ありふれたクラスは世界最凶!【完結】   作:灰色の空

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事の真相編です


全ては己の為に

 

 

「って事で後はそのままリリアーナ姫が魔王と交渉をしてさー話が勝手に進んでいくもんだからもう俺居づらくて仕方が無かったよ」

 

 場所はオルクス迷宮最深部、いつもの彼女がいる部屋で俺は愚痴を吐きまくっていた。

 

「へーリリアーナ姫がやって来たとは、なかなか行動する人ですね」

 

 苦笑しながら、彼女は俺が好きな白湯を注ぎ足してくれる。勿論彼女の分も一緒だ。

 

「そうなんだよ。いきなりやってきて後はもうどんどん話が進んでしまって…まぁ俺としては良いんだよ?何だかんだでこの戦争はあの人たちの物だし」

 

 結局あの後、魔王とリリアーナ姫は交渉を続け、停戦条約を結んだ。フリード達は魔王が連れて帰る事になり、また魔人族と人間族が関わらないように停戦の期間を作るという話になった。

 

「期間、ですか?どれくらいになるのでしょうか」」

 

「ざっと1000年だってさ」

 

「せっ!? ふぁー何とも気の遠くなるような話ですね。っていうか事実上の戦争終結じゃないですか」

 

 言葉にすれば実感が湧かないがそれは気の遠くなるような年月、分かってはいた事だけどあの魔王は戦争をする気はなかったって事だった。まぁあの魔王からしてみれば全てが茶番でしかないだろうけど、1000年とは…実際考えるのが面倒になったなあの魔王。

 

(でも、リリアーナ王女が賛同したのは…まぁもういいか)

 

 あの王女に関しては謎が残るがもうどうだっていい。全ては終わってしまう話なのだから

 

「兎も角これで人間族と魔人族が戦争する事は無くなりましたね」 

 

「事実上の痛みわけだからな。ま、後始末は面倒だけどこれで俺達の役目も終わりって事だ」

 

 肩をバキバキと鳴らして思いっきり伸びをする。色々と面倒なことだらけだったが役目はちゃんと終えたのだ。さっさと日本へ帰ってゆっくりと羽を伸ばしていたい。

 

 そんな俺に彼女はしみじみとした顔をして労ってくるのだった

 

「そうですか、ひとまずはお疲れ様です。帰れるのはもう目の前ですね」

 

「ああ、有難う。でもまぁそんな事は重要な事じゃない、どうだっていいんだ」

 

 そして改めて彼女を見てニンマリと笑う。銀髪翠眼のアリスはキョトンと俺を見ているが…俺にはわかっているその内心は期待に満ちているって事を。

 

 彼女の正体と目的こそが俺と彼女にとって一番大切だって事を。

 

「俺、いいや俺達にとってこの世界の事情はどうだっていい。重要なのは自分自身。そうだよな、アリス」

 

「……ええ」

 

 この世界の戦争なんて本当にどうだっていいのだ、それは神や世界各地に散らばっている神代魔法や迷宮も。この地で生きる全ての命は俺たちの目的に比べたら本当にどうだっていいのだ。

 

 全ては俺がどう感じ取ったか。俺が何を思い行動したのかが最重要だった。 

 

「ようやく思い出したんだよ。あの時の記憶、自分の願い、そしてお前が誰なのか、自分が何者なのかを」

 

「そうでしたか…思い出したんですね」

 

 胸の内は話せば話すほど彼女の目は爛々と輝きだす。きっとこの瞬間を誰よりもずっと待ちわびていたのだろう、それこそあの日あの時俺が望みを言ったあの瞬間から。

 

 

 

 改めて彼女を見て似た様な笑みを浮かべる彼女に真相を話す。

 

 

 

「では聞かせてください。私は誰ですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前は俺だ。アリス、お前は俺のオリジナルなんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『君はどんな事を僕に願うんだい?何でもできて何でもかなえてあげる存在を前にして君は一体何を望むのかな?僕に教えてよ、君の奥底に秘めた願い欲望を』

 

 願いというの名の欲望。何でもできるという存在を前にして、自分の口から出てきたのは自分でも予想外でしかしどこか納得する望みだった

 

 

――それなら、()()()()()()()()()()()

 

 

『うん?どういう意味だい』

 

 首を傾げるそれを前にして自分の中でくすぶっていた願望が出てくる。それは願望というより拗らせた自己承認欲求みたいなものだった

 

―異世界…いや、あの世界に生まれて日常を謳歌して、けどいきなり召喚されて戸惑っている自分を私は見ていたいんだ。

 

 それは一体いつから燻らせていたのだろうか。自分は何時からか自分という存在を客観視したいという欲求を持ってしまったのだ。

 

 異世界に召喚された自分。何も知らず何もわからない自分は一体何をするのか、モブの様に背景に溶け込んでしまうのかそれとも拗ねらせて悪党になってしまうのか…それともまるで物語の主人公の様に、光ある世界へと歩んでいくのか。

 

 自分という可能性の塊は一体どんな行動をするのか。自分という存在はあの世界でどう生きて考えて行動するのか

 

 その行動を近くで見ていたい、傍で感じていたい!自分はどういった人間なのかを他人の目で見てみたい!

 

 

 それが自分の願いだったのだ。

 

 

『えっとまって、それってつまり、君という存在を君自身が見ていたい。つまりPCを見るPLみたいな関係?』

 

――ああ、それだ。そう言う事をしてみたいんだ。 

 

 PCとPLというのは言い得て妙だった。プレイヤーキャラとして行動する自分をプレイヤーである自分が観察する。

 

 1個の生命体として生きる自分自身を見守りたいというのがより正確なのだろうか。

 

『……君、そんなに自己愛が強かったっけ?』

 

―覚えていないけど、誰かに自分を愛しなさいと言われたから。だから自分は自分で褒めたい応援したい見守りたいって願うようになった

 

 もう覚えていないが誰かに助言として自分を愛しろと言われたことがある。自己評価が低すぎるけど自分の味方は自分だけ。一生の付き合いであり生涯を共に過ごす片割れ。そんな存在を愛したかったのだ

 

 

 

 

 

 

 故に 彼女(アリス)(柏木)(アリス)(柏木)なのだ

 

 

 

 

 

 

 

「ええ、その通りです。私は貴方で貴方は私、私たちは一人の人間だったんです」

 

 過去、全てが始まったともいえるあの日の事を思い返し彼にニンマリと笑う。彼の言った通り私は彼で彼は私だったのだ。

 

「あー…だろうと思ったよ。お前本当に俺には甘かったもんな」

 

「あはは、自分大好きなナルシストですからねー」

 

 彼にとっての自己評価は如何なのかは知らないが私からしてみれば待望の片割れだったのだ。嫌いになる理由なんてある筈もなく傍で世話を焼きたくなるのが性根と言った所だ

 

「自分でいうのもなんだけどまさかここまで拗らせていたなんて」

 

「仕方ありませんよ。私は私が好きで堪りませんからね。推しのキャラほど近くで見守りたいって事ですよ」

 

「その推しが自分なのだからなおさら拗らせすぎている」

 

 羞恥心なのだろうか顔を赤くし彼は頭を抱えて私はケラケラと笑うがまぁ確かにそう思う。一体誰が思いつくだろうか、願望が自分自身を他人の目で見てみたいだなんて。

 お陰で私はとても楽しい毎日だったが。

 

 

 

 私としても彼と彼のクラスメイト達が奮戦する姿を見れて大満足だった。なんか空を飛んでいたりとかゴーレムだったりとか少し想像がつかない事があってワクワクしたしあの天之河光輝君がいっぱしの勇者となっていたのは感涙ものだったし。

 

 何より彼の立てた罠であるあの煙を使った敵味方無差別殲滅計画。アレは最高に面白かった。もろに吸ってしまったがそれでも楽しめたことに変わりはない。まさに面白ければすべてよしだ

 

 彼の活躍を思い返しニマニマと笑ていると羞恥心から帰って来た彼が今度はげんなりとした顔でツッコミを吐き出してきた

 

「つーか色々と突っ込んでいいか?」

 

「良いですよ。私と貴方の中じゃないですか」

 

「なら聞くけどさ、どうして俺好みの女の子になってるんだ?確か俺生前は男だったような気がするけど」

 

 そう、それを必ず聞いてくると思ていた。……まぁ仕方ないか、ここにいるのは私達だけなんだし。

 

「あー そうですね、それではこちら側の事情を最初から説明しましょうか」

 

「よろしく頼む」

 

 彼が頷いたのを確認してこちら側、すなわち黒幕側であり舞台裏の話を始めるとしよう。

 

 

「そもそも最初は女性になる気なんてこれっポッチも無かったんですよ」

 

「…は?」

 

「貴方がありふれ世界の地球に送られたのを見届けた後、私は先にトータスへ来ることへなっていました。事前に準備をするためです」

 

 転生した自分を近くで見たいのは確かだがまさかまた高校生になって同じクラスメイトというのは流石にきつすぎる、だからこの世界に先に侵入し冒険者や旅人を装って傍にいるつもりだった。

 

「だけどこの世界に転生…いいえ転移されたとき気が付いたら女の子になっていたんです」

 

 どこかの見知らぬ路地裏で女の子になっていた自分。その時の混乱と驚愕と慌てっぷりが想像できるだろうか、私は受け入れるのに一週間かかってしまった。

 

「歳の頃は10歳ぐらいの銀髪翠眼の少女。一応チートと呼ばれるほどの力はありましたが…流石に受け入れるのには時間がとてつもなくかかりましたよ」

 

「お、おつかれさん。でもまたどうしてその姿に」

 

「有難う御座います。まぁ理由はちゃんと判明しています。アイツに一杯喰わされてしまったんです」

 

「あー」

 

 理由なんてものは直ぐに分かった。私を転移させたアイツが私の姿を好き勝手弄って変えたのだ。よりにもよって私が思う理想の女の子ってのは何の冗談だろうか。そして目の前にいる彼の容姿が私が理想とする男前なのはいったいどういった了見か。

 

「ったく一言でも言えば良いのに何も言わずにTSですからね。慣れたとはいえティアが居なければ俺っ娘になっていましたよ」

 

「ティア?」

 

「吸血鬼の彼女ですよ。本当なら貴方が助ける可能性も考えて見捨てて置くつもりだったんですがね」

 

 奈落に落ちれば吸血鬼が手に入る。そこで彼は吸血鬼とどういう交流をするのか楽しみにしていたのに結局は自分が助け出してしまったのだ。

 

(本当に憤慨物ですよ。まさか楽しみを自分で潰してしまうなんて)

 

 たかだか数年待てばよかったのに自分は彼女を助け出してしまった。好奇心や期待を捨ててつまらない道徳心と意味のない罪悪感を優先してしまったのだ。結果的に言えば主人公も彼も奈落に落ち無かったので結果オーライと言った所だがそれでも汚点でしかない。

 

 私は私を見誤ってしまったのだ。そんな反省している私を気にすることも無く彼は首をひねっていた

 

「吸血鬼…?あーいたなそう言えば」

 

「貴方の記憶力は穴あきチーズですか」

 

「んなこと言われても17年前の話を思い出せって事だぜ?アイツや俺の目的などは思い出しても他は結構うる覚えだよ」

 

「さいですか」

 

 まぁそんなものかもしれない。時間間隔がずれて原作をはっきり覚えている私とは違い彼は彼で地球で普通の少年として生きてきた人生があるのだから。そう考えればやむなし、か

 

「んで他に何していたの」

 

「後は大体あなたの想像通りですよ。思ったよりも早く転移されたので暇つぶしとして迷宮を攻略したり町に行って遊んでいたリ冒険者家業をしてみたり……まぁ早々に飽きて大部分はこの迷宮に引きこもっていたんですけどね」

 

「…ニート?」

 

「ハッ 自給自足が出来ている以上なんでストレスをためてまで働かないといけないのですか」

 

 幾ら私がチートな力を持ってグダグダと過ごしたところで誰かの迷惑になる訳でも無し、そもそもこの世界は彼の為の世界。彼が来なければ意味のない無味無臭の茶番世界でしかないのだ。

 

「っていうか思ったんだけど言わせてもらっていいか?」

 

「勿論ですよ。私たちの間に遠慮はなしです」

 

「なら遠慮なく、お前でしゃばり過ぎ」

 

「うぐっ!」

 

 いきなり自分自身気にしていた痛いところを突かれて奇妙な声を出してしまった。一気に冷や汗が出てくるが彼はそんな事お構いなしだ

 

「いや自分の事だから見たくなるって言うのは大いにわかるよ。でもな、流石に専属の侍従ってのは近づきすぎじゃね?」

 

 そう、遠くから見守る筈だったのだがつい近づきすぎてしまったのだ。

 

「オマケにそれとなく今後のことを話すとか自分が何者かを匂わせる演技とか、隠す気あったの?そもそも黒幕やってる自覚あったの?」

 

「うぅ」

 

 それを言われると本当につらい。侍従になって傍で見れることに浮かれすぎてしまった私はそれとなく仄めかす様に私が普通ではない事を彼にべらべらと喋ってしまっていたのだ。…今考えても本当に恥ずかしい

 

「流石にさぁ黒幕なんだからもうちょっと出番を控えようよ。せめてなんか匂わせる程度にしておこうよ」

 

「はい、スイマセンでした」

 

 こればっかりは自分に駄目だしされても仕方がない。まぁ楽しかったのは事実なのであんまり後悔もないのだが。

 

 取りあえずこれ以上自分だけの反省会を終了する。だってそうでもしないといつまでも駄目だしするからね私は!

 

 

 

「それにしてもよく気が付きましたね。正直最後まで当てられないのかとヒヤヒヤしていました」

 

「あの魔王を見て思いだしたんだよ。つーかあの魔王って」

 

 魔王…私の協力者であり共犯者。アレを見て思いだすのは複雑ではあるが思い出したのだから良しとしよう。

 

「ええ、ご存知の通りです。彼はあの神モドキであり私たちを転生させた張本人。私と同じこの世界の黒幕であり全ての元凶と言った所でしょうか」

 

 魔王の正体それは、エヒトの眷属神であるアルヴヘイトでは無く、又ティアの叔父ディンリードでもない。 

 

 あの魔王の正体はあの日あの時私達の前に現れて転生させた張本人である……

 

「あれ?そう言えばアイツの名前何でしたっけ?」

「おい」

「だって名前を言わなくても割と問題なかったですし」

「おい」

 

 そう言えば名前を訪ねていなかったのだ。何時の間に魔王になっていたので魔王と読んでいたが本名は何だったのだろうか?

 

 困った顔をしても彼は阿保かコイツと言わないが顔に出している。

 

「じゃあもうどうでもいいですね、アイツが」

 

 

「僕の名前はエヒク・リベレイ。そう呼んでほしいな」

 

 

 そう言いながら突如として現れたのは件の魔王そのものだった。突然の出現に彼はうわっと驚き私は一瞬思考が止まった。心臓に悪いとは言わないがもう少し配慮してほしい。

 

「驚かせてごめんね。後処理を終わらせるのに時間が掛かっちゃった」

 

「いえ…それは構いませんが、そんな名前だったんですか」

 

 エヒク・リベレイ。どこかで聞いたことがあるような気がするが…思い出せないから大したことではないのだろう

 

「まぁ名前は記号みたいなものだからね、好きなように呼んでいいよ」

「じゃあ、アホ」

「バーカバーカ」

「君達、なんでそう直ぐに人の事罵倒するの?」

 

 2人そろって馬鹿にしたら涙目になった。黙っていれば壮年の麗しいオジサマなだけに、中身があまりにも残念過ぎた。

 

「じゃぁリベレイ。何時までディンリードの姿をしているんですか。流石に皮の人に失礼ですよ」

 

「そうかなー結構うまく役を演じれていたと思うんだけど、まぁいつまでも原作キャラの格好をするのは失礼かな」

 

 そういって瞬き一瞬で私にとってはなじみ深いゆるふわで頼りなさそうな青年の姿へと変わったリベレイ。やっぱこの姿が一番似合ってる

 

「ん、やっぱり僕はこの姿が一番だね」

 

 これでこの場にいるのは原作にはいないイレギュラーでありオリジナルの登場人物だけだ。…はは、もはやありふれなんて関係ないね。

 

 

「ふぁーマジで魔王をやってたんだ。ってことはエヒトも同じように?」

 

「そうだよ。んんっ 『我の名はエヒトルジェ 我に敬服し頭を垂れるが良い人間ども』」

 

「うわークッソ腹立つわ~」

 

 一瞬だけ神々しい光を纏い偉そうに命令するリベレイ。腹立つのでぐーぱんしようと思ったときにはすぐに元の姿に変わっていた。残念

 

「まぁまぁ件のエヒトはもうこの世にはいないんだし好きにやらせてくれてもいいと思うんだけど」

 

「…マジでエヒク、お前エヒトを殺ったんだ」

 

「油断も油断していたからね。そもそもアレは蹂躙されてなんぼ。僕と君たちが遊ぶ世界には不必要なんだよ」

 

「です」

 

 私とリベレイが遊ぶためのこの世界にラスボスなんて者は要らなかった。エヒトルジュエにはそもそも最初から生存権は認められていなかったのだ。

 

 私が転生すると決まった瞬間に葬られるのが決まっていた哀れな神。今はもうその名残すらない

 

 

「君が転生と転移する以上エヒトは邪魔だ。なら最初に退場してもらいは後は魔王をやってぬくぬくと遊んでいればいい。僕には僕でやりたいことややってみたい事が一杯あったからね」

 

「やりたい事って?」

 

「それについては…まぁ説明しても分からないと思うよ。一応君達から了承は取っているけど」

 

「了承?」

 

「あ、スイマセンそれ私が了承をしました。規格外の力を押し付けた変わりとしてとしてリベレイも好きにやっていいという許可が欲しかったので」

 

 結局リベレイが何をしたかったのかは知らない。私は私を見る事で楽しんでいたので余計な介入さえしなければ好きな事をしてもらっても構わなかったのだ。

 

「結果的にはまぁ良かったかな。彼女たちも一応納得はしてくれたし僕としてもスターシステムが出来て少し満足だからねー」

 

「…なぁエリクの奴一体何のこと言ってんだ」

 

「私にもわからん」

 

 たとえ何をしようとも私の邪魔をしなかったのでそれでいいというのが本音なのだが。きっと彼も追及するつもりはないだろう。

 

「まぁいいや。兎も角これでトータスでの出来事は終わったと考えていいんだな?偽エヒトさんよ」

 

「うん、十分にやってくれたよ。後は王都の後片付けが終わったら、君達を日本へ返してあげるよ」

 

「迷宮巡りなんて面倒な事は私がやりましたしねー」

 

「僕としても()()()()()をまた見るのは勘弁してほしいからねー」

 

「…軽いなこいつ等」

 

 余りにもあっけなく帰れる手段が見つかったから拍子抜けたように彼は感じてしまうのだろう。きっとどうやって日本へ帰るか考えていたのだろうが、まぁ許してほしい。

 私はデウスエクスマキナを名乗るつもりはないが、そう言う面倒な所でグダグダするのは勘弁なのだ

 

 彼らはちゃんと戦争を終わらせた。後に残るは彼らのハッピーEND。そうでしょう?

 

「そういうもんか」

 

「そういうものだよ」

 

 リベレイに諭されてまぁ仕方ないかと納得する彼。まだまだ遊んでいたかったかもしれないが始まった物語はいつかは終わるのものなのだ。彼らの日本への帰還こそが彼らの終わりなのだからそこはしっかりとしてほしい

 

「じゃあお前はどうするんだ」

 

「へ?私ですか」

 

 その筈なのに急に私を話題にされてビックリ。目をパチクリする間も彼は心配そうにつぶやく。

 

「俺には俺の人生があるけど、お前は俺がこのトータスで何をするのかが楽しみだったんだろ。俺が日本へ帰ったらお前の目的は終わるわけだし…んでトータスも一通り見まわったんだろ」

 

「確かに目的は果たしましたしトータスは見回りました。…確かにすべきことはやり終えていますよね」

 

 結論として私はこの世界に飽きてきたのが実情だ。そりゃ1年ぐらいは楽しいかもしれないが慣れてしまえば刺激はなくなる。

 オマケに私の力は突出しすぎており何でもできるそのせいで何もかもがつまらなくなってきている

 

「その時は…そうですね。リベレイまたあの空間でだべらせてもらっても良いですか」

 

「良いよ。好きなだけ滞在すればいい。僕は君達が好きにするのが一番だと思ってるから」

 

 あの異空間は快適な空間だ。ゲームや漫画ネットにさえつながる。あそこでしばらく滞在してゆっくりと身の振り方でも考えればいい。

 

「ってなわけで心配しなくても私は大丈夫ですよ」

 

 

 

 

 

「……そうか」

 

 

 そんな私の能天気な返答に彼は何やら考えていたようだった。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう言えば聞きたかったんですが」

 

「なんだい?」

 

 なにやら考え込んでいた彼が返ってから改めて私はリベレイに気になっていた事を尋ねる事にした。

 

「彼のクラスメイトの方々……あの子たちに一体何をしたんですか?」

 

「うん?」

 

「とぼけないでくださいよ。あの子たちあんな性格じゃなかったでしょ」

 

 私が知る彼らと今生きている彼等とは性格が違いすぎる。外見は知らないが名前と性格が違いすぎたのだ。成長したと言えばそれまでだがそれでも気にはなっていた

 

「あーそうだね。君には話してもいいかな」

 

 コホンと咳ばらいを一つ。そしてリベレイは企みの一つである目的を割とあっさりと話してくれた

 

「実はね、君の言う通り少しばかりあの子たちの性格を矯正したんだ。もう少しだけ大人っぽくしたって言うのかな。気を悪くした?」

 

「別に咎める気はありませんけどどうしてですか」

 

 私にとっては彼が全てだ。それ以外はどうだっていい…とまではいかないが理由は気になるという物。

 

「だっていっつも同じ性格だなんて飽きるでしょ?」

 

「と言うと?」

 

「南雲ハジメに嫉妬して遠巻きに眺めるモブ。何も出来ず動いたとしても成果は得られないモブ。居るだけで価値も存在も何一つとして必要のない哀れな背景達」

 

 原作の事を言ってるのだろうか。私からしてみれば子供の集団であり、活躍できなくても仕方ないし彼らの役割は主人公の太鼓持ち、その為の彼等だと思っていたのだがどうやらリベレイは違った意見を持っているようだ

 

「何処を見てもそんな存在なら、たまには彼らが活躍したっていいじゃないか。彼等もまた主人公と何ら変わらないニンゲンなのだから」

 

「そういうもんですか。まぁ私にとしては光輝君らが思ったよりカッコよくなった位の感想しか抱けませんでしたが」

 

 王都を守るために頑張った彼等。なるほど確かに原作とは違った結果となった訳だ。それがリベレイにとっては満足だったのか終始ニコニコとしている

 

「原作の知識をそれとなく植え付けさせたけど上手く行って良かった。うんうん彼等の役目はあんな感じで十分なんだよ。彼等は実によく頑張った、本当に良かった良かった」

 

(……人のこと言えないですけどコイツやべーですね)

 

 原作の知識を植え付けさせる。性格形成に大いに影響を与えそうだがそのおかげで彼らは成長したのだろうか。人体実験見たいであまり気分はよろしくないが私が女性にされたので今更でもある。

 

 気になる事はまだまだあるが余り詮索するのも願いをかなえてもらった手前どうかと思う。なので最後にもう少しだけ気になる事を聞くことにした

 

「最後に聞きますが白崎さんは、彼女は何なんですか。あの子だけ妙な違和感が」

 

 原作の知識を逆流させたというのならあの子の違和感は納得はできる。出来るのだが…気のせいだろうか他のクラスメイト達と比べるとズレている様な気がするのだ 

 

「……彼女は特別なんだよ」

 

「?」

 

「王女様と一緒さ。とある世界線からの来訪者であり僕にとっての共犯者、尤も彼女たちは分霊体ともいえるけど」

 

 どうやら私に黙って白崎香織とリリアーナ・S・B・ハイリヒはリベレイにとって特別な人選らしい。私にとっては謎の人選だが…

 

「彼女達、特にリリアーナ王女を見て何か思う事はあるかい」

 

「…特にありませんよ?王女様とは出会う事すらありませんでしたし」

 

 王城にいるからと言って王女と出会うなんて稀だ。見かける事はあっても特に話すことはないし接触する必要制も無かった。

 

「そっか。まぁ接触は必要最低限と釘を刺したからこんなものか」

 

「??? なんか私を使って遊んでいませんか?」

 

 ガッカリと肩を落とすその様子からしてどうやらリベレイの目論見は外れたようだが。まさか私達に何かしたのだろうか

 

「いや別に?精々が彼に対して主人公補正をちょっぴり付け加えた程度だよ」

 

「は、はぁ!?まさか彼の活躍を主人公補正と言いやがりましたかコンチクショウは!?」

 

 まさかまさかの主人公補正と言いやがったコイツ!何?もしかしてあの彼の頑張りは主人公だったからだと!?

 

「それ完全に私に喧嘩売ってますよね!?ええ、ええ、分かりましたその喧嘩買いますよ馬鹿ー!!」

 

いや、主人公補正じゃなくて正確には勇者補正…あ、ゴメンゴメン泣かないで!泣きながら攻撃してこないで!?」

 

 勿論私だってそんな気はしていたよっ!所詮只の凡人でしかない私があんな大立ち回り出来る筈がないって!それでも夢見たって良いじゃないかチクショー!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「だからあくまでも少しだけだってば!本当にゴメンって!」

「うるせー!このポッと出が!お前なんか所詮便利な転生神さまでしかないんだよー!」

「お、言ったね。最初に出てきて後は何の関わりもない捨てキャラと言ったね。よし戦争だ」

 

 

 こうして彼のいなくなったオルクス迷宮に私たちのしょうもない喧嘩の喧騒が響くのだった…

 

 

 

 

 

 

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