ありふれたクラスは世界最凶!【完結】   作:灰色の空

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どこまでも自分本位


エピローグ 蛇の足

 

 

 

 

 

 

 

 生前、私は自己評価が低い人間だった。もう生前の事はあんまり思い出せないが(リベレイが何かした?)それでも自分の事は好きでは無かった。

 

 例えどんなに他人から持てはやされても親友から頼りにされても…少女から想われても

 

 自分で自分の事を好きにはなれなかったのだ。不甲斐なくみっともない自分を毛嫌いしていた

 

 

 そんな私にチャンスが訪れた。

 

『君の望みを教えてよ』

 

 エヒク・リベレイ。神を名乗らない神のごとき力を持つ存在。ソレは鬱屈していた私の願いを聞き出してきたのだ。

 

『自分を愛したい。その為に自分はどういった存在なのか知りたい』

 

 自己評価が低い私はその願いに無我夢中で飛びついた。チート、ハーレム。そんなものは興味はない、そんな物を得たところで何一つとして意味が無い。

 

 

 異常なまでの自己承認欲求。誰かからではなく自分が自分を認めたい。

 

 他人の評価はどうだっていい、ただ自分を嫌いたくない呆れてしまいたくない。失望したくない

 

 

 結局の所私は私を愛していたいのだ。ただ貪欲なまでに

 

  

『……彼、頑張っていますね』

 

 

 トータスで頑張る自分を見てその思いからは解放されていく。強さに悩み親友を助け、薬を作りながらクラスメイトを強化して、挙句の果てには王都に罠を仕掛けて。

 

 自分はまさしく主人公だった。私が願い愛したかった物語の主人公となったのだ。……のちに聞かされた主人公補正には憤慨物だが

 

『素敵ですよ。…他の誰よりも』

 

 自分の姿を見て頬を緩ませる。勿論彼は私ではあるが私ではない。育った環境や成長する中で感じたもの、何もかも違う以上同一の存在ではあるが同一人物ではない。

 

 

 だがそれでもよかった。自分が立派になるのを見るのは何よりも嬉しくて

 

 

 自分の歪んだ承認欲求を満たせるのだから

 

 

 

 

 

『……じゃあお前はどうするんだ』

 

 だから彼から今後の事を尋ねられた時、私は内心困惑した。だって私の存在価値はトータスでの彼を見る事だけだったから。

 

 主人公として動く自分を見終わった後の事なんて考えてすらいなかったのだ。夢中になっているゲームの終わった後を考えないのと同じ様に。

 

 

 自分の悲願だった自己愛は満足いくまでの成果だった。

 

 でも、私は自分の存在価値を認めた後どうすればいいんだろう。

 

 彼から尋ねられた後、自分の身の振り方でどうしようもなく困惑した。

 

 

 

 

 

 そんな事を真剣に考える間もなく、召喚された者達は日本へ帰る事となった。勿論妨害どころか引き留めなんてする気はなかった。

 

 彼には彼の人生があり、帰る場所がある。同じ存在だとしても彼の人生は彼の思うがままに生きて欲しいからだ

 

 

 

 

 だから魔法陣から離れたのに

 

 

 邪魔なんてしたくなかったのに

 

 

 

 

「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは…俺たちの教室だ!」

「やった!帰ってこれたんだ!」

「お父さん…お母さん!」

「うおっ!マジで昼休みの時間だ!?」

 

 騒がしい声が聞こえてくる。歓喜にあふれた若者たちの声。知ってる私はその声の主たちを知ってる

 

「…あの魔王マジで約束守りやがった」

「胡散臭いくせに意外と義理堅い奴だったな」

 

 そうでしょうよ、ちゃんと物語を終わらせた貴方達はアレの興味の対象外となってしまったんですから。

 

「良かった…皆無事で本当によかった」

「おいおい涙目になってんぞ光輝」

「どうかしたの光輝君。具合が悪いなら僕の家くる?」

「大丈夫だよ恵理。ちょっと嬉しくってさ」

 

 そこ、嬉しいのも青春したいのもいいけどよそでやってくれません?ああ、すいません私が異物でしたねつづけてどーぞ。

 

 

 

「いたた……」

 

 さて、現実逃避もここまでだろうか。いい加減現状を把握して目の前で私の身体をがっちりホールドしながら痛さに呻いているこやつに詳細を聞かねば

 

「あ、成功だ」

 

「……おめでとうございます。私」

 

 場所はどこかの学校の教室、時間帯は原作通りなら昼休み。私は目の前にいる彼のせいで異世界トータスから日本へと召喚されてしまったのだ。

 

 

 

 

 

 トータスで魔法陣が光る瞬間、彼は私の腕を掴み引っ張ったのだ。突然の事で避ける事も躱すことも出来ず阿保みたいに間抜け顔を晒しながら私は彼らと一緒に送還され、そして今ここに至る。

 

「柏木君、ちゃんと無事…え?」

「柏木、おお前、その人」

 

 この声は南雲ハジメと清水俊之か。ああ、頼むから騒がないでくれ。私は裏で生きる生物なのだ、日向で生きるにはつらいのだ

 

「…何をしているんですか」

 

 低い声が出たのはもはやどうしようもない。彼の事を思い離れたのに彼がまさか私をこの世界に連れてくるなんて。

 

「お前を連れてきた」

 

「だからその理由を聞いて「え、トータスのメイドさん?」っ!?」

 

 彼に理由を尋ねようとした時にようやく自分の服装に気が付いてしまった。私は今トータスのメイド服なのだ、もはや慣れ過ぎてどうでも良かったが此処では余りにも異質な服装だったのだ

 

「~~~!!」

「おお、赤くなってる」

「誰がそうさせたと思って!」

 

「おいおい、アレぁトータスの人じゃねぇか」

「うん?魔王って確かトータスの物持って行っちゃ駄目っていあったのになんであの人はいるの?」

「もしかして、魔王のガバ?」

 

「……こうやって見るとトータスの顔面偏差値凄くない?」

「私達より明らかに上ッ にじみ出る強者の貫録ッ!」

「八重樫さんや白崎さんレベルがごろごろといたもんね…」

 

「~~~!!」

「おお、さらに耳まで赤くなった」

 

 抗議の声を上げたいが、クラスの皆が私を見てくるのでもはや声を出すのすら難しくなってくる。

  

 分かるだろうか、教室の一部に異物が紛れ込んでいてそれが自分だという事に。正直さっさと逃げだしたいのに先ほどから神代魔法が使えない。

 

 彼等が使えないのは知ってるがまさか私も使えないなんて。リベレイが小細工をしたと考えるしかない

 

「あの、柏木?どうしてその人を連れてきてしまったんだ」

 

「あーうん。ちょっとな」

 

 天之河光輝君が恐る恐る聞いてくるが彼ははぐらかすだけで明確な理由を言わない。寧ろ私の腕を捕まえて教室から移動しようとさえしている

 

「んじゃ 帰るぞ」

「ちょちょッ 何を考えているんですか!?」

 

「何って帰るんだよ。俺たちの家に」

 

「……は?」

 

 彼は私だ。それなのに彼の考えていることが何も分からないのだ。突飛な行動にはぐらかす言動。意味があって理由もあるはずのに何もわからない。  

 

「え、え?柏木君今なんて言ったの?」

「連れて帰るって……自分の家に」

「ひゃー!?まさかのお持ち帰り!?」

 

「マジかよ…柏木の野郎女子を連れ込んできやがった」

「アイツはいつかやらかすと思ったよ」

「だからと言って普通異世界から誘拐するかぁ?」

 

 クラス内の男子女子が騒ぐ。やめろ私はノーマルだ。何が悲しくて自分とそういう関係にならなければいけないのだ。お前達だって鏡に映った自分と付き合えないだろう?そう言う事だ!

 

「柏木君、学校サボるの?」

「おう、悪いな突然」

「いいよ、君と僕の中でしょ。後で説明してくれるんだよね」

「勿論、俺の変わった性癖の話になるけどな」 

 

 内心では文句を垂れつつも羞恥心のせいで何も言えない私はそんな彼らのやり取りを耳にする事しかできない。だーれが変わった性癖じゃ!私はノーマルだっつの!

 

「つーわけですまん天之河。サボるけど見逃してくれ」

「……ちゃんとした理由があるんだよな」

 

 あの天之河君?私一応異世界の人間でほぼ拉致られた様なものなんですけど?そこら辺問い詰め…ああ、はいそうですか。貴方は彼を信じてくれるのですね。代わりに礼を言います有難う御座います。

 

「ああ、これは身内の問題だからな」 

 

 鮮やかにそう言い放った彼は私を連れてそのまま教室の外へ。教室ではまだざわついているが天之河君が纏め上げるでしょ多分

 

 

 

 教室から出た私達はそのまま学校の玄関へ

 

「柏木?そろそろ授業が始まる、って何じゃその子は!?」

「すんませーん。ちょっと早退します~後この子は部外者なので外へ連れ出していきます~」

 

 通りかかった先生にへらへらして止まらず連れ出していく。幸いにも私の靴は外用のブーツなので問題なかったが…廊下とか汚れなかっただろうか。

 

 

 玄関を出た私達は、物凄く普通の住宅街を歩くことになった。

 

「……んで…ですか」

「うん?」

 

「何で私を連れてきたって言ってるんですよこのポンコツ野郎が!」

 

 ようやく言葉が出せるようになったのでありのままの暴言を彼にぶつける。それでも彼の表情は変わらず寧ろ嬉しそうだ。

 

「まぁまぁ落ち着いて」

「これが落ち着いていられますか!?あーなんでメイド服晒しの公開処刑を受けなければいけないんですかぁ」

 

 彼は制服だからいいとして(でも昼頃に学校の外を歩いてるのは良くないと思う。補導されないのか?)私の服装はメイド服、さっきから通行人にチラチラと見られているし、正直引きこもりたいぐらいだ。

 

「メイド服って言うよりお前の顔が良いからじゃね?」

「好きでこんな顔になった訳じゃないんですけどね」

 

 力を失い反抗する気力も無くなり仕方がないので彼のなされるがままに歩くことにする。もうどうしようもないのだ、精々身体の力が成人男性三人分ぐらいしかない

 

「で、どうしてですか。周りには誰も居ませんよ」

 

 観念して改めて彼に私をここに連れてきた理由を問いただす。周りには人がいないしいたとしても聞く必要もない話だ

 

「あー その、怒るなよ」

 

 照れたようにしてようやく彼は理由を話す。異準物である私を連れてきた理由を

 

 

 

「お前、つまらなくて寂しそうだったから」

 

 

「―――は?」 

 

 

 思わずきょとんとするのは無理もない。だって彼の言った意味が分からないのだから

 

「だってさ。お前俺と話すときは楽しそうだったけどそれ以外の時はずっとつまらなさそうにしていたもん」

 

「理由は分かるよ。正直興味のないこと以外どーだっていいからな。だから何をしてもすぐに飽きて諦めてしまう」

 

「トータスにやって来た理由は片割れである俺だ。その俺が日本へ帰るとするとお前は目的を失ってしまう」

 

「勿論、始まりがあれば終わりはいつかやって来る。それでも目的を果たしてしまったお前が滅茶苦茶詰まらなさそうだったし」

 

 

「何より一人で寂しそうだったが見ていられなかったんだ」

 

 語るだけ語って彼はそのまま黙ってしまった。

 

 

 確かに目的を失った私には全てがつまらなく感じて、楽しみが終わってしまった事への寂しさもあるだろう。

 

 でも普通そう感じたからと言って人を誘拐同然に引っ張って来るのだろうか?

 

「……例え貴方がそう感じたとしても私は違うと思ってたらどうしますか」

 

「うーん。似たもの同士だから間違っているとは思わないけど…そん時はすまん」

 

「軽いですね」

 

「だって俺の事だもん」

 

 自分にしか迷惑を掛けないのだからそりゃ軽くなるか。……何だか深刻に考えていた私が馬鹿らしく感じてしまう

 

 

「お、あそこ見ろよ」

「何ですか?」

「あそこのラーメン屋さん。スープがこってりしていて滅茶苦茶美味いんだ」

「あーそれはいいっすね~。トータスではラーメンなんてなかったですもん」

「今度驕ってやるよ」

「お、男に二言はないでしょうね」

「たりめーだ」

 

 

「……ゲームショップがある」

「そりゃあるって。何だ見に行きたいのか」

「行きたいです。今何のゲームが売られているのか私知りませんから」

「なら寄っていくか?」

「……止めときます」

「何で」

「今の私の服装見て同じこと言えますか?」

「……ごめん」

 

 

 くだらない雑談だ。それが妙に気楽で楽しい。本当にうじうじと考えていた先ほどまでの自分が馬鹿みたいだ

 

「所で何ですが」

「うん?」

「このまま私を家に連れ込むとして」

「人聞き悪いなぁ」

「事実でしょ。家族になんて説明するんですか」

 

 彼には彼の家族がいるが私を連れて行ってどう説明するんだろうか。生き別れの半身?馬鹿馬鹿しぃ、それで納得できる親なんている訳ないっての

 

「考えてない!」

「おっと想像以上に脳無しの言葉が出てきた」

「そこはまぁ…土下座交渉で」

「情けないなぁ」

 

「でも、お前の親でもあるからきっと大丈夫だよ」

 

 その言葉は大変うれしいが傍から見れば頭が湧いているようにしか見えない。お父さんとお母さんに負担をかけるという自覚はあるのだろうか

 

「あ、親で思い出しました」

 

「何?」

 

「今この現状、原作アフターみたいですね」

 

 異世界から女の子を連れてくる。これは原作アフターそのものではないか。何だ結局私はなんだかんだ言いつつも憧れがあったという事か。我が事ながら死にたい。

 

「いやいや、連れてきているのは自分自身だぞ」

 

「私の見た目を見てから言ってくださいよ」

 

 銀髪翠眼の女の子なんて完全に事案である。オマケに異世界からの来訪者。事案どころではない、寧ろこれはやっちゃいました形の主人公だ。ますます死にたくなってきた。

 

「戸籍とかどうするんですかー女の子をホイホイ連れ込んで魔法でどうにかって奴ですか?そう言う卑怯なの嫌です死んでください今すぐに!」

 

「だぁー!悪かったって!そう怒んなよ、そもそも俺全く持ってそんなつもりじゃないから!」

 

「じゃあどういうつもりですか」

 

 あれ?これさっきも同じようなことやらなかったっけ?まぁいいやどうせここにいるのは私達だけ。天丼でも何でも来いって奴だ 

 

 

「これ、お前の里帰り!」

 

「―――は?」

 

 本日二度目のポカンである。さっきと理由が違うのは、色々と考えていたって事?でもそんな事はどうでも良く

 

「里帰り、ですか?」

 

「だってエヒクと出会ってからずっと日本へは来てなかったんだろ」

 

「それはまぁ そうですね」

 

 あの白い居住空間でリベレイと居た後はずっとトータスで過ごしていた。だから日本に来るのは初めて?という訳で

 

「いい加減家に帰ろうぜ。異世界転移とか転生とかもういい加減に終わらせようぜ」

 

「………」

 

 家、私には帰る家はない。そもそも帰る場所なんてあるのだろうか。

 

(…ないですよね)

 

 帰る場所も無く宙ぶらりんの私。本当は分かっている、今後なんてなく物語が終わった以上私は舞台から退場しなくてはいけない事を

 

「暫く俺の家に居ろ。んで好き勝手遊ぼうぜ。今まで出来なかった事を埋めるようにさ」

 

「……」

 

「トータスの事なんて忘れちまえ。あの世界での目的は終わった。休もうぜ、気楽にさ」

 

 異世界トータスでの騒動は終わった。心残りはもう無い、なら舞台上に役者がいつまでもいる訳にはいかない。早急に幕を引かなければいけないのだ

 

 

「…ですね。そろそろ私も休みたいと思ってたんですよ」

 

「だろ」

 

 もういい加減休むべきだ。これ以上は只の蛇の足だ

 

「ほら、あそこが俺の家だ」

 

「へぇ中々良い一軒家じゃないですか」

 

 

 中流家庭の立派な一軒家。表札には彼の家族の名前と彼の名前が載ってある。私に偽名と違って彼の名前は中々いい名前だとクスリと笑う。

 

 ただ惜しむはクラスメイトの一人と名前が被っている所か。

 

 

 

 そんな私を置いて彼は鍵を開けてするりと中へ入っていく。

 

 首を傾げる私を尻目に玄関から顔を出した彼

 

 

 

 

「ほらっ 帰ってきた時に言うべき言葉は?」

 

 

 

 

 

 

 勇者でクラスメイトで黒幕だった自分の旅は

 

 

 

 

 

 

「ただいま、です」

 

 

 

 

 

 

 

 これで終わり

 

 

 

 

 

 

 

 




これにて完結とさせていただきます。
裏設定や残ってしまった伏線があるとは思いますが自分の技量不足で上手く説明できませんでした。
前作関連も何となくで察していただけると助かります。

それでは改めましてここまで読んでいただき有難う御座いました
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