「さて、皆さんオルクス迷宮での実地訓練大変お疲れさまでした」
場所は王宮にある会議場で俺達はメルド騎士団副長ホセ・ランカイドから話を受けていた。開口一番にこやかな笑みでそういうホセ副長だが…なんだろう、少し怖い。
「団長や部下から報告を受けましたが大変困難な死地をよく無事に乗り越えました、私達一同、君たちの帰還を嬉しく思っています」
口調は丁寧、浮かべる笑みは穏やか。おそらくだけど言ってることは本当だと思う。全部ではなさそうだけど…
「それで、どうでしたか?命を削り合った殺し合いは?一瞬の判断が己と他者の命を危険にさらすという戦いは、貴方方にはどう映りましたか」
周りの様子を伺えば、顔を青くする者、迷宮腕の事を思い出したのか俯くものなど千差万別だ。…総じて楽観的に考えている奴は少なさそう。
「その様子を見る限り君たちはここがどんな世界なのかよく理解してくれたようですね。そして戦争の一部分がどういう物なのかを」
ホセ副長が出す声は穏やかだ。それはどこまでも変わらず内心がとてもつかみにくい。
「私から話すのは貴方達の今後についてです」
そう言って切り出したホセ副長の話はどこまでも優しく、そしてどこまでも冷徹だった。
「君たちは人間族を助けるためにエヒト神から呼び出されました。その話を君たちは快く引き受けてくれたようですね」
正確に言えば、アレは天之河が勝手に話を進めていてそうなったのだが…俺と同じように思う奴もいたのか小さな声で「あれは天之河が勝手に」とかそんな言葉が聞こえる。
「誰がどう言おうとそれが君たちの意思表示でした、しかしだからこそはっきりと言わせてもらいます。君たちはこの戦争に関わるべきではないと」
(言い切りやがった…あの副長さん!?)
まさかまさかの要らない、関わるなという宣言。まさかの言葉に驚くもの多数…当たり前だが眉を吊り上げるもの多数。
「な…ふざけんなよあんたたちが勝手に俺達を呼んで必要だと抜かして、それで関わるなってどういう意味だよ!」
この声は…相川だろうか?意外と糞度胸あんなお前。あの副長さんに口答えなんて俺はとてもじゃないができないぞ。
でも言ってることはもっともでもあるんだけどね。勝手に呼び出して置いて要りませんでしたは流石に筋が通らないと思う。
「言葉通りの意味です。ならもっと分かりやすく言いましょうか。君たちの力は、必要ありません。これは、この戦争はトータスの者達で終わらせるべきものなのです」
そんな俺達?の意思を完全に無視して副長は話を進める。そんなホセ副長に声を荒げる勇気のある奴がいた。我らが勇者天之河だ。
「待ってくださいホセさん!そうはいっても、人間族が危険な状態なのは変わらないんでしょう、だったら」
「だったら何でしょうか。『俺は戦います、たとえ貴方達になんと言われようとこの世界を救って見せます』とでもいうのですか」
「っ!?それのどこが悪いんですか!」
言い当てられてしまったのか天之河は言葉に一瞬詰まってしまった。その姿に呆れと冷たい目が容赦なく突き刺さる。…あ、大人しくしていれば良かったのに目を付けられたな天之河。
「大いに問題ありです。なるほど確かにその思いは本物なのでしょう、しかし天之河君。君は良くても君の仲間たちはどうなんですか」
その言葉で天之河は周りを見回した。目に映るのは俯き、士気が崩れ落ちたクラスメイト達だった。…まぁ普通に考えたらあんなことがあってもまだ誰かのために戦いますなんて言えるわけがないんだよなぁ。
「見も知らぬ人達を救おうとする君の志は立派な物です、しかし周りの者達を蔑ろにするのでは…勇者として、いいえリーダーとして勤まりません」
「っ!」
副長の有無を言わせぬ言葉に天之河は言い返せない。だって本当に
「仲間の死を君は必要な犠牲だと宣うのですか、心が折れそうになって居る者達を放っておくのですか。…そもそもの話、君の友人たちが死んだとき残された遺族に君はなんて説明をするのですか。『世界を救うために必要な犠牲になった。仕方のない事だ』と君は言うのですか」
「俺はそんな事言わないし!誰も死なせない!俺は勇者なんだ!」
「そうよ光輝君はそんな事を言う人じゃないわ、何も知らないくせに勝手な事を言わないで!」
流石に思うところがあったのか反発する天之河に援護する中村さん。…え?大人しいイメージがあったけどこういう時には結構声出すんだねぇ意外だったよ(棒読み)
「ですが、団長の指示を無視して自分勝手に行動し仲間達の危機に目を向けないそんな人間が人を助けるといった所で信じられますか?私には無理です」
「違う!あの時俺が居なくても皆は上手く戦えたはずなんだ!それにメルドさん達を置いてはいけなかったんだ!」
「…本当に自覚なしですか」
小さなつぶやきと溜息。今の副長さんは我儘な子供に頭を抱える大人だろうか。…なんだか怖いな、日本だったら身内だから保護者だから先生だからで通じそうなのが副長さんははっきり言えば他人なのだ。その内切り捨てるんじゃないのか
「では、仮にですがあの時実際死にかけていた南雲君や柏木君を前にして君はどう思っていたんですか。見ていたんでしょう?南雲君が奈落へと落ちそうになるのを、柏木君が血を流し絶命しかけたのを。君はどう思っていたんですか」
「そ、れは…でも俺は皆を救って…俺がしないと…」
実際の例を出したからか急に天之河の声に張りが無くなった。俯いて何か声を出そうとしているようだが…もごもごと言葉に出せない声を口の中で呟いている。
「見て、何も思えないのなら君はリーダーとして失格以前の話です。
もごもごとしてしまった天之河を見てつまらなそうに見た副長さん。そのまま俺達を見るが…アカン、あれは目を合わしたらあかんタイプの目や!
「ああ、仲間を危険にさらしたといえば檜山君。君も何か言い分があるのならどうぞ」
目を付けられたのは檜山だった!…まぁ檜山が鉱石を取りに行か無ければあんなことは起こらなかったんだし、実際檜山は事故とは言え南雲に魔法を当てているんだし…目を付けられるのも仕方なしか?
「ねぇよ」
「おや?良いのですか?何も言わなければ君にはそれ相応の対応になりますが」
「ない。アンタの言う通り俺は皆を危険にさらし、南雲に魔法を当てた。その事実は変わらない」
(う、うわ~)
先ほどまでの天之河と比べて何ともまぁ腹の座った返答の仕方。何かこの世界に来てから性格が一気に変わっていないかお前?何時の間に精神的に成長したの!?
「そうですか。なら君に一週間牢屋の中で暮らしてもらうとしましょう」
「ホセ、それは流石に」
反省している人間に流石にどうかと思ったのかずっと口を噤んでいた団長が待ったをかけるがホセ副長はその対応を遮った。
「たとえそれが過失であろうが事故であろうが、一度起こした罪は罪なのです。それにあくまで自室の場所が牢屋になるだけで自由を制限するわけではありません」
つまり寝るところが牢屋になっただけ?………口では冷たく言ってるけどコレ結構甘くない?檜山の話がひと段落すると改めて副長は俺達の顔みる。その目は…冷たくも悲しげに見えたような気がした
「私達騎士団は、正直な意見として君たちを戦力として認識はしていません。君たちはいきなりこの世界に連れてこられた被害者であり戦争参加を強要されている立場の人間です。そんな君たちに殺し合いをさせるのを私達は良しとは思いません」
…まぁそうだろうな。素人の俺達を戦力に組み込むなんてどうかしているとしか思えない。だってたった一月前は普通の高校生だったんだぞ。それが簡単にプロの軍人になれるかっての。
「だから君たちは戦争に関わらないでほしい。これは騎士団の総意であり、願いでもあります。… 勝手な事を言う私達恨んでも構いません。結局の所私たちの不甲斐なさが貴方達を呼び出してしまったのですから」
人間族がピンチになったから呼び出された、言い換えれば騎士団では対処できなくなった。…ほかの国ではどうかは知らないけどそう考えると騎士団の人たちも苦い物があるのだろう。だって神から直々に『お前たちは役に立たない。我が戦力となる物を呼び出してやろう』と言ってド素人を呼んでくるのだから。面白くないのは事実なんだろうね。
「君達をいつ故郷に帰らせることが出来るのか、それはまだわかりません。ですが安心してください、君たちは私達が守ります、なにせ
そう言うと、副長は言いたいことを言いきったとでも言いうようにして席から立ち上がりそのまま部屋から出て行ってしまった。
部屋に漂う空気は最悪だ。副長の物言いにイラつくような奴も見せればいまだに俯いて完全に死んだ目をしている者もいる。
そんな部屋の空気を察したのか頭をガリガリと掻いてバツが悪そうにメルド団長が口を開く。
「あーすまん。ホセはああいったが、お前らの事を心配しているのは本当なんだ。だからそんなに腐るな。いつかお前たちも帰れる日が来るだろうさ」
元気を出せとでもいうように明るく声を掛けるメルド団長だが、俺の耳には誰かの言葉がはっきりと聞こえていた「それは何時ですか」って。そうして誰もが副長の言葉で…正確に言えばようやく分かった現実を思い知らされてその場は解散となったのだ。
「ふぅ…」
誰もいない騎士団の会議室で大きな溜息を吐いたのはメルド騎士団副長ホセ・ランカイドだ。オルクス迷宮で起きたことの資料を机の上に置き冷めてしまったお茶を飲む。だが残されていたお茶は無くなっておりいつの間にか飲んでいてしまったようだ。
そんな副長に明るい声が書けられる。
「嫌われ役、お疲れさん」
「団長…」
現れたのはメルド騎士団長だった。手には湯気が出ているコップを持ており気軽にホセに渡してくる。苦笑をしホセは礼を言い受け渡されたお茶を飲む。少しだけ疲れた頭が癒されたような気がした。
「…彼らの様子はどうですか」
「お前の想像通りだ。皆落ち込んでいるよ」
だろうなと、お茶をすすりながら瞑目するホセ。オルクス迷宮で死にかけたのにわざわざ呼び出し見捨てるような発言をしたのだ。彼等の状態を考えれば中々ひどい事を言ったものだ。
「だが、誰かは言わなくてはならなかった。戦争と言うのものが苛酷で無意味で残酷な事だと分かってくれる必要があった」
「彼等の故郷は安全で治安のとてもいいところだったと聞いています。そんな彼らが場の状況に流されたとはいえ命のやり取りをするのは…ね」
訓練をつけ、魔法を覚え、戦い方が身に着いたとしても彼らは子供であり、異世界の住人なのだ。こちらの世界の常識に染まってほしくはないし、何より人殺しのやり方を覚えたまま故郷に帰ってほしくはないのだ。…それがどんなに甘い事か知りつつも。
「彼らには彼らの生き方がある。このトータスで命を散らしては欲しくない、だから戦争に参加してほしくない…なんて彼らは気付いてくれますかね」
「どうだろうな。俺等とは違う生き方をしている連中だ。どう思いどう考えるかは俺にもさっぱりだ」
頬を掻き息を吐くメルドにも流石に彼らがどう思っているかなど分からないだろう。それはホセだって同じだ・
騎士団が異世界から勇者を召喚されると聞かされたとき、団長であるメルド・ロギンスと副長ホセ・ランカイドは強く反対をしたのだ。
『この世界の事情は自分たちでどうにかする、他の世界の人間を巻き込むな』と。しかし教会はその意見を一蹴し、結果召喚は無事に成功されてしまった。
自分たちの神であるエヒトが召喚する以上止められるはずもなく、かと言って反発のやり過ぎでは自分たちの立場が危うくなってしまう。不服の感情をぬぐえぬまま呼び出された一行に騎士団は訓練をつけさせるしかなかったのだ。たとえそれが不本意な物であっても。
「魔物を殺すのまではまぁ何とかなるでしょう。しかしそれ以上は彼等では無理だ。たやすく心が壊れてしまうだろう」
訓練をさせ、生活をさせ下した判断は役に立たないというより戦線に参加させないという結論に立った。しかし自分達より立場が上の教会はそれを良しとせず
オルクス迷宮での実地訓練を強行させようとしたのだ。
「そして結果がこれですか。いやはやよく全員が無事でしたね」
「悪運が強いんだろう 又は…そういう運命だったとかな」
肩をすくめ苦笑する。結果は無事だったとしても彼らの精神の未熟さが浮き出てしまった。特に一番ひどいのは彼らのリーダーである天之河光輝だろう。
「しかしまぁ勇者くんその傾向があったとはいえ普通貴方の指示を無視しますかね?誰よりも戦場を知っているあなたの指示を無視して…勝算でもあったのでしょうか」
「いや、恐らく何も考えていないだろう、アイツの目は目の前しか映っていなかった」
「ははっ団長と同じではないですか」
リーダーとして何より必要なのはカリスマであるがそれ以上に仲間達の状況の把握でもあるのだ。たとえ天之河光輝が進んでリーダーをしていたわけでもなくても、彼にはその責任能力が問われてしまうのだ。
「だからこそ、皆の前で叱責し責任能力を問うたのですが…無駄でしたね。アレは私たちの言葉は届かない。自分しか見えていませんね」
視野が狭く自分しか見えていない。そしてその事を指摘しても耳を傾けようとはしない。それがホセがわずかな時間で感じ取った勇者天之河光輝の評価だった。とてもではないが人類の救世主どころか、数十人のリーダーがやっとの人物だった。
「よくあんな性格で生きていけたものです。他の人と比べると幼くて幼くて…あんな人間に世界の命運は掛かっているのでしょうか?」
「さてな。まぁいつかは自分で気付くだろう。近くで完全に参っちまった奴がいるし。それでも無理だというのなら…」
その後に出てくる言葉は無かった。無論聞くつもりもなかった。人の言葉を聞かず自分の意見しか聞こえないものの末路なんて言うほどの物でもなかったからだ。
その後は多少の雑談と報告だった。急遽オルクス迷宮から帰ってきたので今後のことも有るのだ。
「あ、団長リリアーナ王女に礼を言っておいてくださいよ」
「む?どうしてだ」
「オルクスでの一件。どんな事があったにせよ全体責任は団長にありますからね。危うく騎士団解体の危機がありました」
「はぁ!?俺まだ話聞いてねぇぞ!」
「私に話が行くようにしてありましたからね。ともかくそこで待ったをかけたのがリリアーナ王女でした」
「あの王女が、か?」
「ええ、時期尚早の彼らにオルクス迷宮への実地訓練を強行させたのは教会ではないですかと。いやいや教会に食ってかかる王女は中々の迫力でしたよ」
「うへぇ…言いたくはないがリリアーナ姫は怒ると本気で怖いからな」
「だから機嫌を損ねない様にちゃんと礼を言ってきてくださいね」
「うぅむ。分かった」
帰ってきて、それで終わりではないのだ。
「あと畑山先生にも詳細と謝罪を」
「今度はそっちか!?」
「当たり前です。一時とは言え彼らの引率者はメルド団長だったのですから。畑山先生に心配を掛けさせたのはマズいです」
「ぬぉぉおお…菓子折りでも持っておくべきか」
「それよりかは誠心誠意の謝罪の方が良いですね。幸いなことに彼女は話せばわかる人間ですから」
「はぁ…やる事が多いな」
「当たり前です。寧ろ貴方が彼らに付きっ切りの間、雑事は全て私がしていたんですが?」
「…すまん」
話し合いは続き、仕事の業務の確認、部下の報告などを纏めていく。
「それで団長。ずっと気になっていたのですが確認してもよろしいですか」
ある程度の業務が終りひと段落をした時ホセはそう言って切り出した。対するメルドも佇まいを正した。
「正直な話あのオルクス迷宮で何があったんですか」
ホセの問いはオルクス迷宮でのことだった。実地訓練での報告は詳細に聞いてはいるがどう考えてもやはりおかしかったのだ。
「始まりの勇者くんの天翔剣は愚かにもほどがありますが、その後です」
崩落する可能性があるにもかかわらず光輝が放った天翔剣も酷い話だが、その後に起こった出来事だ。
「偶然崩れた壁から出てきたグランツ鉱石。…これはまぁあるかもしれません。しかしフェアスコープで罠の有無を確認して無いと判断した後のトラップ。これはちょっと変な話だと思いませんか」
アランが使っていたフェアスコープは事前に点検がされていた物だった。いくら訓練とは言え勇者一行を連れて行くのだ、装備品に不備はないかちゃんとチェックしている筈だった。それなのにフェアスコープには問題無しと判断され結果転移の罠にかかってしまった。
「ベヒモスとトラウムソルジャーの挟み撃ち。これはヘンではありません。迷宮ならそう言うことだってあり得るのですから、しかしトラウムソルジャーをアランが彼らを率いていたのに突破できないとはどういう事でしょうか」
魔法陣から出てきた魔物は本能の赴くままに行動する。しかしそれにしてもアランと言う次期団長候補が未熟者とは言えそれなりの強さを持っていた生徒達の指揮をとっていたにも関わらず、突破できなかったというのだ。
「アランからの報告ではまるで指揮されていたようだったと聞いています。…強力な魔物が他の魔物の指揮をするのは確かにあります、しかしあの場にいたのは只のトラウムソルジャー。指揮官クラスの魔物はいませんでした」
只の雑兵が何故か纏まって戦うという不可思議な行動。そしてまだ懸念するべき事はあった。
「加えて檜山君から聴取した一連の事故。なぜか不得意な火の魔法が出てきて何故か南雲君を狙った事。彼の担当からも聞きましたが檜山君にそこまでの魔法の練度はありません。それなのになぜか起こった」
檜山が得意とするのは白兵戦であり魔法は苦手であった。出来たとしても僅かな適正のある風の魔法でしかも初級中の初級「風撃」を真っ直ぐ飛ばすしかできなかったのだ。
「そしてこれが一番の懸念事項です。勇者君の持っていた聖剣、アレに
訓練から戻ってきた光輝から返却させた聖剣。それには確かに特殊な力があった。しかし調べたところ闇魔法の残滓がかすかにあったのだ。
「調べたところ掛けられていた魔法はあの特殊能力の増幅と、戦意の高揚。これだけだとメリットですが、彼が使うとなると話は別です」
聖剣の特殊な力は敵対する相手を弱体化させ持ち手を強化してくれるという力があった。しかし精神的に未熟な光輝が使うとなると話は別だった。相手は遥か格下と錯覚し自身を強者だと勘違いしてしまったのだ。しかも戦意を高めるというおまけ付きで。
故に光輝が偏に仲間を見ていなかったのは彼自身の責任もあるとはいえ細工されていた聖剣のせいでもあったのだ。本人は知る由もないが…
「その聖剣は如何した」
「宝物庫で厳重に保管させてもらいました。魔法は消えてなくなったとはいえあの未熟者にはふさわしくない物ですからね」
最ももう二度と振れることは無いですがと一言つげ、ホセは一息つく。一つ一つの事は防げたとしてもこうまで続くと流石に可笑しいのだ。今はなした内容はどれもが作為に満ちているようだった。
「…彼らをワザと危機を陥れるような数々。調べても尻尾がつかめない不可思議な事柄、正直な所私には理解できません。メルド団長貴方はどう思いますか」
ホセからの言葉を受け静かに聞き入れたメルドは組んでいた腕を解かす。顎に手をやり一言告げた。
「俺にもわからん!」
「……はぁ」
きっぱりと言い切ったメルドにこれ見よがしのため息を吐き出すホセ。大体そう言うのかもしれないとは思っていたがまさかここまではっきりと言うとは。
「だが、魔人族ではないだろう。あの迷宮には奴らが出向く理由が無いだろうし、居たとしても俺が気付くはずだ」
「でしょうね。だとすると…」
両者目を合わせる、魔人族では考えにくい、それは人間族も勿論の事。なら、誰もが得しないこの事件を組み立てれるのが誰かと言うと…
「エヒト神…ですか?」
「かもな」
この世で最も信仰され称えられているエヒト神。人間族の危機に全くの素人を呼び出した意図がつかめない創造神。
「そんな面倒な事をしますかね」
「わからん。だが、どういう奴であるのかは俺達は知っているはずだ」
それはメルドとホセ、そして後もう一人だけが知っている話。理由にもならない理由を思いつき溜息を吐く
「面白いから。…たったそれだけの理由でやってもおかしくない」
「…彼らが哀れでなりませんよ。彼らが帰るにはこの詰んでしまった戦争を終わらせないといけないのですから」
呼び出されてしまった者達の事を思い浮かべる。この世界には似つかわしくない少年少女達、騎士団にとっては保護すべき対象あり、故郷に返すべき者達。しかし故郷に返すには戦争に勝たなければいけないのだ。…それはメルド達では不可能極まる話だった。
いたずらに何も関係のない被害者を増やした愉快犯。流石に神が相手となるとできる事は少なくなっていく。仮想の相手とはいえ候補としては一番の相手だった。
「最もこの話はあくまでも予想だ。思い違いの可能性もある」
「しかし当たっていた場合…彼等が来た以上まだ何か起こるかもしれませんね」
召喚と言う人間では出来ない超常現象、そして呼び出された者達。彼らが原因で事件に巻き込まれたのなら今後もまた事件が起きてくるのはあり得ない話ではない。
「この先何が起きるのか…きっとろくでもない事が起きるのでしょうね。…何だか
「そう腐るなホセ。アイツらが何かに巻き込まれたらフォローをしてやろうじゃないか。それが俺達騎士団だろう」
この先何がが起こるのか、それは誰にもわからないが色々と騒動が起きてしまうのだろう。それは呼び出された彼らにまつわるものかもしれない。何が起こるにせよ魔人族との戦力差は開いていくのは確かなのだ。残された時間は案外少ないのかもしれない。
それでも騎士団を纏め人間族の今後を背負えるだけのある力のある二人は、やっていくしかないのだ。
「はぁ…まぁ頑張りましょうか団長」
「ああ、やってやるぞ副長」
これから起こる数々の事を考え溜息を吐きながらも拳を合わせる大人達だったのだ。
一言メモ
帰還の方法 柏木「戦争を終わらせなければ家に帰れない。しかし騎士団からは戦力外通告…どうしろと?」
戦争終結について メルド、ホセはとても強い。しかし戦争では勝てない。…一応国と国民を見捨てればワンチャンあるかも。