ありふれたクラスは世界最凶!【完結】   作:灰色の空

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 時間帯は夜中。王宮にある騎士団長室にてメルド・ロギンスは部下からの報告書を読んでいた。

 

「ふむ…やはり成長が著しいな」

 

 読んでいる報告書は異世界から呼び出された少年少女たちのステータスだ。部下の一人一人を専属につけ、戦えるように訓練をさせていく。その報告としてステータスと一緒にどういった思考論理か、また戦いについて行けるのかと言う報告なども一緒に記載させていたものを読んでいたところだ。

 

 一通り見たメルドとしての感想は、やはり自分たちとは成長の速度が違うと感じるものばかりだった。自分たちトータスの人間が地道な訓練を重ねてステータスあげていくものを僅か数日間で並ぶような速度で成長していく。今までにないことで分かっていても驚愕するものだった。

 

 コンコン

 

 召喚組の成長の速度に唸るメルドの部屋にノックの音が響く。報告書から上げるとメルドは扉の前へ歩いていく。

 

「誰だ」

 

「俺ッス。メルド団長」

 

 事前に呼んでいた人物が時間通りに来たことに思わず苦笑いしてしまうメルド。扉を開けるとそこにいたのはなんとも嫌そうな顔でこちらを見ているニート・コモルドがそこに立っていた。

 

「…なんスか そんな気持ち悪い顔をして。滅茶苦茶気色悪いッス」

 

「すまんすまん 取りあえず入ってくれ。今茶を出す」

 

「いらねーッス。メルド団長が入れた茶はクソマジィから自分で入れるッス」

 

 そういうとニートはずかずかと部屋の中に入り我が物顔で部屋の備品を物色する。メルドはそんな部下の姿に呆れたように笑う。

 

「ん、どぞッス」

 

「おっとすまない」

 

「礼は良いッス。それよりさっさと本題に入るッス」

 

 部下から手渡された紅茶を楽しむ暇もなくニートが本題に入ろうとする。部下が手ずから入れてくれた紅茶を楽しめないことに少しばかり悲しそうな顔をするが

気を取り直しては話を聞く体制に入る。

 

 実は生産職である2人の少年の様子や訓練状況などを担当教官であるニートの口から聞きたかったのだ。そのためにわざわざ個別に話せるように部屋まで呼んだのだ。

 

「では、報告を始めてくれ」

 

「あいあい了解ッス。 まず2人のステータスなんスけど、報告した通り、全然伸びてねぇッス。全部が3~4ぐらいしかあがってねぇッス」

 

「ふむ …やはり奇妙だ。他の召喚された者たちはドンドンステータスが上がっていく中、あの2人だけ伸びが悪いといういのは流石におかしい」

 

「そりゃ生産職だからじゃないっすか?非戦闘職なんスからステータスの伸びが低いのはおかしくないッス」

 

「だとしたらだ。何故あの2人は他の者と同じような戦闘職にはなれなかったんだ?全員が戦闘職になる中なぜかあの2人だけ生産職。という事はあの2人だけが何か特別な…」

 

「はいはい考察をするのは構わねぇッスけど報告を続けるッスよ」

 

 考え込むメルドにニートはパンパンと手を打って話を勧める。それもそうかと眉間を軽くもむとメルドは紅茶を一口飲みニートの報告を促す。

 

「んで戦闘訓練に関してなんスけど駄目ッスね、特に柏木君」

 

「ほぅ」

 

「ありゃ使いものにならねぇッス。戦争に参加させるのは俺は反対ッスね」

 

 ニートの至極呆れたような声にメルドは口の端をあげる。特に何も言わず目で続けろと話を促す

 

「武器を持てばフラフラする、魔法は適正が一つもない。おまけに身体能力もそこら辺のチンピラより劣る。3重苦じゃねぇッスか」

 

「だから戦争に連れていくのはやめておけと?」

 

「そうッス。真に恐れるべきは有能な敵ではなく無能な味方であるって話をよく聞くッスよね。つまりそういう事ッス」

  

「そうかそうか…クックック」

 

 ニートの報告にメルドは笑いを抑えることはできなくなり口から洩れてしまった。そんなメルドをニートは心底気持ち悪そうに見る。

 

「なんスか。その顔やめてほしいッス。鳥肌が立ちそうッス」

 

「いやいやお前がそんなにあの2人の事を気に入るとは思いもしなくてな。つい嬉しくなってしまった」

 

「あ?いったい何の話」

 

「今話したこと、嘘が入っているのだろう?」

 

 メルドの言葉にニートは固まる。メルドは知っている、ニートがあの少年たちにの事を気に入っているという事を。つくづく気を許した相手には詰めが甘い奴だと思いながら随分とあの2人に入れ込んでいる部下に笑いながら話しかける。

 

「ニート。お前があの2人の事を気に入ったのは知っている。自分の事を尊敬し敬ってくる奴を気に入るのは何もおかしなことじゃない。だからわざと貶し戦争から遠ざけようとしているのだろう。しかしだ。報告に関して虚偽の報告をつくのは見逃せんな」

 

「……ッチ。そこは簡単に騙されてくれねぇッスか。脳筋団長」

 

「あいにくこの騎士団で一番お前のことを理解しているつもりでな。そう簡単に騙される事は出来んよ」

 

「はぁー 分かったッスよ。ちゃんと順番に報告するッス。まずは南雲君についてッス」

 

 南雲ハジメ。錬成師と言う天職を持った線の細い童顔の少年だ。勇者天之河光輝の十分の一のステータスだったため記憶に残っている。

 

「あの坊主か。ニートから見てどんな少年だった」

 

「あの子は他の召喚された子たちと比べて冷静に物事を見ているッス。きっと混乱する異様な状況になってもすぐに判断し動ける人間ッス。今はへっぽこだけどステータスや天職さえまっとうな物だったら騎士見習いにしたかったスね」

 

「なんだ、べた褒めじゃないか。お前がそこまで人をほめるなんて珍しいな」

 

「うるせぇッス黙ってろッス」

 

 揶揄してやるとニートは不機嫌な顔で睨みつけてくるがメルドは気にもしない。

 

「続けるッス。何より南雲君は性格が良いっすね。話をよく聞いて考えているから教えがいがあるッス。あれは無能な味方にはならねぇッス。取りあえずこのまま長所である冷静さを伸ばす様に鍛え上げるッス。どんな事になっても最善を引っ張って来れるような子に仕立て上げようと考えている所ッス」

 

「わかった。引き続き教育と訓練を頼む」

 

 天職が非戦闘だったとはいえ部下がここまで褒めるとは中々の物だとメルドは南雲の評価をあげることにした。 

 

「次は…」

 

「柏木君ッスね。んーあの子は…」

 

「どうした?何か言いづらそうだな」

 

 何やら難しそうな顔をするニートだが被りを振るとそのまま報告を続ける

 

「…いやいいッス あの子は南雲君よりさらに戦闘向きじゃねぇっす。」

 

「と言うと?」

 

「武器を持って手合わせの訓練をしたんスけど、あの子は何もできなかったッス」

 

「むっそれは…」

 

 聞けば足が止まってしまったらしい、しかしそれも仕方ないと思うメルド。なにせ異世界から来た人間なのだ。こことは比べ物にはならないほど安全で治安の良い世界があっても何もおかしくはない。

 

(やはりそういう者が居てもおかしくはなかったか)

 

「気付いているかもしれねぇスけど、対峙した時の柏木君の青ざめた顔を見れば一目瞭然ッス。優しい子なんでしょうね自分たちにとっては何でもない事(殺し合い)にあの子は怖くて震えていたんッス」

 

「そうか、しかしだからと言ってそのままにしておくわけには」

 

「もちろん分かっているッス。このままだとこの世界で生きぬくには少々厳しいッス。だからまぁそれなりには動けるようにはしておくッス。あの子のためにも」

 

「うむ、引き続き教育を頼む」

 

「あいあい了解ッス」

 

 返事をするとそのまま備え付けのソファーに身を預けるニート。話疲れたというよりは職務が終わってオフに切り替わったのだろう。見事にだらけ切っている。

 

 メルドはそんなニートを咎めることなく事務作業に戻る。召喚された者たちの訓練内容や通常の業務などするべきことはまだまだあるのだ。

副隊長であるホセに通常の事務作業を無断である程度は押し付けているのだが、だからと言ってずっとそのままでいいわけがない。やるべきことをするために集中するメルド。

 

「……ここからは俺の独り言だ」

 

 書類を見たままメルドは一言呟いた。それが何を意味するのか付き合いがそれなりにあるニートはよくわかっていた。今から話すことは他言無用のメルドの直感から来ている話だと。

 

「あの者達の中で気になる人物がいる。名前は…」

 

「火術師、中野信治。召喚されてきた者達の中で最も異端の匂いのする者」

 

 チラリとニート見るが目をつぶって完全にだらけ切ったままだ。言いたいことは理解しているのだろう。

 

「…独り言に返事を返すのは止めとけ。兎も角隠そうとしているようだがアイツは俺達側の人間、より正確に言えば」

 

「自分と同じ()()()()()()の人間ッスか」

 

「ああ、多分な。…そして強い。おそらく俺と同格」

 

 ピンと空気張り詰める。自分と同格と聞いてニートの警戒度が上がったのだろう。それほど中野信治と言う男がメルドには異端に見えたのだ。

 

 ステータス上は普通の術師と言っていい能力ではある。傍から見たって多少落ち着きがある少年とみられるだろう。それは中野の担当でもあるメルドの部下カイルからも報告されていた。

 

 しかし匂うのだ。只の少年ではないと、自分やニート、副長ホセと同じような同類のような直感を感じるのだ。

 

「まぁ、今の所何かをするそぶりも見受けられないし、他の奴らにも隠そうとしているところからヘタに接触しないのが賢明だろう、寧ろ迂闊に触れると大火傷では済まされん」

 

「…根拠は」

 

「無い。俺の直感だ」

 

 呆れたような溜息が聞こえてきた。隠そうとしている素振りから他の者に知られたくないのだろう。だから今は様子見と言うのがメルドの意見だった。突っついて大火傷を負ってから後悔するのだけはしたくはない…最も火の用心も必要な事でもあるのだが。

 

 確認したかった雑談を終え書類作業に戻るメルド。そのままある程度の時間が過ぎ深夜になった時だろうか。ぼそりとメルドだけにしか聞こえない声でニートは話しかけてきた。

 

「…なぁメルド」

 

「なんだ」

 

()()()()()()()()()?」

 

 ニートは天井を見上げたまま顔をこちらに向けない、しかし口調と雰囲気が変わり先ほどまでの軽薄さが抜けていく。

 

「あの子たちは戦いという事からほど遠い場所で育ってきた人たちだ。それをまぁ人間族が危機だと言うだけでこの世界に無理矢理連れられてきたんだ」

 

「……ああ」

 

「武器を持ってはしゃぐ南雲君と柏木君の姿を見ていたらさ俺思ったんだよ。ああこの子たちは本当に武器をもって人を殺したことがないんだって」

 

 メルドは何も言わない。しかしニートは構わず言い続ける。

 

「俺達がやっていることは何も知らない子供に人殺しの仕方を教えて、そして国のために死ねっていう外道なことをしているんだぞ?」

 

 メルドは口を挟まない。当然そんなこと知ってるからだ

 

「あの子たちは故郷への帰り方が分からない。そんな子供たちを帰らせるために戦争に参加させるなんて間違っていないか?」

 

 メルドは口を開かない。ニートの疑問がもっともだと理解しているからだ

 

「そもそも変な話じゃないか。確かに魔人族も魔物も脅威だ。人間族が負けてしまうのは仕方ないかもしれない。しかしそれはオレ達がただ弱かった。それだけで済む話だ。なぜわざわざ人間族を助けるという名目でほかの世界の人間を呼び出すんだ?一体エヒト神は何を考えているんだ?これじゃまるで愉快犯じゃ」

 

「そこまでだ」

 

 メルドの静かでそれでいて有無を言わさぬ声でニートを黙らせる。静寂になった空間でしばしメルドは部屋の周辺の気配を探り誰もいないことを確認してから声を出す

 

「さっきまではただに独り言として聞き流したが今の言ってはいけない言葉だ。誰が聞いているかわからない状況で滅多なことを口に出すんじゃない。口を慎めニート。」

 

「………了解ッス」

 

 ピりついた空気が霧散しさっきまでの緩やかな空気が戻ってくる。メルドはしばし長い溜息を吐くとすっかり冷たくなってしまい不味くなった紅茶を飲み干す。

 

「お前の言いたいこともわからんでもない。何も知らない子供たちを戦争に参加させるなど我ら騎士団が不甲斐ないと言外に言われてしまったようなものだ。しかしだ。だからと言って腐ってはいけない。俺達は国を人を、弱き者たちを守るために騎士になったんだ。その事だけは忘れてはいかんぞ」

 

「肝に銘じておくッス メルド団長」

 

 そういってだらけ切った体を起こし欠伸を一つし部屋から出ようとするニート。そんなニートに念のために考えていたことを話しメルド

 

「そういえばあの2人は生産職なんだから、錬成と調合の練習もさせておけよニート。ひょっとしたらそっちの方で化けるかもしれんぞ」

 

「見ている限りでは結構難儀しているッスけどね。分かったスよー」

 

 そういって欠伸をした後部屋から出ていくニート。部下からの言葉にいろいろ考えを巡らせながらメルドの夜は更けていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 




一言メモ

担当教官 召喚された神の使徒にメルド直属の部下たちが教官が就くように配置されている。主な仕事内容は指導と交流と…
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