ありふれたクラスは世界最凶!【完結】   作:灰色の空

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前回までのあらすじ

何か異世界に召喚されたよ!戦争終わらせないと帰れないんだって!
色々とあったけど皆強くなったよ!何か裏でコソコソしていたみたいだよ!
戦争が始まったよ!敵味方もろとも戦闘不能にしたよ!やったぜ


期間を開けてしまい申し訳ありません。今回から最終章です。風呂敷を畳めるか不安になりつつ始めていきます


最終章
終わり良ければ全て良しなんて話ではないのだ


 

 

 

(何なのだこれは……一体どういう事なのだ!?)

 

 自分は至宝の存在だった。ありとあらゆるものが平伏し、その実全知全能と呼べうる存在だった。

 

 だが、この状況は何なのだろうか

 

「そう困った顔をしないで神サマ。ほらいつもの不遜な態度はどうしたんだい」

 

 にこやかに笑う自分の敵対者。その存在自体があり得ない筈なのに存在してしまっているという矛盾。

 

 思考は混迷を極め対する処方も悉く打ち滅ぼされている。現に今隙だらけのその敵対者に切りかかった神の使徒が音も出さずに光の粒子となっていく。

 

『どうしてだ……何故我に逆らうのだッ!アルヴヘイトよ!』

 

 堪らなくなった神は目の前の敵対者であり腹心であるはずの男に叫ぶことしかできなかった。

 

 

 

 事はほんの数刻前だった。ガラスが割れたような不快な音を立てて突如として神のいる空間にアルヴヘイトが襲撃してきたのだ。

 

「やぁ お邪魔するよ」

 

 困惑する神を気にすることもなく淡々と歩み寄って来るアルヴヘイト。顔はどこまでも穏やかに笑っておりいっそ遊びに来たと言った方が適切

なほどだった。

 

『なっ!?何をいきなり血迷った!?』

 

「うん? …あーなるほど気が付かないんだ。そっかそっか」

 

 何やら一人納得が言ったかのように頷いたアルヴヘイト。その金色の髪を撫で上げると困ったかのようにとんでもない事を口走ったのだ

 

「悪いけど君が要らなくなったんだ」

 

『は?』

 

「これからは僕が神さまをやるよ」

 

 何を言ってるのか、何をしているのか。考える暇もなくアルヴヘイトは実に当然の様に攻撃してきたのだ。

 

 

 

 

 それが数刻前の話であり、そして今現在エヒトルジュエは苦境に立たされていた。何せ自分の攻撃全てが軽く振り払われてしまうのだ。魔法や光弾が文字通り軽い腕の一払いで消滅し、神の使徒は何も出来ない。

 

 今まで神として至上の存在はたったわずかな間で驚くほどの矮小な存在になってしまっていたのだ

 

『貴様ッ!我を誰と心得る!至上の神にして全知全能の神ぞ!』

 

「神?ゴメンね、僕はダイスの女神様とハヴォック神意外は信じないんだ」

 

『……何を言ってる?いや、そもそも貴様は、誰なのだ?』

 

 奇妙な言動をしてくる男にふと違和感を持つ、今目の前にいる男は誰なのかと。腹心であったはずのアルヴヘイトか?いや違う、こんなふてぶてしい態度はとらない。では依代となった吸血鬼の男か、いやそれにしては奇妙なほどに力を感じない。

 

 では一体目の前にいる男は何なのか。 

 

「っていうかさ。さっきから神神言ってるけど君そもそも神じゃないよね」

 

『――――な』

 

 何故その事を知ってるのか、どうしてその事を、それを聞く前に男は自分に触れてきて 

 

 

 

 

 そ

 

 

 

 

 

 し

 

 

 

 

 

 

 て

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、今日から僕がエヒトルジュエだ。…ふふ、とんだ茶番劇になるね主人公君」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 魔人族の襲撃から一夜明け、数々の被害状況を騎士団や兵士で確認し、人手の足りなさを野村が作り出した小さなゴーレムたちで後始末をしているときハジメは騎士団に呼び出されていた。

 

「……何か言い分はありますか?」

 

 心労の溜まった顔でハジメを見るのはハイリヒ王国騎士団副長であるホセ・ランカイドだ。団長であるメルドが暴れまくったツケの代償として身動きが取れず不在の今ホセが騎士団の総括をこなっていた。

 

 尤も現状ホセにとっては優先するべき事があり部下たちの指示はアランに任せていることになったが

 

「僕にとっては最善の方法でした、まさか直ぐに使う事になるとは思ってもみませんでしたが」

 

 にがい顔をするホセに対して一方のハジメは開けっ広げな態度だった。だからこそホセにとっては溜息が大きく重くなってしまう

 

「……戦闘をしていた魔人族はもれなく全員治療不可能の体調不良に陥りました。お陰で拘束は滞りなく行えましたが…」

 

 実際魔人族は全員が風邪の症状によって戦闘が困難な状況に落ち射ていたのだ。その為拘束自体は楽に行うことが出来、全員王城にある牢屋へと連行することが出居たのだが…

 

「問題は味方にも被害が出たという事ですか」

 

「…ええ、その通りです南雲君」

 

 ハジメの言う通り、体調不良に陥ったのは魔人族だけでは無かったのだ。戦闘に参加していた兵士は勿論騎士団の中からも、王城に居た非戦闘員、避難していた民間人さえも巻き込まれてしまったのだ。

 

「……あなた方のお陰で死人は出ませんでした。ですが民間人を巻き添えにするとはどういった了見でしょうか」

 

 ハジメ達の計画によって魔人族の襲撃は収まった。結果的に言えば未曽有の危機を回避することが出来たのだ。魔人族や魔物との戦闘により負傷する者はいた。

 

 しかし死者は居なかったのだ、奇跡的ともいえるほどに死者は誰一人いなかったのだ、敵も味方すらも

 

 

 だが、それで良かったでは済まされないのだ。

 

 

「戦闘に携わっていた者達、そして非戦闘員、誰も彼もあの煙の影響を受けています。…老若男女区別なくです。南雲君、貴方はどうして味方を巻き込むこの作戦を考えてしまったんですか」

 

「そうですね。まぁ色々とありますが、戦争になるのならやっぱり誰も彼も当事者になるじゃないですか。だから無関係だとそう言って助けを乞うだけの人たちが嫌だったからです」

 

「…それは、自分たちに戦わせて安全圏に身を置こうとする者達への八つ当たりですか」

 

「……」

 

 ホセの断言にハジメは薄く笑ったまま肯定も否定もしなかった。どこかで感じていた召喚された者特有の驕りをホセは感じていた

 

「良いじゃないですか、後は柏木君のアレが上手く行けば戦争は終わるんですから。それにあの煙の解毒薬はもうできています」

 

「解毒薬とは?」

 

「広場にある噴水。アレ全部があの煙の解毒薬になっています。飲ませればすぐに回復するので問題ありませんよ」

 

 あの作戦では必ず王都の人間も被害に遭うのは目に見えていた。だから解毒薬は用意していたのだ。噴水ならば水の量もたくさんあるし何より解毒薬はコップ一杯分で事足りつつ即効性があるのだ。被害が出ても全てが終ってから悠々と飲ませればいい

 

 故にハジメは王都の人がどうなろうと余り気にしていなかったのだ

 

「だから何をしていてもいのだと?」

 

 だがそれで終わりではないのも事実だ。ホセにとっては守るべき民間人を巻き込んだ張本人であるし、味方だと思いたかった人物でもある。裏切られたとまではいかないがそれでも頭にくるものだってあるのだ

 

「……私は君達を味方だと思っていました、世界が違えど分かり合える人達だと」

 

 出てくる声は限りなく低い、心情を吐露するその声音は南雲ハジメに対するホセの複雑な内面を表すかのようだ。

 

「だから、出来る限り君たちの力になってあげたかった、戦争に加わってほしくなかった……故郷へ帰してあげたかった」

 

「でも今の貴方達では戦争を終わらせることは出来なかった。侵攻も防衛も何もかもが魔人族より遅く只々むやみに時間を消費していたのが現状だった」

 

 どれだけホセやメルドがハジメ達の事を思ってもハジメからしてみれば地球へ帰れない以上は冷ややかな対応になってしまう。

 

 現にもし魔人族が襲撃をしてこなかった場合一体いつ人間族は魔人族と雌雄を決するための戦いを始めるというのだろうか?ハジメにとっては人間族の危機として呼ばれた以上攻め込む可能性は低いとある種の諦観を持っていたのは事実だった。

 

「被害?犠牲?ああ、確かに何人かは巻き込まれたかもしれない。でも別に良いじゃないですか」

 

 だからハジメは冷ややかに鼻で嗤う。まるで正当性を盾にして弱者をいたぶり酔っているのかの様に 

 

 

「あんた達では到底できなかったことがたった一日で終わったんですから」

 

 

「――」

 

 ハジメの皮肉にホセの目に殺気が籠る。普段副長として冷静だった男の殺気に周囲の空気が凍ったかのように重圧が掛かる

 

 

 一触即発、そんなホセとハジメの間に割って入った者が居た

 

 

「よう、邪魔するぜ」

 

 両者の睨み会いをまったく気にした風もなくやって来たのは檜山大介だった。突然の来訪者の乱入だが二人とも視線を檜山に向けることはない

 

「…檜山君邪魔だよ」

 

「檜山君、今取り込み中です」

 

両者から出るのは拒絶の声、今目の前にいる人間に隙を見せないという意思表示を檜山は軽く鼻で嗤いハジメに近づいた。

 

「ホセ副長、ちっと南雲を借りるっすわ」

 

「…何か用」

 

 檜山に向けるハジメの視線は鋭い。その目はクラスメイトに向けるものではなく自分の邪魔をした障害に向ける敵意の混じった目だった。

 

 見るものが見れば肝を冷やすハジメの目をやはり檜山は気にすることもなく嘲笑う

 

「はっ 随分と良いご身分だな?あぁ?南雲の癖によ」

 

「……あ?」

 

「おいおい、そんな腐ったチンピラのような目をすんなよ、バカみてぇだぜお前」

 

 明らかな檜山の挑発にハジメの目がますます鋭くなる。いやむしろホセの時と比べていつでも掴みかかりそうなほどにハジメの機嫌はすこぶる悪くなっていった 

 

「その小汚い面を僕の目の前にさらして何?ぶっ飛ばされたいの?」

 

「はぁ~あのなぁ何か聞こえてきたと思ったらいつまでも過ぎたことをグチグチとみみっちく喚く馬鹿な声が聞こえてな、どうしようもねぇクズの面を拝みに来たんだよ」

 

 そんな事も分かんねぇのかよ、そうニヤニヤと笑う檜山の明らかな挑発に今度はほぼ無意識で『ハンドレットガンズ』の異能を使いこれまた無意識で作った大型のリボルバー拳銃を檜山に向けていた、

 

「……その口を閉じろ檜山。風穴開けられたいのか」

 

「お?なんだイキリ玩具を取りだしちまって、怒っちまったのか?」

 

 銃口を突き付けられ、それでも檜山の揶揄は止まらない。大型リボルバーをちらりと見てほんの一瞬だけ眉根を寄せたがすぐに皮肉気に笑った。

 

「つか、さっきから聞いてればなんだお前。僕が戦争を止めましただぁ?ホントお前愛でてぇ頭してんな」

 

「……」

 

 ガチャリとはっきりとわかる様に撃鉄が上がる。後は引き金を引くだけで檜山の頭はザクロがはじける様に吹き飛ぶだろう。

 

「んな、気取った言い方すんなボケ。ハッキリ言えよテメェら異世界人全員気に入らねぇってな」

 

 ハジメの持つ銃が玩具ではない事を檜山は薄々理解している。それはハジメが握っている大型リボルバーがどこかから流れ込んだ記憶で見たものと同一だからだ。その威力を檜山は理解している、撃たれたら必ず死に至る兵器だという事を

 

 だが檜山は決してハジメから目を逸らさなかった。 

 

「はぁ…もういい分かった。さっさと」

 

 溜息一つ。それだけでハジメは檜山を殺すことにした。人の命を何とも思っていない、余りにも軽い動作で引き金を引こうとして…

 

 

 

「何時まで子供をやってるんだお前は」

 

「―――――」

 

 

 檜山のその一言で引き金を引こうとした指の力が止まった。堂々と言い放った檜山のその言葉がハジメの引き金を止めたのだ

 

「やられたからやり返す?襲ってきたのは向こうからだ?巻き込まれたから仕返しした?…あのなぁいつまでお前は被害者面してんだ?」

 

「被害者面って、実際僕達は被害者側だよ。そんな事も分かんないの檜山」

 

 被害者面、その言葉に思う事があったのか、銃口は外さずに檜山に反論するハジメ。しかし檜山は反論を一蹴する

 

「なるほど、確かに俺達は被害者って奴だ。このトータスの奴らに勝手に誘拐をされたも同然だ」

 

「なら」

 

「んで、それがどうしたって言うんだ」

 

「っ!」

 

 心底それの何が問題なのかと笑う檜山。その余りにも気にし無さ過ぎる反応にハジメは困惑する。

 

「なぁ知らなかったのか?お前らは何時までもそう考えてたのかもしれないけどよ。俺達はとっくの昔から被害者だって思ったことは無かったぞ」

 

 檜山自身、確かに戦争沙汰に巻き込まれたことに対して憤慨することはあった。しかしトータスの人たちと交流し日々を過ごしていったとき自然と被害者だとか巻き込まれただとかは考える事は無くなっていったのだ

 

「そもそも元凶はエヒトっつうクソ神だけで此処の奴らを逆恨みすんのは筋違いだろうが」

 

「っ!」

 

「むしろ、過ぎてしまったことをいつまでも根に持って、いざ事が始まったら悪いのは相手だって?おいおい、そりゃ餓鬼の言い分だっつの」

 

 南雲ハジメはずっとこの異世界の惨状に鬱屈した思いを持っていた。それは親友が死にかけたあの時から始まりため込んでいた怨みと憎しみだった。

 

 しかし他のクラスメイトは死の恐怖には怯えていたものの、トータスの人達を憎悪することは無かったのだ。

 

「いつまでもいつまでも相手が悪い、自分は悪くないだって?はっその理屈、まるで餓鬼その物じゃねぇか」

 

「………」

 

「どういった事情にせよ関わった時点で俺達は被害者加害者関係が無くなるんだよ」

 

 だからお前のそのひねくれた思考が気に入らない、そう檜山はリボルバーを気にせず言い放ったのだ。  

  

 

(……子供、か)

 

 ハジメの内心は複雑でしかしどこか納得するような諦観のような物が溢れていた。他者から言われて改めて自分のやっていることが分かる、相手が悪い自分は何も悪くない、だから自分には何をしたって良い権利がある。

 

 それはまるで駄々をこねて屁理屈を宣う子供そのものだったのだ

 

(……そうかも、ね)

 

 檜山に言われたのは癪だが強い被害者意識があったのは紛れもない事実だったのだ。

 

 そして被害者を装って好きに暴れてしまっていたのもまた事実だ。まるで自分こそが強者だと言わんばかりに

 

 

 だから南雲ハジメは何時までも子供だったのだ。

 

 

「はぁ……まさかお前に諭されるなんて、な」

 

 気が付けば銃口を降ろし、皮肉気に笑っていた。深い自嘲の溜息と共に手にした大型リボルバーを砂へと変質させる。意味のない暴力を作り出してしまったのがまた実に情けない

 

「はっ 俺に言われなきゃわかんねぇ位暴走していたって事だ。つか、てめぇならもっとうまく物事を考えることが出来んだろうが、なに馬鹿なことしてんだよ」

 

「…返す言葉もない」

 

 溜息がさらに大きくなり自分の仕出かしたことで更に罪悪感が募る。オマケに他者に言われなければ自覚できなかった自分の幼稚な精神に更に嫌になる。

 

「んで、自覚したのならさっさと言えよ」

 

「あーー その、ごめ」

 

「俺じゃねぇよこの薄ら馬鹿。頭カチ割るぞ」

 

 檜山が何を言ってるのか、その意味を理解してハジメはようやく向き合った。

 

 

「……」

 

 こちらを見ているホセ・ランカイドは何も言わない。先ほどまでは敵だと思っていたような感情が今度は申し訳なさでいっぱいになる

 

「すいません、僕は大変な事をしてしまいました」

 

 深く頭を下げホセに謝罪の言葉を出す。力に酔っていた、町を守るためだ。色々と言葉は出てくるが、それを言うのは何か違うと感じたのだ

 

「…君が」

 

 少しばかり時間がたったころホセは重い口を開いた。咎める様な感情を抑え込んだような声音だった

 

「君が自分で反省をしているのなら私は多くを言いません」

 

「……はい」

 

「君なら何をすれば贖罪になるか理解しているでしょう。贖罪は行動でお願いします」

 

「分かりました」

 

 口数は少なかった。無理もない先ほどまでハジメはホセに敵愾心を向いていたのだから。だからホセから何も言われなかったのはある意味ハジメへの罰でもあったのだ。

 

(行動…王都の街を直さないとね)

 

 行動をするというのなら戦いで傷ついた街を直すのが自分の役目だ。モルフェウスの力と錬成の力があれば一日時間を貰えれば倒壊した家屋や壊れた城壁などを復元できるだろう

 

(モルフェウスか。レネゲイドウイルスの力、もしかしてこれがジャーム化って奴なのかなぁ…)

 

 ふと先ほどまで酔っていたこの力について考える。モルフェウスの力を使って王都を特大の罠に変えたのは事実だ。そこにはモルフェウスの力が必要不可欠だった。

 

 オーヴァードとはレネゲイドウィルスに感染した人間の事をそう呼ぶのだという。その異質な力を使えるレネゲイドウイルスが活性化し続け暴走した結果、理性を失くしたジャームになるのだという。

 

 先ほどの自分を思い返す。戦争終結という大義名分に戦争に巻き込まれた被害者という言い訳を使い人を人と思わなくなってしまった自分を

 

 言葉使いが荒くなり檜山大介に殺意を覚え忌諱する銃を作り出してしまった何時までも子供な自分を

 

 

 あれこそが南雲ハジメがジャーム化した末路なのだろう。人をやめてしまった結末だ。

 

(はぁ…味方の言葉を借りないと自制すらできなくなる。使いすぎは身を滅ぼす、か)

 

 力を使っているつもりが何時しか力に酔って振り回されてしまった。そこにはレネゲイドの力もエヒトから与えられた技能の違いは無い。

 

 力を使う者こそが力を理解しなければならない。未熟な精神に宿ってしまった強大な力。ハジメは深く深くその意味を考えなければいけない

 

(馬鹿だよね、錬成師とかモルフェウスとか異質な力に舞い上がっちゃって…力を振りかざす小物そのものだよ僕は)

 

 自分の未熟さにどうしようもなく虚しさを覚えてしまうハジメ。そんなハジメにどう思ったのかホセは何処か哀れみに声を掛けた

 

 

 

「所で私からは以上でしたが、彼女はそうではないらしいですよ」

 

「え?」

 

 ホセの言葉に思考から帰ってきたハジメは後ろに誰かが立っている事にようやく気が付いた。

 

「え、え?」

 

 そうして振り向こうとした瞬間、ふわりと抱きしめられる。温かさと甘い匂いがハジメを襲う

 

「ふふ、駄目だよハジメ君。あんな絶対に似合わない乱暴な言葉を使っちゃ」

 

 甘い声を出す相手はよほどの気配の隠し方が上手い者かまたは自分がそこまで気を許してしまった相手か。

 

 どうやら今回は後者らしい。二つの柔らかい触感とそれに伴う程よく温かい体温、それに仄かな甘い匂いと妙に心地いい声がハジメの脳を刺激する。

 

「し、らさき、さん?」

 

 ハジメを抱きしめていた人物は白崎香織だった。しかもどうにもいつもと様子が違う、頬がいつもより紅潮し妙に息を荒げている。

 

「ちょっとオイタが必要だね。ホセさんちょっと南雲君を借りますね。具体的には半日ぐらい」

 

「ええどうぞ。しっかりと教え込んでください」

 

 相手の名を呼ぶももはや言葉が出ない、キョロキョロと周りを見ればとても爽やかな笑顔を浮かべるホセに可哀想な目を向けるどこか達観した檜山。

 

「あの、白崎さん?僕ちょっと柏木君のぐえっ」

 

 親友の名を使い離れようとするが増々自分を抱きしめる力が強まっていく。振りほどこうにもいったいどこにそんな力があるのか

一向に振りほどくことが出来ない。

 

「うふふ、ようやく二人っきりになれるね」

 

「ちょ、ちょっと待って誰か助け」

 

 ずるずると連れ去られていくハジメ。次に人前に姿を現した時はげっそりとした顔になっているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪かったな副長」

 

 ハジメが連れていかれ、二人になった時檜山はぽつりとしかし、ハッキリと聞こえる様につぶやいた。

 

「…いえ、構いませんよ。って言えたら良いんですがね」

 

 檜山の言葉を聞いたホセは大きな溜息を吐く。見れば目元にうっすらと隈が出来ているところから考えて戦後処理に相当頭を使っていたのだろう。

 

「やはり裏切られた気分ですよ。勿論彼らのお陰で魔人族を全員捕らえることが出来ました。ですが…結局人間族も魔人族も変わりが無かったんですね」

 

 好意的に接していた、信頼を得ていたはずだと思った。だが結果的には魔人族だろうが人間族だろうが何も関係が無かったのだ。敵でも味方ですらなかったのだ

 

 それが酷く悲しかった。

 

「それに、あの放送のせいで誰の仕業か明確になったので皆に戸惑いと混乱が出ているのが現状です。魔人族が倒れたのは確かに朗報ですが今度は

貴方方が敵になりかねないのが現状ですよ」

 

「あーそうだな。そらそうなるわな」

 

 弱音のような物を檜山に吐露してしまうホセに檜山も肩をすくめる事しかできない。

 

「せめてどこの所属か不明慮にしてくれればよかったのですが…いえ、もう過ぎてしまった話ですね」

 

 あの放送で召喚された者達が奇妙な煙を出したという事が知れ渡ってしまった。柏木としては戦いをやめろと言うつもりで呼びかけてたのだろうがトータスの人からしてみれば全く逆で味方ごと敵を戦闘不能にしたという認識が広がってしまうだけだったのだ

 

 戦いと同時に信頼関係も終わってしまった。それがこの戦争で得た結果だ

 

「こんなはずではなかったんですがね…」

 

 いつかは故郷に帰らせようと考えていた。しかし先ほどハジメに言われたようにそれがいつになるのかはホセ自身分からなかったのだ。

 

(ある意味勇者召喚というものを甘受してしまった我ら人間族の罰なのかもしれませんね)

 

 異世界から協力者を呼び出すという手段。呼び出された物が友好的かどうか分からなくてもそれ相応の被害を覚悟しなければいけなかったのだ。 

 

「まぁどうしようもなかったんだよ。俺たちがここに来た時点で人間族も魔人族も。両方とも運が無かったんだよ」

 

 檜山はシニカルに笑う。どういった経緯があるにせよ自分たちが呼び出されてしまった以上トータスが被害をこうむるのは当然の事だったからだ。なにせ戦場は地球では無くトータスだったから

 

「そうですね……檜山君」

 

「あんだよ」

 

 なんとも言えない目が檜山を見る。気だるげに聞き返せばホセは苦笑いをした

 

「もう戦争が終わったのでさっさとお帰り(消えて)頂きませんか?」

 

「はっ 言われなくてももうしばらくしたら消えるさ」

 

 ホセの皮肉に檜山は肩をすくめるのだった。 

 

 

 

 

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