ありふれたクラスは世界最凶!【完結】   作:灰色の空

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クラスメイト捏造編第一弾です。
ここから先は過去の捏造と原作キャラの崩壊があります。
今更ですがご注意を。


破壊の拳 

 

 

「南雲、ちょっといいか」

 

 ある日の訓練所にて、珍しい事にハジメは坂上龍太郎に声を掛けられた。時間は午前で丁度一通りの訓練が終わったころだった。

 

「いいけど、どうかしたの?」

 

 ハジメは坂上との交流は少ない方だった。クラス内で話した回数も少なく只のクラスメイトという認識であった。その坂上が自らハジメに話しかけてきたのだ。それも何やら複雑そうな顔をしながら。

 

「お前、確か錬成師だったよな」

 

「そうだけど…」

 

「なら、ちと頼みがあるんだ」

 

 疑問符を浮かべるハジメに対してやはり坂上はとても似合わない難しい顔をするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オラァ!」

 

 ドゴンッと言う破壊音を立て石でできたサンドバックは破壊された。砕け散ったサンドバックを前に坂上は深呼吸を一つ。そして隣に立っているハジメに対してもう一度頼んだ。

 

「ワリィ…もう一回頼むわ」

 

「はいはい」

 

 坂上に頼まれハジメは壊れたサンドバックの修復に掛かる。これで十五回目の作業だった。

 

 

 鍛錬に付き合ってほしい。それが坂上がハジメに頼んだことだった。自分が何回も殴っても壊れないようなサンドバックを作ってほしいと頼まれたのでそれにずっと付き合っているのだ。 

 

(まぁ…全然かまわないし、僕にとって丁度良かったけど)

 

 いったい何事かと身構えたハジメだったが坂上のすることはずっと拳を振るっている事であり少し拍子抜けしてしまったのだ。最もハジメとしてもモルフェウスと錬成の能力を大々的に修練する事ができるので渡りに船だったのだ。

 

 

「オラオラオラオラァ!」

 

 直されたサンドバックを連撃で拳を打ち付ける坂上。何度も見た光景だがいささかいつもの坂上とは違って見えるのだ。いつもはもっと遠慮のない拳の振り方だっただが今は何やら戸惑っているようにハジメには見えるのだ。 

 

(うーん。らしくないなぁ…何かあったのかな)

 

 考えられることは複数あるが果たしてズケズケと踏み込んでいいものか。親しくない相手だとどうにも躊躇させられるのでハジメは大人しく錬成作業の方に集中することにした。何せ作っても作っても壊されるのだ、次はどう強固にしよう次はどこを修復しようか、やりがいがあり過ぎて口角が上がってしまう。

 

「ドラッ!オリャ!ドッセイ!」

 

(どんな掛け声だよ…)

 

 正拳突き、裏拳、最後に回し蹴り。華麗なコンボはとうとうに十体目のサンドバックの役目を終わらせた。実は治すたびに少しづつ補強を重ねて頑丈にしているのだが、坂上は拳や足を痛める事無く壊していくのだ。坂上の身体能力に呆れと驚きを入り混じらせながらも更なる補強を施す。

 

 二十五体目となった時、流石に疲れたのかふぅと一息つける坂上。

 

「お疲れ、どう?もうちょっとやってみる」

 

「いや…きっとこれ以上は意味がねぇ」

 

「?」

 

 何やら深刻そうな顔をするが何の事やらさっぱりだ。ドカリと座って一息付け始めたで、こちらも同じように座り込む。時間帯は丁度正午位になっていた。

 

「…南雲。お前さ」

 

 一息つけ、汗をかいている坂上にタオルを渡した時だ、ふいに坂上はボソリと呟いた。何の事だろうと耳を澄ませればらしくない憧憬のような感情を載せた坂上の声が聞こえてきた。

 

「お前、弱ぇのによく殿をやったな」

 

 話す内容はベヒモスの足止めをしていた事だった。地形の操作を使える自分が足止めをし撤退の時間稼ぎをしていた事を坂上は話しているのだ。

 

「あはは…あの時はそれしかないって思ってて。そんなに褒められたことじゃないよ」

 

「んなことねぇよ、つうかそういう事じゃねぇ。…違うんだよ」

 

 何やら思う事があるようだ。伺うように緯線を向けると坂上はあーと声を出し虚空を眺めた。

 

「…お前はアイツらの事を考えていたのかもしれねぇけど俺は…俺は自分の事しか考えていなかったんだ」

 

「???それってどういう」

 

 聞きなおそうとしたが何やら黙ってしまった。先ほどまでの憂さ晴らしのような訓練に関係があるのだろう、しかしそれだけでは判断は出来ない。いくら能力者でも人の心が読める訳では無いのだから。

 

 そうして数分経った頃突如坂上は大声を出した。

 

「…あー!!くっそ!やっぱ考えんのは俺の性に会わねぇ!」

 

 ガバリと立ち上がり自分の頬をバシンバシンと叩きつける、気合を入れているようだが少しばかり痛そうだ。そんなハジメの考えをよそに気合を入れた坂上は迷いを吹っ切れた様にしてハジメに向き直った。

 

「すまん!ちょっと行ってくるわ!」

 

「え、あー行ってらっしゃい?」

 

 そのままどこかへ走り去っていく坂上。残されたハジメは首を傾げるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「光輝、話がある」

 

 そう坂上に言われた光輝は廊下にて立ち止まった。何やら久しぶりに会うような親友は今までにない真剣な顔で一瞬別人に見間違えたほどだった。

 

「えっとなんだい龍太郎」

 

 一体何の話だろうか。龍太郎から話があると言われたのは珍しいと考えながら部屋に誘うかと話したが断られてしまった。どうやら時間を掛けずに話したいことがあるらしい。

 

 親友の突然の行動に多少の困惑を見せる光輝に対して坂上は一切の躊躇をせず話し始めた。自分の本性、ずっと異世界に来てから抑え込み抱えていた本性を打ち上げる事にしたのだ

 

「光輝すまん。俺はお前に謝らなくちゃならねぇんだ」

 

「何を」

 

「俺は正真正銘のクズ野郎なんだ。だから…お前のダチを名乗る資格がねぇんだ」

 

 坂上は吐露した言葉。それは光輝の親友である資格はないというある意味決別を意味した言葉だった。あまりにも直球過ぎる言葉に目を白黒させる光輝。一瞬だけポカンとした顔を見せ直ぐに事情を聴きに始める

 

「ちょっちょっとまった。一体何の話なんだ龍太郎。ちゃんと順番に話してくれ」

 

「…わかった。だがこれから話すことは俺の本音だ。決して嘘なんかじゃねぇんだ」

 

 そうして話す坂上の話それは、光輝にとって何よりもショックのある話だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「光輝、お前この世界に着た時人を助けるってあの爺さんに話していたよな」

 

「ああ、そうだ。俺が皆を…人類を助けるって」

 

「その時俺は確かに賛同したが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。いや俺は何時だって人を助けようと何ざ思っちゃいなかったんだ」

 

「……え?」

 

 それは、その言葉は光輝にとってにわかには信じられない言葉だった。親友は自分の言葉に賛同してくれた、つまり人を助けるという意思表示をしてくれたと考えていたのだ。

 しかし今目の前にいる親友はそれを違うと、寧ろずっと人を助けることなぞ考えたことが無いといってるのだ。 

 

「光輝、お前と俺が初めて出会った時の事を覚えているか」

 

「あ、ああ覚えている。あの時お前が助けてくれなかったら…本当に危なかった」

 

 光輝と坂上の出会い。それはなんて事のない光輝の人助けの最中の事だった。道端を歩いてた光輝の前でカツアゲをされている気弱な少年と複数人で絡んでいる不良が居たのだ。すぐさま助けに入ったことで少年は逃げることが出来たが光輝はそのまま複数人に暴行をされそうになったのだ。

 

 そこを猛然と助太刀に入ったのが龍太郎だった。

 

 体格が良く武道を嗜んでいた龍太郎と即席で大立ち回りをし、不良たちを退けその時から龍太郎との交流が始まったのだ。

 

「あん時、俺はお前を助けるために助太刀に入ったんじゃあねぇ。俺は人を殴りたかったから乱入したんだ」

 

「何を…何を言ってるんだ龍太郎。だってあの時」

 

 いくら光輝と言えども数人がかりでは余りにも分が悪かった。そこを颯爽と助けに来てくれたのだ。そのとき光輝は思った『どんな時でも人を助けに来る奴はいる』と、しかしそんな光輝の縋るような言葉も坂上はハッキリと首を振った。

 

「違う。俺は人を殴るための大義名分を探していたんだ。その時絡まれていたお前を見つけた。…好機だと思ったよ、ようやくこの力を存分に震えると。人を思いのまま叩きのめすことが出来るのだと」

 

 自らの拳に目を落とし龍太郎は答える。『人を思いのまま叩きのめして、存分に力を振るいたい』そんな自身の忌むべき業と苛まれる醜い本性を。

 

「昔っから俺は誰かを殴るための言い訳を探していた。その時にお前を見つけた。人を助けたいといって馬鹿みてぇに不良につっかかっていくお前を」

 

 昔から体格が良く余りある力を持て余していた。空手を習いに行ったのはそんな自身の本性を律しようとするためだった。

 だが違った。寧ろ技術を吸収しさらに力を持て余すようになってしまったのだ。その結果、自身に敵う者はいなくなり、一目見て逃げるものが多くなってしまいまずます拳の振るいどころが無くなってしまった。  

 

「だがいくら人を殴ったところでやり過ぎれば罰せられる。そう考えてた時にこれだ。この世界トータスだ」

 

 異世界トータス。人間族と魔人族が戦争するというファンタジーの世界。魔物が人を襲い命の危機があまりにも多い異世界。

 

「震えたぜ…拳を振るう大義名分を得たどころか俺よりもっとつぇえ奴がいるなんてワクワクしていた」

 

 この世界は自身を超える人間が山ほどいる。拳を振るってもいい理由がある。表情には出さなかったが歓喜に打ち震え…訓練に明け暮れそして 

 

「ベヒモスが来たとき俺はアイツと戦ってみたかった。ほかの何もさし置いてでも力を試したかったんんだ。…それがあのざまだ」

 

 拳から視線を外し目の前にいる自分を純粋に信じてくれていた少年に目を向ける。その少年は縋るようで今にも泣きそうな目を向けていた

 

「龍太郎…お前」

 

「光輝、俺はお前が思うような良い奴じゃねぇ。…お前の期待を裏切り続けてすまん」

 

 自身の気持ちを迷う事なく吐露し、龍太郎は光輝から背を向けた。もうこれ以上光輝の前にいる資格が無いと判断したのだ。

 

「待て、待ってくれ龍太郎!」

 

「俺は何時だってお前の力になる。だがお前のダチである資格はないんだ。…もっと俺以外のお前にふさわしいダチを見つけて作ってくれ」

 

 歩みは止まらず、思いは晴れ晴れしく。一方的な感情の押し付けだったがそれは龍太郎にとって何より気が楽になったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「セラァッ!」

 

 破砕音が響き渡り鋼鉄で出来たサンドバックは上半身部分を吹き飛ばされた。拳の一撃一撃は鋭さを増し重さが前よりはるかに強烈だった。

 

「次だ!」

 

「はいどーぞ」

 

 休む間もなくサンドバッグの修復をし、次は胴回りを太くさせる。しかし見るからに調子の良い坂上の連撃にあまり持ちこたえそうには無かった

 夕方ごろからハジメに訓練の付き合いを頼んできた坂上は随分と調子が良さそうで晴れ晴れしく感じた。知らないうちに悩みは吹っ切ってきたようだった。

 

「調子良さそうだね」

 

「あん?…まぁな」

 

 どこかさっぱりした顔でそう答えると照れ臭そうに頬を掻いた。意味が解らず首を傾げると坂上は真剣な顔つきになる

 

「さっき話したこと覚えているか。ベヒモスの時の事」

 

「うん?覚えているけど…どうかしたの」

 

「あん時のお前は誰よりもへなちょこの癖に誰よりも勇気があった。俺はそれを見て自分を恥じることが出来た。ようやく…目を背けていた自分の本性と向き合うことが出来たんだ」

 

「???」

 

 疑問符が顔に出てくるがまぁ悩みが吹っ切れたのは良い事なのだろう。何が何だかわからないがそう思う事にするハジメ。そんなハジメを気にすることもなく坂上は自身の頭の底にこびりついていたことをついでとして謝る事にした。 

 

「まぁ…なんだ。あん時のお前は根性があった。…召喚された日にやる気が無い奴だなんて言ってすまんかったな」

 

「あはは…って坂上君そんな事言ってたっけ?」

 

 褒められたところで照れるだけなので止めて欲しいが続く言葉で疑問符を浮かべるハジメ。問われて坂上も同じように不思議そうな顔をする

 

「言ってなかったか?確か光輝や八重樫と一緒に朝遅刻したお前を……うん?」

 

 言ってておかしい事に気付いたのか首をひねり出す坂上。ハジメとしても不思議な話だった。だが…言ってる本人もどうやら話したことが無いと気付いたのか直ぐに気を取り直してしまった。

 

「まぁいいか、取りあえずもうちょっと俺の訓練に手を貸してくれるか南雲」

 

「いいよ、僕にとっても錬成の良い経験値稼ぎになるからね。どんとコイだよ」

 

 気を取り直し、サンドバッグを作りそれを破壊する作業が続く。一方は壊れるたびにより固くより強靭に修復し一方はその期待に応えるかのようにより鋭く重く一撃一撃を丁寧に磨いてゆく。

 

 壊して作るその作業は本人たちが納得するまでずっと続くのだった。

 

 

 

 

 

 

 




坂上龍太郎  脳筋ではなくちゃんと考え行動する奴。本音は誰よりも自分の力を振るいたかった。だから異世界に来たとき興奮し光輝に賛同した。異世界の住人はどうなろうとかまわなかった。
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