ありふれたクラスは世界最凶!【完結】   作:灰色の空

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以前感想であったクラスメイトを主軸とした物語を読んでみたいと思っていたので自分で書くことにしました。タグやあらすじで書きましたが独自設定がとても多いです。寧ろ多すぎて破綻しないか心配になります。

ここで明言しておきます。主人公にヒロインはいません。ハーレムもありません。あるのは中学生並みの発想を浮かべる男子達(馬鹿)しかいません。友情と馬鹿騒ぎをメインにしたものになりますので受け付けない方はほかの物語を見ることをおススメします。



第一章
始まりは突然に?


ここはどこだろうか。あたりは白く果てがない空間だった。空は白く立っている場所も白い。一面が漂白された世界と言ってもよさそうだ。

 

「やぁ 起きたかい」

 

 どこかのんびりした声が聞こえ頭をあげるとそこにいたのは、ふんわりゆるっと微笑む青年が佇んでいた。何とも気の抜けそうな顔で微笑むと青年はこちらに声をかけて来る。

 

「おはよう」

 

――おはようございます?

 

「うん、混乱していても挨拶できるのはいいことだ」

 

 ふんわりと笑うその様子は自分が返事を返してくれたのが本当にうれしそうで調子が外れる。勝手に笑うのはいいのだが今のこの状況は何なのか説明してくれないものだろうか。その思いが顔に出ていたのか苦笑する青年。

 

「ああ、ごめんごめん。君と会話ができてつい嬉しくなったんだ」

 

 困ったように笑う青年は申し訳無さそうに謝る。随分と変な奴だ。しかし見る限りでは悪人ではなさそうに感じるのは第一印象が良かったからだろか。怪しいとは思うのだが…

 

「そうだよね。色々と説明がいるよね。 でも…説明は簡単にできるんだけど心の準備はいいのかな?」

 

――心の準備って……もしかして

 

 見覚えのない景色、白一色の世界、目の前にいる不思議な青年。この光景はつまるところ…なんとなく察した。察してしまった。もしかして自分は…

 

「そう…気が付いたようだね。君は、

 

 

 

 

 

 

 

 ()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…君…か…柏木君」

 

 体をゆさゆさを揺さぶられる感触で微睡みから少しづつ覚醒する。肩に誰かの手が触れている感触に気が付き体を起こす。

 

「ふぁ~~…南雲?」

 

「おはよう、柏木君」

 

 起こした人を見ればそこにいたのは親友である南雲ハジメだった。眠たい目をこすり辺りを見回せばそこはがやがやと騒がしいいつもの教室。どうやら状況から察するに俺は自分の机に突っ伏しって眠っていたようだ。眠気を払うように頭をガリガリと掻き南雲に向き直る

 

「おっす。おはよう南雲~ …くぁー」

 

「また欠伸?珍しいね。かなり熟睡していたみたいだけど?」

 

「ん~~そりゃ昨日の晩調子に乗ってエロゲーをしていたからな。眠くなりますわい」

 

「エロゲーって…」

 

 呆れたような目線を向ける南雲。確かに呆れるのは分かる。自分でも深夜にエロゲーをしてしまったのはどうかと思う。だが他にやる時間がないのだ。 もしやっていることを親にばれてしまったらどう接すればいいのか。親がこちら(オタク)側の南雲にはわかるまい。

 

 呆れた視線を向ける南雲に対してそんな感じで何か言ってやろうと思いそこで南雲が目にうっすらとした隈を作っていることに気が付く。

 

「ふん健全な男がエロゲーをして何が悪い。そういうお前こそ目の下に隈なんか作ってナニをしていたんだ。ほぅれお兄さんに行ってみなさい」

 

「開き直った!? それもナニって…はぁーちょっと父さんと母さんの仕事を手伝っててさ眠るのが遅くなったんだよ」

 

「ふぅーん、なんか嘘くさい」

 

「どこがさ」

 

「普通親が息子に睡眠時間を削ってまで仕事を手伝ってくれっていうかなと思ってさ…さてはオメーもゲームしていたんだろ」

 

 疑問に思ったことを話したら途端に目をそらす南雲。相変わらず嘘がつけない奴だ。ケラケラ笑うと観念したかのように自分の机に突っ伏す南雲。ちなみに俺の後ろの席が南雲の席だ。よく休み時間になるとこうして向かい合ってはダラダラと益のない話をしているのだ。

 

「ぅう、そーだよ日曜日が終わって明日から学校だと思ったらさ、時間がもったいないと思っちゃって、おかげで少しばかり眠いよ」

 

「あっはは自業自得だバーカバーカ」

 

 俺の言葉にむすっとした顔の南雲をからかうのは存外面白く、やはり学校は時たま憂鬱ではあるかもしれないが楽しい場所だと感じる。世間一般の学生に比べたらズレているかもしれないが俺は何故か強くそう感じてしまうのだ。

 

「それよりも南雲」

 

「…なに」

 

「ゴメンってそんなにぶーたれるなよ。ほらあそこ見てみろよ。いつものように白崎がお前に話しかけたくてうずうずしているぞ」

 

 南雲は俺の言葉に一瞬肩を跳ね上げると極力顔を向けないよう意識を件の少女、白崎香織に向ける。

 

 白崎香織。学校で二大女神(ちなみにこの噂を流した奴は誰か知らない)と呼ばれる女の子の一人で男女絶大な人気を誇る美少女だ。容姿は黒髪長髪の良く言えば正統派、悪く言えばテンプレの整った美少女だ。性格の方も外見に劣らず非常に面倒見が良く責任感もあり良くにこにこと微笑が絶えない()()普通の女の子だ。

 

 そんな彼女は南雲が自分の方に視線を向けたのがうれしいのか途端に満開の笑顔になり、席を立ちそうになる。しかし白崎は席を立つことができなかった。白崎の隣にいる二大女神のもう一人八重樫雫がとても焦った表情で彼女の袖をつかみ引き留めていたからだ。

 

『ちょっ香織やめなさいどこ行く気なの!』

 

『むぅ、どこって南雲君におはようって言いに行くんだよ。雫ちゃん何で止めるの』

 

『やっぱり。前も言ったけど悪いことは言わないからやめておきなさい』

 

『それは…うぅぅ私はただ南雲君とお話がしたいだけなのにー』

 

『よしよし』

 

 満開だった白崎の顔が一瞬にして不満げな顔になりついにはしょぼんとした顔になったのと困ったように笑っている八重樫を見ると恐らくこんな会話をしているのだろうか。中々微笑ましいやり取りだ…もちろん八重樫が止めなければ俺と特に南雲が悲惨なことになるかもしれないという可能性を除けばだが。

 

「で、美少女をあんなに嬉しそうな顔にした南雲君心境はどうでしょうか」

 

 白崎達に向けていた視線を俺の方に向けると頬を引き攣らせながら南雲が大きく息を吐く。

 

「…正直こっちに来なくてほっとした」

 

「気持ちはわからんでもないが、そんな顔すんなよ」

 

 一見すると正統派美少女にオタク少年が好意を持たれているように見えるこの構図。実はそうでもないのだ、向けられているのは好意ではあるが純粋たる肉欲(性欲?)であり、獲物を狙う肉食獣(白崎)と怯えながらも期待する草食獣(南雲)の構図なのだ。…自分で言ってるけどなにこれ?出来の悪いギャルゲーだな!

 

 ともかく白崎香織は只のテンプレ美少女ではない。裏の顔を持つ恐ろしい女子なのじゃ。

 

(…と言っても、根は初心な子だと思うんだけどな。…ちょっと独占欲が強いだけで)

 

「柏木君?なんか変な顔しているよ」

 

「ん?そんなに変な顔していたか」

 

「うん。眉間にしわが寄っていた。どうかしたの」

 

「あー白崎から惚れられているお前が羨ましくなった」

 

「ちょっ!?冗談でもそういう事言わないでよ」

 

「くけけけけけ」

 

 どうやら考え事をしていたのが南雲にばれてしまったようだ。俺のからかいと他人事なやり取りに南雲は顔が赤くなるやら青くなるやら百面相をしている。中々反応がうぶな奴だ。もっとからかいたくなる。

 

「おいおい、ま~たお前らゲームの話をしてんのか?これだからキモオタって奴はよぉ」

 

「ゲームしかやる事ないのかよー」

 

 そんな俺達を揶揄するような声がかけられる。声の発信者はクラスの不良?檜山大介だった。その後ろには檜山とツレであるへらへら笑っている斎藤良樹に檜山と同じようにニヤついている近藤礼一、心底どうでもよさそうな中野信治の姿があった。一緒に居るところからして一緒に登校してきたのだろうか?仲が良い様で。

 

「おっす檜山。おはようさん」

 

「檜山君。おはよう」

 

「……ッチ」

 

 ともあれ、揶揄する檜山に普通に挨拶を返せば憮然とした顔を返してくる檜山。からかったが特に何ともない反応を返したので面白くなかったのだろう。それで拗ねた顔をする檜山は中々可愛げがある。…可愛くない?

 

「あのなぁ南雲。お前調子に乗ってるみたいだから忠告しておくけどよ、徹夜でエロゲーやってるのはマジ気色悪いからな?」

 

「だってさ柏木君」

 

「んなぁ!?エロゲーをやってるのが気色悪い…だと? 仕方ないじゃん だって男の子だもん❤」

 

「お前かよ!?つーかクネるな!キショいんだよ柏木!」

 

 じゃあどうしろと?ホモビでも見てろってか?…禁断の領域に入れと、お前は言うのか?流石は檜山、中々恐ろしい事を言ってくる。

 というより俺はエロゲーで処理をしているが、逆にお前は何で処理をしているのか。後学のためにぜひ教えてほしいものだ。…まさか白崎というオチではないだろうな?

 

「あ、斎藤君。これ頼まれていた物」

 

「お、サンキュ~ やっぱ南雲に頼んでよかったよ~」

 

 そんな俺の横ではなにやら取引をしている南雲と斎藤。お前ら意外と仲良いんだな!?おいちゃん知らんかったぜよ!?

 

「おい、斎藤!んなオタク野郎と話すなよ!」

 

「え~ そういってもな~」

 

 ガミガミとご立腹する檜山に斎藤は柳に風だ。哀れだ。檜山の横では近藤は場に流されている様にオロオロしているし南雲は苦笑している。

 

 檜山大介は白崎香織に惚れている。故に檜山は白崎に気に入られている南雲(ついでに俺)に突っかかるのだ。最もどれだけ突っかかっても南雲は気にせずに受け流すし、白崎の獲物は変わらない。だから檜山の独り相撲でしかないのだが…

 

「おい檜山、何時まで柏木達とイチャついているんだ。さっさと行こうぜ」

 

「誰がイチャついてんだゴラァ! チッ、オイ行くぞ!」

 

 中野の言葉に噛みつく檜山だがそれで頭が冷えたのか肩をいからせながら自分の席へ歩いていく。ケラケラ笑う斎藤に慌てて檜山について行く近藤も同じように自分の席へ。

 

「…檜山が悪かった」

 

「良いよ別に。いつもの事だから」

 

「そーそー 寧ろサンキューだぜ中野。お前も色々大変だろうに良く檜山の手綱を握れるよな」

 

「そーだよ。中野君転校してきたばっかりなのに上手く檜山君達と一緒にいるのは凄いよ」

 

 中野信治。僅か一か月前に別の学校からやってきたという転校生。特に印象のない普通な顔立ちながら醸し出す雰囲気はなぜか大人な変な奴。数日で檜山達とツルみだし、仲良くなるという口数は少ないながらも恐ろしいコミュ力の中野は良く俺と南雲に対して檜山の行動を謝ってくる。別に大したことではないのだがかなり律義な奴だ。

 

「…まぁあの手の奴は対応が楽でいいからな」

 

「おい中野!さっさとこっち来いつってんだろ!」

 

「へーへー それじゃお二人さん。またな」

 

 溜息一つで檜山の元へ向かう中野。その際に意味深な言葉を送ったのは気のせいか。転校してきてから気に掛けられているような気がするのははてさて俺の自惚れか。南雲を見ても不思議そうに首を傾げるばかり。 

  

「いつも思うけど中野君のアレ何だろうね。昔どこかで出会ったことがあったりする?」

 

「無いと思うけど…転校してきた理由もよく分からんし変な奴だ」

 

 親の都合と言うが、それしか話さないし話したがらないようだった。時たま俺と南雲が行く喫茶店『ウィステリア』に良く通い、店長さん(同じクラスメイト園部優花の父親でもある)と会話をしていることが目撃されている位か。

 

 高校二年生という転校するには中途半端な時期にやってきた不思議なクラスメイト。悪い奴ではないというのが俺と南雲の認識ではあるが…要はヘンな奴。それだけの話だ。

 

「まぁいいかそれよりもだ、話を戻すけどいくら徹夜したからって授業中に寝るなよな。お前は皆に迷惑かけてないと思うかもしれんが先生からしてみれば話を聞いてくれない生徒は心象が悪くなるらしいぞ」

 

「露骨に話をそらそうとしている…説教は勘弁して、眠くなるのはしょうがないよ」

 

「いーや、やめません。そもそも授業を寝るのはもったいないぞ。そりゃ勉強は面倒だけどさ、話している先生によっては中々面白い話をしてくる先生や分かりやすく教えてくれる先生もいるだろ」

 

「うーん?」

 

「先生たちの雑談って楽しくて個性が分かって色々面白いんだけどなぁ」

 

 先ほどから授業の面白さを熱弁しているがどうやらいまひとつ南雲には伝わっていないようで首をひねられてしまった。やはり自分は一般的な学生とはズレているかもしれない。

 

 そうこうしている内に始業のチャイムが鳴り教師が教室に入ってきた。いつものように朝の連絡事項を伝える。そして、いつもと変わらず当然のように授業が開始された。

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

 

「くぁー疲れたー」

 

「ふぁ~ようやくお昼御飯だね」

 

 四限目の授業が終わり昼休憩の時間が始まった。体を伸ばし肩をもんでいると後ろの方から南雲の眠そうな声が聞こえてきた。

 

「ようやく一日のお楽しみの時間だな」

 

 体を後ろに向け弁当袋を取り出す。よくこうして南雲の机で弁当を広げるのだが南雲はいつものようにゼリー型のエネルギチャージ食品を取り出す。よく見る光景とはいえ流石に呆れてしまう。

 

「お前なぁ流石にそれは腹が減らねぇか」

 

「?これ一つで栄養は十分補給できるよ」

 

「そういう問題じゃなくて育ち盛りの子供がそんなもん食べてることに悲しさを禁じ得ないんだよ」

 

 一応南雲にも親の事情がある為、あまり言いたくはないのだが…高校生がゼリーで昼食を済ませるって一般的に悲しくない?

 

「なんかおっさん臭いこと言うんだね」

 

「うるせぇ」

 

 確かに自分でも時たま年齢にそぐわない言動や行動をすることがあるがおっさん臭いと言われてしまうと傷つく。そんな話をしながらも大きめの弁当袋から取り出したのはコンビニのおにぎりと菓子パン、ついでにお茶とカ○リーメイトだ。

 

「なんだかんだ僕にお小言を言うのに柏木君もカ○リーメイト持ってくるんだ」

 

「コレはあくまで緊急食糧だ。弁当を忘れたときはこれを食うようにしてんだよ。それに今日のコンビニ弁当なのは事情があるんだよ」

 

 そういいながらもペットボトルのお茶を一口。苦みと生ぬるいお茶が口の中に入り喉を取っていくのにわずかに顔をしかめる。やっぱりお茶は冷たいのが最高だと思う。だったら水筒を持ってくるべきだが、あんまり荷物がかさばる様なものは持ち込みたくない、おまけに重いし。

 

「じゃ柏木君はそのままご飯食べてて、僕は夢の世界に旅立つとするよ」

 

「待て待て飯食ったらすぐに寝ようとすんな。はぁー仕方ねぇな、ほれおにぎりとパンどっちがいい」

 

 そのまま机に突っ伏して寝ようとする南雲を慌てて引き留める。何が悲しくて寝ている親友の前で一人悲しくむしゃむしゃと飯を食わなければいけないのか。嫌がらせか?

 

「んーでもお腹減らない?」

 

「それはこっちのセリフだと…まぁいいや心配すんな一つ減らしたぐらいで倒れるような柔な体はしていないさ」

 

「…なら、一つもらうよ。 …ありがとう」

 

 照れているのか小声で言った南雲の言葉にひらひらと手を振る。ちなみに南雲が選んだのは菓子パンだった。おまけに俺が楽しみにしていたクリームとチョコが入った奴だ。中々にお目が高い。…この怨みはいつか晴らす。

 

 おにぎり(中身は鮭入り)を頬張りながら周りを見ると購買組はさっさと出ていったのか人数が少なくなっている。残っているのは檜山達と老け顔の永山重吾を中心としたグループ。それに愛子先生とお喋りをしている女子達と天之河達ぐらいか。

 

「あ、畑山先生がまだ残っている」

 

 やはりお腹は空いていたのか菓子パンをパクパク食べていた南雲が教壇で数人の生徒と会話をしている四時間目の社会科教師である畑山愛子先生(二十五歳)を発見する。

 

「良いなぁ~俺も愛さん先生とお話してみたい」

 

「えっ…柏木君、畑山先生と結構仲良いよね?」

 

「馬鹿野郎。もっと仲を、交友を深めたいってことだよ」

 

 そしてあわよくば付きっ切りで特別授業を受けたい。特に保健体育を!○教育を!手取り足取り教えてもらいたい!あのちっこい体でねっとりしっぽりと…グフフ。

 

「柏木君。鼻の下がすごく伸びているよ。おまけに顔が犯罪者だ」

 

「だ、誰が畑山先生のことを狙っているだって!?ふてぇ野郎だとっちめてやる!」

 

「うーんさっきまで畑山先生に対して変なこと考えてたやつがそんなこと言うの?これ僕が止めないといけないの?嫌だなぁ」

 

 クリームとチョコのダブルクリームパンを食べ終わった南雲はそんな事を言いながら次は俺の最も好きなベーコンパンに手を出す。やはりこいつはいつか処さなければいけない。俺は固く心に誓った。っていうかなんで俺の好物をピンポイントに取っていくの?イジメ?

 

 そんな俺たちに気付かず楽しそうに女子生徒達と談笑する畑山先生。容姿はズバリ小さなロリッ娘だ。パッと見どう大きく見積もっても中学生ぐらいにしか見えない身長に愛くるしい童顔。性格は生徒思いであり一生懸命でたまに空回ってしまう事もあるが非常にできた先生ともいえる。俺が尊敬している先生達の中ではトップクラスの人だ。

 

「そして合法ロリでもある…完璧(パーフェクト)だ」

 

「おっと、聞こえてはいけない台詞が出てきた。僕は何も聞かなかったことにしよう」

 

 何やら南雲が言っているが華麗にスルーする。とここで何やら視線を感じた。見れば南雲の方も感じ取ったのかブルリと体を震わせると俺の弁当袋に入っているとっておきのサイダーに口につけた。やはり菓子パンにはあっさりとした炭酸ジュースだ。南雲はよくわかっている。仕方ないので俺のジュースを勝手に飲んだことは許してやろう。たまには心が広いところを見せてやらねばなるまい。俺もおにぎりに炭酸ジュースは合わないって気付いたからお茶を買ったからな。

 

「…柏木君悪いんだけど確認してもらっていいかな」

 

「確認しなくても誰かは一目瞭然なんだけどな」

 

 視線を俺に合わせたまま動こうとしない南雲に変わって顔を動かしてみれば案の定視線の正体は白崎香織だった。しかもなぜか八重樫に羽交い絞めにされている。何を話しているかは教室の騒音によってかき消されているが恐らくこんなことを話しているのだろう

 

『離して雫ちゃん!今日こそ南雲君と一緒にお昼ご飯を食べるの!』

 

『だからやめなさいって言ってるでしょうが!香織が近づくと絶対面倒事が起きるのよ!ああもういつの間にこんなにこじらせちゃったのよ!』

 

『香織どうしたんだい?南雲は今柏木と一緒にご飯を食べているんだから俺達と一緒に』

 

『光輝くんは関係ないの!そこで坂上君と一緒にご飯を食べてて!』

 

『(´・ω・`)』

 

『あーなんか分からんが元気出せ光輝』

 

 何故か美少女2人の近くでショボンとしていた天之河と元気づけようと天之河の肩に手を置く坂上の声まで聞こえてきそうだがおおむねこんな感じの会話をしているのだろう。

 がんばれ八重樫。お前が頑張ればその分南雲の平穏は続く。いつか心労で倒れたとき見舞いの品は期待していてくれ。

 

「どうだった」

 

「キマシタワ―だった。かわいい女の子が絡み合っている姿ってなんであんなに良いんだろう」

 

「くたばれ」

 

「辛辣ゥ!」

 

 思ったことを言ったまでだがどうやら南雲はお気に召さ無かったらしい。なんて注文の多い奴だ、お前もそういうのが好きなむっつりスケベだというのに…

 

 食べ終わった弁当のゴミなどを手早く片付けていく。結局パンは南雲に食べられてしまったがおにぎりはちゃんと食べているので問題はない。食べられてしまった分だけいつか南雲の部屋でお菓子を強奪すればいいだろう、ケケケ。 

 

「あっとそういえば南雲今日の朝なんだけどさ」

 

「朝?」

 

「お前に起こされる前に夢を見たんだよ」

 

「夢ねぇどうせなんかエロい夢でも見たんでしょこの変態」

 

「いつも発情している訳ではないのです。じゃなくてなんと異世界転生っぽい夢を見たんだよ」

 

「異世界転生の夢!?」

 

 俺の見た夢に興味を持ったのか、さっきまで胡乱げだった南雲の目が急にキラキラと輝きだす。何だかんだと言ってこういう話題が大好きな奴なのである。苦笑しながらも今朝見た夢を離そうとすると隣からぬるりと影が伸びてきた。

 

「異世界転生…だと?聞かせろよその話」

 

「うぉっ 清水か」

 

「清水君。お昼は食べ終わったの?」

 

「お前らがグダグダしている間にな」

 

 現れたのは清水幸利。俺達と同じオタクでサブカル大好きな同好の士だ。普段は教室でラノベを読んでいる大人しい奴だが俺たちの話題が琴線に触れるとこうやってぬるりと出てくる面白い奴なのだ。

 

 どうにもギラギラとしたその目は俺の話を聞いて色々と空想をするつもりなのだろう。一見するとアレな奴に見えるがツッコミのテンポが良い中々の子気味の良い奴でいろいろとサブカル談義をするときは重宝するのだ。

 

「どうせ柏木の事だ。美人の女神さまとよろしくやったんだろ?憐れんでやるからさっさと話しな」

 

「…俺皆からどう見られているんだ?」

 

「え、言っていいの?」

 

「…何でもない」

 

 スケベに見えているんだろうか?確かに年頃なのでそう言う話題は大好きなのだが…もうちょっと慎みを持った方が良いのか?少しばかり自分の認識について考えそうになるが清水の目が急かしてきたので話を戻すことにする。清水お前なんでそこまで気になるんだ?

 

「本当に転生の夢かどうかは分かんないけどさ」

 

「うんうん!」

 

「目が覚めたら全部が真っ白な世界だったんだ。空も地面も何もかも。地平線のかなたまで」

 

「ほぅ テンプレだが悪くはない。それで次は?女神か?美少女か?」

 

「焦るなっての。それでここはどこなんだと思ったら目の前に」

 

「目の前に!」

 

 身を乗り出す南雲、清水はペロりと舌なめずり。お前ら気になるのは非常にわかるが、がっつき過ぎではなかろうか?そんなに異世界転生ものが好きなの?()()()()()()()のがそんなに気になるのか?…わからんでもないか。

 

「なんかゆるっとしてふわっとした青年…男がいた」

 

「は?」

 

「え?男?」

 

「おう、あれはまさしく男だった。なんか頭がゆるふわ系?でのんびりとした優男。顔は整っているけど3枚目な感じが体からにじみ出ているようなそんな男だ」

 

「えぇーそこは綺麗な女神さまとかじゃないのー」

 

「はー つっかえ。出直してどうぞ」

 

「あのなぁ俺に不満を言うなよ。男なのは俺のせいじゃないだろう?」

 

 ブーたれる友人二人に溜息を吐く。幾分か覚えていないおぼろげな記憶だが確かに男だった。何とも悪意と言うのがないようなそんなふんわり笑顔が良く似合う奴だ。

 

「で、どんな会話をしたの」

 

「それがさ、挨拶をしてきたから状況に混乱しながらも挨拶を返したらうれしそうに笑ってさー。説明を求めようと思ったら、もしかしてここが自分が死んだ後の世界なのでは?って思いついて、そうしたらゆるふわ男から君は死んでここに来たんだと言われたところで目が覚めた」

 

「何それー肝心な所が全くないじゃんかー 起こさなければよかった」

 

 起こさなかったらそのまま朝礼は寝て過ごすことになる。お前は残念かもしれないが俺的には起こしてくれて助かったんだぞ?

 

「肝の部分である特典やら願い事チートについて全くもって触れてない。お前は何のためにその夢を見たんだ」

 

「割と辛辣だな!? んなこと言ったって夢から覚めちまったモンはしょうが無いし…またの機会ってことで」

 

 清水の物凄く不満そうな顔に仕方ないと言えばジト目で睨みつけてきた。お前本当にその手の話題好きなんだな!?

 

 とはいえ二人が気になっていたように俺も気になるもんである。もしあのまま会話を続けていたら夢の中の自分はいったいどんなことを願ったのだろうか。…もしかしてと考えていたアレを願うのだろうか…まぁ非常に気にはなるが所詮はラノベ好きな自分が見た只の夢だ。

 

 そんな事を考えさて残りの昼休み時間は何をしようかと考えたところで俺は硬直してしまった。

 

「何だこりゃ?」

 

「あ? …マジか?」

 

「え?なにこれ…魔法陣?」

 

 俺の足元に、正確に言えば教室全体を覆うような幾何学模様が現れたからだ。未だに教室に残っていた畑山先生が「皆! 教室から出て!」と叫んだのと、幾何学模様の輝きが爆発したようにカッと光ったのは同時だった。

 

 

 

 

 




一言メモ

 檜山大介 周りからは不良(ファッション)と思われている。結構常識人

 斎藤良樹 へらへら笑っている檜山の取り巻き。子供っぽい

 近藤礼一 檜山の取り巻き。場に流される今どきの若者

 中野信治 変な時期にやってきた転校生。喫茶店「ウィステリア」の常連らしい?
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