの技量によりリミッターが設定されている。

これによりF91は優れたパイロットや優れたニュータイプが搭乗することにより、最大限の力を発揮するのだ。

 

「バイオコンピュータ?」

 

「はい…その」

 

「言葉だけでは何の事かわかりかねる」

アムロはそう言いつつも半壊したF91からサイコフレームの存在を感じていた。

やはり、シーブックがあの悪意を撃ち払った優れたニュータイプだと。

そして、一緒にいたセシリーからも同じくニュータイプの優れた素養を感じる。

 

「ありがとうございます。月までもう少しあります。私はブリッジに戻らなければなりません。敵襲の際はお願いいたします。それまでこんな所で申し訳ないですが、ゆるりとは行きませんが待機して頂ければ助かります。報酬の方は……」

 

「君らの言い値で構わない。相場通りだと助かる」

 

「ありがとうございます。では……」

そう言って頭を下げ、レアリーは休憩室を出て行く。

 

 

「ふぅ」

アムロは肩の力を抜き、息を吐く。

(危なかったな、まさかあのエンブレムを知ってるとは思わなかった。あれは隠さないといけないか……いや、今更か)

 

アムロは再びハンガーに立てかけられたF91を見上げる。

(サイコフレームを搭載したガンダムか……シーブック・アノーにセシリー・フェアチャイルド。この艦はどこかホワイトベースと似ている。……艦長は全く違うか)

アムロは嘗ての仲間の顔を思い出していた。

 

 

 

 

 

 

アムロはしばらくして一度、YF-5に戻る。

「ハロ、この艦のデータを抜き獲れたか?」

 

「カンリョウ・カンリョウ」

 

(スペース・アーク級巡洋艦……地球連邦軍海軍戦略研究所(サナリィ)所属。設計思想はクラップ級の様だ。現在では練習艦扱いか。竣工は宇宙世紀0115年。戦闘データは……)

アムロはハロが得た大まかな情報をヘルメットの投影型ディスプレイで確認していた。

 

その時だ。ハロが天幕内に人が入って来た事を知らせる。

 

「ここでしたか。ハヤセさんすみません。また少しお話をいいですか?」

レアリーがコクピットに乗るアムロに声をかけて来たのだ。

 

「ああ、構わない」

 

「こちらにどうぞ」

そう言って、レアリーに先ほどの休憩室を案内される。

 

「なにか?」

 

「現在月軌道上まで来ることができました。もう逃げ切ったと考えていいでしょう。その……大変申し上げにくいのですが……依頼料支払いの件、上司に相談した所。上司が是非ハヤセさんに会いたいと。サナリィの本部まで同行して頂きたく、もちろんハヤセさんの意向を重視したいのですが、どうしてもと……」

 

「さもないと、拘束するとでも?」

アムロは眉をひそめる。

 

「いえ、決してそのような事は致しません。ただ、上司が自分の名前を言えばきっと来て下さると」

 

「誰だ?」

 

「ジョブ・ジョン開発室室長です。サナリィにおいて大きな発言権を持つ重役の一人です」

 

「……………わかった。但しこの艦内で会おう」

アムロは暫く考えこみ、その名を聞いて直ぐに思い出せなかったが、過去の記憶を手繰り寄せようやくその名を思い出した。

嘗てのホワイトベースの仲間であった人物の温厚そうな顔を。

アムロは嘗ての仲間であったジョブ・ジョンが、自分をアムロ・レイだと認識している可能性は高い事と判断し、あの人物ならば自分の立場を理解してくれるだろうとも考えていた。しかし、同時にジョブ・ジョンと別れてから44年も経っており、既に当時の温厚で仲間思いのジョブ・ジョンとは異なり、自分に対して害する可能性もあるだろうと警戒もしていた。

そのため、この艦内でと条件を付けたのだ。

 

レアリーはこの少し前、クロスボーン・バンガードとのここに至るまでの凡その経緯と民間人保護について、このプロジェクトの上司であるジョブ・ジョンに通信にて報告した後、アムロの件について相談をしたのだった。

その際に、12機のモビルスーツを相手取るアムロが操る戦闘機の映像データと、休憩室で会話をしていたアムロの姿の映像と共に送信していた。

ジョブ・ジョンは最初は初期のアムロとの口約束通り、依頼料を相場の通りの支払いと月面着陸前にアムロと別れる手立てを了承していたのだが、レアリーが送信した戦闘データと休憩室のアムロの姿を確認した後、急にアムロを引き留めるためのあらゆる手立てを行えと指示されたのだ。但し手荒な真似は絶対するなとも言われていた。

 

「わかりました」

アムロにレアリーはそう返事を返し、ブリッジに戻る。

そしてジョブ・ジョンとの通信で、アムロの意向が通ることとなった。

 




今回はアムロ無双は無かったですね。
残念です。
まあ、本気アムロだと、ちょっとやばいですからね。
クロスボーン・バンガード涙目もいい所です。


設定とかは、原作と異なる部分が出ちゃうかもです。
モビルスーツの設定でおかしなところがあればご意見よろしくお願いします。
次はジョブ君との邂逅ですね。
それ以外は誰がくるのでしょうか?


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