だから色々とキャラと絡ませやすい。代わりに戦闘が糞ですが
「ふぁー さてっと」
今日もお仕事をこなし薬剤を作り人生を謳歌する俺。時間帯は深夜に近く、この世界に来てからゲームやインターネットが出来ないので物凄く規則正しくなってしまった生活リズムの如くそろそろ眠る準備をする。
「明日は…」
明日のやる仕事のチェックと段取りを考えつつ身支度を整える。なんていうか本当に規則正しい生活を迎えるようになってきた。
日本でだったらここからは俺のステージだとか宣いながら深夜のテンションに導かれるままハイになっているというのに。悲しいね
コンッコンッ
そんな時間帯にノックの音が聞こえてくる。こんな時間に来訪者とは?気にはなるがここで出ないのも何だかなぁと思うので扉越しに声を掛ける。
「ハイハイ、こんな時間にどちら様かな?」
「……」
何と相手はだんまりである。一応扉の外には相手の気配がするので人がいるとは思うのだが…どうかしたのだろうか、不安になってきた所でようやく声は帰ってきた。
「少し話をしたいんだけどいいかな柏木君」
「ん?誰だよ名前を言えよ」
相手は女の人の様だ。声からして…っとその前にこんな感じの話し方だったか?普段はもっと大人し目の…そんな事を考えていると呆れた様な溜息が一つ聞こえて相手は名乗りだした。
「君のクラスメイト中村絵里だよ」
クラスの中でも割と浮いてる?俺の部屋にやってきたのは大人しく温和で定評のあの中村絵里さんでした…
「いきなりゴメンね こんな夜中に」
「良いって事よ。それよりもこっちも待たせてすまんかった」
一応相手が女子と言う事なので部屋の整理をして待ってもらうこと三分。部屋に招き入れた中村にお茶を出し椅子に座らせる。一体何の用事でここにやってきたのかは皆目見当がつかないが誰にも知られたくないのだろう。じゃなきゃ来ないよな。
「美味しいねこのお茶。緑茶かな?」
「ウチの侍従さんからもらったんだ。 んで、いったいどうしたんだこんな時間に」
お茶を飲む中村に話の本題を切り出す。夜中に男の部屋に乗り込んでくるとは中村のキャラらしくないが、今はそうも言ってられない。何せこちらを見る中村の目の色が怪しい色をしているのだ。
「先日の魔人族の捕獲。僕は後ろで見ていただけだけど、見事だったね」
「んん? まぁアレは皆の手助けあってこそだ。俺一人じゃどうしようも出来ねぇよ」
「そうかな? アレ、君が何か薬品をまき散らしたんだろう?それを斎藤君や遠藤君が利用したに過ぎない。君の力が無かったら魔人族の捕獲は出来なかった筈だよ」
先日のオルクス迷宮での話か。確かにアレは俺の薬物が無ければカトレアさんを捕獲することは出来なかったかもしれない。しかしそれが中村と尋ねてきた事とどうつながるのかと言われると…
「君の力がほしいんだ」
「ふむ?」
「僕は今ある計画を立てているんだ。でもどうしても一人で行動をするのには難しくてね…そこで君の力を見たんだけどあれならもっとうまく立ち回れることが出来ると踏んだんだ」
どうやら中村は何かを企んでいるらしくその為の協力者として俺を選んだらしい。これは中々のビックリ案件だ。取りあえず熱弁するコイツの様子をそのまま眺めていよう。
「あの魔人族すら大人しくする力はとても強力だ。だから協力をしてくれないかな?勿論上手く言ったら君が望むものすべてを上げようじゃないか」
「望むものっていうと?例えば?」
「そうだね。白崎は無理だから…八重樫とかどうだい?あの女なら見てくれは良いと思うよ」
「ほぅ…まぁ悪くないか」
「他にも園部とかどうかな。ああ権力やお金も計画が成功すれば君の思いのままだ。悪くないと思うんだけど」
組み上げていた足を組み替え愉悦に笑う中村絵里。なんとことでしょうか!中村絵里は自分の計画が成功すれば人を差し出すと言っているのです!これはいけません好奇心が止まらない!
ちなみにですけど俺は女の子は欲しくありません。どれもこれもノーセンキューです。…谷口だったら迷っていたかもね!そこはまず親友を差し出せよオラァン!
「んー中々悪くない案件だ。でもその前に重要な事が残っているぞ」
「何かな?」
「目的は…まぁ言わなくてもいいけど、いったい何をするつもりなんだ」
何を目的としているのかは知らないけど何をするのかは知らないといけない。一体何をしでかそうとしているのか…
「それは君が乗ってくれたら話すことにするよ」
「却下だ馬鹿者。そもそも何をするのか話してくれないと上手くいくかどうかわかんないだろ。良いからとっとと話せ」
こいつは交渉事をしたことが無いのだろうか?餌だけチラつらかせてもまず何をするのか知らないと引っかかるもんも引っかからない。絵に描いた餅を欲しがる馬鹿はいないだろーが。
「チッ 仕方ないね…それじゃあ僕の計画を話すからちゃんと聞いてよ」
そうして朗々と語られる中村絵里がこの世界の情勢を知って己の天職を理解し練りに練り上げた計画は……………。
「な、なるほどねぇ」
「ふふっ 我ながらよくもまぁできたものだと感激するよ」
正直馬鹿でした。いや、馬鹿と言うのは言いすぎか。余りにも杜撰で行き当たりばったりで正直上手くいく保証がみじんも見えないモノなんだけど
中村絵里が計画していたのは滅茶苦茶内容を端折ると人間族を裏切って魔人族側に着くだ。やり方はこうだ
1 自分の天職降霊術師の力で死者を作り出し操って自分の都合のいいの配下を作り出す
2 俺の役割は薬を使って作り出した死者が他の人から疑問にならない様に幻覚剤をまき散らす
3 捕まえた魔人族を解き放ち魔人族領へ返す。その折に魔人族側へと寝返る事も話して置く
4 この王都に魔人族が攻め込んできた時に結界を破壊して魔人族を招き入れる
5 死者を解き放ち王都中を混乱させて全部を殺戮と殲滅の宴へと
6 お祭り騒ぎでウェーイ! その後は死者を使ってパラダイス! おわり
(む、無理があるにもほどがある)
そもそもこれ死者を操るって時点で無理が無いか?中村はやたらと自分の力に自信を持っているが死者は死人だ。どうあっても生きた人間ではない以上他の人に勘繰られる可能性がある。顔色悪くて返答がおざなりって普通気が付かれるよね?
俺の幻覚剤もそうだ。確かにそれほどのもんなら作れるが…王宮にばらまく前に誰かに違和感を持たれたらそれでアウトなのだ。交渉事では俺は無類の強さを発揮できるが白兵戦はてんでクソなのだ。
「ふふっ 僕の計画が凄くて言葉も出ないのかい?我ながらよく頭が回ったよ」
ツッコミどころが多すぎて言葉が出なくなってしまうのが本音なのだが。取りあえず返答をする前に少し待ってもらおう
「中村、すまんが少しそこで待ってもらえるだろうか」
「うん?イイよぉ~」
恐らくやっとで自分だけの計画を言えたことで気分が上機嫌な中村に断りを入れ、扉の間で深呼吸。不思議がる中村をそのままにして扉を少しだけ開けてオープン。
廊下には一見だれもいない。左…よし 右…よし 上は…問題ないみたい。
そして正面を見た時肌が泡立った。
「♪」
にっこりと微笑まれたのでこちらもぎこちなく笑顔を返す。指を唇に当てたので何も言わない様にしてはっきり言えば引き攣った笑顔しか出ていないのだがそのまま静かに扉を閉める
「どうかしたのかい?」
「あ~あのなぁ中村」
怪しさ大爆発の代わりにわりと能天気な中村にため息混じりの言葉が出てくる。取りあえず見た物は口に出さないでおこう。誰かって命は惜しい
「俺達ってさ、騎士団の人達から訓練を受けたじゃん」
「?その話が僕の計画に何の意味があるんだい」
「まぁ聞けよ。その時メルド団長は俺たち一人一人に担当教官を付けてくれたじゃん」
俺と南雲はその担当教官がニートさんな訳なのだが…それは置いといていまだに疑問符を浮かべる中村に分かりやすいように確信を貫く。なぜ一人一人担当教官を付けてくれたのかその訳を。
「あれ、訓練かと思わせておいて実は監視が本来の仕事なんだ」
「!?そ、そんなはず」
物凄い驚きようだ。さてはその可能性を考えていなかったなオメーは。少し考えれば分かる筈なのだが
「だってさ考えてみろよ。いきなり現れた異世界人が良く状況を知らぬままに自分たちを助けてくれるっていうんだぜ?普通なら疑うだろ信用なんてせずにさ。異世界って言うだけで警戒してんのに更に自分達より強くなる可能性も含めているんだぞ。疑うじゃん」
いきなり自分達を救ってくれると話すの見ず知らずの少年少女。その者達は自分達より強くなる可能性を秘めていて実際めきめきと実力を上げている。
なら疑うじゃん。怪しむじゃん信頼するべきか否かって。神の力により召喚されたって事があってもそれでも全部を信用するはずは無い。それが軍人と言う物でありこの国を守るべき人の姿なのだ。
「そ、それは…確かに疑問には思ってはいたけどそういう教育方針なのかと考えてた」
「おい」
その可能性を考えていなかった中村は急に焦り始めていた。ほぼ不意打ちからの核心には想定できなかったか。
「兎も角だ。行動しようとするのならまず十中八九騎士団に感づかれるのは間違いない。なにせ相手は本物のプロだ、一度疑われると全ての行動は疑心が付き纏い行動に制限が付く」
自身たっぷりの計画にいきなりの歪みが出てきた衝撃で狼狽する中村に追い打ちをかけていく
「先ほどの計画だけど…中村お前死者を操るっていうけど殺人が起きたらずっと疑われる可能性があるんだぞ?それでも出来るほど上手くいくのか?あの団長やホセ副長を騙しながら演技ができるのか?なぁ聞かせてくれよ」
この頃思う。メルド団長は善人だがスイッチを切り替えれば容赦がない人だろう。そして極め付きのホセ副長。あの人はメルドさんとは真逆だ、多分信頼はしてくれるけど信用はしてくれない。市民に危険が生じる可能性があると判断したら迷わず俺達の首を切って来るだろう。…その場合やってくるのはニートさんだろうか。きっとあの人も普通じゃない。
「…っ」
「今回は諦め…いや違うな。時期を見ろ。一歩でも不審な動きをしたらばれるかもしれないんだ。そんな中で行動するのは余りにもリスキーすぎる。お前の目的のために今は時を伺う方がいいと思うぞ」
計画云々は始まる前から終わっていたのだ。逆上する前に様子を伺えとアドバイスする。目的も理由も動悸さえも分からないが今行動を起こすのだけはマズいと彼女に理解させる。
「………はぁ 分かった。僕もちょっと焦っていたみたいだね。腹正しいけど今回は少し見送ろうかな」
「それでいい。俺も今回の話は無かった事にしておく。つーか忘れた」
不穏な話はしない方が自分たちの為である。中村にはそう納得してもらい、それから雑談を交えて部屋から退出していった。
そして次の日 朝ご飯を食べる為に食堂へやって来たらそこには物凄い涙の跡がある中村とそんな中村を必死で慰めている?谷口の姿が見えた
「ど、どうしちゃったのエリリン!?すんごい顔しているよ!?お腹痛いの!?頭が痛いの!?」
「だ、大丈夫だよ鈴。変な夢を見て…なんか朝起きたらこうなっていただけだから」
「そ、それにしてもすんごい顔になってるから、はっ!?こんな時こそカオリンを呼んでこなくちゃ!」
親友の異変にドタバタと慌てる健気な谷口を微笑ましく想いながら席に着く俺。無意識だろうか中村から恨むような視線を受けるがそんなの俺は気にしない。
さて、昨夜の俺の話を聞いてすぐに狼狽し諦めてしまった中村だが実はちょっとしたからくりがある。
実は中村を部屋に居れる前のあの時、俺の部屋をソラリス能力『甘い芳香』と『抗いがたき言葉』のエフェクトで充満させたのだ
『甘い芳香』は相手の思考能力を鈍くさせるものだ。これで俺よりかも頭が回るはずの中村は自身の計画を話す事で精一杯になってしまい俺がどう考えているかなどは疎かになってしまったのだ。これでペラペラと計画と目的の話をしてくれた。
『抗いがたき言葉』これは俺の身体から幻覚物資を作り出し俺の言葉に逆らえなくなるものだ。これで人を殺すなどと言うアホな事は出来なくなり、無謀な計画とやらも控えてくれることとなった。
ソラリス能力は交渉事については圧倒的なアドバンテージを得ることが出来る。幻覚と薬品の力は滅茶苦茶な物でありそれこそ人の意識すらも変えてしまう。
「エリリン!カオリンを呼んできたよ!これでもう大丈夫だよ!」
「あの鈴ちゃん?私怪我の再生なら誰にも負けない自信があるけど心療内科はちょっと不得手なんだけど…」
「あはは…だから大丈夫だってば鈴。
「うーんこれは大丈ばないね。カオリン様子を見てくれる?」
「うんわかった。それじゃ恵理ちゃん私の目を見ててね。すぐ何もかもが楽になれるよ」
「え?なにこれ?なんか香織ちゃんの目が滅茶苦茶怖いんだけど」
何かレイプ目と化した白崎の様子が滅茶苦茶怖いが放っておこう。全ては中村自身が招いたことだ。
念のため彼女の目的も聞いておいた。エフェクト能力『止まらずの舌』神経系に作用する自白剤だ。これが魔法だったら中村も多少は抵抗できるがなにせこれはレネゲイドウィルス。未知の細菌には誰も勝てない、抗えるのは同じ
『天之河光輝を自分のものにしたい』
彼女の目的はかなり簡潔で簡単な事だった。やっぱりと言うか彼女は天之河に恋をしていたらしい。これは多分だけど当事者達だけが気付いていないだけでクラスメイトの皆は多分知っているはずだ。
彼女のクラス内でのやり取りと天之河への視線でよっぽど鈍い人間でなければ気付くはずのもので…うん。本当に気づいていないのは当事者たちだけってのがねぇ
それ自体は微笑ましい物で応援はいくらでもするのだがその執着の仕方がかなり粘着的な物だった。なんかやたらとメンヘラ染みた執着の仕方をするのだ。正直ここだけは白崎の方がましだ。アイツは決して人を不幸にしないストーカーだから。
んでメンヘラの戯言は数分で飽きてしまい、なぜそこまで天之河を欲するのか理由を聞いてみたのだ。そしたら出てくるは出てくるは中村の悲惨な過去。
幼少期に愛する父親が自分のせいで死んでしまい、その事で狂った母親が虐待をし始める。ここだけでひどいのだが更に母親が愛人を引き連れその愛人がロリコン糞野郎だったらしく襲われそうになり更に愛人を誑かしたとして更に母親の虐待が酷くなるというありさま。
(誰だよこんな胸糞ストーリー考えた奴…)
まさしくよくあるドラマチックストーリーであり反吐が出そうになるものだった。兎も角そんな凄惨な過去を救ってくれたのがここで出てきた天之河だったらしい。幼少期の天之河は特に何も考えず?に中村を守ると発言しそれでコロリと堕ちたらしい。
その後は母親を脅すような立場になって…まぁ色々とあったんだろうが今に至るという訳だ。
正直な話誰が悪いとは言えない、俺は部外者なので人の家庭にあーだこーだ言う資格もないしする気もない。だがそれでこの国の人が巻き込まれるってのは流石に待ったを掛けよう。
あくまでもこの話は中村が天之河の事が好きなだけの話でこの国の人たちの生死には関係ないはずだ。
つーか中村はさっさとカウンセリングを受けて来い。知ってるー?
だから計画を立てて悪役ムーブをしていた彼女には誰よりも彼女の事を想う人から癒してあげるべきなのだろう。それは中村から見た仮初の友人や居なくなった故人を使ってでも。
「恵理ちゃん?あのね…オイタは駄目だよ?」
「こわっ!?鈴助けて!この目は何かやばい!」
「うわぁカオリンの背後に何か化け物が居る…疲れたのかな?」
「ちょっと待ってそれ僕にも見える奴だから!待って香織ちゃっ…ひぃぃいい!」
「ふふふ 私の目が黒いうちはヘンな事は出来ないからねー」
「お薬飲まなきゃ… あ、これって柏木君と話せる口実になるんじゃ?」
姦しく騒ぐ女性陣をバックサウンドにしながら俺は朝食を進めていく。ギャーギャーと騒いでいるがまぁこれもまた荒療治の一つだと思いたまえ。涙を流せるのならまだ帰って来れるのだろうからね。
「久しぶりのお父さんとの会話は嬉しかったか?…安心しろ。お前が忘れない限りずっとお前の心にいる父親が見守ってくれるからさ」
彼女を誰よりも愛している存在を夢で思い出したであろう中村に俺は一人呟くのでした。
中村絵里 彼女が思っているより彼女の事を大切に思っている人がいる、周りは勿論、故人も。夢の中では最愛の父親がそばにいて現実では友人たちが姦しく騒ぐ。彼女の失敗はただ一つ。自分が思うよりも周りに自分は愛されていた事。谷口と香織が居る以上馬鹿な事は出来ません。
計画 原作での裏切り。…思うんですがあれ、正直ノイントが居ないとかなり無理があるのでは?書籍版5巻でメルド団長を葬っていましたがノイントだよりでしたし…序盤で計画と言っていたけどあの時正直何も考えていないのでは?死人を操るって八重樫とかに気付かれるのでは?割と杜撰だなぁ。