ありふれたクラスは世界最凶!【完結】   作:灰色の空

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長いです

ようやく行きたいところまでいったという感じです。



男子会議

 

「ふーむ ふぅーむ」

 

 

 俺たちの今後をどうするのか、考えたが結局のところ一つしかなかった。

 

 それは、故郷への帰還。日本へ帰る事だ。

 

 しかし今の皆の様子じゃあ伝えたところで返ってくる反応はとても薄いだろう。迷宮で死にかけ、不可抗力とは言え人が死ぬ瞬間を見て(俺の事)そして帰って来たら騎士団からは戦力外通告で何もするなみたいなことを言われてしまった。

 

 そしてみんなを盛り上げる?役目の天之河はなんと謹慎中!なんでも天翔剣で俺達を危うく生き埋めにすることとリーダーとしての責任能力不足が祟って少し自己反省しろとの事らしい。良くは知らんが誰しも頭を冷やして考えないといけないって事だね。

 

 

「…プランはある。しかし人手と金が必要だな」

 

 まぁそんなこんなで皆がどんよりしている中俺が行動をしなければならぬのだ。割と無事で、心に余裕のある俺がな!

 

「つ~訳で我が腹心であるアリスさんちょいと悪だくみをしませんか?」

 

「ほっほう?何ですか何ですか?面白い事ですか?」

 

 という事で多分何でもできるであろうアリスさんに相談を持ち掛ける事にした。きっとこの人なら断らないだろうし、きっとニヤニヤして協力をしてくれると確信しているからだ。実際滅茶苦茶二ヤニヤしている訳だし。

 

「あ~ちょいと我が学友たちのケツをひっぱ叩きたいわけでして」

「ふむん」

 

 計画と言うにはいささか杜撰で粗末な思いつきを語り始める。何せ考えるのは赤点ギリギリのこの俺だ。正直な話その場の思い付きでしかない。

 

「……」

「あの、アリスさん?」

 

 しかし俺の話を聞いたアリスさんはほんの少し真剣な顔をした後にぱっと笑ったのだ。

 

「良いじゃないですか!やりましょうよ!貴方の考える()()()()()を!」

 

 快く快諾してくれたのだ。これは大きな一歩となる。何せこの人の協力が無ければ準備をするのが結構難しくなってしまうからね。 

 作戦準備のために必要な物を打診し、日本人の好みと近ごろの若いものが好むものを話しているとアリスさんはニヤニヤ笑いながら意外そうに呟いた。

 

「しかしまぁ~中々どうして意外と皆の事を考えているんですね」

 

「意外とって失礼な」

 

「てっきり南雲君の事しか考えていないと思いましたが、なるほどとてもいい環境…いえ家族のもとで育ったんですね貴方は」

 

 南雲の事しか考えていないって…そこまで俺と南雲は近いように見えたのだろうか。…まぁそれはともかく急に慈愛のこもった微笑を見せるのは止めて欲しい。照れと恥ずかしさが襲ってくるのだ。

 

「ごく一般的な家庭で育ったんだけどね~。ありきたりな父親と母親、それと馬鹿息子である俺。そんな普通の家庭だよ」 

   

「兄弟は居ないんですか」

 

「居ないよ~」

 

「そう…ですか」

 

 兄弟なんてうらやましい物はいなくて、普通の一人っ子ですよーと答えると少し寂しそうな顔をされた。何故!?

 

「どんなお父さんとお母さんなんですか?」

 

「うん?どんなって言われても…葬儀屋の親父と専門主婦の母親だけど…」

 

 後は、親父が顔に大きな横一文字の傷跡があるせいでそちらの筋の人に見えるぐらいと丸っこいどう見てもおばちゃん!な母さんぐらいだろうか。…昔は美人で家政婦さんをしていたというが本当かどうか。

 

「そっか。お父さんとお母さんそんな人なんだ…」

 

 そこで凄く寂しそうに遠い目をするのは止めて欲しい。どう声を掛ければいいのか分からなくなるから。

 

「あー…うん。アリスさんは?」

 

「私?私は一人ですよ。…まぁ昔妹分のような子はいましたがもう分かれましたからね。今頃仲良くなった友達と一緒にいるはずですね」

 

 話によると可愛い妹分の女の子がいたらしい。…話しぶりを見ると結構の間会っていなさそうだが。

 

「あの子にはあの子の人生があって私が邪魔をするわけにはいかないんですよ。…そりゃ後ろをちょこちょこついてくるのは可愛いくて抱きしめたくなりましたし、私の傍を離れたくないって涙目で言ったとき押し倒してやろうかと本気で考えましたが」

 

 うわぁ…意外とそっちの方も行けるのかこの人は… 

 

「でもまぁ正直な話、勝手に生きて勝手に動く私にとってはあの子の人生を背負うのは荷が重すぎて…面倒なんですよ。助けた人にすべてをゆだねようとするあの子が」

 

 優しげに語っている内に何か嫌悪に滲んできている!?何か嫌悪感と罪悪感で目がドロドロと濁ってきているし!?

 

「まぁまぁ、その子が幸せならそれでいいじゃないですか。…別れたのは後悔してるけど相手を想っての行動ならきっと大丈夫ですよ」

 

「そう…ですね。すいません、どうでも良い話をしてしまいました」

 

「いえいえ、お互いさまって奴ですよ」

 

 へらっと笑ったその顔はいつものアリスさんだ。どうやら慰める事は成功したらしい良かった良かった。

 

 その後は滞りなく準備が出来たので今度はメルドさんに会いに行こう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「深夜の部屋の貸し切り…か」

 

「ういっす。ちょいと数十人が入れるような場所を貸してほしいんです」

 

 騎士団長室にて俺はメルドさんに頼み事していた。内容はただ単に部屋の貸し切りを頼むだけの事だ。これが数人程度なら俺の自室でも問題ないのだが数十人規模が入れる部屋を所望なので メルドさんに打診しに来たのだ。

 

「それなら騎士団の会議室を使えばいいだろう。あそこなら人数が入れるし多少騒いだところで問題は無いからな」

 

「マジッすか!ありがとうございます!」

 

 ぃ良っし!場所を無事確保ォ!これで後は野郎どもをかき集めるだけ。交渉は南雲に協力を要請して…今後の事を考えてニヤついているとメルド団長から声を掛けられてしまった。

 

「しかし夜にそんなに人数を集めて何をしようってんだ」

 

「む」

 

「お前たちが悪さをする奴じゃないって事は分かってはいるんだが、何をするかは把握しておかないとな」

 

 確かに考えてみれば怪しさ満載の行動である。人を集めて深夜にこそこそと密談をする…こりゃ怪しまれてもしょうがない。なので話すことにしよう。俺が何をするのかその一部をな!

 

「あー実はみんなを集めてちょっと気晴らしをしようと思いまして…」

 

 なんてことはない、皆の顔がよろしくない今単純に集まって騒いで笑って頭と心を切り替えて行こうって話なのだ。

 

 迷宮で死にかけた今、どうしても死と隣り合う可能性のあるトータスでの生活は気が滅入ってしまう。心が曇り顔は俯き、どうしても暗いことばかり考えてしまう。だったらそれを解消しようというのだ。

 

「なるほどな…確かにお前たちはずっと王宮で缶詰め状態だったからな。よし、なら俺からも何か手を貸そうか」

 

「いえいえ、メルドさんの手を煩わせるにはいきませんよ。ここは同じ故郷の俺がやらないと気を使ってしまうので」

 

 メルド団長の気遣いは大変ありがたいが、どうしても年上の人からの気遣いには余計な事を考えてしてしまうのも事実だ。それに俺が言い出しっぺなので準備などは俺がせねばならぬのだ(アリスさんの準備労力は除くものとする)

 

「…そうか。まぁ同じ故郷の人間たちの方が色々と気が休まるか。すまんな不便な事になってしまって」

 

「問題ないですってば。そんなに謝らないでください。俺よりずっと年上の人からそう言われると返って困ってしまいます」

 

 ええ人やでこの人はホンマ…召喚されたことは不幸だったがこの人に出会えたことはかなりの幸運なのかもしれない。

 

「そうだな。よし!ならせめて、俺はお前たちが好きな時に城下に行けるように上の方に取り合ってみよう」

 

「いいすか!?」

 

 実は俺達はまだ城下町へと言ったことは無いのだ。いつもいつも王宮の訓練所や食堂などしか言ったことが無く異世界生活には案外触れ合っていなかったのだ。

 

「フフッ俺に任せておけ。何もトータスと言う世界が危険な所ばかりではないという事をお前達にも知ってもらわないと俺達も心苦しからな」

 

 俺達が城下町へ行く許可を取るのには大変だろうに…メルド団長の気遣いはとても有り難い。と言いつつ又は実際に生きている人達を見て自発的に守らせる様に促しているのかもしれない。真実は分からない。

 

 でもどんな思惑があるにせよ嬉しい限りだ。ずっと閉じ困っていたら人間腐っていくのだ、偶には外に出て呼吸をして太陽の光を浴びないと俺達は散らない花どころか萎びた花になっちまう。 

 

「ありがとうございます!」

 

「任せておけ。そして存分に心を伸ばせ。お前たちはまだ若いのだから」

 

 男らしく笑うメルド団長。本当にこの人には足を向けて寝れないなと思う俺なのでした…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かくがくしかじか、って事なのですよ」

 

「まるまるうまうま、だね。そういう事なら分かったよ」

 

 即決!?確かに南雲なら断る事は無いと思っていたけど…それにしたって決断が早すぎる。

 

「そうかな?皆落ち込んでいるのは目に見えて知ってるし流石にこのままじゃいけないってのも分かるからね」

 

 どんよりな空気は士気にかかわるし何より一緒に生活していると気が滅入るのだ。ただでさえ日本と比べて娯楽が少ないってのにこれじゃまいっちゃうよね。   

 

「気晴らしは時に必要な事だよ、勿論やり過ぎても駄目だけどさ。そういう訳で断る気は一つもないって事で」

 

「流石は南雲話が早い。んでやってもらう事なんだけどクラスの男子だけを集めてほしいんだ。くれぐれも女子は呼ばない様に」

 

 特に元ストーカーで脳内ピンクをこの頃隠しきれなくなったあ奴には内密にせねば。…そう言えばオレに治療を施してくれたんだっけ?後で礼を言っておかないとなぁ。

 

「分かったけど、何で男子だけ?クラス全員じゃないの?」

 

「…女子を巻き込むのは、ちょっとな」

 

 こればっかりは俺の私情が多々に入るのだ。割り切ってほしい。

 

「あー…なるほど、柏木君ってホント男の子だよね。了解したよ」

 

 本当に話が早いなコイツは!?そのうち俺の心の内を呼んで行動するようになったりして…白崎に惚れられたのは類友だったから…?

 

「でも、流石に集める事は出来ても皆を引き留めるのは難しいけどどうするの」

 

「無論そこに抜かりはない。ふっふっふ実はアリスさんに頼んで色々と用意してもらったんだ」

 

「アリスさんに?…そう言えばあの人僕が迷宮で落ちるかもしれないって柏木君言ってたよね」

 

 そう言えばホルアドでそんな話をしていたような気がする。…どうしようアリスさんのこと説明しようかな。一応秘密にしておけとは言われていないし…でもあんまり人に話すことじゃないしなぁ。言いにくそうにしている俺を見て何やら察したのか南雲はひとまずは保留にしてくれることにしてくれた。

 

「何やら事情があるみたいだし()()聞かないでおくよ」

 

「すまぬ」

 

 『今は』物凄く強調した言い方だったからいつかは言わないといけなくなるのだろう。とりあえずは納得してくれる南雲でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、皆の衆まずは集まってくれて感謝する」

 

 俺の言葉にずらりと並ぶ野郎どもの視線が集まる。机は用意し椅子も人数分揃えている。危惧した人数もばっちり全員いる。無論なぜかみんなから忘れ去れる遠藤もな!

 しかし分かってはいたがこうやって見ると中々の壮観な絵図と言うか…ぶっちゃけ滅茶苦茶緊張してきた!

 

 だって普段から目立つようなこと(?)はしていない俺だよ!?そりゃクラス内で偶にゲームの話で盛り上がり過ぎてジト目を向けられてことはあったけどここまで注目されるのは無いのである!

 

 しかしご心配無用!何故ならこういう事態を想定して『深夜のテンション!』を服用してきたのだ。今の俺はだれにも止められねぇ!

 

「で、雁首そろえて一体何の用があるんだよ」

 

 話を切り出したのは意外にも檜山。いかにも面倒そうだがお前のそういう所しゅき!でもまぁまて何事にも段取りってのがあるんやで?

 

「実はな、俺達で打ち上げがしたかったんだ」

 

「……はぁ?」

 

 訝しそうな顔をする近藤や、野村。うんうん君達が首を傾げるのはよぉく分かるとも!だから話は最後まできけやオラァン!

 

「俺達が無事に迷宮から帰ったことに対しての打ち上げ。色々とあったけどまずはパァッーっと騒ごうじゃないか!」

 

 言葉同時に指パッチン!え?なんかわざとらしいって?良いんだよこういうのはワザとらしく演出して。兎も角その合図とともにアリスさんが入ってきて物凄く手際よく人数分のコップを配り始める

 

「ハイハイ皆さんこちらをどうぞ~」

 

「えっあ、はい」

 

 愛想を振りまき有無を言わさずコップを渡していき手ずからシュワシュワと泡の出る飲み物を注いでいくアリスさん。手際が良いので速度が速くこれでもかって美人なので拒むことが出来ない哀れな童貞ども。わかるよ美人な人が滅茶苦茶笑顔で心底楽しそうに飲み物を癪してくれるんだもん。これで受け取らない奴はホモだ!(名推理)あ。おれ受け取っていない…俺はホモだった?(狼狽)

 

「この匂い…サイダー?」

「何でこの世界にサイダーが?」

 

 ほぅよく気が付いたじゃないか永山、相川。その通りこれはサイダーだ!…嫌なんでそんなもんアリスさんが用意できたのか傍只疑問なのだが、曰く『フューレンであったんですよね…つい大人買いしてきちゃいました♪』との事らしい。異世界って一体…

 

 みんなが炭酸入りのコップを手に持ったところで俺も炭酸入りコップを受け取る。後はその場のノリで何とかなるだろう。だって俺はオーヴァード、ソラリス(薬品生成)の能力者なのだから。

 

「皆、無事に生きて迷宮から帰ってきて本当によかった。そりゃ色々とゴタゴタがあったけど俺は本当にそう思っているんだ」

 

 みんなが帰って来れて本当によかった。これは俺の嘘偽りのない本心だ。だってそうじゃないかみんな大した怪我もなく(心の傷は除く)危険な迷宮から帰って来れたんだからこれほどうれしい事は無い。当たり前の事だけどとても重要な事なんだ。

 

「だからお疲れさま!みんな本当に頑張ってくれた。俺が生きているのも皆が無事なのも1人一人の尽力の賜物だ」

 

 頑張ったことに対しては労いましょう。それが当たり前になってはいけないのです。皆、普通の高校生だったのに危機をよく乗り越えられた。誰もが褒めてくれないのなら俺が皆を労おう。

 

「だから……まぁなんというか今後我々の発展のために頑張りましょう!」

 

「そこで言葉に詰まるの!?」

 

 ナイスツッコミ斎藤!しかたないじゃんこれ以上言葉が浮かばないんだから!と、ともかく杯を頭上に掲げる。皆も困惑しながらだが同じように真似をしてくれた。坂上なんかは楽しくなってきたのかニヤリと笑っている。ふふ、皆俺の醸し出す空気に当てられちまったなぁ。 

 

 

「兎も角だ!皆無事に帰ってきてくれて有難う!乾杯!」

 

 俺の言葉に乾杯と返してくれたのはまぁ数人だったが手渡された物凄く久しぶりに見るシュワシュワに皆喜んで飲んでくれた。

 

 

 皆が、俺の、用意した、飲み物を、ごくごくと飲んじゃった!!……勝ったな。この戦い我らの勝利だ

 

 

「って訳で、取り合えず食べ物とか用意したから各自好きなように摘まんでくれ。勿論このシュワシュワのおかわりもあるぞ♪」

 

「うおっ!?いつの間にポテチが!?」

「これ、じゃがりこだよね…何で?」

「つーか何でスナック菓子ばっかりなんだ?お茶会?」

 

 俺が話している間にこれまたアリスさんが手際よく机に並べられた御摘まみに驚愕する野郎ども。…いや俺も疑問に思っているんだけどね!?皆が喜びそうな食べ物ってある?と相談したら日本人の好むファーストフードとかお菓子をポンポン出してきたのだ。曰く『珍しかったので根こそぎ買い占めたんですよね。流石は商業都市フューレン!恐ろしい町ぃ!』と熱狂していたが…ホント異世界って何なんでしょうね?

 

 

「あ、皆さん唐揚げとかの揚げ物も用意してありますよー。…食べます?」

 

「「「ゴチになりますっ!」」」

 

 そんなこんなでアリスさんが手ずから作った揚げ物などもバンバン出されるわけで俺達の深夜の打ち上げは始まったのだった。

 

 

 

 

 

 好き勝手飲み食いして大体一時間は立った頃だろうか。延々と出される料理とスナック菓子に思いっきり舌鼓を打つ我らが野郎ども。日本人向けに味が調えられた食い物はどうしても口へ運べば顔が緩み若者が好きなジュースは飲むたびに顔が綻ぶ。それは勇者天之河だって何も変わらない。

 

 アリスさんは手際よくしかしメインにはならない様に陰となって場を整えてくれている。圧倒的感謝だが本人も楽しそうなのは…意外と男慣れしているんですかね?

 

 隣で清水と一緒に魔法についてあーやこーやと話す南雲はそろそろ時間だと俺に目配せをする。分かってるよ。でもフォローも頼む、俺だけではうまく説明ができないからさ。

 

 

「えほんえほん! さてみんな楽しんでいる所ちょいと時間をもらえないだろうか」

 

 宴もたけなわといった所で本来の話を始める為に一つ咳払いをする。ここからが本番でここからが俺の本気だ。何だ何だと話を聞く体制になってくれたみんなに

俺はそっと問いかける。

 

「皆に話したいこと…相談したい事があるんだ」

 

「何だよ改まって」

 

「俺たちの今後についてだ」

 

 その言葉で皆の顔つきが変わった。真剣に耳を傾ける物、顔を青ざめる物、いやそうに歪ませるもの様々だ。まぁそんな事はどうでも良い取りあえず俺の話を聞け。

 

「この世界について約一か月ぐらいは過ぎた。もうみんなこの世界がどんな世界なのか大体は理解してくれたと思う」

 

 魔法が使えるファンタジー世界は危険でいっぱいだった。安全でもちょいと脇道にずれれば死が濃厚に香る世界それが異世界トータス。

 

「皆はこの先をどう考えているのかわからないけど俺は…迷宮に入って命のやり取りを得て、…死にかけて俺はこう思ったんだ。『とっとと日本へ帰ろう』とな」

 

「柏木…お前」

 

 遠藤そんな顔で俺を見んなよ。でも仕方ないだろう、死にかけてようやく分かったんださっさと日本へ帰ろうってそう思ったんだ。

 

「教会や王宮の連中は俺たちこそが戦争を終わらせる、魔人族を倒せる鍵だと言った。しかし現場の騎士団の人達からは俺達は戦力外通告を受けた。そりゃそうだどこまでもやっても俺達は只のガキなんだから」

 

 みんなも教会の連中からヤケに持ち上げられたこと、副長から冷たく言われたことを思い返しているのだろう。 

 

「だから考えて考えた。そして俺は結論を出した。俺は日本へ帰る為に行動をすることに決めたんだ」

 

「なら、柏木はこの世界の人達を見捨てるっていうのか?自分だけが助かろうとするのか」

 

 天之河…ああ、そうかお前には自分だけが助かろうとするように聞こえてしまうのか。でもな話は最後まで来てくれな?

 

「違う違う天之河全然違うよ。俺は最終目標を日本への帰還にするって事にしたんだ」

 

「???どういうことだ」

 

「つまり、目的は日本へ帰る事だけどちゃんとこの世界の人達にも恩は返すって事だよ。あくまでも今後は日本への帰還を探りながらも非戦闘職業らしく裏方に努めようと思うんだ」

 

 俺の話をつなげて説明してくれる南雲。俺と南雲は話し合った結果、日本へ帰る事を目的にしながら裏方の仕事を頑張ろうとすることに決めたんだ。幸いにも騎士団の人たちは兵站…つまり俺と南雲の力を欲しているようだし仕事は探せばいくらでもあるのだ。

 

「それで俺達の方針は決まったけどお前らは如何するんだ?教会からは戦えと言われ騎士団からは戦力外と告げられたお前らはどう行動するんだ?戦うのか?それとも安全な所で閉じこもってるのか?」

 

 俺の問いに即決する者はいない。誰もが今後の事を考えたくないようだ。…中野辺りはあえて黙っているようにも見えるけど。

 

「…なぁお前はどうしてそんな事を聞くんだ、お前らはやりたいことが決まったのなら俺達の事は放っておけばいいじゃないのか」

 

 声を出したのは野村だった。色々と思うところがあるのだろう、苦渋の顔だった。今後の事を言われて耳が痛いのだろう、でも俺はちゃんと答えなきゃ

 

「そうかもしれない、けどな、なんか嫌なんだ。俺たちのこの状況が何か凄く嫌でしょうがないんだ」

 

「嫌だって…何がだよ」

 

「まるで()()()()()()()()に感じるんだ」

 

 言葉で出すにはとても難しい。しかし南雲と話をしていて、今までの事を振り返って思ったんだ。

 

 何か俺達は誰かの掌で踊らされていないかって。ホルアドの町でも思ったけど()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()錯覚を受けたんだ。俺の言いたいことがうまく言えないのを察してか南雲が説明を引き入れる

 

「神から無理矢理召喚され戦争に参加した。騎士団から訓練を受けろと言って訓練をした。迷宮に入って死にかけた。そして今まるで邪魔になったみたいに戦力外通告を受けた。…何だか人に言われるがままに行動していない?()()()()()()()()()()()って気が付いている?」

 

 そう南雲の言う通り俺達は人に言われるまま行動した。場に流され状況に流され人の言葉を鵜呑みにし何も考えず何も行動せず結果、まるで使い捨てられたように感じてしまうのだ。もうお前たちの出番は終わったと言われているようで。

 

「それでいいの?まるで使い捨ての玩具、役目を終えた駒みたいになっててそれで本当にいいの?…僕は嫌だ。そんなの僕は認めない」

 

「だから俺達は俺達で独自に動こうと思う。できる事なんてたかが知れているけどもう誰かに言われて行動するのは御免だ」

 

 人に操られて動く舞台装置なんてそれでいいのか?…俺は…いやだね。 なんて言ってるが本当の事だ。流されて結局ハイ、死にましたーなんて冗談じゃない。

 

 そんな俺達の決心と本音に一人溜息とも何とも取れない声を出す奴がいた。

 

「分かった。なら俺はお前らに乗るぜ」

 

「檜山君。正気かい?」

 

 声を出したのはなんと檜山だ。なんとまぁ…この誰もが俺たちの言葉で苦い顔をしている中率先して声を出すなお前は。

 

「はっこのまま腐ってるより好き勝手動いた方が俺らしいからだ。それに、俺はお前らに対して償わなくちゃならねぇ。だから俺はお前らに手を貸すぜ」

 

「…そうか。ならいろいろ協力を頼む」

 

 ニヒルに笑う檜山。なんつーか強力なジョーカーを手に入れた気分だ。切り札的な意味で。

 

「俺もやる。お前らの馬鹿騒ぎに付き合ってやる」

 

「清水ぅ」

 

「気持ち悪い声出すな馬鹿」

 

 嬉しい。本気で嬉しいお前がこちらがわに来るなんて…思うのはただこれだけである。

 

「悪ぃけど俺は…」

 

「別に加われって事じゃないよ相川君。ちゃんと考えてほしいんだ。そして決断してほしい」

 

 相川は言葉に出したがほかの皆はまだ決断は出来ていないようである。それでいい、誰かに流されず誰かに決めるのでもなく、自分で考え選び行動してほしい。皆が考えている中俺はサイダーをゴクゴクと飲み続ける。中には果実飲料と組み合わせた果実ソーダもあるのだからアリスさんの引き出しは恐ろしい。何処まで日本人の好みに合わせているんだ…

 

 

 

「…なぁ気になったんだけど、そんな話をするのならどうして女子を呼ばないんだ」

 

「ほぅそこに気が付くとはやはりわがきょーだい」

 

 遠藤からの疑問の声はそれほど時間が掛からなかった。確かに自分たちの今後を話す会議?に女子が居ないのは中々おかしな話かもしれない。でもちゃんと私情まみれの理由があるんだよ

 

「ほんっと馴れ馴れしいなぁ、で理由は。まさか恥ずかしいからとか」

 

「無論それもある」

 

「あんのかよっ!?」

 

 だって女の子と話して噂されると恥ずかしいし…気を取り直して話すとしよう。女子がここにいない理由を!男子だけ集めた訳を!

 

「まぁ女史連中をお呼びに掛けなかったのは単純な話さ。だって()()()()()()のって恥ずかしくないか?」

 

「………はぁ?」

 

 近藤ナイスリアクション!でもそれは考えたことは無いか?女の子に頼るなんてさ…言い方を変えると守られるなんてさ。

 

「そりゃこんな話は女子にもするべきだとは思う。けどさ、見たか八重樫が憔悴している所や谷口が怖がっていた事、辻さんが無力感に打ちひしがれていたところ。…俺達が守ってやらないと駄目なんじゃないのか?」

 

 俺達男があの迷宮でこんなにもビビっちまってるんだ。女の子はもっと恐怖感を感じたに違いない(白崎と言う特殊生命体は除く)そんな女子連中にまた頑張れなんて俺は言えない。

 

「でも雫なら大丈夫だ。俺なんかよりも強くて立派で、雫はそう簡単に「それでいいのか?守ってやろうと本気で思わないのか」

 

 天之河に言葉に被せる様に再度問いかける。…言っては何だが八重樫なんて強そうに見えるのは見せかけで内面は豆腐より柔っこいように見えるんだけど。本当に天之河は八重樫の事見ているのか?なんかトータスに来てから靄がかかっていないお前の頭?

 

「そんな男女差別みたいな発言どうかと思うぞ柏木」

 

「おう、もっともなご意見ありがとよ。でもなここは日本じゃなくてトータスだ。女尊男卑の世界じゃない」

 

 女性が過剰に尊ばれ野郎が卑下される世界ではないのだ。つーか守ってあげようじゃないか女の子を。見せつけようじゃないか男の子の意地って奴を。

 

「カッコつけようぜ。女の子に守られんじゃなくて守るような、そんな男になってみようぜ」

 

「そんな簡単に言う事か普通?」

 

「なら例え例で言うと女性である畑山先生に何時までも頼るの?。あんな小さな両肩に僕達十五人の男連中の重みなんて耐えられる訳がない。それでも守ってもらおうなんて悲しくない?プライドが傷つかない?」

 

「そりゃ…そうだな。あの先生にいつまでも頼ってなんかいられねぇ」

 

 坂上の言う通り愛子先生は俺達を気遣ってくれるがそれにいつまでも甘えてはいられないのだ。いくら先生が俺達より年上でも女の人なんだ。あの小さな背にいつまでも頼っていられない。

 

「だから俺はお前らにこうやって話を持ち掛けた。腰に立派な金玉と肉棒をつけているお前たちにそれでいいのかって聞きたかったんだ」

 

 プライドは無いのか?現状に流されて女の子に甘えようなんて悲しくならないのか。俺は虚しい。そしてとてもカッコ悪いと思うんだ。(なおアリスさんは女の子に区分には入りません)

 

「カッコつけようぜ。いきなり訳の分かんない世界に呼び出されたけどそれでも男である以上粋がって最高にカッコいい馬鹿になってやろうじゃないか」

 

 嫌な話かもしれないが、俺達は子供ではいられなくなったのだ。保護者はいない先生には頼れない。だったら俺達は自分の足で社会に生きていくしかないんだ…まるで早まった卒業式みたいだな

 

「まぁうだうだ言ったけど要は考えて行動しようって事だ。俺と南雲は裏方仕事をやっていく、いつでも相談しに来てくれ。悩みは共有して一緒に考えよう。これでも錬成師と調合師。ある程度の事ならできるし相談にも乗れるからさ」

 

 そう言って締めくくり俺は乾いた喉をサイダーで潤した。シュワシュワナのど越しは最高に気持ちがよく、ちゃんと()()()()が入っていることを再確認できた。

 

 

 

 

 

 

 

 さて、この宴会?を開いたのは理由がある。諸々とあるのだが大きな理由として皆に元気を出してもらいたかったというのがあるのだ。

 

 みんな頑張ったけど、王宮に帰ってきてから意気消沈していたからね。元気になってもらいたかったのだ。無論今後の事を考えてケツを引っ張りたたくと言う名文もあるが

 

 だから元気になってほしかったんだけど…

 

「はっ!今日こそ決着をつけてやろうじゃねぇか永山ぁ!」

「ふっ御託はいい。掛かって来い坂上」

「やれやれ坂上君!」

「ぶっとばせなっがやま!」

 

 あの上半身裸で腕相撲しているガチムチ共は何なの?何で汗をたらし滅茶苦茶いい笑顔で全力で腕相撲しているの?周りで囃したてている野村や斎藤は何なの?

 

「最近香織が怖いんだ…名前で呼ぶと『光輝君馴れ馴れしく女の子の名前呼ぶの止めなよ。正直気持ち悪い』って言われたんだ」

「そこが良いんじゃねぇのか…ほんっとお前もッたいねぇわ」

 

 涙をホロホロと流し白崎の愚痴を言う天之河に羨ましいと嘆く檜山。お前ら何時の間にこんなに仲良くなったの?あれれれ~?

 

「オロロロオロ!!…ふぅすっきりしたさてもう一杯」

「うげぇ気持悪~……グビグビッ!プッハァー…うぇぇ」

 

 あそこで飲んで吐いて飲んでは吐いてを繰り返す近藤と相川は何なの?もしかしてサイダー中毒になってるんじゃ…

 

「……ふへ」

 

 そして中野は何で蝋燭に灯した火を見てニヤついているのでしょうか。はっきり言ってものすごく怖いです

 

「でさ、柏木君女の子のどこが良いって話をしたら肩とかうなじっていうんだ」

「マジかよ…アイツ極まった変態だな」

「他にもへそとかくびれとか…正直僕にはよくわかんない」

「普通は胸とか顔だろうに拗らせてんなアイツ」

 

 うるせぇ何が悪いか言ってみろよオラァン!大体うなじとかへそとか親しい男にしか見えないところを見るのが至福なんだぞ!何でお前達にはそれが理解できないのかなぁこの糞童貞ども!大体南雲だってお前白崎に対して性欲持ってるくせに偉そうにノーたれてんじゃねぇぞ!?知ってるんだからなおまえのPCに白崎似の黒髪美乳少女のエロ画像がびっしりと保存されている事ぉ!

 

 

 何だかんだでツッコんでいたがこうなった理由はもちろん俺のせいでもあるのだ。

 

 実は皆がぐびぐびと飲んでいる炭酸水。これ、俺のクスリがこれでもかって入っているのだ。いれた薬は『深夜のテンション!』と『自白剤』と…あとはまぁ置いておくとして、ともかくハイテンションになってほしかったのだ。

 

 何をするにせよ元気が無いのでは話にならない。メンタル面ってのは本当に大事なのだ。それで薬をドバドバと入れアリスさんと一緒になってニヤついていたわけだが…

 

「はっ!熱くなってきたぜ!」

「イイじゃないか…全力だぁ」

 

 あそこでいつの間にかパンツ一丁で相撲を組み合ってる裸族のようにどうやら俺の薬は効きすぎたようだ。その内パンツレスリングでも仕出かすのではないだろうか。ウホッ

 

「ヒッグ…どうしてそんな目で俺を見るんだかおりぃ…グスッ…おれはまちがっていないんだぁ」

「チッ見られている分マシじゃねぇか俺なんて刺したのに眼中にねぇんだぞ。……あ?刺したって俺何言って…?」

 

 鼻水をたらしてめそめそ泣いている天之河にそんな天之河の背中をさする檜山。何で泣いているんだ天之河!?そして滅茶苦茶面倒見が良いな檜山!?

 

「………ウェッ…zzz」

「フゴッ!……うぅーん」

 

 ゲロを吐き出しながら幸せそうに寝ているアレを俺はどう思えばいいのだろう。見た目が完全な酔っ払いだ。でも本当に幸せそうなので起こすに起こせない。

 

「知ってる清水君、柏木君って男の娘ってイケるんだよ」

「…そうか」

「でも、TSもガチでイケるんだって。節操ないよね」

「……そうか」

「見た目が女の子ででも心が同性ってのが最高にイイらしいよ」

「………そうなのかー」

「もしかして柏木君って」

「言うな。それよりなんで柏木のそんなアブノーマルの趣味をお前が知ってるんだ?」

「え、親友なら当然じゃん」

「え?」

「え?」

「「……え?」」

 

 ツッコまない。俺はあの会話に何も口出しをしない。頬が赤くなってる南雲にげんなりとした清水に俺は何も言わない。

 

 普段溜めに貯めたストレスを吐き出すために俺は『深夜のテンション!』を使ったがそれは皆のネジを大いに緩めてしまったようだ。楽しそうやら幸せそうやらである意味俺の目論見は成功したともいえる。

 

 しかしそれはともかくして、この惨状どうするべきか。頼みの綱のアリスさんは早々に姿を消してしまった。妙に影に徹していると思ったらそういう事だったのか。後始末をどうするべきか悩む俺の頬をなぜか熱い空気が吹き付けてきた。……はぁ?

 

「…少し寒くなってきたな」

「あ、中野君、寒いの?僕が温風を出そうか」

「いや、それよりも…ふぅ出ちまった」

「お、一発芸!?多芸だね中野君!」

 

 横にいる呑気な会話の主たちを見て驚愕した。中野の野郎がケツから火を噴きだしているのだ!しかも斎藤が面白がって風を吹き出して火の回りを大きくしている!?

 

「あっははは!そぅれどんどん燃えろ―よ」

「いいねぇやっぱ火は勢いよく燃え上がっていないと!」

「お?火吹き芸か?やれやれぇ!」

「キャンプファイアーか…アレをやったのは確かおじいちゃんが生きていた時だったっけ…あの頃は父さん達とも仲良くて…」

 

 火を操りだした中野に油を注ぐように騒ぎ立てる馬鹿共。っておいちょっと待て天之河!お前何懐かしそうに見ているんだよ止めろよ!? 

 

「オイオイ待て待てお前等流石にこれはヤバイぞ!?誰か水魔法を…近藤お前確か適正高かったよな!?」

 

「……zzz」

 

 戦士系の天職の癖に以外にも水魔法の適性が高かった近藤。ボヤがこのまま大きくなる前にと願ってみた近藤は物の見事にゲロの海に沈んで寝てた。こんな時に寝てんじゃねぇよ!

 

「あわわわっ火を消すもの消す物…」

 

 大慌てでタオルか布を探す、何でもいいからボヤの内に消さないと!しかし俺の意思に反して中野の火はどんどん熱く燃え広がってる!

 

「うむ、ガス抜きは必要だな。流石の俺もたまには何も考えず放火魔になりたい」

「僕も頑張ったら中野君みたいになれるのかな」

「なれるさ、寧ろモルフェウスは発想の自由さが武器になるんだ。おまえに最も合ってるはずだ」

 

 そこの馬鹿達はなんで呑気にだべってるんですかねぇ!?兎も角近くにあった瓶をひっつかみ思いっきり日に向けて中の液体を振り掛ける 

 

「食らいやがれぇ!」

 

 そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「後は御覧の有様です…」

 

 頭上に降り注ぐ太陽の光が眩しく照らす中正座で座っている俺は目の前で腕を組み物凄く深い溜息を吐くメルド団長に昨夜の事を説明していた。

 

 周りには同じようにして正座をし整列をしてい馬鹿野郎どもが居る。坂上や永山はパン一でどっしりと正座をし、いまだにゲロの跡が残っている近藤たちも同じように黄昏ていた。

 

「確かに俺はあの部屋を使っていいと言ったし、騒ぐのも大目に見るつもりではあったんだが…」

 

 そこまで言って永く大きな溜息を吐いてうむむと頭を抱えてしまったメルド団長。本当に申し訳ない…

 

 

 どうして俺達がこの訓練所広場で正座をしているのか、どうしてメルド団長が頭を抱えているのか、物凄く簡単に言うと俺達があの部屋を小火で燃やしてしまったからだ。

 

 あの時かけた液体、確か俺の記憶では飲み物だったはずなのにアルコールもかくやと言う勢いで火が勢いを増して瞬く間に部屋を包み込んでいしまったのだ。  

 

 いきなりの状況に混乱し考える頭を失くした(ぶっちゃけどこかトリップしていたのかも)俺達は消火作業すら放棄して寝ている者を引きずり大笑いをしながら脱出し、煙を吹き出す部屋の惨状を見て愉快に爆笑をしていたのだ。

 

 そして警備をしていた兵に見つかり…正気に戻った時にはすべてが手遅れだった。

 

「馬鹿騒ぎぐらいなら俺達も経験があるが…まさか、ここまでするとはな」

 

 呆れを通り越して苦笑の笑みを浮かべるメルド団長。その目に怒りの感情が出ていないのは幸いか?…ともかくやった事にはちゃんと謝らないと

 

「すみません。はしゃぎ過ぎてこうなったのは俺の責任です。ほかの皆は俺に付き合わされたのでどうかほかの皆は許してください。何でもしますから」

 

 深々と頭を下げる。日本式深い謝罪のスタイル土下座だ。…いや冗談を言ってる場合ではない。これ一室が黒焦げになっただけで済んだがもしかしたら王城が火に包まれていたかもしれないのだ。マジで。

 

「何言ってんだ柏木。火をつけたのは俺だ。団長さん、これは俺の責任だ」

 

 そう言って一歩前に出て頭を下げたのは放火魔中野信治だった。いや、まぁ確かに火をつけたのはお前だが、俺が仕込んだ薬のせいでもあるわけで…

 

「ばっ 何言ってんだ中野。こうなるかもしれないと思いながら用意したのは俺だ。これは俺のせいなんだ」

「違うよ、僕が風を使って火を広げたのが原因なんだ。これ、僕が悪いんじゃないかな」

「いや、野次馬のように騒いで止めなかった俺の責任でもある。すまねぇ団長、ここは俺に」

「いやいや俺のせい」

「違う俺の」

「……ダチョウ倶楽部?」

 

 斎藤や坂上が謝るのを見て俺が俺がと自らのせいだと主張し始める馬鹿野郎たち。確かに責任は全員にあるのだがこれでは収まりつかないんだが…そんな俺達を見てかメルド団長は大声で笑い始めた。

 

「ダッハッハッハッ!そうかそうか、どうやらだいぶ打ち解けたようだな、場所を提供したかいがあったぞ!」

 

「へ?」

 

「いやなに、何だかんだでお前らは同じ故郷の仲間だろ、それがどうだ。どいつもこいつもまるで一体感が無かったのに気付いていなかったか?」

 

 言われてみれば確かに同じクラスだけど、そこまで仲がいいかと言われると…皆グループは作る物のクラス全体が一つになるなんてことは無かったな。

 

「確かに部屋は焼けちまったが、お前らの繋がりが出来たと思えば…まぁ必要経費という奴だろう」

 

 それにストレスを知らず与えていたのは俺たちの責任でもあるしな、と頭を掻きメルド団長は笑った。まさか許してくれるのだろうか…なんて懐が深くて器の大きい人なのだろうか…トゥンク。

 

「ではその必要経費の修復料金は団長の給料から差っ引きましょう」

 

「げぇっホセ!」

 

 ぬっとメルド団長の後ろから現れ冷たい声出すのはホセ副長だった。顔を青くしているメルド団長をどかして俺たちの目の前に立ち深々と溜息をついた。

 

「まぁ確かに慣れない環境でストレスをためるのは理解するつもりではいましたがまさかここまでやらかすとは…」

 

 深々とした溜息とジロリト見るその視線が妙に怖い。先ほどまで俺が俺がと騒いでいた連中が静かになっているところからして皆ホセ副長が怖いのな。

 

「仕方ありません。信賞必罰、君達にはそれ相応のペナルティを出します」

 

「ホ、ホセ出来れば穏便に…」

 

「団長は黙らっしゃい!そもそもあなたが管理していれば… はぁ兎も角君達は今後一瞬間騎士団寮の便所掃除をしてもらいます」

 

 便所掃除。嫌なワードだが放火未遂?の罰にしてはかなり軽いのでは?

 

「…南雲君が先ほど部屋を修復してしまったんですよ。それも以前より頑丈になって…」

 

 そう言えば南雲の姿が見られなかったのは部屋を治していたからか!?錬成師ってホント便利だな!?ホセ副長が滅茶苦茶苦い顔をして居るのを見る限りマジで修復は完了したらしい。

 

「直せばいいってものではありませんがね。お陰で稀有な労働力を見つけたと思えばトントンです。という訳で一週間便所掃除の方よろしくお願いしますね」

 

 やたらと疲れた顔を見せながらすたころさっさと去っていくホセ副長。きっと事務処理などが残っているのだろうホント申し訳ない。しかし取りあえず…危機は去った?ホッとした様子にメルド団長が咳ばらいを一つ。

 

「あーともかくだ。一応全員の責任として罰はしっかりとうけてもらう。便所掃除…大変だろうがサボるなよ」

 

 そう言ってメルド団長から再確認されてしまった俺達。残されたのは全員物凄い微妙な表情で俺を見てくる男子生徒達だった。

 

 

 …いや、ほんとゴメン。

 

 

 

 

 

 

 

 

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