ありふれたクラスは世界最凶!【完結】   作:灰色の空

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何だかんだで計画完了

 

「カトレアさんには何があってもの絶対に故郷に帰るようにお願いをしました。彼女が俺の言葉をどう受け取ってくれたかはわかりませんが約束を破る方ではないでしょう。…何も知らず体に病原菌を保有しながら、ね」

 

 彼女がいつ国へ着くかは知らない。だが人間族へ潜入できるほどの猛者だ。必ず帰れるだろう

 

「カトレさんが国へ帰ればその瞬間に病原菌は空気と伝って人へと感染していきます。ああ、この国で蒔いたのとは比較にならない重度の奴何で、魔法如きでは絶対に治せませんよ」

 

「カトレアさんの実力はフリードさんもよく御存じでしょう。彼女の実力があれば国へ帰るのに時間はかかるとしても必ず帰れることが出来るでしょう」

 

「さて、あの薬は魔法では解けない危険な代物であり、その解毒薬を作れるのはこの世界でただ一人。…言いたいことが聡明なフリードさんなら分かりますよね」

 

 

 つらつらと語るその内容を反論することすらできず必死で脳内でかみ砕いて行くフリード。部下の一人がつかまって、かと思えば逃がされて、しかしその体には自分も味わったあの毒が潜んでいて、それが故郷へと感染する、悪辣極まりない罠だった。

 

 嘘だと突っぱねる事は出来る。空想も大概にしろと吠える事は出来る。しかしフリードはその身体であの煙を吸ってしまったのだ。

 毒に犯され病気を患ってしまったのだ。

 

 しかもその毒は柏木の言葉道理魔法では治せない未知の疫病。フリード自身何度か試しても治す事の出来なかった奇病

 

 

 

「なぜ、何故そんなことが出来るのだお前は」

 

 震えながらも出てきたのはそんな弱音みたいな言葉だった。否定しようにもフリードを蝕む毒とカトレアの情報を知ってる事からして嘘ではないという事実が、フリードに弱音を吐かせてしまったのだ

 

「言ったじゃないですか。戦争を終わらせたいって。俺を呼び出したエヒトって言うクズはどんな方法で終わらせればいいのかを言ってませんでしたからね。俺たちの故郷に伝わる最高に頭の良い胸糞で反吐が出る外法を選ばせてもらいました」

 

 ニコニコと嗤う目の前の怪物は自分の仕出かしたことが一体どういう事なのか、理解しているのかフリードには分からない。

 

(どうする…どうすればいい、私は一体どうすれば)

 

 脳裏に浮かぶのは国に残してきた民たち。平穏な明日が来ることを信じてやまないフリードが守るべき愛する者達。

 

 それを目の前の怪物はあっけなく潰してしまうというのだ、それも戦争終結という名分を使って。

 

(こいつ等こそが本当の邪悪!人間族も魔人族も滅ぼす異世界からの侵略者なのだ!)

 

 恐ろしい、とフリードは心底思った。戦闘を知らない隙だらけの怪物は誰よりも非道になることが出来るのだ、それを分からされてしまったフリードは、もうどうする事にもできなかった。

 

(駄目だ…私ではどうすることにもできない)

 

 愛する民たちにではこの毒に打つ勝つことは出来ない、かと言って戦闘要員である自分たちは捕虜として捕まってしまっている。

 

(魔王様は…あの方ならばどうする?民と誇り、どちらを……)

 

 魔王ならばあるいはと思う。神代魔法を持つこの世界最強の存在。しかしその魔王はどうにも戦争に反対の意思をのぞかせていた。今更負け落ちぶれ捕虜となった自分の意思を汲んでくれるとは思えない

 

 完全に詰んだ、そう分からされたフリードに心地よい言葉が聞こえてくる

 

「……フリードさん。俺は何も魔人族を滅ぼしたいわけじゃないんですよ」

 

「……」

 

「何度も言ってると思いますが。この戦争を終わらせてほしんです。それが俺の願いであり、この計画の本質です」

 

「そのためには」

 

「うん?」

 

「その為には我が民が苦しんでもよいと、貴様はそう言うのか」

 

 フリードの苦悶のようなその声に、柏木はせせ笑った

 

「フリードさんは国へ夜襲してきたんでしょ?何も変わらない明日が来ると信じている人たちを殺しに来たんでしょ?なら魔人族の方々も同じような目に遭わなければ道理が通りませんよ」

 

 ボキリ

 

 その言葉を聞いてフリードは心が折れた。目の前の化け物は気まぐれで毒をまき散らす病原菌だったのだ。このまま自分が反抗していても人ではないこれに勝てるすべはなかった。

 

「…すればいいのだ」

 

「何ですか」

 

「どう、すればいいのだ。私に一体何をしろと」

 

 震える声で出てきたのはそんな声。情けなくとも虚勢を張るのはもう無理だった、この人の形をした倫理外の化け物に屈服するしか民を助ける手立てがフリードには残されてなかった。

 

「そうですね。ではまず手始めに」

 

 嗤うその顔で一体何を命じられるのか、領地にいる民の今後の事で選択肢が無いフリードにこの場で聞こえる筈のない救いと終わりの声が聞こえてきたのはその時だった。

 

 

「おっと、悪いけどその前に私もその話に加わっていいかな?」

 

 

「へ?」

 

「あ、貴方は!?」

 

 

 現れたのは金髪で温厚な壮年の男。そしてフリードが敬愛してやまない、魔人族の頂点に立つ男

 

「ああ、失礼。名乗るのが礼儀だったね。私はアルヴヘイト。君たちがいう所の魔王だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハッキリ言えばその男の登場は想定外だった。

 

 

 俺が仕掛けた作戦。それはカトレアを使い魔人族全員を無力化することだったのだ。俺たちに捕まって居たカトレア、実は日々を一緒に過ごすうちにその身に病原菌を仕込ませておいたのだ。

 

 病原菌の種類は単純に『戦意の喪失』これだけだった。戦争を終わらせる方法は何も勝者になる必要はない、ただ相手のその牙を失くせばそれでいいと考えたのだ。

 

 カトレアにその病原菌を仕込むのは簡単だった、ソラリス能力者と同じ空間にいるという事はすなわち何時だって薬の影響を付ける可能性があるという事。幻覚剤の効果がある『竹馬の友』によって俺に友好的になり、その後『人形遣い』という力でカトレアを意のままに操ることが出来た。

 

 後はカトレア自身に何が何でも故郷に帰ってもらい人に接触をしてもらう。それだけで魔人族には俺の薬の影響を付けた人が蔓延するっていう作戦だったのだ。

 

 この話をした時メルド団長たちには効果を疑問視されたが素直に言う事を聞くカトレアを見てもらう事で効果の実証を得ることが出来た(代わりに信用を失ってしまったような気がするが……もはや何も語るまい)先ほど天之河達にも説明をし頭を抱えられたがそれももうやってしまったのはどうしようもない

 

 

 人に病原菌を仕込むことで平和的解決を目指す。それがこの世界で俺が戦いを止めさせる作戦だったのだ。

 

 

「ああ、そんなに緊張しないでくれたまえ。私は君達と争うために来たのではないのだから」

 

 だからこの男、魔王が来ることなんて想像はしていなかったのだ。

 

「アルヴヘイト様、なぜここに」

 

「転移魔法の応用でね。君たちの戦いがどうなったかを見に来たんだ。結果は出ているみたいだけどね」

 

 朗らかに笑うその顔に敵意はまるで感じられない。一見すれば本当に只の温厚な紳士という感じで、フリードが驚愕の顔を見せなければ魔王と言った所で信じる事は出来なかっただろう。

 

 

(マズい、よな)

 

 緊張で冷や汗が出てきてしまうのは止められなかった。本当はこのままフリードに停戦のために協力をさせるつもりだったのだ。部下達に説得をしてもらい停戦の約束させる。

 その後俺を連れて魔人領に行き、人々の解毒や、場合によってはソラリスの力を使ってでも説得などさまざな事を考えていたのが魔王の到来によってすべてがパァになってしまったのだ

 

「え、えっと魔王さん?」

 

 心臓の音がうるさいのを何とか外にやり魔王に声を掛ける。本当ならすぐにでも逃げだしたくなるがそうは言ってられない、温厚そうなこと表情に何を隠しているのかは知らないが声を掛けないと始まらないのだ。

 

「っと悪いけど柏木君、今はフリードと話がしたいから少し待ってくれないかな」

 

「あ、はい、分かりまし」

 

 しかしそこで手で制させれてしまう。勿論そこにはこちらを害するような動きは愚か態度は一つも無かった。それがまた不気味で…そして一つ疑問が湧き出てしまう

 

(アレ?何でこの人俺の名前を知ってるんだ?)

 

 一回も名を名乗ったことはないのになぜか俺の名前を知っている魔王。警戒する物のそんな俺は意に介さずフリードと目線を合わせる。

 その様子はどこか教師を連想させた

 

「フリード。まずはご苦労様。随分と大変だったみたいうだね」

 

「アルヴ様!も、申し訳ありません。私は…私は」

 

「うん、ちゃんとわかってるよ。一千万の魔物を率いたのに何も出来なかったんだろう。こればっかりは私も想定外だったよ」

 

 涙目になっているフリードの謝罪を微笑んで受け止める魔王。ここだけを見ると寛容な上司っぽくて好感が持てるんだが

 

「どうやら人間族に、いいや勇者たちの中に怪物が紛れ込んでいたみたいだからね」

 

 意味深に俺を見つめる魔王。繰り返すが敵意や悪意は感じられないし嫌な予感もしない。けど何でだろうか、怪し過ぎるその姿に違和感を持つ

 

「だけど、負けたのは事実だ。数万の魔物を率いて精鋭たちを率いたにもかかわらず、君は私情に駆られ、そして負けた」

 

「グッ うぅ…」

 

「王都に向かう前に行ったよねフリード。勇者とは会わない事だ、と。それがこの結果だ、君はするべき使命を放棄し魔人族の勝利を投げてしまった」

 

 確かにその通りだ。天之河がフリードと交戦しその戦いが時間を稼いだことによって俺達が拠点に到着することが出来罠が発動したのだから。 

 

「…まぁ指揮官としては失格以前の話だけど、君にとって苦く良い経験となったから私としては好ましい事だけどね」

 

 苦笑し仕方ない仕方ないと言う魔王。しかしそれにしてはまるでこうなる事が起きるのを知っているみたいな話し方をするな、この魔王。

 

「という事でフリード。悪いけどここからは私が魔人族の実権を握るよ?構わないよね」

 

「…はい。本当に申し訳ありませんでした」

 

 反省しているのか会った時より小さく感じてしまうフリード。親に怒られた子供みたいだと場違いな事を感じてしまうのは気のせいか。

 

「と、言う訳で済まなかったね。改めて今後について話し合おうじゃないか」

 

 そうして身内への叱責がおわったアルヴヘイトは俺に向き直った。何処か面白がるようなその表情、目がどこかキラキラとしている

 

(あれ?…どこかで見たことがある様な)

 

 不思議な違和感、を覚えたのはその目というか…顔だろうか。どうしてもひっかかる。どこかで出会ったような気がするような?

 

「まず明確にしておきたいが私達魔人族は君達に降伏をするつもりはないんだ。しかし部下たちは助けたいと思うだろうがどうだろう」

 

「え、っと。そうっすね。ううーん。」

 

 どう話せばいいのだろうか。先ほどまではハッキリ言えば俺にアドバンテージがあった。俺が絶対的に上の立場としての話し合い。それがこの魔王相手では発揮されないのだ。

 

 魔王の実力は未知数だ、分かるのはフリードより格上であり恐らくこのトータスでは一番トップに躍り出るであろうという事。

 

(いくらオーヴァードつってもたかが知れてるしなぁ…)

 

 対して俺は化け物ではあっても戦闘に関することはクソ雑魚ナメクジでしかないのだ。交渉とは相手との戦力が同一でこそなり得るという、雑魚の俺ではこの魔王相手に話すのが著しく難しくなってしまうのだ。例え相手がどれだけ真摯であっても。

 

 

 詰みとはいかないまでもどう相手と話すべきか、そうして悩んでいるところに救いの手というには以外過ぎる人物がやって来た。

 

「その話、私がお受けいたしますわ」

 

「え!?リ、リリアーナ王女?」

 

 やって来たのは煌く金髪の髪をなびかせたこの国の王女であるリリアーナ姫だった。いきなりの登場に困惑する俺を差し置いて堂々と魔王の前に

立ちはだかる年下の少女。

 

「ようこそおいで下さいました魔王アルヴヘイト様。おもてなしをせず申し訳ありません」

 

「いやいや、アポもとらずいきなりやって来たものだからね。こちらこそ急な来訪済まなかったよ」

 

 リリアーナ姫の優雅な謝罪を苦笑して流す魔王。彼女は目の前にいる人物が誰なのか本当に理解しているのだろうか。本当に理解しているのだとしたらなぜそんなにも落ち着きがあるのだ?

 

「柏木様。急に押し入った事謝罪いたしますわ」

 

「い、いえそれは良いんですが…それよりも」

 

 小さく手招きすれば素直に近づいてくる少女。魔王に全然気にした風が無いので今のうちに話をしておく

 

「相手が誰か分かってるんですか!?魔王ですよ魔王!」

「勿論存じていますわ」

「ならなぜやって来るんですか!?危険すぎますよ!」

 

 流石に流石の登場人物だ。魔王が何かしてくる気配は微塵も感じられないがだからと言ってお姫様が魔王の近くにいるなんて危険すぎる。古今東西の絵本の真似ごとか!?

 

「あら、心配してくれるんですね。嬉しいですわ」

「そら心配もしますってば!ああもうせめてメルド団長を引き連れてくるべきでは」

 

 メルド団長なら相手になるだろうか?魔王の実力が未知数である以上居たとしても安全かどうかわからないがそれでも護衛の一人ぐらいはいるべきなのだ

 

「…ふふ」

「いや笑ってないで、俺は真面目に言ってるんですよ!」

「いえ、相も変わらず変わりないなと」

 

 俺の顔を見て微笑むのはもういいから事の重大性を分かってほしかった。でもリリアーナ姫はまったく気にしてなくて

 

「大丈夫ですよ柏木さん。()()()()()()()()()()()()()()()()

「いや、だからそう言う事はどうでも良くて」

「後はもう私に任せてください」

 

 そう、断言され微笑まれて言われてしまってはもう何も言う事は出来ない。年下のはずの少女は年上っぽい顔してオレに笑うとくるりと魔王に向き合った。

 

 

 

 人間族と魔人族。長年殺し合いをしてきた宿敵同士オマケにトップの対面なのに何故だろうか。本来なら一触即発してもおかしくなさそうなのに。

 

 

「降伏をせず、しかし部下を助けたいというのでしたら…そうですね。まずは休戦といたしましょうか」

 

「ああ、それはいい。私達にも被害があったように君達もどうやらそれなりの事が起きたみたいだね」

 

 王女と魔王の会話は澱みが無い。それはまるで見知った相手との……イイや違う。まるで台本を読んでいるかのような茶番染みた話。

 

「ええ、善ある協力者のお陰でこちらにも被害が出ましたので。尤も彼のお陰で私たちの戦争が終わりになるのですから皮肉ですね」

 

「フフ、皮肉なものだね。第三者が居なければ止まることが出来ないだなんて」

 

 穏やかに笑う人間と魔人。決められた約束を話すその姿を見て

 

 

 

 

 

 

「……あ」

 

 

 俺は、この茶番の真実を思い出してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

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