一応クラスメイトが主体なので…(クラスメイトがメインになるのは二章になってから)
宿場町『ホルアド』
この街はオルクス迷宮へ挑むための冒険者が拠点にする街であり王都ほどとは言えないが活気のあり々栄えている町だった。
「よし、ではここから騎士団がよく利用している王国直営の宿まで向かう。そこで休憩をし、明日の朝、迷宮の中に入ることにする。詳しい話はまた夕食が終わってから説明をしよう。さぁ慣れない馬車移動で疲れているだろうが、もうひと踏ん張りだぞ」
騎士団長メルドさんの誘導に従い、くたびれた体を動かしのろのろと歩む俺達。ほかの皆を見れば流石と言うべきか天之河を始めとする高ステータスの方々はあまり疲れた様子もない。永山達や檜山達は少々疲れてそうなものの問題はなさそうだ。問題は…
「ケツ…おケツが…痛いのぉ」
「うぇ…うっぷ…おぅう」
「ここが、冒険者の町…うーん武器屋とか道具屋って見てきてもいいのかな?でも時間が、いやでも少しぐらいなら…それに迷宮も見てみたいし…」
俺はケツが痛く、清水は顔が青い。取りあえず今は横になりたかった。ちなみに南雲は平気そうだ。いやむしろ初めての冒険者ご用達の町に来たからかやたらと目がきらきらしている。子供か!
「はぁー南雲、興奮するのはよくわかるけど今はひとまず宿に行こうぜ。元気ならそこにいる吐きそうな清水に肩を貸してやってくれ。はぐれちまったら事が事だ」
「あ、うん。わかったよ。ほら清水君しっかりして」
「ぅぅうう…」
顔を青くして今にもリバースしそうな清水に南雲は肩を貸し、宿へ運んでいく。俺も一目だけ迷宮の方へ視線を向け南雲の後に続くのだった。
あの後、清水は騎士団の人に任せて俺と南雲はほかの皆と同じように夕食を取っていた。清水は薬でも飲んでいればすぐに回復するとの事だ。俺も調合師なら体調を回復させる薬ぐらいできるようにならないと…
それにしても、流石は王国直営の宿だ。大人数が入っても問題無いようで、宿自体も掃除が行き届いており不潔感は無い。普通に泊まったらいったいどれほどのお金がかかるのか…神の使徒ってのはこういう時結構役に立つ。
勿論夕食もうまい、今後この宿を拠点とするなら飯も期待できそうだ。
「で、明日の迷宮の話、ちゃんと聞いていたの柏木君」
「ぜーんぜん!」
「はぁーそれじゃもう一度僕が説明するよ」
夕食に夢中になっていたせいで、メルド団長の話を聞き逃してしまった俺に南雲が明日の説明をする。いつもはちゃんと説明などを聞いているはずなのにどうにもこの街に入ってから気持ちが散漫しているような気がする。ワクワクしているのか不安なのか…どっちもだろう。
「明日の迷宮、20階層まで進むのを目的にするんだって。そこまでなら僕たちの強さでも十分カバーできるって」
「ふーん、そこまでが一般的な戦闘員のラインなのかねぇ?」
「多分ね。20階層の魔物を楽に倒せるようになるのがこの遠征の目的なのかな?もしくは皆の戦闘能力を図りたいとか、詳しいことまではメルドさんに直接聞かないとわからないけど…」
「どういう風に迷宮に潜るんだ?」
「全員で行くんだって。勿論メルドさん達騎士団の人も一緒。良かったね柏木君、てっきりチームを組んで順番に潜って来いって言われるのかと思ったよ」
「何そのスパルタは…って全員で行くのか?」
「?そうだけど」
何でだろう?ちょっと不安になってしまった。迷宮に入る騎士団員の人数はメルドさん筆頭に6人で俺達の数は全員で24人だ。杞憂かもしれないがちょっと保護者の数が足りないような…?
「…なんだろう。保育園児に手を焼く保母さんのイメージが頭に浮かんだ」
「何それ? ともかく説明を続けるよ。迷宮で使う回復薬や装備品は明日配られるんだって、どんなの装備品が支給されるんだろうね」
「あんまり期待しない方が良いだろ?俺達はペーペーなんだから。しかし中々太っ腹じゃないか。貴重品のアーティファクトが配られるんだろう?あーでも俺、武器はどうすればいいんだ?」
俺が使える武器なんぞそうそう無い。と言うより適性がないのか。使えるもんなんてたかが知れているぞ?
「適当な物でも貸してくれるんじゃない?あくまで戦闘能力を見るだけで、そこまで柏木君の戦い方を重視するわけじゃないと思うから」
夕食が終わりさっさと体を休めろという事なので、俺達は自分の部屋に戻ることになった。部屋は2人部屋が基本となっており俺と南雲がセットになっている。…気のせいかもしれないがこの世界に来てからは本当に南雲とセット扱いを多く受けている気がする。
…別に不満じゃないけどな!南雲と一緒だと気が楽だし、学校が休みの前日はお互いの部屋に泊まるという事はよくあったから慣れているけどな!
「ふぃ~」
流石に王宮ほどの部屋の広さは無いがこれが普通と言う物だ。ブルジョワな感覚になれてしまった俺には多少狭く感じるが南雲は気が楽なようでベットでごろごろしながら迷宮低層の魔物図鑑と言う本を読んでいる。この宿屋に常備されている物だろうか?
「アランさんが貸してくれたんだ。少しでも対応策を知っていた方が良いって」
「アランさん? ニート教官が言っていた先輩さんか」
ニート教官には本当に頭が上がらない。いつかお礼をしなければ。そんな時だった。扉から控えめなノックの音が聞こえてくる。こんな時間に誰だろうか?今更緊急連絡だとは思えないし…南雲と目を合わせ、結果俺が出る事になった。
「へいへ~い誰ですかっと……えぇ」
「こんばんわ」
扉の前にいたのは何と白崎だった。ネグリジェに上着を羽織っただけと言う常識を疑うような痴女が目の前にいたのだ。
速攻で扉を閉めようとしたが、足をいつの間にか扉の間にひっかけており閉めることが出来ない。…流石というか相変わらず油断できねぇ女だ。
「南雲君、居る?いるよね、話したいことがあるんだけど」
抑揚のない声で確信を持った言い方。俺にだけ態度を変える相変わらずの白崎に溜息一つ吐きたくなるがここは我慢だ。部屋に入れない様に自分の身体を使ってガードをする。…どうせ無駄なんだろうけどねっ!
「なら入りたい理由を言いな。今ここで」
「私が話したいのは貴方じゃなくて南雲君なの」
「そんな事も分からないの」と言わんばかりの辟易とした顔を浮かべる白崎。そんな事百も承知だけど中に入ったらどうなる事が起きるか…考えなくても思い浮かんでしまうのは青少年のサガなのか。
「誰が来たのー」
「白崎」
「うぇっ!?……ええっとちょっと待っててね!」
後ろの方でバッタンバッタン音が部屋を掃除するような音が聞こえるとはつまり部屋に入れるつもりなのか。してやったりと言うドヤ顔の白崎の額を指で小突き
部屋に招き入れる。こうなっては仕方がない。間違いが起きないように俺が南雲を守護なければ…
「それで、こんな時間にどうしたの?」
夕食が終り、寝るまでは自由時間だ。…気が動転して今の時間帯を深夜とでも思ってんのじゃないのかコイツ?…動揺しているのは俺か。
「それは……」
チラッと露骨に俺へと視線を向ける。『お前が邪魔で話せねぇんだよ!さっさと失せろ!後4時間は帰ってくんな!』そんな言葉が聞こえてきそうな視線だ。
「南雲君に話しておきたくて…」
「ど直球に言えよこのむっつりスケベ。今日は朝帰りがしたいってな!」
「どうしても言わないといけないと思ったらいてもたってもいられなくて…その、駄目かな?」
無視しやがった…そして南雲に対して上目遣いで誘惑しているだとっ! 困ったように視線を俺と白崎を交互に向ける南雲。つくづく頭が痛い状況である。
これは…多分2人きりにさせないと白崎は帰らないな。いつの間にか俺のベットを占領しているし、てこでも動く気はないと顔に書いてあるし。
「はぁ…南雲すまん。少し外の空気を吸ってくるわ」
「えっあ、う ごめん」
「いいってことよ。くれぐれも白崎には油断すんなよ」
帰って来たらげっそりしている親友と肌ツヤツヤの元ストーカーの姿なんて見たくもない。念を押す様に白崎を見れば南雲に見えないところでガッツポーズをし、俺に向かって勝ち誇った顔をしていた。この肉食ヘタレ淫乱女が、そういうところだぞ
廊下を出てぶらぶらと宿屋をさまよう。所々にある部屋から時に話声が聞こえていたり時に静かだったりする。明日魔物と戦う事について皆はどう思っているんだろう。怖くはないのだろうか。怪我をしたくはないのだろうか。
「まぁ…平気なんだろうな」
どこか現実感のない話ではある。皆ゲーム感覚なのかもしれないし夢を見ているようなものかもしれない。それとも気づかない所でストレスを貯めているのかも。
最も俺がどんなに考えたところで意味のない事でもあるのだが。
「調合師は、世界を変革させる力があるわけじゃないしなー」
精々できるのはクスリを作る事だけである。…もっと強力な物さえ作れるのなら幾らでもやりようはあるのだが…
自身の能力についてあれこれ考えながら気が付いたら宿の外の外にある広場にあるところまで来てしまった。座るのにちょうど良さそうなベンチがあるので座ろうとしたら先客がいる事に気付いた。その人はベンチに腰掛け呑気にタバコを吸っている。…煙草?
「お前は…中野?」
「柏木か。そろそろ来る頃だと思った」
そこにいたのは転校生、中野信治だった。
「何処に行っても月は変わらないのかねぇ」
野郎と二人でベンチに座り月を見る。日本とは違って大気汚染とか何やらが無いからだろうか、夜空に輝く月の綺麗さは目を奪われるものだった。そんなシチュエーションで中野は煙草を吸って完全にだらけており俺は、ぼけーっと月を見ている。
「って、何で煙草吸ってんだよ!?いつの間に持ってたんだ!?」
「制服の内ポケットにあった奴を持ってきただけだ。後、心配すんな俺は成人している」
「そっかなら問題は無いな。 …うん?」
ハッとして中野を見るが、相変わらず月を見てぼんやりと煙草を吸うだけだ。コイツさっき成人しているって言ってなかった?
疑うような目をして見るが…変わらず煙草を吸ってる中野に変化はなく、どうでも良くなってきたので放置することにした、体に悪いぞとかなんで年上なのに高校生?とか聞きたいが、誰にだって色々事情はあるんだ。俺がホイホイと踏み込むようなもんじゃないだろ。
「さっきまで何を考えていた」
「あ?」
「浮かない顔をして歩いていたから」
一応、月明かりがあるとはいえ暗い中人の顔までわかるとは…コイツ出来るなっ それはともかくとしてつらつらと正直に話す事にする。別に隠すようなことじゃないからねー。
「ちょいと俺の天職…調合師の事でいろいろと考えていてな」
「…あれか」
「皆のサポートをしたいんだけど、まぁ役に立ってはいないなぁと思いましてね」
最も今は戦闘訓練…正確には体力づくりしかしていなかったので、調合の技能が成長しないのは当たり前なんだけどね。
「ま、俺のような奴が役に立つとは思えんけど、皆の怪我が治る様な傷薬を作れるまでは頑張ろうかと思いまして、って所だよ」
「………」
無言である。そこはせめて慰めるところだろと思うが、果たして野郎から慰められて嬉しいだろうか?いや嬉しくはないな、微妙な気分になるだけだ!
「しっかし、変な所に来たよなホント。異世界だってよ。信じられるか中野」
「……ああ、変な所だ」
「だよな~ ほんの数週間前までは普通の高校生やっていたのに」
淡く光る綺麗な月をぼんやり眺める。そのまま何も考えず眺めていればいいのに思い返すのはこのトータスに来てからの事だった。
いつもの月曜日だと思っていた。南雲に起こされアホな雑談をしているときはまさしくいつもの日常の一コマだった。 昼休みに入ってから、南雲はゼリーで昼食を済ませようとしていたから母さんから渡されたお金で自分が買ってきたコンビニ飯を分け合いながら清水も交じって変な夢の話をしていた。ここまでは本当にいつもの日常だったのに…
教室でいきなり魔法陣が出てきてから何かがおかしくなった。召喚された先で見た不快な狂信者たちにそのトップのイシュタルと言うこれまた不快感丸出しの喰えない爺。その爺に説明されたこの世界の事情と頭が湧いているんじゃないかと思う召喚された理由。
結局戦争に参加するしか帰り道はなく、王宮で王様に出会い、豪勢な夕食を食べ、不安に包まれながら眠った初日。次の日からは訓練漬けの毎日だった。自分はこの世界では弱い人間らしく、南雲共に訓練をする毎日。そしていきなりの実地訓練。
「ほんと…いつもの日常が崩れるなんて思わなかった」
「…そうだな。昨日と同じ今日、今日と同じ明日。それがいつまでも続くと俺達は考えていた」
何か思う事でもあったのか、俺の言葉に同調する中野。気のせいかもしれないが隣から炎のような熱さを感じるのは気のせいか?
「俺達をこの世界に送り込んだ奴は一体何を企んでいる? 何がしたい? どうして
「レネゲイド…何だって?」
気になる言葉と聞きなれない単語。レネゲイドとは何なのだろうか。俺の言葉に中野は口を噤んでしまう。まーたダンマリですか。最近色んな人が俺に隠し事をしている様な気がする。別にいいけど。
「…柏木。この実地訓練が終ったらお前と南雲に話したいことがある」
白崎に続いて今度は中野。どうにもお話をしたい人が続きますねぇ。それ今言えないのか?と目で訴えれば誰もいない所で話すべきだと返された。
「この後実地訓練があるだろ。それが終って時間が取れてからだ。…本当は日本にいる時にお前に伝えるべきだった」
「そう言われると余計に気になるんですけど」
「全てはこの実地訓練が終ってからだ。…俺が転校してきた本当の理由。諸々をお前に話す」
そう言うと短くなった煙草をポイっと投げ捨てる中野。吸う事を咎める気はないけど、ポイ捨てはいかがの物か。そう言おうとして何も言えなくなった。
捨てられた煙草が
燃えカスもなく消えて行った煙草の末路を見届け中野を見ると指先が炎と化していた。比喩でも冗談でもなく、指先から炎が出ているのではなく、炎の一部と化していた。その炎は小さいのに妙に俺の心を奪う奇妙な揺らめきを放っていた。
「中野、お前それ」
「じゃあな、
振り向替えることも無く、その場から去ってしまう中野。残されたのは俺一人。先ほどまで見えていた月は雲によって隠れてしまっていた。
「……はぁ」
先ほどの炎は何だったのだろうか。小さな炎だったが、俺は詠唱と言う物を聞いていない。この世界ではどいう強者であれ必ず一言は魔法の詠唱を紡がなければいけない。それを無しで中野は煙草を消し炭に変えてしまったのだ。
炎術師というのはあんなことが出来てしまうのか?俺達がチート能力を持っているから?…きっとこの答えは間違っている。アレは…あの炎は魔力とやらで出来たものではない。どうしてかわからないがそんな確信を持ってしまう。
「はぁーー 何か溜息ばっかりついてる気がする」
顎に手を当てうんうん唸るが結局のところ行き当たりばったりでいくしかないのかもしれない。やれやれと思いつつ自分の部屋を開けると…そこには疲れた様にうなだれていた南雲が居た。件の女は珍しい事に南雲の前から引いていたようだ。
「お帰り~」
「たでーま。んで、なんだったんだ」
よろよろとベットに腰かける南雲に白崎との会話が何だったのかを聞く事にした。年頃の女が夜わざわざ男二人がいる部屋まで来たのだ。1人が恋する男だったとしても、流石に白崎に世間一般の常識はある。…多分
「それがね、明日の実地訓練だけど来ないでほしいって言われた」
「はぁ? なんでまた」
「僕がどっか遠くに行って居なくなる夢を見たとかだってさ。そんな事はしないって説得はしたけど」
意味が解らん。が、アイツは南雲に対してだけは真摯だ。決して茶化すような目的で言う事ではない、言うような奴ではない。南雲に対して脳内ピンクまっしぐらと言う白崎の本性を知ってるが、そこだけは信頼しているのだ。
「ふぅむ。しかし、お前が居なくなるか…あ」
「何?どうしたの」
「そう言えばアリスさんも同じ様な事を言ってた!お前が行方不明になるとか何とか!」
そう言えばアリスさんも予言だとか何とかいってたのだ。余りにも自然に言われたので記憶の底からすっぽりと抜けてしまっていた。そんな俺の言葉を聞いた南雲は露骨に嫌そうな顔をし始めた。
「えぇ~二人してどうしてフラグみたいなことを言うのかなぁ…なんだか本当に気になってきたんだけど」
心底行きたくなそうにベットに突っ伏す南雲。言われてみればどうしてもフラグっぽい事を言われてしまったら気になるもんである。日本ならともかくこんなファンタジー世界でならなおさらだ。
「他にも白崎さん変なこと言うし―。正直場に流されている感が凄いするんだよー」
「変な事?」
「なんだかこの世界に来てからデジャブを感じないかって」
デジャブ。またの名を既視感。初体験にもかかわらず、かつて同じような事を体験したことがあるかのような感覚の事。
「いや、それはねぇだろ。だって異世界だぞ?なに、アイツ実は二度目だってオチなのか?」
「そういう事じゃないんだけど…ちょっと白崎さんの様子が引っかかったからさ」
きっぱり否定してみるが南雲はどうにも白崎の態度に思う事があるようだ。異世界に召喚されてデジャブを感じるって白崎どんな人生歩んできたんだっての。まぁ考えても仕方ない、話を逸らす様にアリスさんから渡されたバッグを漁る事にした。
「ま、まぁそう言えばアリスさんからちょっと贈り物をもらったんだ。中身を見て見ようぜ」
「贈り物?へぇー」
贈り物を渡されたことを話すと南雲も興味を示したようだ。中から物を取り出すと…
「食べ物?」
「何故に食べ物?まぁ…燻製品はまぁ分かるとして…なんか新鮮品が大量にあるんだけど」
「えーっと生肉、魚、卵に根野菜もあれば葉物野菜もたっぷり。うわわ!お米もあった!?」
「米…たしか一部の地域でしか手には入らないんだっけ?後は調味料もしっかりとある…マジでどうなってんの?」
中から出てくるわ出てくるわ、保存食を中心とした食べ物が所狭しと入って…入っているぅ!?多くね!?取り出しても取り出しても底が見えないんだけど!
「…どんだけあるのコレ?」
「さぁ…分かりません」
部屋中が生みつくされるほどの食料品。多分だがぐらい家の近所にあるスーパーよりも品ぞろえと量が豊富にあるんじゃないのこれ!?ほかにも入っているのは毛布や寝袋、携帯型コンロらしきモノ。クーラ―ボックスまである!?ほかにもデカいロープもあれば『サルでもわかるサバイバル生活術!』と言った内容の本さえある。そんな大量の物資が小さなバッグに詰め込まれていた…
「……」
「……」
「「……」」
両者無言になってしまうのは仕方のない事だろう。顔を見合わせ俺は溜息が出て南雲は引き攣った顔になった。
「なんか…何か変な気分だ」
「……」
本当に面倒な予感がする。さっき南雲の言った通り、状況に流されている感が強いというか…俺たちが動いてから状況が変化するのではなく、シチュエーションが先にあって俺達が入り込む様な…何だろうこのちぐはぐ感。
「あーもう!考えても仕方ねぇ。ともかく寝ようぜ南雲。これ以上を起きていると明日に響いちまう」
「そう…だね。またいろいろ白崎さんに聞いてみるよ」
「別にいいけど、合意とみなされて喰われちまうぞ」
「……えぇ」
何はともあれ、結局明日に掛かってるのだ。どうにか無事に終わりますようにと願いながらベットの中にもぞもぞ潜り込むのであった。
「南雲?起きてる?」
もはや深夜と言うべき時間。隣の南雲に囁いて起きているか確認してみるが、予想通り南雲はぐっすり寝ているようで起きる気配はない。
「ふむ。それじゃやってみますか」
南雲を起こさないようにそろりそろりと動き空き瓶を二つ手に持ち、部屋に備えられてた水差しで水を入れていく。
「………」
机の上に置き、両手で包み込む様に挟んで少しづつ俺の中にある魔力を水と混ぜ合わせるようにイメージをしていく。
この行動に何の意味があるのか、意味は特にない。だが、自分の魔力が薬の材料になるのではないかという変な確信があるのだ。
この世界の魔法の数々は魔法陣によって効果が決まると言う物だ。色々な魔法の数々は適正があれば魔法陣の式を省略して魔力を注ぎ込み魔法が発動する。
「…で、合っているよな?」
多少の違いはあれどおおむねそんな感じだ。この魔法陣のおかげで皆凄い魔法が使える。魔法の適性がないという南雲でさえ鉱石を変化させる『錬成』魔法能力ができた。南雲自身は自信がないようだがこの力はすごいものだ。現に南雲は鉱石を変化させるという使い方のほかに地形も変化させている。
『調合』
世間一般では調合師の天職を持つものは薬草や素材物を混ぜ合わせたときにほかの人よりも効果が大きいとされているらしい。事実その効果で会っていると思うのだが…
ここで気になるのは調合に魔力は必要ないのではないかという事だ。誰かって薬を混ぜ合わせることはできる。専門の知識が必要かもしれないが出来ることはできるのだ。誰でも…調合の技能がない奴でも…
なら俺の『調合』と言う魔法能力はいったい何ができるのだろうか。天職が分かり自分の才能と言う物を改めて知った今どうしても気になるのだ。
南雲は魔力を使い鉱石を変化させた。皆は魔力を身体能力に使ったり火球の様な攻撃に使ったり、怪我を回復させる治癒魔法を使ったりできる。先生なんざ枯れた土地を回復させたり作物を良く取れるようにできたりと何でもありだ。
なら俺は?俺の『調合』は何なんだ?俺の天職である調合師は一体何なんだ?魔力はどこへ行んだ。
もし出来上がった薬とかに調合師の魔力が入っているので効果が上がるのなら、原液そのものである魔力をじかに水に混ぜ合わせたらどうなるんだろう。何かが起こると思って俺は毎日夜中に何かを期待して魔力を出し何かを生み出せないかと試行錯誤する。
今回は魔力と一緒に俺の感情も合わせている。無駄だとは思うがまずは試してみてからだ。何せここはファンタジーな世界。もしかしたらって可能性もある。諦めるのも自棄になるのもまだ早い。
「俺の『魔力』を『感情』と『混ぜ』合わせ『調合』するってか?」
冗談を言いながらも心を穏やかにしかしどこか期待しながらも魔力を練っていく。次第にだが俺の魔力光…若草色?萌黄色?取りあえず緑色の魔力光が瓶に入った水を覆う。
「…ここまでかな」
魔力を使ったからなのか倦怠感が出てき始めたので魔力をおさめる。すぐに当たりは先ほどと同じように暗くなった。一息をつけ、瓶をプラプラと手持ち部沙汰に振り合わせる。
(やっぱできる筈がないよな…ってあれ?)
手に持った瓶を眺めると水の色が変色しているような…まさかと思いつつステータスを手に持ち出来上がったクスリを調べる。実は日ごろの訓練のおかげか『薬物鑑定』と言う技能が地味にひょっこりとできていたのだ。ちなみにだがまだ誰にも言っていない。南雲に教えたらふてくされる可能性が高いので南雲にも言っていない。
「……なんじゃこりゃ」
ステータスプレートに出てきた二つの薬の説明に開いた口が塞がらない。
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『
これを飲めばあら不思議。気分がハイになってしまう。その様子はまるで深夜のテンションが如く!
ヒャッハー!ホッホーウ!WERYYYYY!!!最高にハイって奴だ! 要は興奮剤である
黒歴史を大量生産する可能性があるので服用は計画的に(鎮静剤も常備することをお勧めします)
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『
うっ!…………ふぅ。どうして自分はこんな無駄な時間を過ごしてしまったのだろうか…
落ち着きを得た思考は己の愚行を悔やむ。あの時の高揚感は一体…
要は鎮痛剤である。冷静な思考が手に入るが使いすぎると鬱になるので服用は計画的に
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「……寝よう」
どうやら疲れて幻覚を見ているようだ。ベットに横たわり毛布をかぶり目を瞑れば睡魔が襲ってきた。やはり魔力切れの倦怠感は睡眠にも良さそうだ。という訳でおやすみなさーい
一言メモ
クラスメイトの数 召喚されたのは24人である。+先生の畑山愛子だけ、他にはいない。
小さな炎 中野信治が詠唱もなしに使った炎。本来なら魔法陣などが必要なはずだが…
贈り物のバッグ 中には食料品が贅沢にあった。ほかの雑用品もある。
薬 オクスリは用法を守って正しく服用しまショウ。