ありふれたクラスは世界最凶!【完結】   作:灰色の空

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秘密の追及、魔人解放

 

 

 

 

「貴方はいったい何者なんですか?」

 

 対面する銀糸の髪と翠色の目を持つ女は俺のその一言に限りなく嬉しそうに微笑んだ。

 

 

 

 場所は解放者のアジトであるオルクス迷宮最深部。住居にある暖炉の間でアリスにそう問いかけていたのだ。

 

 事の八端は先日の清水との会話だ。あの会話の内容で転生について清水と語り合ったときふとアリスの事を思い返したのだ。

 

「それは、いったいどいう意味ですか?」

 

 嬉しそうに微笑みながら質問を質問で返す。やっぱり正直には話してくれないなと思いつつ否定しないところが実にらしい、

 

「そのままの意味ですよ。俺に教えてくれた解放者の末裔であり予言者『アリス・アニマ・リエーブル』あれって本当の事じゃないんでしょ」

 

「おや?出鱈目を言った覚えはありませんが、どうしてそう思ったんですか」

 

 ニマニマと笑いながら俺の言葉を持つその笑みは、言うなれば推理小説で先に謎を把握しており、知らない人間の答えを試すようなそんな悪趣味さを感じる。…それがいかに面白いのか否定できない自分が言うのもなんだけどね

 

「ここから話すのは俺が全部思った事だから間違いかもしれない、でも気になったことはいくつかあるんだ」

 

「…その予防線を張るのは止めましょうよ。ここには私しかいないんですから」

 

 うるせぇ、気になってることを蒸し返すんじゃねぇやい。だから間違っていても問題ないよーみたいな生暖かい視線は止めろぉ!

 

「まず一つ。アリスさんがこの世界について話すとき、どこか他人事のように話していた。まるで自分は関係ないって話し方は何か違和感があった」

 

「そうでしたか?人間世界について話すとき割と適当になりませんか?と言うよりそんな話していましたっけ?」

 

 そうかもしれないが取りあえず無視!

 

「それでふと思った。そもそもアンタはこの世界の住人なのかなって」

 

「話が飛躍しすぎていませんか?過程を含めて話すのが話の肝ってものですよ?」

 

「そもそもの話、アンタは俺に対してのみかなり協力的だった。イレギュラーだから?ちょっと違う。付き合ってまだ短いけどアンタは他人に対しては割とおおざっぱな人間だ、だから俺に対してのみ理由があると思った」

 

「んー貴方だけを贔屓しているのは合ってますけどそこまで他の人にはおざなりだったかなぁ?一応八重樫ちゃんには優しくしていたけど」

 

 そうなのか?初耳だ。でもまぁその理由は見ていられなくなったとかそんな理由だろうよ。

 

「んで俺にだけやけに協力的だったことについてだ」

 

「惚れているとかそんな理由かもしれないですよー」

 

 嘘こけ、そんな理由があってたまるかっての。第一そんな理由で贔屓されたら虫唾が走るわ。まぁいいやここからが本題だ

 

「アンタ…もしかして俺の関係者か?」

 

「…へぇ」

 

 それまで茶化すだけのアリスがニヤリと笑った。笑いながら話の続きを促しているので呼吸を一つ置いて続ける。…間違っていたら只の痛い奴だなぁと思いつつ

 

「実はこの世界に召喚される前にちょっとした夢を見たんだ。白昼夢って呼べるかどうかわからないけどそんな変な夢を」

 

「夢、ですか。それはどんな?」

 

「よくあるなろうっぽい奴さ。転生前に神様みたいなやつから一体何を望むのかって奴だ」

 

 この頃めっきり見なくなったあの夢。普通はおぼろげで直ぐに忘れるような夢が今なら鮮明に思い出せる

 

「それはそれはありふれた夢ですね。それにしても望み…ですか」

 

「その夢で出会った奴はどんな事でも願いをかなえてくれるって話してさ。それで…俺はある事を願ったはずだ」

 

 実際その部分はあやふやである。しかし俺が何を願うのか自分自身で考えるとなんとなく想像できる。何せ自分の事だしな

 

「ある事ですか?それは一体」

 

「話は変わるけどアリス。アンタって綺麗な髪の色をしているな」

 

 話を唐突に変えた俺に一瞬パチクリと目をさせるが、そのまま追及することは無く自身の髪を撫でる。

 

「ええ、自画自賛ですけど綺麗な銀色ですよね。ケアを怠ったりストレスがたまるとくすんで鉛のような色になってしまいますけど」

 

「…綺麗な目の色をしているよね。緑色の宝石みたいな」

 

「自慢の目です。本当は赤色も似合うかなとは思ったんですけど私はこの翠色が好きなんですよ。…たまに濁りますけどねー」

 

 やっぱりというか自分のトレードマークのような髪色と目の色はかなりの愛着を持っているらしい。

 

「それで、私のこの自慢のトレードマークに一体何が」

 

「俺、ゲームで主人公をキャラクリエイトするときにいつもその色で固定しているんだ」

 

 女性限定という事があるがキャラクリエイトするときはいつもその色にする。髪は銀色で目は翠色。そこだけはなぜか譲れないものがあった。

 

「へぇ私と同じ色ですか。奇遇ですね」

 

「ああ、奇遇だな。ちなみに名前もアリスだ」

 

「…どうしてその名前を付けるんですか」

 

 まるで分り切っていることを確認するような、答案用紙に書かれた答えを確認するようなそんな気分になってくる

 

「俺に代わって異世界を旅する主人公。不思議な世界を歩くその姿をもってアリスと呼ぶんだ」

 

 勿論元ネタは不思議の国のアリスだ。…理想の少女という意味もあるが。  

 

「俺は異世界に行けない、だけどキャラクリエイトした主人公は俺の代わりに不思議な世界を体験する。俺の代わり、ある意味アリスは俺の分身そのものだ」

 

 主人公=プレイヤーとは定義しないけど、それでも誰よりも一番画面に映り動かしそして愛着を持つ存在だ。…誰よりも強く愛着と情が湧く、そんな存在だ。何でも出来るのなら見守りたいとさえ思うほどの。

 

「話を戻そう、先ほどの事だが俺の願いがもし叶うのなら『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()』…自分はきっとそんな事を願うだろう」

 

自分で作り上げた主人公が異世界で何をするのか俺は大いに興味がある。プレイヤーの手から放たれた主人公は何をするのか気になって仕方がないのだ。

 

 混沌無形な出鱈目すぎるアリスの正体への考察。だけど考えれば考えるほどそうなのではないかという思いがある。

 

「アリス、お前は、お前の正体は…俺の主人公なのか?」

 

 俺にだけ贔屓をする俺の理想の少女。それが彼女の正体かと思ったのだ。

 

 

「………ふ」

 

 目の前の少女は暫く黙っていたが不意に口角を上げた。その笑みに軽蔑もない、呆れもない。ただ笑った。

 

 

「そうですね、70点って所ですかね」

 

「70点?」

 

「良い所を突いてはいるけど合格を上げれるような点数ではない、追試はしませんがもうひと声欲しいと言った所」

 

 つまり大まかには間違っていない。そう言う事だろうか。

 

「正解でもないんですが。うーん、教えてあげてもいいんですが流石にまだ早いというのが現状ですかね」

 

 ニヤニヤと笑うアリスは、そう言ってコップにあるお茶を一口飲んで微笑んだ。

 

「まだ早いってのはいつかは教えてくれるのか」

 

「自分で解明して欲しいのが本音ですけどね。…そうですねもう少し時間がたってから答え合わせをしましょうか」

 

「俺としてはさっさと教えて欲しいところ何だけど」

 

「まぁ焦らないでくださいよ。この話は私と貴方だけの話なんですから。それにそんな事をしている暇なんてないはずですよ。近々大きなイベントが始まるんですから」

 

「大きなイベント?それって……」

 

「橋の一件が終りベヒモス退治、皇帝登場が終ったら魔人族との遭遇。まさかこれで終わりだなんてそんなはずありませんよねぇ」

 

 何が起きるか知っている者特有の笑みを浮かべる。その笑みを見ると大きなため息が出てしまった。

 

「……はぁ本当に何か変な事に巻き込まれてばっかりだな」

 

「仕方ありませんよ。そう言う運命ですし、そう望まれているんですから」

 

 やれやれと肩をすくめれば俺と全く同じ動作をするアリス。ここら辺は本当に俺とよく似ている…嫌になるほどに

 

「やれやれ、それじゃ手のひらの上で踊る道化は観客を喜ばせる為に頑張るとしますか」

 

 一応一区切りの話はついた。気になる事や確かめたいことはまだあるが、それは後にだってできる事だ。

 

 

 踊る阿呆を見る誰かの為に俺は、以前から考えていたことを実行するための最終チェックをするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…そろそろばれそうですよね、コレ」

 

 彼が退出した後、そう私は一人誰もいない空間で呟いた。勿論答える人はいなくて只の独り言ではあるのだがそう言わずにはいられなかった。

 

「ばれたらばれたで別に良いんですが…うーん」

 

 ばれた所でマズいなんてことは一つも無い。しかし私の正体に関しては出来れば意識を割いてほしくないのが本音ではある。

 

「そろそろ魔人族も準備できているって聞いたし、答え合わせはそれが終ってからかな」

 

 正直に言えば私については舞台裏の話だ、本筋に関係のない裏の話。そんな事よりもそろそろ魔人族はもう間もなく王都に攻めてくるだろう。彼にはそっちに意識を割いて居て欲しいのだ。

 

「せめて避難経路位は作ってあげるべきですかね?でも南雲君が何やらしているようですし私が手を加えるのも…興ざめですねぇアルブヘイトさん?」

 

 此処にはいない共犯者に語るもののどうせ答えは返ってこない、こちらに関しては私に一任されているのだ。どうにでもなるし何もしないでいるのもありだ。

 

「しっかし主人公ですかぁ~何ともまぁイイとこをついていますねぇ~」

 

 彼のあの顔を思い返す。私が彼にとっての主人公だと告げた彼の顔を。本当にイイ線をついているものだ。だが答えはもうひとひねりあるってのがミソなのだ。

 

「でもちょっと違うんですよねー。ふふっ気が付いたらどんな顔をするのかなっ」

 

 誰もいない空間で私はニヤニヤと笑う。気分はまるで監督の様だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アンタ一体何のつもりだい?」

 

「見ての通りっすよ」

 

 カトレアさんに呆れと困惑が入り混じった視線を向けられるも俺としては見ての桃李としか言いようがない。

 

 時間帯は深夜、俺とカトレアさんは王都の外…眼前に広がる草原を見ながら会話していたのだ。穏やかな光を照らし出す満月がとてもよく映えるそんな絶景だった。

 

「人が寝ていたらいきなり叩き起こして、ついて来いっていうからついて行けばここは王都の外じゃないか」

 

「あはは、いきなりすいませんね。どうしてもこの時間帯が人目につかないので」

 

 カトレアさんに何も言わず起こしたのは謝るしかないが、その困惑っぷりに関しては本当に申し訳ない。

 

 

「カトレアさん、貴方をここから逃がします」

 

 俺がしているのはなんてことは無い、カトレアさんの脱走の手引きをしていたのだ。…いや、この場合は俺が解放したというのが適切か?どちらにしろやってることは変わりはないがな!

 

「……もう一度聞くけどアンタ本当に正気かい?」   

 

「ええ、正気も正気。大マジですよ」

 

 考えに考え抜いた結果俺は独断でカトレアさんを解放することを決意したのだ。折角捕まえた魔人族の解放、それがどんな事態を引き起こすかメリットデメリット両方を考えだした結論だったのだ。

 

「そりゃもちろんアホな事をやってるとは思いますよ?でもあなたは何時までもここに居てはいけない、そう判断したんです」

 

「……アンタが何を考えているのかは知らないけどアタシとしては願ったりかなったり何だけどねぇ」

 

 脱出を促させようとしているのだが、意外にも?カトレアさんは直ぐに抜け出そうとはしなかった。一応対策はしていたがこの調子なら何もしなくてもよさそうである、一安心って奴だ。

 

「逃げないんですか?今ならだれも止める事は無いっすよ」

 

「勿論逃げるさ。でもその場合アンタの立場はどうなるんだい?」

 

「それについては気にしないでください。どうにでもできるんで」

 

 ひらひらと手を振り気にしないでほしいとアピール。実際面倒な事にはなるだろうがそれも織り込み積みだしどうにだってなってしまうのだ。

 

「…まったく、一体何を考えているのやら」

 

「何にもないっすよ?只の善意っす」

 

「はっそう言うのはもっと心を込めて言うんだよ坊や」

 

「これは手厳しい」

 

 ニヤリと笑ったカトレアさんに同じく不敵な笑みを浮かべる。流石に下心があるのはばれているか、尤もそれを追及されることはなさそうだが。

 

「っと、忘れるところだった。これ、持って行ってください。無くても大丈夫だとは思ったけど一応」

 

 流石に無手で見送るのはアレなので、背負っていたリュックを手渡す。軍人であるカトレアさんには不必要かもしれないがそれでも何も持たずに行くよりはよほどましだろう。

 

「なんだいこれ?」

 

「旅に必要な物一式です。…素人が選んだものなので役に立つかどうかは分かりませんが」

 

 カトレアさんに渡した物の中身は一応食料品や着替え、短剣やお金などが入っている。魔人国家ガーランドまでどれだけの距離があるかはわからないがこれで凌いでくれればうれしい

 

「へぇ、コレは中々良い気付かいって奴じゃないか。オマケに質も良い」

 

 短剣を手に取り刃を確認するカトレアさん。月の光に反射した刀身は淡く鋭い光を放った。

 

「うちの友人の一品モノです。そこんじょそこらの物よりかは良い品だと思いますよ」

 

「あの錬成師の坊やのかい、なるほど確かにそこら辺のより良い品だね」

 

 一通り納得し短剣を懐にしまうカトレアさん。…あれ?よく考えたら魔法があるから必要なかったんじゃね?まぁいいか。

 

「後お金も入っていますので遠慮なく使ってください。余ったら結婚資金にでもしてください」

 

 お金は俺のポケットマネーから出したものだ。どうせ持ってても使う機会が無いお金なら必要な人に渡したほうが建設的だ。結婚やらなんやらでもお金は必要だっていうし。

 

「…その気持ちは嬉しいんだけどウチの国じゃこの金使えないよ?」

 

「あ」

 

「はぁ、それでアンタいったい何を企んでいるんだい?」

 

 固まった俺に溜息一つ白兎話を戻してくれたカトレアさん。一応俺も佇まいを正す。こればっかりは本当のことを話してくれないとね

 

「色々と下心はありますが…まぁ要はカトレアさんが幸せになってほしいって事ですよ」

 

「アタシが?」

 

「そうっす。魔人族がどういう人たちは召喚された俺達はさっぱりわからなかったけど実際話して解りました。俺たち何も変わらない普通の人だったんだって」

 

 イシュタルが何やら魔人族はあくどい種族だとかどうたら言ってたが何も変わらないのだ。食事も生活も恋も生き方も何もかも変わらない人たちだとカトレアさんから教えてもらったのだ。

 

「だからカトレアさんには幸せになってほしい。国へ帰って恋人と結婚して幸せになってほしい。そう思ったんですよ」

 

「それはアンタが危険を冒してでもかい?」

 

 これから起こる事についてだろうか、まぁそれは別に大乗だ。だって俺オーヴァードだし。

 

「勿論ですよ。それよりも本当に気を付けてくださいね。必ず故郷に帰るんですよ?恋人を尻に敷かないと駄目っすよ?」

 

「ハイハイ、分かってるさ。まったくもぅ」

 

 苦笑してフードを被り脱走の準備を手早く行っていくカトレアさん。別れの時は近い。

 

「色々と世話になったね」

 

「いえいえ、楽しかったですよ」

 

「そうかい、それじゃもう二度と会う事もないだろうけど、息災でね」

 

「ええ、そちらこそ末永くお幸せに」

 

 別れの挨拶は軽く、尾を引かない様に。おそらくもう二度と出会う事もないだろう。だからこそ別れは気楽にいかなければ。

 

 深夜の草原へ月を目指し歩いて行くカトレアさん。出会って数週間だったがいい人だった。虎穴の中にいたのはまさしく虎児であり俺にこの世界が何なのかを知らせてくれた恩義のある人である、

 

 カトレアさんには何があっても必ず故郷へ帰ってほしい、そして恋人に出会ってほしい。それだけがカトレアさんに対する俺の望みであり願いだ。 

 

「っと忘れていたよ」

 

 って思っていたのに振り返ったカトレアさん。何か忘れものでもあるのかと思ったがニヒルに笑ったその顔からはどうやら違うみたいだ。

 

「アンタ直ぐにこの王都から逃げた方が良いよ」

 

「どうしてっすか?」

 

「流石のアタシでも顔見知りのあんたが居なくなるのは嫌って事さ」

 

 …それはいずれ起こる戦争の事についてだろうか。突然の魔物の忠告に顔を難しくしているとカトレアさんはそれ以上何も言わずに去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 カトレアさんの姿が見えなくなって三十分後、他に誰もいない事を確認してホッと一息吐く。取りあえずは上手く行ったようだ。

 

「ふぃ~流石に緊張したなぁ」

 

「それはこっちのセリフっすよ」

 

「ふぉっ!?」

 

 ほぼ真後ろからの呆れた声に飛び上がる。近くにいるとは知ってはいたがそれにしたって急すぎる!後ろに現れた人に抗議の声を上げるが間違ってはいない筈だ

 

「いきなり現れないでくださいよ!?心臓泊まるかと思ったじゃないですか!」

 

「んな驚かなくても良いじゃないっすか。自分隠れるのは本業なので」

 

 現れたのはニートさんだった。隠れるのが得意だとは教えて貰ってはいたがそれにしたって気配は一つも無かったんだが…まぁいいや

 

「しっかし本当に上手く行くんすか?見てる限りは君の言う通りだったすっけど」

 

「上手く行ってますよ」

 

 自信満々に言う俺に訝しむニートさん。そもそもカトレアさんの解放は俺が騎士団団長メルドさんに頼んだものだった。

 

 

 カトレアさんの解放は恋人と会ってほしいという俺の願いがあるがその他含めて色々とこの戦争を終わらせる計画があるのだ。その為にはどうしてもカトレアさんには故郷に帰ってもらう必要があった。

 

 準備は出来てはいたがだからといって俺の独自の判断では流石にメルドさん達にも迷惑がっかってしまう。それではマズいと思いメルドさん達に相談を持ち掛ける事にしたのだ。

 

『誰も血を流さずに戦争を終わらせたい』

 

 この内容をメルドさん達に伝え尚且つ俺の計画を伝え交渉をした結果、俺の提案は通る事となったのだ。

 メルド団長は非人道的な事に苦い顔をしてホセさんが俺の薬を嗅いで納得していたのは魔人族に対するスタンスの表れだろうか。誰かって汚いやり方で勝ちたくはないもんね。

 

 兎も角それでカトレアさんを解放しても良いという話になり、騎士団は一切の責任を負わないという約束の元カトレアさんを解放する事となった。

 

「俺に危害を加えてこなかった、それで証明できると思いませんんか」

 

 カトレアさんは渡した短剣で俺に危害を加えることだってできたはずで、すぐに逃げる事も出来たはずだ。それなのに、あろう事かこちらの心までしてくれた。俺の作戦がうまく行き過ぎている証拠でもありニートさんも納得せずにはいられない筈だ

 

「………」   

 

 難しい顔をするニートさん。まぁ誰かって内心は複雑だろうよ、捕虜を利用するなんて悪辣な事をするのは。でも仕方ないじゃないか

誰も傷ついて欲しくないって言う事は誰かがあくどい事をしなくちゃいけない事なんだから。

 

「君たちが」

 

「?」

 

「君たちが敵じゃなくてよかった。メルドからの伝言」

 

「…」

 

「あの時の君たちは一体どこに居っちゃんだろうな」

 

 それは芽生えた異能を使ってる俺達の事を言ってるのだろう。確かに普通の錬成や調合とは違う能力になりつつある。オーヴァードとして異常になってるのかも知れない。でもそれもしかたがないだろう?…誰かそうだと言ってほしい。

 

 

「異世界日本っすか。ほんと治安の良い所だったんすね…非人道的な事を平気で提案することが出来るくらいに」

 

「ははっ 皮肉ですかな?…巻き込まれた事への恨みだと思ってくださいよ」

 

 きっと事情を知ったメルドさん達は今後俺の事を友好的に見る事は出来なくなるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 でも別に構わない、だってそれは日本へ持って帰る事の出来ないものだから。

 

 

 

 

 

 




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