ありふれたクラスは世界最凶!【完結】   作:灰色の空

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あっさりと行きます


あばよトータス

 その後の話をしよう。戦争に打ち勝った俺達は当たり前だが戦後処理をすることとなった。勝利の貢献者である俺たちではあるがだからと言ってそのままハイ終わりでは居心地が悪かったのもあった。

 

 力がある者達は瓦礫の運搬や建物の修繕などできる限りの事をした。男子連中で言えば坂上を筆頭に永山や近藤、意外な事に檜山も積極的に動いていた。

 

『ボーっと見ているだけなんて恥ずいだろ』

 

 と言った檜山は文句ひとつ言わず檄を飛ばしながらよく働いていた。流石檜山あざとい、あざとすぎる。

 

 

 怪我人の治療は女子生徒を主にして白崎が中心となった。当たり前だが負傷者の出ない戦闘なんてない、重傷を負った物や巻き込まれた民間人なんているのは当然だった。

 

 でも幸いなことに死者は誰も居なかった。魔人族も人間族も誰も死ななかったのだ。不思議に思っていたが白崎の

 

『そう言う事だってあるよ』

 

 という言葉で考えるのをやめた。恐らくだが白崎が何かした可能性がある。だけど追及するのは嫌な予感がするし結果が良ければそれでいいのだ。

 

 

 戦後処理として停戦協定だとかの政治的な話はリリアーナ王女が全て纏め上げていた。本来ならハイリヒ国王が出てくるはずだが寝込んでいるとか教会の人間は行方不明になったのだとか。

 

『え?イシュタルやほかの神官が居なくなった?』

 

『ええ、戦争が終わった翌日教会には誰もいませんでした』

 

『おかしいな。確かあの時は眠らせたり壁にめり込ませたけど居なくなるなんて…それにイシュタルは遠藤たちが縛ったって』

 

『しかし居ないのは事実です。大方魔人族に恐れをなして逃げてしまったのでしょう』

 

『………なんか隠してません?』

 

『貴方が気にすることはありませんよ。それよりも政治的な事は私にお任せください、貴方方はなすべき事を為したのですから』

 

 都はリリアーナ王女の弁。気にはなったが彼女の好意に甘えて貰う事にした。細かいところは分からないがすべてを丸投げさせてもらい後の事はお願いしますと頼んだ時の嬉しそうだけど怒っている様な何とも言えない表情が少しだけ気になったぐらいだった。

 

 魔人族達は全員魔王が連れて帰っていった。解毒薬を飲ませた後はもう戦う気力もないのか又は魔王の説得により何も出来なくなったのか、暴れるなんて危惧していたことは一つもおこらなかった。

 

『フリード……』

 

 大人しく魔王の後について行く魔人族たち、その中で指揮官だった男の姿を天之河光輝だけは複雑そうに見送っていた

 

 

 

 

 そして俺と南雲は反省の意味を込めて調合と錬成の技能をフルに使っていた(もちろんレネゲイドウィルスの力も使ってだ)

 

『生活用水に解毒薬を混ぜれば無事解決では…?』

 

『今度それを言ったらマジで切れますよ』 

 

 冗談にマジ切れされそうになりながらも解毒薬や『元気の水』を作り続けた。まぁ水に俺のソラリス能力をたらせばそれでいいのだからコスパが良すぎて何の苦もないのだからいいんだけど

 

 南雲の方は錬成の職人さん達と一緒に町へ繰り出していった。何でも家一軒を数十分で補修し続けたとか。それを職人たちでフルに回していたので住居の心配はなさそうだ。数日もすれば街並みも平時と変わりない事になるだろう。

 

『……錬成ってこういう事に使うのが普通なんだよね』

 

『?』

 

『なーんで僕は兵器を作るとか思いついたんだろうね』

 

 何があったのかは知らないが錬成という能力について思うところがあったらしい。何かは知らんが武器を作るよりは道具を作った方がカッコイイとか何とか言ってた。俺には耳が痛い言葉だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 と、言う事で戦争終結から数日が立って、俺達は日本へ帰れる日がやって来たのだった

 

 

「なんだか呆気なかったね」

 

「そんなもんじゃないの異世界召喚なんて」

 

 より正確に言えば一つの物語が終わる時って奴だろうか。最初は大層な始まりだったとしても途中でダレて結局は尻すぼみになってしまうという

現実のラノベと同じようなものだ。事情を知ってる俺からすればもはや溜息すら出てこない

 

「お前らよーもうこれで最後なんだぜー何かねぇのかよー」

 

 不満げなのは清水だ。日本に帰れると分かった瞬間やっぱり名残惜しい気持ちになったらしい。気持ちは凄く良く分かるが俺たちのいるべき場所はここではないのだ。少し長かった旅行だと納得するしかないだろう

 

「楽しかった。それでいいんじゃね?」

 

「はぁー まぁいけどよ。明日から普通の生活かぁ」

 

「まぁまぁ ゲームやネットが出来ると思えばそれでいいじゃん」

 

「そうだな。帰ったら久しぶりに積みゲー消化かっすっか」

 

 不満げな清水は南雲に慰められて少しだけ納得したようだ。なーに帰って一か月もすれば良い思い出だったと笑えるようになるさ。 

 

 

 日本へ帰れる手はずは全てエヒクが用意するとの事だった。まぁ真相としてはアイツが呼び出した以上アイツしか返せないって話なのだが。

 

 

「えーお土産持って帰っちゃ駄目なの~」

 

「駄目だってさ。何でも座標が安定しなくなるとかなんとか」

 

 斎藤と近藤の雑談の通り俺達はトータスで得たものを日本へ持って帰る事は許されなかった。武器は当たり前だとして小道具や衣服類、果てにはお土産品まで。不満がクラスメイト達からちらほらと出ていたがエヒク曰く

 

『異世界に未練を残すのは駄目だよ。君達が生きていくのは日本なのだから』

 

 との事だった。まぁいつまでも異世界に心を残しておくなって事だろう。何時までもいつまでも異世界気分なんて恥ずかしいからな。

 

『特に身体能力なんてもっての外。君達は普通の高校生なんだから』

 

 当たり前だがこの世界で鍛え上げたステータスや技能の数々も無くなる事になる。何人か残念がっていたやつがいるがこれは当然の処置だろう。勿体ないのは分かるが日本では必要のない物だ。あるだけで要らない問題を引き起こす

 

「あの、何が何だかわからないうちに戦争が終わったってどういうことですか?誰か説明を」

 

「あー愛ちゃん先生には後で説明するから。だからそんな蚊帳の外に置いていかれた顔はしないで、ね?」

 

 園部に慰められながらも狼狽えているのは愛子先生。もしかして襲撃の時寝ていたのだろうか?そんなはずは無いと思うが…ともかく蚊帳の外なのは間違いない。なにせ俺達が何やかんやで終わらせたのだから。

 あの人は戦争では何も出来なかったが俺達が日本へ帰ってからのフォローをお願いしたい、誠実に 

 

 

 

「さて、日本人の諸君。準備は良いだろうか」

 

 そろそろ準備が終わったのかエヒク…一応まだ魔王をやっているので魔王と称する。魔王が改めて俺たちに確認する。

 

 場所は王都の前にある平原、だった場所。中野やメルド団長が散々暴れ回ったので草が無くなって荒れ地になっているが取りあえず平野。

 

 いるのは俺達日本人組とにこやかに笑ってる魔王と何故かこちらを見ている王女と包帯を巻きまくっている団長と俺を盾にするように隠れているアリス

 

「ってお前なんでここにいるんだよ」

 

「いえ何故かリリアーナ姫が私を獲物のような目で見てくるので」

 

 確かにチラチラとこっちを見ている、何故か訳が分からん、がだからと言って離れるのも違うし…取りあえず好きにさせておくことにする。

 

 そうこうして居る内に魔王による日本へ帰れることへの最終確認が行われていた。

 

 曰く君達の周りに魔法陣が設置されておりその中にいたものが日本へと転移される。

 

 転移される場所は呼び出された場所と同じ場所であり、つまり俺達のあの教室という事になる。

 

 ステータスや技能、このトータスで得たものは全て消失されることとなる(なので俺ら全員制服に着替えてあるという訳だ)

 

 この長年の戦争を終わらせた功労者へのリップサービスとして呼び出された時間と全く同じ時間に帰らせる。

 

 という事だった。

 

「え?つまり俺達が居なくなった昼休みの時間にに戻るという事?」

 

「その通りだよ野村君。時間も場所もすべて元通りという訳さ」

 

 野村の呟きににこやかな笑顔で答える魔王。全てを知っている身としては滑稽な話だがその答えによかったと安堵する声が多数。

 そりゃそうだ、何だかんだで半年以上此処にいたわけだし家族の事や学校の事、世間の事も合わせて色々と心配することがあっただろう。

 

 

 ほぼいたせりつくせりなこの状況、やっぱり怪しむ者はいる訳で

 

「んなこと言って。俺たちをまた別な所に飛ばす気じゃねぇだろうな」

 

 不敵に笑う檜山。例え相手がどれだけ強大であろうとも挑むその姿は実にカッコいいがまぁソイツに言ったところで意味が無いわけで

 

「いやいや、もう僕かって十分だよ。信じるのは難しいだろうけど、ちゃんと君達を帰すさ」

 

「……? そうかよ」

 

 と言われてしまえば納得するしかない。そもそも戦争が終わったのにいつまでたってもエヒトから連絡がないわけだからね。もう自分たちが帰れる手段はこの魔王を信じるしかないって事だから。

 

 

 そんなあ―だこーだを繰り返して。皆の前に出てきたのはリリアーナ王女

 

「皆さん、このたびはこのトータスの危機をお救い下さりありがとうございました」

 

 深々と頭を下げる王女は何とも絵になる姿で。

 

「助けて貰ったのに私達には貴方方へ何も返す事が出来ません。それがとても心辛く想います」

 

 悲痛そうなその表情。それでも王女は戦争が終わった翌日ささやかだが俺達へ豪華な晩餐を用意してくれたのだ。今更文句を言う奴はおるまい

 

「貴方方のお陰で民は平和の時を得ることが出来ました。重ね重ねですが有難うございました」

 

 別れの挨拶は後を残さない様に割とあっさりと。そう言って微笑んだ王女は…気のせいだろうか俺を見て口角を上げたような気がした。

 

 

「あー俺からも何か言えりゃ良いんだが…」

 

 言いにくそうにするのはメルド団長。仕方ない、割とさっきまで重体で寝ていたのだから。体を無理に動かしすぎたせいで反発が出てきたらしい。なにか理由があるとホセ副長は言ってたが…もう知る事はないだろう。

 

「ありがとな。お前らのお陰で俺が守るべき人達は無事だった。俺の可愛い部下達も。お前らには感謝してもし足りんぐらいだ」

 

 何処か力が抜けた様に笑うメルド団長。その姿に思うところがあるのか何人かのクラスメイトが寂しそうにしていた

 

「もっとお前らに色々と教えたかったがそれはお前らの親や教師が教えてくれるだろう。ほんのひと時でも俺達がお前たちの人生に何かしらの意味があったらと俺は思う」

 

 異世界の騎士は最後まで男臭くそれでいてカッコイイ漢だった。

 

「お前達の幸運を願っている。さらばだ、異世界の友たちよ」

 

 

 

 

 そうしてその時はやって来る。魔王が俺たちの前に立つ、それが異世界での最後の光景となる  

 

「さて、そろそろこの異世界転移も終局となる時が来たようだ。日本人の君たちはこの異世界(トータス)をどう思ったのだろうか」

 

 朗々と語るその姿はなるほど、魔王とも神とも黒幕ともいえる堂々っぷりだった。

 

「争いばかりする愚者共だと思ったのだろうか。剣と魔王のおとぎ話と喜んだだろうか。それとも君達の世界と本質は何も変わらないと思っただろうか」

 

 ゲームのようなファンタジーから俺達は現実へと帰る。

 

「今から君たちは君たちのあるべき日常へ戻る。戻ったらこの世界での超常の力が消える、だが君達がこの世界で経験したことは決して無くならないだろう」

 

 退屈で詰まらなくてもそれが俺たちの生きる日常。ありふれた日常へと帰っていくのだ。

 

「この世界で感じた事、体験した事。様々な事をどうか己の血肉とし君たちの日常へと生かして欲しい。これから始まる君たちの未来へと役立てて欲しいと身勝手だが切に願う」

 

 魔法陣がが徐々に光っていく。ついにこのトータスとお別れの時がやって来たのだ。

 

「異なる世界の友人たちどうか息災で」

 

 俺の傍にいたアリスがそっと離れていく。日本への送還に巻き込まれない様に、俺の日常を壊さないために

 

「君たちの未来に幸あらん事を」

 

 

 王女と魔王が微笑んで光が強くなって行く。

 

 

 

 

 

 

 

 全てが白へと染まる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その瞬間、俺はすぐさま腕を引っ張った

 

 

 

 「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして全ては真っ白へ

 

 

 

 

 

 

 

 




次回恐らく前編後編になると思います
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