ありふれたクラスは世界最凶!【完結】   作:灰色の空

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とある人の過去編です。
予想に反して長くなっちゃたので続きます

一人称と三人称が混ざっています。申し訳ない…


とある少女の話 吸血鬼編そのに

 

 

「本当についてくるんですか?」

 

「ん!」

 

「はぁ……折角の外なのに勿体ない」

 

「んむぅ」

 

 オスカーの拠点を出てどこかへ行こうとするアリスに付いていく意思を示せば大きな溜息を吐かれてしまった。とは言ってもこればっかりは仕方がない。

 

 オスカーの拠点での生活は数か月続いた。何やらやる事があるらしく自分に分からない様に陰でこそこそとアリスは動いていたが遂に外へ動くらしかった。

 外へ行くのなら自分もついて行きたいと述べたところ「面倒」で突っぱねられたのは記憶に新しかった。それでも何回かごねて付いて行くと説明すれば溜息を吐かれる。

 

(…誰も知り合いはいない)

 

 封印されてから一体何百年経ったのか、数えるのはおっくうだが外の世界には誰も顔を知っている人なんて居ないのだ。今更誰かと知り合おうにもそっけないながらも無視だけはしないアリスとの交流で割と満足していた。

 

『折角外へ行くのですからコミュ障気味を誰か友達でも作ってさっさと改善してください。この合法ロリ』

 

 と、げんなりとアリスに言われたが言う事を聞くつもりはあんまりなかった。アリスを知る事の方が先決に思えたからだ。

 

「外…明るい」

 

「三百年ぶりの太陽ですからね。サングラス有りますよ?」

 

「…大丈夫」

 

 サングラスを取り出してきたアリスの気遣いに内心惚れながらも丁重に断り、何百年ぶりかの太陽の日差しを浴びていた。隣で『…なんちゃって吸血鬼』と呟かれたが取りあえず聞こえないふりをした。

 

 

 

 オスカーの拠点の外はゴツゴツとした岩場のような峡谷で魔力が分解されてしまう特殊な場所だった。自分の自慢の魔法も使い難くなってしまう。一応無理やりにでもすれば使いそうになるが効率は十倍くらい悪くなる。結構面倒な場所だった。

 

「あ、雑魚処理はこっちでやっておきますよ。糞どうでもいい事は考えないで外を満喫してください」

 

 獲物の匂いにつられてやってきた魔物を片手間に魔力を使う弓矢で射貫きながらアリスはどうやら目的のある場所があるらしく迷わない足取りだった。

 

「ん… 相変わらず規格外」

 

 一応希代な魔術師でもあるという自負を持つ自分と比べてもやはりアリスの魔力量は規格外だった。涼しい顔で魔法を使い特に焦る様子もなく雑魚散らしをするアリス。思わずつぶやきが出てきてしまった。

 

「…他人からもらった力です。面白くないですよ」

 

 そんな多少の妬みな言葉が聞こえてしまったのか、アリスは嫌そうな顔をした。しまったとは思ったが自分の言動ではなくアリス自身の力について彼女は思うところがあったようだ。

 

 一緒に迷宮を突破し拠点で生活してアリスに関していくつか分かったことがあった。

 

 まず一つ目はアリス自身の力に関して。どうやらアリスは多大な魔力や膂力で多数の魔物を薙ぎ払う物の実際の戦闘に関しては素人の様だった。アリス自身が己の力に振り回されているとも言っても良いほどだ。

 

 これに関しては『他人に力を与えられた』とアリスは説明していた、いったい誰が与えたのだと質問するが『黒幕』の一言でそれ以上アリスは答えなかった。それ以上は聞いてほしくなかったらしい。

 

「…何処へ向かうの」

 

「樹海です。そこにある解放者の迷宮が目的地です」

 

 きっぱりと答え歩みは止まらずに目的地へと向かう。

 

 第二にアリスは何かを待っているらしかった。オルクス迷宮へやってきたのも自分を助けるためとはいえ、半分はオスカーの亡骸を埋葬するためだったとアリスは話した。 

 

『殆どが暇つぶしなんですよ。…ホント、何でこんな事に」

 

 後半何やら小さく呟いていたが、迷宮の攻略も只の暇つぶしの一環だという。なら、いったい何がしたいのかと言えば口を濁していた。オスカーの部屋にあった神代魔法『生成魔法』はさほど興味を持っていないようで、今から行く迷宮も所詮単なる暇つぶしなのだろう。  

 

 

「ああ、見えてきました」

 

 何だかんだでひたすら歩き、ついに見つけたのは広大な樹海だった。鬱蒼と茂る森のなんと見事な魔境具合か。広大やら霧がかかっていて見えにくいやら色々と驚いている自分を放って、アリスは何やら独り言を言っていた。

 

「さて、ここからあの大樹に行くには…自分でも行けるけどやっぱ案内があった方が確実か?うーむ」

 

 アリスは独り言がとても多い。話しかけないでいると良く呟くことが多く、何でも一人でいた期間が多すぎたためこうなってしまったらしい。呟く内容は様々でわりと聞いていると面白い。今のは樹海の中でどうするかの考えているのだろうか。

 

「ま、出たこと勝負で行きますか。その方が面白いし」

 

 そして大抵決める内容は面白いかどうかだ。彼女の指針はいつもこうだった。

 

 

 霧が深い森の中を二人で歩く。虫や鳥の声が聞こえ鬱蒼と茂り濃い霧のせいで前方や周囲がよくわからない森の中というのは普通に考えれば大抵は恐怖するものだ。

 しかし今この森を進んでいるのは魔法の才を持つ吸血鬼である自分とやたらと規格外の力を持つアリスだ。樹海に潜む魔物は障害にならず寧ろ岩肌の渓谷に飽きてきた分丁度良い気晴らしと散策になってすらいた。

 

「…目的の場所へ近づいている?」

 

「どうでしょうか。近づけたら好し、離れたらそれも良しです。どうせ始まるまで時間はたっぷりあるので」

 

 前を歩くアリスに目的地に着けるかと聞けば、かなり気楽に返されてしまった。仕方ないと思いつつアリスの口調について考える。

 

 

 アリスは出会った時の乱雑な言い方を変えて丁寧な言葉遣いにするように心がけていた。

 拠点で生活していた時だった。鏡を見ながら何やら独り言をつぶやいているアリスを発見ししばらく様子を見て居たのだ。

 

『俺…じゃなくて私、私はアリス・アニマです。…難しいなこれ、こんな感じの言葉遣いでいいんかなぁ』

 

 鏡を見ながら百面相をする姿は中々にシュールで物凄く微妙な顔になってしまった。何をしているのか気になったので何故そんな事をと問うと一瞬顔を赤くしてしばらく考えて、物凄い嫌そうな顔で答え始めた。

 

『いやさ、この見た目じゃん。だったら多少は女性っぽく話した方が良いかなと思って。……参考にはならないしなぁ」

 

 どうやら女性としての言葉遣いを意識し始めた様だった。どうしてそんな考えに至ったのか気にはなったが、アリスのすることだ、何か考えがあるのだろう、もしくはただ単に面白いと思ったか。…どうでもいいがこちらを見て参考にはならないとは失礼ではないか?

 

『…フッ 金髪吸血鬼ロリとか属性過多の癖に口調も『ん』とかあざとすぎんだろ。参考どころか滅茶苦茶恥ずか』

 

 自分の身体をじろじろ見て鼻で笑いながら失礼なことを宣ったので魔法で吹き飛ばした。ゴロゴロと転がりタンスに頭をぶつけるアリスは面白かった。ざまぁ

 

『兎も角女性的な喋り方をしようと思うんだよ。んで俺にはさっぱりわかんないし参考なんてもっての外だから丁寧語にすれば…まぁそれらしくは見えねぇかなー』

 

 と、色々とあったがアリスはそれから丁寧な言葉遣いで喋るようになった。見た目が可愛くて綺麗なので良く似合うと話したらつっけんどんに返されたが非常に嬉しそうだった。チョロ過ぎる。

 

「んふふふふ」

 

「…何ニヤニヤしているんですか、気持ち悪いです」

 

「!?」

 

 過去を思い返し思い出し笑いをしていたら気味悪がられてしまった。地味にショックだ。 

 

「まぁ貴女が気持ち悪いのは別にいいとして」

「良くない」

「人と遭遇するかもしれません」

「…人?」

 

 アリスの言葉に疑問を返せば樹海に住む亜人族だと返された。その言葉で緩んでいた顔が引き締まる。

 

 亜人族、人と獣の特徴を兼ね備えた人種だ。遠い記憶の中で情報を引き起こそうとすると確か排他的な印象だったはずだ。尤も今の時代はどうなっているのか知らず、見たこともないのであっているかどうかも知らないが。

 

「遭遇したら交渉して迷宮までの道案内を頼むとしましょう。彼等の中で立ち入り禁止区域みたいな場所がある筈です。そこが迷宮のはず」

「…疑問がある」

「何でしょうか」

「彼らは人間族に対して友好的ではない。断られる可能性がある、寧ろ攻撃されるかも」

 

 出会う亜人族が友好的だとは限らない、寧ろ敵対行動をされるかもしれないのだ、誰かって自分の縄張りに人が入り込まれるのは嫌なはず。そうアリスに亜人族との交渉の忠告をするが彼女は笑っていた。

 

「その時はその時です。物理で交渉しましょう、寧ろそっちの方が面白いかもしれません」

 

 暴力上等とは中々の滅茶苦茶さだ。これではまるで侵略者ではないか。目でそう非難すればアリスに顔を背けられた。これでは一体どっちの方がコミュ障か。溜息が出てきた

 

「はぁ」

「な、なんだよ。別にいいじゃん、もしもの話なんだし」

「だから問題。アリスの力は人知を超える、むやみに人に使うのは駄目」

「うっ …確かにそれはそうだ。知らずのうちにイキってたか…深く反省します」

 

 正論を吐けばアリスは言葉に詰まってしまった。肩をがっくりと落し自分の言葉に項垂れる。どうやら人との接触は久方ぶり過ぎて物事の話し方を忘れてしまったのだろう。…迷宮生活が長すぎて接し方が魔物と一緒になってしまったのではないだろうか。

 

 少々アリスの事に心配なりながら森を歩いていた時だった、泣き声のような微かに聞こえるようなそんな音が聞こえた。

 

「アリス」

「分かっています」

 

 アリスを見れば、そちらの方にも聞こえた様で音を聞こうと顔が真剣なものになる。何時もそうしていればいいのにと思いつつ耳に集中すれば、聞こえてきたのは女の子がすすり泣くような声だった。

 

『ウッグ…ひっく……母様ぁ……』

 

「女の子?」

「母様?」

 

 小さな女の子が泣いているような声、顔を見合せたアリスと一緒に驚いた顔をして、一瞬躊躇する。声の主に近づくか様子を見るかだ。

 

「アリス」

「……はぁ」

 

 どうすると顔を見れば物凄く嫌そうな顔をする、なのに足はすぐさま声が聞こえる方へ。アリスが何を考えたのかそれで分かってしまい顔がにやけてしまう。アリスは口や顔ではああいう物の根がどうしようもないほど善良なのだ。本人は全力で否定しようとするが。

 

 

「ぐすっヒック…ふぇぇ…」

 

 声の主は直ぐに見つかった。大きな樹の下、太くたくましい木の根に隠れながらその泣き声の主は一人でぐずり涙で頬を濡らしていたのだ。年の頃は十歳だろうか。少々薄着過ぎる服装をした少女にはある身体的特徴がみえていた。

 

「あの子の耳…あれは」

「兎人族、か」 

 

 泣いている幼子は頭の上に垂れてしまっているが本来はモフモフとするであろううさ耳が生えていたのだ。アリスの呟きを聞いてそれが兎人族と言う亜人族の中での一種族だと理解する。

 

「どうするの?」

 

 相手に聞こえないように小声でどうするかをアリスに聞きだす。自分で行動する気はない、近づいたのはアリスの意思だ。その意思を尊重したいのだが…しかしアリスの方は泣いている幼子を見て何やら固まっていた。

 

「あれ…あの髪色は」

「?どうかしたの」

「いや何でもない…流石に出来すぎか」

 

 口調が戻っているという事は何やら動揺しているようだ。あの少女の()()()()()()()()()()の髪の色がそんなに気になる事なのだろうか。

 

 

 

「あーもしもしお嬢さん?」

 

 相手が泣いているせいでこちらの注意が散漫になっていることを良い事に譲り合いと言う名の押し付け合いをした結果アリスが話しかける事となった。相手が泣いているからか妙に話の掛け方が不審者臭い。というよりかなり腰が引けている。

 

「ぐすっ……誰っですか」

「あー只の旅人?ですかね」

 

 涙を拭いながら話しかけてきた少女に戸惑いながらもアリスは返答する。妙に不安なやり取りだ、まるで小さな女の子と話すのは初めてとでもいうかのような…

そもそも自分の時とは対応が違いすぎるのでは?無意識のうちに頬が膨れる

 

「旅人…ひっ!?に、人間族!?」

 

 ようやくこちらを見て人間族だと分かったのか後ずさりをする少女。今更だとは思いつつこの樹海に好き好んでやってくる人間族は少ないとは思うので仕方ないと思いなおす。それよりもいきなりの闖入者に驚き過ぎたのか少女はコケてしまった。

 

「ひゃうっ!?」

 

「あーあーそんなに急がなくても。仕方がないですねぇ」

 

 転んで膝を擦り剥いてしまったのか手を当て涙声の少女にアリスは苦笑いをし、さっと近寄る。ほぼ瞬き一瞬の出来事で近づかれてしまった少女は可哀想なほど震えてしまっている。

 

「こ、こないで…」

「そんなに怯えなくても…ほら治療するから見せて」

 

 有無を言わさず少女に近寄り微笑むアリス。見た目は微笑んでいるが内心は逃げられないか心配で堪らないのだろう。アリスとの付き合いはまだ短いが何となく内心が分かってきたような気がする。

 

 拙いながらもアリスの意思が伝わったのか少女はおずおずと顔を上げた。

 

「…でも」

「これでも治癒師の真似ごとだってできるんですよ」

「治癒師?」

「うーん。お医者さんで分かるかな?もしくは怪我や病気を治す人、かな」

 

 しゃがみ込み目線を合わせニコニコと笑い困った顔で兎人族の少女と話せば、病気を治すの辺りでうさ耳がピンと上がった。目ざとくアリスがそのうさ耳に目線を送るがすぐに少女と向き合う。

 

「病気を治す…?」

「うん。病気でも何でも、です。何なら君の怪我も一瞬でね」

 

 何でもの当たりを強調しているのは自分が無害だと伝えるためか、出来る限り優しさを込めた言い方はどうやら少女に伝わったらしい。ビクつく雰囲気は消え恐る恐るとこちらを伺いつつ様子を見てくる。

 

「警戒するのは分かるけど、私の願いは簡単な事です。君の怪我を治させてください」

「……分かりましたですぅ」

 

 真摯なアリスの言い方でようやく少女は大人しくしたのでアリスは怖がらせない様に膝に手を向ける。

 

「わぁ…」

「これで良しっと」

 

 たったそれだけだった。手を翳すその動作だけで少女の怪我は一瞬で元通りとなってしまった。勿論今更過ぎる話だが詠唱も何も聞いていない。

 

 感激の声をあげ怪我が無くなった少女はその場でピョンピョンと跳ね飛び痛みがなくなったことでようやく怪我が消えたことを実感し笑顔になった。

 

「あ、ありがとうございますですぅ!」

「いえいえ、どういたしました…ですぅ?」

 

 苦笑したアリスだが、少女の特徴的な語尾に笑顔が固まった。そんなアリスの事を放っておいて少女は自身の膝を見て怪我の治り具合を見、幾分か考え事をし始める。

 

 一応警戒は解かれたものと考え自分もアリスへ近づく。

 

「アリス、お疲れさま」

「ですぅ…ですぅってことは」

「アリス?」

「あの髪の色、特徴的な語尾。そしてこの秘められた能力は…」

 

 何やらブツブツと呟いているが取りあえず無視することにした。考え事をしている少女に話しかける事にする。

 

「ん、少し話したいことがある」

「…治療。…もしかしてこの人達なら…」

「…?もしもし」

 

 なにやら考え事をしていた少女はガバッと顔を上げるとこちらに頼みごとをしてきた。

 

「あの! 治癒師の方なら病気の人も治せるんですか!?」

「出来る。私は出来ないけど」

「あれぇっ!?」

「この固まっているアリスなら問題は無い。貴方もさっき見たはず」

 

 どういう魔法を使っているのかさっぱりだが怪我も病気もアリスなら何とかできるだろう。…持ってきた荷物の中にある青い球体の鉱石もあるのだからなおさら問題はない筈。

 

 そんな自分の答えに少女は意を決した顔で自分の望みを口にした。それは何となく前述のやり取りでこうなるだろうなと考えた自分の予想道理の言葉だった

 

 

 

「それなら病気の私の母様を助けて欲しいんですぅ!」

 

 

  

 

 

 少女の頼みは病気で余命行く場もない母親を助けてほしいという物だった。元から病弱だった母親はこの頃酷く衰弱しつつありもう助かる見込みも少ないと父親から言われていたらしい。

 

 日に日にやせ衰えて寝込む母親を見て別れが近いと思い、母親の前では明るく振舞ったが、内心ではずっと泣きだしそうで、それで集落から離れ一人泣いていたのだと少女は説明をしてくれた。

 

 一人で泣いているときに怪我を一瞬で治す自分たちに会いこれならもしかして母親が助かるかもしれない、誰にも治せなかった大好きな母親が元気になってくれるかもしれないという思いで外部の人間である自分たちに助けを求めたのだ。

 

「いきましょう。善は急げです」

「?何それ」

「あー私の故郷のことわざで…あんまり気にしないでください」

 

 これには難しい顔をしていたアリスも快く返答し、兎人族の集落へと案内された。

 

 

 

 

 集落に入る前に門番とひと悶着あったが少女がうまく取り直してくれて、集落に入っても他の兎人族からは恐怖され阿鼻叫喚となってしまったがそれもすべてアリスは無視して少女の家へとたどり着いた。

 

 

 件の母親は少女の家のベッドで寝かされており、確かに酷く衰弱しており誰が見てももう長くは無い事は確定的だった。集落の長である少女の父親も諦めており、死を受け入れつつある。そんな雰囲気を漂わせていた。

 

「申し訳ありません旅の人。もう私の妻はもう手遅れです。…助けようとしてくれるその気持ちは嬉しいのですが」

 

 涙を拭い出来る限りにこやかな笑顔で話す少女の父親であり族長はそう言って申し訳なさそうに話す。それに待ったをかけたのはアリスだ。族長の頭に軽いチョップをしながらなぜかこちらも諦めた表情をしていた。

 

「まずは見てからでしょーが。…っていうか族長って…もうやっぱり確定なのかよ」

 

 一つ愚痴ると大きな溜息を吐いて少女に腰を落として目線を合わせる。

 

「それじゃあ今から君のお母さんを助けるね」

「お願いしますですぅ…その」

「うん?」

「私何も持っていなくて、何も差し上げることが出来なんですけど」

 

 少女は母親を助ける事に関しての報酬を払えないことに申し訳ない顔をしていた。その顔にはアリスが失敗をするなんてことは微塵も考えておらずいつの間にか信頼されていたようだ。その事でアリスは苦笑した。

 

「ははっ いやいや報酬はもう貰ったさ」

「?」

「自分が良い奴だって再認識できる。…クソつまらない自己顕示欲を満たす事ができるんだ」

 

 いつかどこかで言った様な言葉と共に大きな大きな溜息と苦笑をして、少女の頭を撫でて母親に近づいて行く。その際に漏らした呟きを自分は聞き逃さなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「…()()()()()()()()()()()()()()。この為に俺は…なるほどなー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




続きは近日中に

病気の母親 あの彼女の母親であり兎人族のある部族の族長の妻。原作では故人。 病弱であり彼女が十歳の時に亡くなった、病弱な体に似合わず誰よりも戦う意思と強い心を持ちながら病弱な体として生を受けた兎人族としては稀有な人。 書籍版2巻の小話に登場。
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