ありふれたクラスは世界最凶!【完結】   作:灰色の空

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短いですがサクッと行きます


暴力 土人形

 

 

「うぉぉおお!!」

 

 咆哮と共に目の前にいた四足中の魔物に正拳突きを当てる龍太郎。腰の入ったその一撃は魔物にもろに当たり、その巨体を吹き飛ばした。吹き飛ばされた魔物は抉られたように大穴がありそれが龍太郎の拳と膂力の強力さを物語っていた。

 

「まだまだぁ!」

 

 だが、龍太郎は一々倒した魔物を確認することは無かった。自分の拳が一撃必殺なのを知っているし、何より自身の周り全てが敵と状況だからだ。

 

 

 龍太郎は、準備があると言う永山と別れ、すぐに結界が壊された箇所までやってきたのだ。

 

(こりゃヒデェな…)

 

 現場に急行してまず目の前に映ったのは騎士団と魔物の混戦状態だった。多数の魔物が入り乱れ、一匹を相手する間に何匹もの魔物が王都へと入って来るのだ。結界が壊されたと同時に崩された城壁はもはや意味をなさない。

 

「おい!平気か!?こいつらは俺が引き受ける!」

 

「君は…坂上か!」

 

 すぐに交戦していた騎士の援護に入り、怒声を飛ばす。交戦していた騎士に顔見知りが数名いたのが幸運だった。直ぐに龍太郎を主軸とした陣が結成される。

 

「済まない、君の力をアテにする!」

 

「任せろ!」

 

 返答をしすぐさま、魔物の集団へ突撃する。近くにいた黒い猫のような魔物の尾を掴み有無を言わさず遠心力を利用して近くの亀のような魔物へ叩きつける

 

「ドラッシャッ!」

 

 亀に叩きつけられた猫は叩き潰せたが亀にはダメージはなさそうだった。なので龍太郎は今度は亀を持ち上げまた奥にいるキメラのような魔物に投げつける。

 

「ドッセイ!」

 

 怯んだキメラに今度は飛び蹴りを放つ。自身の体重と脚力を生かした蹴りはキメラとその後ろにいたサイクロプスのような魔物を纏めて瀕死に追い込む。

 

「はは如何した如何したぁ!てんで駄目駄目の雑魚じゃねぇか!」

 

 吠える、吠えてがなり立てる。溢れんばかりの暴力衝動が龍太郎の闘争本能を刺激させていく。燃え上がらんばかりの血がまだ獲物を求める様なそんな錯覚さえ覚えてしまうほどだ。

 

 だからだろうか、慢心が有ったのは否めない

 

「坂上君!避けろ!」

 

「あん?っ!?」

 

 叫び声と同時に吹き飛ばされる体、地面を何度もバウンドし、視界が地面と近くになるのを見ながら何が起きたのを把握した。

 

 単純に魔法を撃たれたのだ。

 

(ははっ…魔物も魔法を撃つって忘れていたなこりゃ)

 

 苦笑するのは自身の迂闊さ。あの一撃でノシたベヒモスだって固有の技能を持っているのだ。それを忘れ接近戦ばっかりを挑んでいた自分の何たる迂闊さか

 

 

「大丈夫か坂上っ!?」

 

「へっへっへ…イイねぇこの痛みってのは。頭がスゥーっとするぜ」

 

「っ!?」

 

 騎士が言葉に詰まったのも無理はない。血だらけになりながらも立ち上がった龍太郎の顔には歓喜の2文字が浮かんでいたからだ。

 

(……狂ってる)

 

 それは獲物を見る狩人の目の様に冷静で、血に酔った狂人の様に暴虐的で、彼が狩られるものではないという事を強く印象付けるものだった。

 

 思わず生唾を飲み込み、無意識な恐怖によって一歩引いてしまう。助けに来てくれた人であり関係のない人々のために戦ってくれる恩人であるはずなのに。

 

「ワリィな騎士さんよぉ…ここら一帯は俺に任せちゃくれねぇだろうか?」

 

「な、何を言ってるんだ君は。あの数を一人では」

 

 気のせいか龍太郎の身体から靄が出ているように見えた。それが強烈な殺気だと気付くのは直ぐだった。

 

「なぁ頼むよぉ。騎士は人を守るっていうんだろ。優先順位を間違えちゃ…なぁ?」

 

『邪魔だ』言外にそう聞こえた。暴れる為には弱者は要らず、この場に必要なのは強者のみ。そんな意思が言外に含まれていたので、仕方なくこの場から退却する事を決断する。

 

「…すまん。後を頼む」

 

「ああ」

 

 その言葉と共にまだ戦っている同僚たちを呼び寄せる。直ぐにその判断が間違ってはいなかったこと知った。

 

 

 

 

 殴る。ただひたすらに目の前の肉を殴る。

 

(あ~~…イイなぁ)

 

 駆ける。足が動く限り獲物を追いつめる

 

(たまんねぇな…暴力ってのは)

 

 掴んで投げる。弾はいくらでも目の前に、無尽蔵に

 

(最っ高な世界だ…殴っても誰も文句を言わないなんて)

 

 嗤う。暴力が推奨される、この世界に

 

(ありがとよ…この場を提供してくれた誰かさん)

 

 感謝する。自身が日頃溜めこんでいた暴力衝動を解き放つ場をくれた誰かに

 

 

 殴って蹴って締めて組んで極めて投げて叩きつけて、それをどれほど繰り返したか。数時間もやってるような気がするし数十分の出来事かもしれない。

 

(まだ減らねぇな)

 

 しかし目の前の魔物はそれでもなお減らなかった。いったいどれほどの戦力が投入されているのか、どれほどの数を揃えているのか。龍太郎にはわからない

 

(まぁいい…俺は戦うだけだ。終わりが来るまで)

 

 それが魔物が尽きるのか自身の命が尽きるのかどちらかは分からない。ただ予感がするのだ、この戦争は今夜中に終わってしまうのだという直感が。

 

 

 ズシンッ

 

 と、そこまで考えた時だった。地面が揺れたような気がした。何度も動き回り跳ね回っているので気のせいかと思ったが、揺れは何度も続き…寧ろ違づいているような気がするのだ

 

「何だ?新手か?」

 

 そう言って後ろ見た時、龍太郎は珍しく一瞬ぎょっとしてしまった。

 

 

「なんだこりゃ…」

 

 そこにいたのは巨人だった。身長二メートル近くある龍太郎が見上げる大きさの土で出来た巨人。それが歩いてきたかと思うと巨体に会わぬほどの身軽さで跳躍してきたのだ。

 

 身構えるがどうにも違和感があった。魔物とは余りにも雰囲気が違いすぎるし何より魔物特有の殺気が無かったからだ。

 

 そんな龍太郎をよそに跳躍した巨人はそのまま龍太郎を軽々と飛び越え、未だ侵入しつつある魔物のいる広場へ降り立つ。

 

 

 グシャァ! 

 

 着地によって何体かの魔物が押しつぶされ地面の染みとなった。巨人はやはり足元の残骸を気にせず、それどころか攻撃してくる魔物にすら注意を払わず堅牢な体を使い崩れた瓦礫を積み合わせて物理的な城壁を作ろうとしていたのだ。

 

 瓦礫の山が大きくなれば大きくなるほど、魔物たちが侵入してくる面積が減ってくる。実に力技でしかし着実に効果のある行動 

 

「お前、まさか永山なのか!?」

 

 巨人の行動を呆然と見ていた龍太郎はハッとしその巨人に問いかける。魔物と敵対している、敵意が全く見られない、オマケに壁を修復するという自分では思いつかない気配り。

 

 準備があるから遅れてくると言ったクラスメイト永山大吾かと思ったのだ。

 

『オイオイ。気付くのが遅すぎるぞ坂上』

 

 声は多少くぐもってはいたがその声は正真正銘の永山だった。驚きと呆れと喜びの混ざった顔を浮かべてしまう龍太郎、なにせ巨人でやって来るなんて思いもしなかったからだ

 

「何だってんだその体は?いつの間にかイメチェンしたのか?」

 

 問いかけながらも体は直ぐに魔物を殲滅する動きへ。周囲の魔物を蹴り殺しながら巨人と背中合わせの構えをとなる。

 

『フッ 野村にやってもらったんだ。俺じゃお前の様に戦えないからな』』

 

 そう言いつつも後ろから聞こえてくるのは魔物がミンチになる音だ。土の装甲を身に着けたことでリーチが伸び、踏み込むための力が増し、防御力が増し、気も大きくなったのだろう。

 

 正に大きいは強い。強いとは大きいと思わせる様な豪快な脳筋戦法だった。

 

(つってもどうやって呼吸してんだ?そもそも見えてんのか?…わかんねぇ魔法ってスゲェな)

 

 とはいえ一体どうやって動いているのかなど気にはなるものの聞かない事にした。どうせ魔法の事を言われても原理なんて理解できないという自分の脳味噌を知ってる方ら。

 

『取りあえずここの魔物を駆逐するぞ坂上』

 

「ああ、分かった。…つっても町の中に入った奴らはどうするんだ?」

 

 この広場にいる魔物を蹴散らすのはたやすいが、町の中に入ってしまった魔物が居る事には変わりはない。そちらはどうするのかと聞けばゴーレムが体を揺らし笑ったような気がした。

 

 

『それについては問題ない。 …まぁアイツは出来る男だ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(やべぇやべぇ!早く作らないと!)

 

 土塊を前に焦っているのは野村新太郎だった。天之河光輝から頼まれたゴーレムづくりの作業をしているのだ。

 

 自分だけの才能であり力、そう思い進めてきたゴーレムがまさか行き成り実地されるとは夢にも思わなかったので心構えができていなかった。

 

「ああくそっ!また崩れた!?」

 

 出来上がったのはまだ数十体。自動で動かすことは出来るがそれではまだ足りない、魔人族の襲撃を受けている今 人手はどんなにあっても足りない筈だ。自分のゴーレムならその人手を解消できるのに焦りのせいでおぼつかない事になっていた。

 

「野村君…」

 

「だ、大丈夫だって!ちょっともたついているだけで、い、今に上手く行くさ!」

 

 そして傍にいる辻に失望されたくないという焦りもまたあった。光輝の突沸的な考えのせいで何故辻がここにいるのか、野村は悪態をつきながらもそれでも失望されたくない一心だった。

 

(クソックソッ!永山に施したのは上手く行ったのに!どうしてこっちは上手く行かないんだ!?)

 

 親友の頼みならなんてことは無かった。親友に対する信頼と己の才能に対する自負があったからだ。だが自分のゴーレムで王国の人を助けるとなると責任の重圧さが段違いだったのだ。

 

 焦りと緊張で冷や汗が額を流れ落ちそうになった時、そっと汗を拭う感触があった。

 

「え…?辻さん?」

 

 辻だった。持っていたハンカチで野村の汗を拭きとりふっと微笑むと野村の手に自分の手を重ね合わせた。

 

「大丈夫だよ野村君。君が出来る人だって私知っているから」

 

 そういって辻は野村の手に魔力を重ね合わせる様にして治癒魔法を唱える。そのせいもあってか自然と野村もまた焦りの感情が薄くなっていく。

 

「私も手伝うよ。何ができるのかはわからないけどきっと二人なら」

 

「あ、ああ。…有難う」

 

 手を重ね合わせゴーレムに魔力を注いでいく。一人では駄目だった、だが二人ならできると野村は辻の暖かい手に触れながらそう思ったのだ。

 

 

「出来た!」

 

 辻のその行為のお陰なのかゴーレムの形は整っていく。両者の魔力でゴーレムは形となったのだ。

 

「良しっ!それじゃお前らに命令する!今ら王都に行って人を助けてくるんだ、余力があるのなら魔物も撃退して来い!」

 

 実は命令に言葉は必要は無かった。だが辻に手伝ってもらったことでテンションが上がった野村は声に出したのだ。

 

「トッチャマ…」

「ダディー…」

「オヤジィ…」

 

「…は?」

 

 だからいきなりゴーレムが喋り出すなんて誰が想像できただろうか。そもそもゴーレムには発声機能を付けた覚えすらないのだ。野村が混乱しぽかんと口を開くのも無理は無かったのだ。

 

「え?何で喋るの?」

 

「あ、あの野村君。これって一体」

 

 動揺する辻の声に振り向けば更なら混乱が野村を襲う。

 

「え?…何で分裂しているの?アメーバ?」

 

 作り出した子供サイズのゴーレムが何故か分裂していき数を増やしていくのだ。一体が二体へ、二体が四体へ、四体が八体へ。徐々に数を増やしてきているのだ。

 

「カッチャマ…」

「マミィ…」

「ハハウエ…」

 

「野村君、これって一体どういう事なの?」

「つ、辻さん何かやったの?」

 

 両者顔を見合わせ出てきた言葉に動揺し冷や汗を流す。ゴーレムを作るとは考えても、ネズミ算式で増えるとは思わなかったのだ。

 

 実はこれには理由があった。野村の土人形製作までは野村の考える通りに製作されていたが、そこで辻の魔力が混じり合ったのだ。

 

 辻の使ったのは治癒魔法の応用。日頃行なっていた、怪我を魔力で補うという魔力行使をしていたのだ。それを野村が作り出したゴーレムに送り出した結果、魔力変質反応が行われ、ゴーレムが擬似人格を持つまでに至ったのだった。

 

「えとえっと…まぁ何でもいいや!お前ら今すぐ城下に行って人を助けに来てくれ!頼む!」

 

「えっと皆、お願い人を安全な場所まで送って。もしくは守ってあげて欲しいの!」 

 

「カッチャマ…トッチャマ…」

「ケッコンシタノカ…オレイガイノヤツト…」

「オヤジィ…オフクロォ」

「マンマ…パッパ…」

 

 何やらうわ言のように呟きあいざわざわと騒ぎ、そのままゾロゾロと部屋から出ていくゴーレムたち。移動している間にまた増えていくのだから

廊下がぎゅうぎゅう詰めになっている。一体外に出た時どれくらいの数のゴーレムが増殖しているのだろうか。

 

「……と、取りあえずゴーレムを作ろう。数があればあるほど役に立つはずだから」

 

「そ、そうだよね。数は力だもんね。…だよね?」

 

 怪奇現象を目にしながらも自分たちの役割を忘れない二人。その後も一体作り出すたびに分裂するという珍現象を起こすゴーレムを見なかった事にし続ける二人であった。 

 

 

 

 




感想…ありますかね?あれば嬉しいのですが
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