ありふれたクラスは世界最凶!【完結】   作:灰色の空

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初日の朝とご説明~

 

 

 

「さて、まず初めに言っておくけど僕は君たちの言うところの神様じゃあないんだ」

 

ーそうなのか?こんな変な場所まで連れてくるんだからてっきり神様の類だと思っていたんだけど。

 

「うーん 正確に言えば割と何でもできる高次元の生命体っていうところかな。神様って言われるほどのものじゃないよ」

 

 高次元。いきなりそんな事を言われてもピンと来ない。目の前の青年は本当にただの一般人に見える(何もしなければだが)

 

「まぁ僕についてはそんなもの位にとらえていてくれればいい。そこは重要じゃないんだ」

 

 余り探られたくないのか青年に対しての普及はそこで止まってしまった。色々正体を探りたいものだが本人が言うのだからそうなんだろう。とりあえず納得する。

 

「で、話を戻すけど僕は、とても暇だったんだ」

 

ー暇

 

「そう暇。又は退屈っていうのかな。ある程度なんでもできるけど刺激がなくて、驚愕や感動もない毎日を過ごしていたんだ、そんなときに地球のサブカルチャーを偶然見つけてね。これがまぁとても面白くて気に入ったんだ」

 

ーふむふむ、まぁわかる

 

「だよね!それで異世界転生なんてものを見たもんだから僕も同じようなことができないかなーなんて思って」

 

ーそれで自分が釣られたと

 

「そう!だから僕の声を聴いてここにやってきた君と出会えて嬉しくってしょうがなくてさ」

 

 だからあんなにはしゃいだようにうれしそうな顔をしていたのか。

 

「むふふ、だから今、君を転生させどんな事を引き起こしてくれるのかワクワクしているんだ」

 

ー中々自分本位な奴だな

 

「そうだね。でも、君にとっては悪くない話でしょ?チート能力を持って転生できるんだから」

 

―――――そう、かもね 

 

 にこやかな顔で言い放つ青年は悪気は全く無いようで、毒気が抜けていく。普通は人が死んだことに喜ぶなとか死人を使って退屈をまぎ割らせるなんて人でなしと言いたくなるものだが、どうにも何も言えない。

 

 退屈しのぎとか何とか言ってはいるもののここで終わるはずの自分を転生させてくれようとしているんだから

 

「さて、前書きはここまで。ここからが本題だ」

 

ー本題。

 

「さぁ君はどんな世界に転生したい? 超能力がある日本に行ってみる?それともファンタジーの世界かな、又は近未来な世界やスチームパンクもいいかもね」

 

 自分の第2の人生となる場所。そんな直ぐには決められない。そもそも自分はどんな世界で生きたいのかすらわからないのだから。

 

「もちろん創作の世界だってOKだよ。ゲームや漫画、映画はもちろん小説だって構わないよ、何せ『世界は人の創造するだけ無限にある』から」

 

 何かとんでもないことを言い出したが、おそらく本当にどんな世界でも連れて行ってくれるんだろう。つくづく恐ろしい奴だ。しかし、生きたい世界か、そんな事勿論考えてはいなかった。どうすればいいのか悩むに悩む。

 

「あ、一応言っておくけど転生しても平穏無事と言うのはないからね」

 

ーなんと!?

 

「あ、ゴメン言い間違えた。君が生きるからには、何かしらの事件やイベント…つまり騒動に巻き込まれる可能性は大きいからね」

 

ーなんでそうなるんだ?

 

「単純に僕が詰まらないから。平穏ってのも悪くはないんだけど、そんなの見ていてもつまらないし、やっぱり僕としては刺激がほしい訳で」

 

ーーーコイツ割と性格悪いな

 

「褒め言葉として受け取っておくよ。それにしても、ふふふ、君はどんな世界を選ぶのかな?日本で可愛い女の子やイケメンな男の子に囲まれたドタバタなラブコメな世界を選ぶのかな?それとも異能の力が運びる世界で日常を守るために戦うって所に行ってみるかい?又は奇妙で不可思議で気を抜くと精神崩壊待ったなしのクトゥルフ事件に巻き込まれる日本に行くのかな?あれ僕さっきからやけに日本を押してない?まぁ日本は人外魔境な世界だからね仕方ないね。それともそれともやっぱり王道ファンタジー?うーん悪くはないんだけど正直お腹いっぱいだと思わない?いろんなライトノベルのファンタジー物を見ているけど皆似たり寄ったりだからねーもうちょっと創意工夫をしてほしいよね。折角のファンタジーなら奇抜に奇想天外な生き物や人を出してほしいなー。ん?これって僕が見ている範囲が狭いってことかな?だったらこんなこと言うのはよくないね反省反省。まぁどこ行くのもいいけど出来れば似たり寄ったりな世界は勘弁してほしい僕の気持ちが分かってくれるととても嬉しいな♡」

 

ーうるさい!ちょっとは黙れ!

 

 さっきから人が悩んでいるのにぐだぐだと、お前は初めて友達ができて嬉しさのあまりハイになってるボッチか!?

 

「あぅ!?…ぅうう、ごめんね、初めて人とこんな話ができて舞い上がっちゃったんだ。うるさかったよね?ゴメンね。ちょっと大人しくしているよ」

 

 マジでボッチだった件について。しょんぼりとした顔で縮こまってしまった。言いすぎてしまったか?ともかく辛気臭い空気を出さないでほしい。ただ煩かったから怒鳴っただけなのだ。そこまで怒ってはいない 

 

「…怒ってない?」

 

ー怒ってない

 

「…本当に?」

 

ーこれっぽちも

 

「…よかったよぅ」

 

 キメェ。大の青年(イケメン)が目を潤わせて上目遣いをするのは本当に気色悪い。しかしここはぐっとガマン。言い出すとキリがない。

 

「えーっと、という訳で決まったかな?僕はある程度の事ならできるからどんな世界でも問題ないよ」

 

 気を取り直した青年はそう言ってくるが、あいにくまだ決まっていない。どうしたものか

 

「うーん、まだ決まっていないのなら、生きたい場所を僕が君の深層心理を検索して探ってあげようか?」

 

ーできるの?

 

「うん、言ったじゃないか僕はある程度は何でもできるって、今から魔法でピーっとすれば君が望んでいる世界がちょちょいのチョイで分かるよ」

 

 魔法って便利だなオイ。それはともかく案外そうしてくれた方が良いかもしれない。最もここでこの青年と一緒にぐだぐだと話しながら悩むのもまた楽しそうではあるのだが…

 

「ほいっと詮索詮索。うーんっと あ、でたよ。君が逝ってみたい場所」

 

ーんん?何か不穏な気配が

 

「えっとなになに『ありふれた職業で世界最強』と言う世界だって。これ僕読んだことあるよ。最弱(コミュ障ボッチ)だった主人公が最強(DQN)になる話だったね」

 

 何やら隠すような皮肉が聞こえる。やっぱりこいつ性格悪いな。しかしありふれの世界か、確かにキャラに思うところはある物の何だかんだで好きな小説だ。まさかこの世界に行くことになるとは思わなかったが…

 

「なんだかんだでスタンダードな設定の世界だからね。君にとっては受け入れやすいんじゃないのかな」

 

ーだといいけど、それよりこの世界だったら自分はどうなるんだ。どんな設定になってしまうんだ?

 

「まぁ主人公南雲ハジメ君のクラスメイトになるだろうね。 結構面倒そうだけど君なら上手いこと立ち回れるんじゃないかな」

 

ーそうだと良いけどな。まぁそれは置いといて、あの世界はラスボスが面倒だなー

 

「自分が神様だと思っちゃってる系の可哀想な奴だからねー普通過ぎて魅力が一欠けらもないから僕は好きじゃない」

 

 できれば関わり合いになりたくないそんな考えが頭をめぐるがそんな自分を見越してか青年は明るく笑う

 

「そんな話は後でたっぷりと話し合おうよ、君の主観も聞いてみたいしさ。それよりさぁ次の話に進もうじゃないか。あの世界に行くと分かった君はどんなチート能力を…いや、違うね。君はどんな事を僕に願うんだい?何でもできて何でもかなえてあげる存在を前にして君は一体何を望むのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕に教えてよ、君の奥底に秘めた願い(欲望)を」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…様。…柏木様」

 

 綺麗な声がする。聞いたことのない声なのに何故かとても安心する。しかし先ほどの夢が薄れて行ってしまう。何かとても大切なことを話していたような気がするんだ、起こさないでほしい。もっと言うのなら頭が覚醒するまで近寄らないでほしい、キレそうになるから。

 

「うーん起きませんね。本当に朝目覚めが悪いんですね。…あんまりしたくないけど鳩尾でも殴れば起きるかな」

 

「起きた!今すぐ起きたよ!」

 

 急いでガバリと飛び上がり隣を見れば、拳を握り絞めているているアリスさんがいた。

 

「なんで人を起こすのに拳を使おうとするんですか!?」

 

「起きない方が悪いのです。それにいつまでも寝ていますと遅刻しますよ」

 

 遅刻?はて一体何のことだろうか

 

「はぁ…今日から早速、訓練と座学が始まるんですよ。初日で遅刻するのは流石に不味いです」

 

 言われてみれば、昨日の晩餐会でそんな説明をしていたような気がする

 

「あーそうだったんですか。わざわざありがとうございます」

 

「いえいえ、それでは着替えたらお呼びください。」

 

 そういうとアリスさんは一礼し、部屋から出ていった。その後ろ姿を見送りさて着替え着替えと考えているところでふと気づいた。

 

「あれ?なんであの人俺の部屋に入ってこれたの?」

 

 確か戸締りはしっかりとしておいたはずだが… もしかして合いカギでも持っていたのだろうか?

 

「…まぁいいか」

 

…あんまり考えるのはよそう。そういう事にした

 

 

 

 

 さっさと身支度を整え、隣の部屋の南雲と合流し食堂へと向かう。南雲は意外と顔色が良かった。何だかんだで疲れていたんだろう。眠れるときにはちゃんと寝ないとな!

 

 食堂に着くと大体のクラスメイトがそろっていた。やっぱりと言うべきか天之河達はきちっとそろっており後は檜山達だった。することもないので隣でニヤついていた清水と雑談でも興じる。

 

「清水…お前寝ていないのかよ、目の隈が凄いぞ?」

 

「へっへへ 異世界だぞ?寝ている暇なんてあるもんか」

 

 案の定と言うべきか興奮して眠れなかったらしい。隈が凄いのに目はやたらとギラついている。妄想逞しく色々と考えるのはいいんだけどその妄想果たしてそう上手く行くのだろうか。

 

 檜山達がぞろぞろとやってきて朝食が運ばれてくる。献立はふわふわな白パンとかこれまた色とりどりの野菜サラダとか…よく言えば王道、悪く言えば想像通りの朝食だった。

 

「ウメェ、ウメェ」

 

 何だかんだでお腹は空いているので遠慮なくもらい、胃袋を満たす。皆の方はと言うと…少し食欲無さそうなのがちらほらいる。例えば八重樫とか。サラダの野菜をフォークでチクリと刺すのに口までもっていかない。少し思い詰めているように感じるのは気のせいか?

 

「…夢じゃなかった。そう思っているのかもね」

 

 南雲の言葉で食欲のない理由をある程度察してしまう。朝目を覚ませば、いつもの部屋で変な夢を見ていたと、そうなってるはずが実際は見慣れない部屋で、いやが応にも異世界であることを認識してしまったのだろう。

 

 慣れない場所で慣れない事をしなければいけない。当然のように傍にいた家族も居ないのだ。いやが応にもいつもの日常は遠くに行ってしまった事を感じてしまうのだ。

 

 普通に日常を謳歌していた人にとっては何よりきついことなのだろう。

 

「もがぁ?はひわぎくわへねぇの?」

 

「はぁ…」

 

 隣で美味しそうに朝食を食べている清水のように気を楽に過ごせることを願うばかりである俺だったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だりぃ」

 

「いきなり!?まだ何もしていないよ」

 

「オイオイ訓練だぞ。絶対体を酷使するって。あ~部屋でごろごろしていたい」

 

 現在俺達朝食を終え訓練所で適当に並んでこの国の騎士団長が来るのを待っていた。正直に言えばサボりたいのが本音だが流石にやらかすわけにもいかない。せいぜいが愚痴を言うぐらいだ。

 

「さて、皆待たせたな。改めて自己紹介をしよう。俺の名はメルド・ロギンス。このハイリヒ王国騎士団の団長をやっている。ああ、団長をしているからと言って別にかしこまる必要はないぞ。気楽に接してくれ」

 

 俺たちの前に出てきたのは恐らく30代前半ぐらいの豪快なおっさんだった。顔にあちこちにある傷跡が歴戦の勇士を連想させて非常にカッコいい。

 

「柏木君覚えている?昨日の晩餐会にいた人だよ」

 

「あー確かにいたなぁ」

 

 確か晩餐会で説明をしていた人だ。見れば周りにはほかに印象に残っていた二人はいない。今日は非番なのだろうか?そんな事を南雲と話していると騎士の人から銀色のプレートが渡された。見ればほかのクラスメイトも渡されている。

 

「よし、全員に配り終わったな? このプレートは、ステータスプレートと呼ばれている。文字通り、自分の客観的なステータスを数値化して示してくれるものだ。最も信頼のある身分証明書でもある。これがあれば迷子になっても平気だからな、失くすなよ?」

 

「ステータスねぇ。ついに人は数字で測れる時代になったのか」

 

「異世界ファンタジーあるあるだね」

 

 『ステータス』と言う言葉が出た途端いきなりチープな感じがしたのは気のせいだろうか。ゲームとかならまだしも現実でお前のステータスは何々だと言われてしまうと興ざめしてしまうのだが…。これを作った奴誰だよ?人を数字で測んなよ。

 

「プレートの一面に魔法陣が刻まれているだろう。そこに、一緒に渡した針で指に傷を作って魔法陣に血を一滴垂らしてくれ。それで所持者が登録される。 “ステータスオープン”と言えば表に自分のステータスが表示されるはずだ。ああ、原理とか聞くなよ? そんなもん知らないからな。神代のアーティファクトの類だ」

 

 原理を知らないのに使うのかぁ(呆れ)割と適当と言うか…この人達妙な所で抜けていない?兎も角一緒に渡された針をじろじろと見つめる。…殺菌はされているのだろうか?消耗品だよな?使いまわしなんてされていないよな?

 

「血をたらすって…なんかDNA鑑定見たい」

 

「血が証明書になるってか?それはまぁいいとして何でステータスオープンってわざわざ言わなきゃいけないんだよ。滅茶苦茶恥ずかしいな」

 

「同じく」

 

 俺達が話している横ではメルド団長ががアーティファクトの説明をしていた。アーティファクトは魔道具らしく、かなり貴重品らしい。しかしこのステータスプレートは複製するアーティファクトがあるため一般市民にも普及しているらしい。なんじゃそりゃ、希少価値の意味は?

 

 ともかく説明を聞きながらも針を持つ。ちなみにどうでもいい情報だが指先には神経が集まっており痛みにはかなり敏感らしい、つまりわざわざ指を怪我するのはかなりいやのなので、物凄く顔をしかめながら腹を決めて指をさす。

 

プスッ

 

「あひん」

 

「?」

 

「何でもない」

 

 変な声を出しながらも出てきた血を魔法陣に擦りつけると魔法陣が翠色に輝きステータスプレートに文字が出てきた。

 

「名前と性別、年齢って必要なのか?って身分証明書だったなこれ。ともかく天職とステータスはっと」

 

 出てきたステータスと天職、技能を確認する。天職には『調合師』と書かれており技能には『言語理解』『調合』と書かれてあった。

 

(調合師…生産職か。何つーか意外と言えば意外な職業)

 

 後ステータスは全てが10だった。綺麗に統一されたように10だった。……もしかして低いのかなコレ!?

 表示されているステータスにあたふたしているとメルド団長がステータスの説明をする

 

「ステータスは日々の鍛錬で当然上昇するし、魔法や魔法具で上昇させることもできる。また、魔力の高い者は自然と他のステータスも高くなる。詳しいことはわかっていないが、魔力が身体のスペックを無意識に補助しているのではないかと考えられている。それと、後で、お前等用に装備を選んでもらうから楽しみにしておけ。何せ救国の勇者御一行だからな。国の宝物庫大解放だぞ!」

 

 何が国宝級だよ!気になるけどさっさと数字について教えてくれよ!俺これじゃあ糞雑魚ナメクジじゃねえか!?

 

「次に“天職”ってのがあるだろう? それは言うなれば“才能”だ。末尾にある“技能”と連動していて、その天職の領分においては無類の才能を発揮する。天職持ちは少ない。戦闘系天職と非戦系天職に分類されるんだが、あー…戦闘系は千人に一人、確かものによっちゃあ万人に一人の割合だ。非戦系も少ないと言えば少ないが……百人に一人はいるな。十人に一人という珍しくないものも結構ある。生産職は確か持っている奴が多いんだったかな」

 

 千人に一人とか百人に一人。トータスの総人口がよくわからん以上果たしてそれがどれほどの希少なのかどうかは分からんのだけど、重要なのはそこじゃない。

 

(メルド団長…思いっきり目が泳いでいたな!?)

 

 説明があまりにもおおざっぱすぎる! なんか台本でも読んでいるかのような棒読み感と適当さ加減。…もしかしてあれか?お前たちの天職は希少だから喜んでいいぞーみたいなことを何とかして言おうとしたのか?…嬉しくねぇな。 

 

「後は……各ステータスは見たままだ。大体レベル1の平均は10くらいだな。まぁ、お前達ならその数倍から数十倍は高いだろうがな。 あ、ステータスプレートの内容は報告してくれ。訓練内容の参考にしなきゃならんからな」

 

 なるほどなるほど。つまりこれは本当に見た目通りの俺はこの世界の住人と同じ平均能力って訳ですな! 先に報告に行った天之河のステータスは……オール100だった。…この差は一体?

 

 大きな溜息を吐き周りをきょろきょろと見回すと丁度同じようにしていた南雲とバッチリ目が合う。

 

「南雲…お前どうだった?」

「柏木君こそどうだったの?」

「いやいやお前から言ってくれよ。俺はちょっと自信ないかなぁ~」

「いやいやそっちこそ言ってくれないかな。ほら僕見ての通りステータスはそんなに良くなくてさー」

「いやいやいやそちらこそ先にどうぞ」

「いやいやいやいやそっちこそお先に」

 

 南雲と一緒にダチョウ倶楽部の様な事をしていると遂に俺と南雲の番になってしまった。どうしようもないので意を決してステータスプレートをメルド団長に渡す。

 

「うん?…コレは…?」

 

 ほかの皆のステータスに真剣に頷いていた顔だったのがどんどん神妙そうな顔になっていく。やっぱり南雲のステータスも低い様だ。そういうのやめてくれませんか?めっちゃ傷つくんですけど!

 

「…ふむ。錬成師というのは、まぁ、言ってみれば鍛治職のことだ。鍛冶するときに便利ときく。内にもお抱えの錬成師たちはみんな天職を持っているな」

 

「は、はぁ」

 

 当たり前の事を言われても南雲は嬉しくなかったようで生返事し返せない。そのままメルド団長からステータスプレートを受け取るととぼとぼと気落ちした様に帰ってきた。それを見た檜山は、とてもニヤニヤしている。

 

「次は…」

 

「あー俺ですね」

 

 南雲と同じようにステータスプレートを渡すと、眉をあげやはり神妙そうな顔をするメルド団長。なんスカその顔。雑魚がまた一人増えたって顔ですかねぇ?

 

「生産職はこれで二人。他の者が戦闘職の中たった二人だけ、か。神は一体何を考えて」

 

「あのーメルドさん?」  

 

「む。おっとすまん。調合師と言うのは薬を作るのを生業としている天職だな。錬成師と同じように治療院にも同じような者達はいる」

 

 つまり希少性は無いってことなんですね。分かってはいた事だけどがっくり来るのは仕方ない事だ。異世界召喚なら自分で無双をしてみたくもある。その願いがかなえられなくなった訳だ。

 

 少しだけ重い足取りで元の場所に戻ればそこには最高の笑みを浮かべた檜山が居た。後ほかの取り巻き三人も。

 

「おいおい、見たぞ~お前と南雲、めちゃくちゃ低い…ってマジで雑魚ステータスじゃねぇか!? ってうっわ低すぎ!?お前らどんだけやる気ねぇの!?」

 

「あれ~なんで南雲と柏木だけこんなに低いのかなぁ? 変だよねぇ~」

 

「そんな雑魚ステータスで戦えんの? え?流石に足手まとい確実じゃね?…留守番していたほうが良くない?」

 

 にやにやと笑っていた檜山だったが改めて俺と南雲のステータスプレートを見て驚いている。斎藤は不思議そうに首を傾げ近藤に至っては至極正論を言ってる。失礼だが意外と常識人なメンバーだった。

 

 そんな中、中野は何やら考えていたようで団長に向かって質問をしていた。

 

「団長さん、質問がある」

 

「なんだ」

 

「見ての通り南雲と柏木はステータスが低いしオマケに生産職だ。あんた達トータスの一般人と同じ数値らしいが…それでも戦争に参加しなければいけないのか?」

 

 毅然とした言葉で団長に物申すその姿はちょっとカッコイイ。…こういうことを言っては何だがそう言うセリフは天之河が言うべき言葉じゃないか?当のご本人(勇者様)は自分のステータスプレート見て頬を赤くさせフルフル震えているが。

 

「戦争の参加についてだが…どうだろうな。生産職を前線に出さなければいけないという話なんて俺は聞いたことは無いな」

 

「という事は…僕と柏木君は訓練から除外される?」

   

 南雲の期待のこもった目が団長さんの次の言葉を待つ。確かに生産職で低ステータスなら訓練をする道義は無い。だが次の言葉で南雲はがっくりと肩を落とした。

 

「いいや、訓練には参加してもらう。と言うよりそんな甘い話は無い。…酷なことを言うようで悪いが今のお前たちは余りにも危機感が無さ過ぎる。少し治安の悪い所に行けば直ぐにカモにされてしまうだろう。戦えるまでとは言わんが自分の身は自分で守れるまでにはお前たち二人も訓練に参加してもら事になる」

 

 …確かにその話は理に適っている。言っては何だが俺も南雲も喧嘩ができる人間ではない。そんな俺達がホイホイと薄暗い路地裏に行ってしまえば…ケツの毛まで毟られるな!確実に!

 

「でもよぉ コイツら完璧に足手まといなのは変わらねぇだろ?こいつらに合わせて訓練するってのは意味ないんじゃねぇのか?」

 

 檜山の呆れた言葉にふむと思う俺。南雲は少しばかりムッとしているようだが、能力の低い人間に合わせて訓練をするのは確実に非効率だ。

 檜山達の能力に合わせた訓練では俺達はついて行くのがやっとになり、逆になってしまうと檜山達では物足りない。戦力は均一にしないといけませんなぁってことだ。

 

「それについては、生産職二人には専用の教官を付けさせてもらう。おいニート!どこにいる!」

 

「団長!ニートはまた部屋でサボっています!」

 

「そうか!ならアレン!俺の名を使ってあいつを引きずり出してこい!」

 

「了解!」

 

 どうやら俺と南雲には専用の教官をつけてもら事になったようだ。嬉しいような嫌な予感がするような…しかし名前がニートって…

 

 そんなこんなをしていると檜山が小さな声でブツブツと文句を言っていた。聞こえる言葉からして俺たちが訓練や戦争に参加するのが嫌なのだろう。 

 

「ッチ 何でこの雑魚にわざわざ… 大人しく城で引き籠って居りゃいいのに」

 

「…もしかして檜山君、僕達を心配してくれている?」

 

「ああ”!?」

 

 低いドスの利いた声で南雲を威嚇するが悲しいかな。何か今の檜山は只のツンデレにしか見えない。なーぜだ?答えは簡単南雲がニヤリと笑って檜山の事をからかっているからだ。コイツ肝が結構座っているな、全身肝でもなってんの?

 ともあれ、流石に南雲に詰めかかるのはマズい。そそくさと二人の間に身を滑り込ませる俺。

 

「まぁまぁ檜山落ち着け。どうどう」

 

「俺は馬か! つか柏木何でお前みたいな雑魚が調子に乗って」

 

「まぁ聞けよ檜山。ここはひとつ俺とお前、双方得になる商談をしないか?」

 

「は?」

 

 俺の提案にポカンとする檜山。いきなりの言葉で嘘を突かれた瞬間を狙い交渉を開始する。俺が生産職とわかってからすぐに浮かんだことがあるのだ。 

 

「俺の天職は知ってるか?」

 

「…調合師」

 

「そうだ。薬を作る地味な職業だ」

 

「それがどうしたってんだ」

 

「焦んなよ…ほら耳を貸せ」

 

 取りあえず事の次第を見ている南雲達に聞こえない様に口元を檜山の耳元に近づける。…ここでフッと息を吹いたらどうなるんだろ?

 

「調合…つまり薬だ。ならアレができる」

 

「?」

 

「BI☆YA☆KU」  

 

「……っ!?!?!?!??」

 

 すごい勢いで後ずさり俺を目が飛び出さん限りで見てくる檜山。興奮しているのか顔は紅潮し汗をタラりと掻いている。隠せずに視線がチラリチラリとある女子生徒(白崎香織)の方に行ってしまうのはご愛嬌といった所か。

 

 俺が檜山の交渉の材料として離したのは媚薬だった。エロ同人やゲームを嗜んだ紳士諸君ならすぐに気づくと思うが、この世界はファンタジーなのだ。ならそう言う薬があってもおかしくはない。寧ろ合ってほしい。

 

 調合師ならもしかしてだが媚薬を生産出来るかもしれないのだ。可能性はゼロではない。 

 

「まだできると決まったわけじゃない。だができたらお前に提供しよう。代わりにお前は俺と南雲の事を守ってもらいたい」

 

「……それがお前と俺が得になるって話か」

 

「そういう事。最も上手く行くかどうかは保証が一つもないけど、面白い話だろ」

 

 寄生型プレイヤーと言うと聞こえが悪くなるが要はそんな感じだ。俺は薬を提供し、檜山は俺と南雲の身を護る。winwinの話だ。 

 

「チッわかった。その話乗った」

 

 意外な事と言ったら失礼だが檜山はあっさりこの話に乗ってくれた。流石に媚薬でもないと無理だと思ったのか、それとも檜山がチョロインなだけだったのか…嫌そうな顔を浮かべるものの頬が赤くなっているあたり後者だな。間違いない!お前なろう小説のヒロイン並みにチョロイな!?

 

「まいどあり。これからよろしくな檜山」

 

 こうして俺は戦力を手に入れ、檜山は僅かな可能性を手に入れたという事になったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(まぁ最も、その媚薬があのストーカーに効く可能性が一欠けらもないってのが話のオチになるんだが…言わないでおこう)

 

 

 

 

 

 

 




一言メモ

願い   神様転生でよくある奴。人によって望むものは様々(でも皆似たり寄ったりのような気がする) 

ステータス この物語では意味のない設定。数字で人は測れません

媚薬  エロ方面で引っ張りだこの頼りになる奴。飲ませるとか塗るとか想像捗るね!
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