ありふれたクラスは世界最凶!【完結】   作:灰色の空

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違和感に密談気にせず出発!

 この世界に来てから大体二週間がたっただろうか。今日も今日とて訓練日和だ。嫌なわけではないしニート教官は気楽に話せる人なので問題はないのだがふと考えてしまう事がある。

 

「一体いつまで訓練…てかこの世界にいればいいんだろう」

 

 今は極力考えないようにしているのだが、いつになったら日本に帰れるのだろうか。人間族を救うっていうのは具体的にどうするんだろう。

 魔人族との戦争に勝つ?でも戦争ってのはそんな簡単に終わるのだろうか。もしかしたら1年2年…最悪十数年ってこともあり得るかもしれない。

 

 天之河達はやる気になっているが本当にこのままで大丈夫なのだろうか。それとも皆理解はしていても気が付かないようにしているだけなのか…

 

「いかんなー悪いことしか考えられん」

 

 いつもなら一人では考えずに南雲と話をしているのだがあいにく今日は先に訓練所に行っているらしい。今から慌てても仕方がないのでゆっくりのんびりと行くとしましょう。

 

 

 

 

 

 

 何かがおかしい。上手く説明は出来なかったが自分の身体が何かおかしいのだ。

 

 そう思い手のひらを見てもそこにあるのは、正真正銘の自分の手だった。

 

「グッ…! おい南雲!お前一体何をしやがった!?」

 

 自分の目線より下で驚愕と怒りが混ざった声が聞こえる。何も変わっていない自分の手の平から視線を外し声の主を見る。声の主は、文字通り地面に埋もれていた。首から上だけが地面からひょっこり出てきており、それが妙な可愛げがあった。

 

「おい…お前なんで俺を見て笑ってんだよ!?さっさと助けろよ!?」

 

 埋もれていたのは自分の訓練相手、檜山大介だった。

 

 何故檜山が地面に埋もれているのか、それは今より少し時間をさかのぼる。

 

 

 

 本日の訓練はハジメの教官である、ニート・コモルドは私用があるとの事で自主訓練となったのだ。訓練の時間になっても未だ来ない親友を待つまでの間、自主的にストレッチをしていたところ檜山に半場強制的となる形で合同訓練に付き合わされてしまったのだ。

 

『色々やってるようだけどよ、へへっこの俺が直々に訓練の成果を見てやるぜ』

 

 ステータスが低い自分の面倒を見るためか、又はちょっとした八つ当たりと優越感に浸りたいためか。恐らくその両方だろうと考え、渋々ながらも檜山達との訓練をすることになったハジメ。

 

 訓練自体は体を動かすことが主流なので、特に問題は無かった。意外にも檜山達四人の合同練習は中野が上手く気を回してくれたので事はスムーズに終わった。

 

『んじゃあ 体が(ほぐ)れたところでいっちょタイマンやるか』

 

 無事に終わるかと思った訓練はそこで終わらず檜山がニヤニヤと笑いながらそう提案してきたのだ。当初は断るもののねっちこく絡んでくる檜山に辟易してハジメは受け持ったのだ。

 

『なにかあったらすぐ止める。…お前らしくやってみろ』

 

 と、審判役を受け持った中野に言われたというのもあって受けたというのが正しいのだが、ともかく試合方式の戦いは始まった。

 

 

 訓練用の剣を両手にもった檜山は迷いなく突撃してくる。戦力差があるのに行き成りそれかよっとか非戦闘職業だって事忘れているんじゃ…など思いはしたが、瞬時に頭を切り替えたハジメは、この世界に来て得た能力、『錬成』を使うつもりだった。

 

 少しだけ、檜山の前に穴をあけ躓かせて転ばせる。そして檜山に馬乗りになり王手をかける。そうするはずだった。

 しかし、その予定のはずが穴は自分の予想よりもはるかに深く大きく出来上がったのだ。

 

 突進してきた檜山はその穴を避けることが出来ず、勢いを止める事も出来ずにまんまと穴にすっぽりと入ってしまい、結果首から上だけが地面から生えているという状況となってしまったのだった。

 

 

 

「ちこくちこく~ …え?何この状況?」

 

「あ、柏木。 えっとね檜山が南雲に勝負を挑んでこうなったんだ~」

 

「なんだそりゃ?」

 

 

 いつの間にか親友である柏木が訓練所にやってきて檜山が地面にすっぽり収まっている状況に目を丸くしていた。斎藤は愉快に笑って、近藤はオロオロと慌てて檜山を地面から出そうとしており、中野は勝者であるハジメを黙って見ていた。

 

 そんな混沌とした中ハジメは一人考え事をしていた。

 

(…おかしい。本当にこれは『錬成』の力なの?)

 

 錬成と言う摩訶不思議な力があったとしても、今の自分の力では人一人がすっぽり入れるほどの穴を作れる力は無かった。せいぜい必死にやってかなりの時間をかけて腰位までの深さが限界だろうという中、ハジメは咄嗟に、そして瞬時に穴を作れてしまったのだ。ご丁寧にも檜山が穴に入った後抜けられない様に首だけにするという嫌がらせさえも。

 

(それに僕は魔力を使っていない。…地面に手を付けてさえいないのに、どうして…)

 

 手袋に魔法陣が書いてありそこから魔力を通して錬成ができるというのにその必要すらなかった。魔力は使わず魔法陣の必要もないハッキリと言えば異常な状況だった。自身に一体何が起きているのか、見当はつかないが異質なものであるという予感がした。

 

「ほれほれぇ~ ここがええんか?それともここか?んん?」

 

「ばっ!? おま!やめ……ぶえっくしょい!」

 

「檜山で遊んでんじゃねえよ柏木!」

 

「あっははははは!」

 

「斎藤も笑っていないで手伝え!中野もボーっとしていないでさ!」

 

 目の前では動けない檜山で遊んでいる親友の姿に、それを見て笑っている斎藤と檜山を助け出そうとしてて手詰まりの近藤。異様な力の事を考えているハジメとは違ってなんとも気の抜ける光景だった。

 

(…はぁ 取りあえずは、保留にしておこうかな)

 

 檜山を引っ張り出すため、埋めてしまった張本人となった自分も手伝わなければいけない。取り合ずは錬成の事を後回しにしてハジメは深く溜息を吐くのだった。

 

 

 

 

 

 

「…アイツも、か」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 檜山が地面に埋もれていたのを無事救出し、ムキ―と唸る檜山をどうどうと宥めて訓練を再開して、担当教官であるニート教官が来ないままその後は何とか無難に訓練終わらせ、さぁさっぱりして飯でも食おうかと言うとき、全員がメルド団長から引き留められてしまった。

 

「皆聞いてくれ!」

 

 なんだなんだとほかのクラスメイト達も集まり、メルド団長の言葉を待っている。皆が集まったことを確認したのか団長はゴホンと一つ咳払い。

 

「明日から、実戦訓練の一環として【オルクス大迷宮】へ遠征に行く。必要なものはこちらで用意してあるが、今までの王都外での魔物との実戦訓練とは一線を画すと思ってくれ! まぁ、要するに気合入れろってことだ! 今日はゆっくり休めよ! では、解散!」

 

 そういうとさっさとメルドさんは行ってしまった。いやちょっと待ってくれ!?俺と南雲は魔物と戦ったことなんてないぞ!?

 

「え?なに?ダンジョンへ行くの俺ら?ってかみんないつの間に魔物と戦っていたんだ?」

 

「どうやら僕達が錬成や調合の訓練をしている間に皆は魔物と戦っていたみたいだね」

 

「…マジで?」

 

 初耳だぞオイ!みんないつの間に童貞捨てていたんだ!?この中で魔物と戦っていないのは俺と南雲だけ…大丈夫かコレ?

 

「騎士団もついてくるんだし大丈夫じゃないかな…多分」

 

「多分ってオイオイ……サボっちゃ駄目かな?」

 

「駄目だよ。 …気持ちは分からないでもないけどさ」

 

 嫌そうな顔をする南雲。どうやらお互い不安な気持ちでいっぱいの様だ。明日の実地訓練が非常に不安だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「『オルクス大迷宮』か…どういうところなんだろ?」

 

 真夜中、自室にてベットに座りながら明日の事をぼんやりと考える俺。遠征という事なので疲れを残さないように早々に休めと夕食の時間の時に言われていつもの南雲とのおしゃべりを控え早々に眠ることになったが、やっぱり眠れなかった。

 

「何なんだろうなこの変な感じは…」

 

 ざわざわするようなどうにも落ち着かない感じ。オルクス迷宮と言う言葉を聞いてからどうにも落ち着かないのだ。不安と言うべきなのか?でもダンジョンと効いて何処かワクワクする自分もいる。なんなんだろう?

 

「眠れん…俺は遠足前の小学生かよ…」

 

 目が覚めて眠れなくなったのはいつごろからだろうか…案外身近だったかも?欲しかったゲームが発売直前なんかはワクワクしていた時があったし

 

(……さっきから独り言が多くなったな……寝よう。眠ればなんとかなるだろ)

 

 軽く伸びをしてもそもそとベットの中に入る。そんな時だった

 

 コンコン

 

 遠慮がちだがしっかりと聞こえた音。誰かが俺の部屋をノックした音だ。

 

(こんな時間に?…誰だろう?)

 

「はい?」

 

「夜分遅くに申し訳ありません。アリスです」

 

 扉を開けてみればそこにいたのはアリスさんだった。一体こんな時間に何だろうか?ともかくそのまま部屋の前に立たせるのもアレなので部屋に招き入れる。

 

「いったいどうしたんですかこんな時間に?」

 

「明日オルクス迷宮へ行くと聞きました。…貴方もなんですね」

 

「みたいですよ。もぅいきなり行くことになるんですよ~もっと事前に行ってほしいです」

 

「そう…でしたか」

 

 向かい合い椅子に座ってオルクス迷宮に行くことを伝えるとはぁと大きな溜息を吐くアリスさん。なんだろう、今日は何時にもまして様子が変だ。疲労感と言うよりは呆れと言うのか。眉間をモミモミとほぐすそれはなんというか…おっさんくさい。

 

「私の見込みでは、もう少し時間がかかると思ったのですが…やはり予言とは大きく違うようになっているのですね」

 

「ん? ()()?」

 

 何やら気になるワードが出てきた。だがその単語にツッコむことなく何処からともなくある物を渡された。それは大きめのサイドパックだった。。ベルトが付いておりすぐに中のモノを取り出せそうな実用的な代物だ。確かウエストポーチっていうんだっけ?良くは分からないが使い勝手は良さそうだ。

 

「どうぞこれを、明日オルクス迷宮へと行く貴方へ餞別品です」

 

「なんですかこれ?…鞄?」

 

「その中にはもしもの事を考え、ある程度の物資を詰め込んでおきました」

 

「物資?」

 

 鞄の中を見て見るが中は暗くて何も見えない。特に危険はなさそうなので手をツッコんでみると何やらよくわからないが大量に物があるのが分かった。

 

「え、なにこれ?どうやって物が入ってんの」

 

「中に空間を広げる魔法が掛かっております。アーティファクトの一つだと思ってください。大切に扱ってくださいね。一応替えはまだありますが貴重なものに変わりはありませんので」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「いえいえ、役に立ってくれたら幸いです」

 

 苦笑するように手渡されたそれらを受け取るとアリスさんはようやくにっこりと笑った。その微笑みどうしてか俺は気になって、気が付いたら疑問を口にしていた。

 

「…あの、どうして俺にそこまでしてくれるんですか」

 

 どうしてそんな高価の物を渡してくるのだろうか、どうして俺に渡してくるんだろうか。数々の疑問が湧いて来る。付き合いがあるとはいえまだ二週間かそこらだ。アーティファクトは貴重な物。まだまだ異世界事情には疎い俺だがそれぐらいは知ってるのだ。

 

「そう、ですね。うーん…説明すると長くなるのですが…」

 

 非常に言いづらそうに唸るアリスさん。顎に手をやりウンウン唸り、数分経った後だろうか、観念したかのように苦笑を浮かべた。

 

「期待しているんですよ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「居ない筈?なにを言って」

 

「申し訳ありませんが今の状況では、多くを語る事は出来ません」

 

 真剣なその顔は何も言わないと言外に語っている。なんだろう、聞きだすのは…たぶん無理だ。どんなに俺が頼み込んでも絶対に口を割らない、そんな気がするのだ。そんな訝しむ俺にフッとアリスさんは微笑む。

 

「私の事は何も語れませんが真剣に考えることでありませんよ、要はただ貴方がしたいように動けばそれでいいのです」

 

「……それで納得しろと?」

 

「はい。今の段階では、という事ですが」

 

『今は』という事はいつか教えてくれるのだろうか。この荷物を預けてくれた意味と先ほどからの言葉の意味を。…気になるなぁ

 

「貴方がオルクス迷宮から帰って来たらちゃんとお話しますよ。それまでは秘密にさせてください」

 

 茶目っ気のある笑顔でそう言われると何も言えない。そんな俺の様子を見て楽しんでいるのか爛々と輝く翠の目に俺は大きな溜息をついた。

 

「分かりました。…約束ですよ。ちゃんと教えてくれるって」

 

「約束です。それでは、おやすみなさい」

 

 椅子から立ち上がり、扉を開けて出ていくアリスさん。だが外に出る前に気が付いた様に振り向替えった。

 

「ああ、そうだ。柏木様」

 

「何でしょうか?」

 

「南雲様からあまり目を離さないようにしておいた方が良いですよ。彼、オルクス迷宮で()()()()()()()()()()()

 

「は?」

 

 出てきた言葉に驚く俺を気にせずそう言ってアリスさんは振り向く事なく部屋から出てしまった。後に残されたのは手渡された鞄を持ちながら呆然とする俺だった。

 

 

「……はぁ」

 

 ベットに寝転がり大きく溜息を吐く。ただでさえ実地訓練に不安を感じていた時にこれである。おそらくアリスさんに悪意はないのだろう…多分。それでも不安にさせるようなことは勘弁してほしい。

 

(それか本当に何か起きたりして…)

 

 考えたところで結局わかりはしない。 明日向かうオルクス迷宮。そこはいったいどんなところで何が俺達を待ち受けているのか。こびりつく不安をぬぐうようにして俺はベットの中に入り込むのだった。

 

 

 

   

  

 

 

 

 

「ふむ…もうちょっと具体的に言った方が良かったでしょうか」

 

 深夜暗くなった廊下を一人呟きながら私は歩いている。周りに人気はない、居たとしてもどうせ私には気付かない。考えているのは先ほどの密会だ。南雲ハジメの親友である『彼』にちょっとした親切心を送ったのだ。

 

「うーん。あんまり話すのも…でもこればっかりは」

 

 考えても仕方のない事だ。理由は今の現段階では話せないし教えようとは思わない。時が来たら打ち明けるつもりではいるのだが…できる範囲でサポートをしするしかない。

 

「しょうがないですよね。結局は私の目的が全てですから」

 

 うだうだ思う事はある物の結局のところ、私は私の使命を優先するまでだ。果たして彼は自分の思う通りに行動できるのだろうか、それとも運命に抗えないのだろうか。

 

「…期待していますよ。()()()()()()さん」

 

 思い浮かぶは南雲ハジメと仲良く談笑している『彼』 オルクス迷宮で待ち受ける試練に彼は打ち勝つことが出来るのだろうか。そう考えるとどうしても口角が上がるのを感じながら、私は()()()()を使ってさっさと秘密の拠点へと帰るのだった。 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで朝。身支度を済ませ朝食を終えた俺と南雲は自分の自室に戻ってきた。念のための持ち物の確認のためである。

 

「さてと、僕の方の準備は終わったけど柏木君はどう?忘れ物は無い?」

 

「あ~大丈夫だと思うけど…」

 

 実地訓練に必要な物の大半はオルクス迷宮のあるホルアドの町にて支給するとの事なので持っていく手荷物は案外少ないのだ。

 なので俺が持っていくものは昨夜アリスさんから受け取ったバッグぐらいなものだ。ほかには調合の練習で作った自作の回復薬ぐらいだろうか。一杯あるので鞄の中に詰めておこうっと。

 

「何そのバッグ?いつの間に?」

 

「んー教えてもいいんだけど…ホルアドって町に付いたら説明する」

 

「ふぅん?」

 

 そんな雑談をしながら用意されている馬車(ホルアドの町までは馬車を使うらしい。考えれば当たり前だよな。車なんてないんだし、徒歩で行けるって距離でもなさそうなんだから)のところまで歩いていると目の前に見知った人物がたっていた。

 

「2人とももう行くんっスか」

 

「お?ニート教官」

 

「おはようございます。ニート先生」

 

 待っていたかのように寄りかかっていた壁から背を話し、こちらに向き直るニート教官。その表情はいつもの明るいものではなく不満を押しとどめているように見える。おまけに顔が腫れているような…?どうかしたのだろうか?

 

「もうそろそろ集合場所の方に行くんですけど…あれ?ニート教官は一緒に行かないんですか?」

 

 ニート教官の服装はいつもの服でどうみても出かけるようなものではなかった。訝し気に質問してみればニート教官は大きなため息をついてしまった。

 

「あ~その事なんスけど…自分は王宮で待機を命じられたんで一緒には行けないんっスよ」

 

「マジッすか!?」

 

「え”!?てっきり一緒に行くものだとばかり…」

 

「自分もそう思っていたんスけどメルド団長が、『団長である自分が王都から離れている以上王都の守りを薄くするわけにはいかない』って言いやがって…はぁー副団長はともかく自分までとは…あの馬鹿団長」

 

 溜息を吐いているニート教官は、酷く不満そうだった。でもメルド団長に言い分は分かる気がする。訓練のために王都から離れていたら王都が壊滅していたなんて笑い話にもならない。

 

「となると、僕達って初めての魔物との戦いはニート先生がそばにいないでやる事になるんですか…」 

 

「そうッス。一応アラン先輩やカイル達に面倒は頼んだんスけど…まさかいきなりオルクス迷宮に行くことになるとは…2人ともごめんッス。こんな事になるのなら外に出て少しでも戦闘訓練でも経験させておけばよかったッス」

 

 謝るニート教官。そんな申し訳なさそうな顔をしないでほしい。こればっかりはどうしようもないのだから。

 

「そんな謝らないでください。迷宮っても弱い魔物と戦うだけでしょ?なら大丈夫ですよ」

 

「そうですよ。それにほかの皆は戦闘職で強くて心配ないですし、騎士団の人たちや何よりメルド団長がいるのなら問題ないですよ」

 

 俺と南雲がそう言ったからだろうか、ふっと表情を和らげる。

 

「あはは、まぁメルド団長は図体の通り脳筋思考何で誰かが手綱を引かないといけないんスけど…きっと大丈夫っすよね。…訓練の事を思い出してお2人とも気を付けるんスよ」

 

「「はい!」」

 

「また帰ってきて暇ができたら今度街に繰り出すッスよ。君たちが行ってみたい所、知りたい所何処へでも連れて行ってあげるッス!」

 

「しゃあ!」

 

「やったね!」

 

 今まで自由に行けなかった町へ行く。しかも現地の人の案内付き!何だかんだでも行ってみたい所や寄ってみたいところはいくらでもあるのだ。とても楽しそうでこの遠征から帰ったら楽しみが増えたのだった。 

 

 

 

 

 

 

 そんなわけで騎士団ご用達の馬車に乗って俺達はドナドナされながら

 

「ドナドナじゃないよ!?僕達売られるわけじゃないんだからね!?」

 

 ホルアドの町へ向かう事になった。当たり前の話だが、俺達は馬車に乗ったことなんかない。そもそも現代日本人が馬車に乗るなんてあるわけがない。なので勿論不満ってか不都合は出てくる。

 

「ケツが…尻が痛い」

 

「仕方ないでしょ、車とは違うんだから」

 

「あああ~~ケツがぁ、二つに割れるぅ」

 

 馬車の中の振動になんて耐えれるわけでもない。ケツや腰に来るダメージを耐え忍ぶしかないのだ。分かってはいたんだけどね!?でも現代日本の車と比較してしまうのしょうがないというか…なんにせよケツが痛い

 

「うぇええ……き”もち”わ”るい…柏木…お前…調合師だろ。なんか…薬」

 

「んなこと言っても~しっかりしろ清水。とりあえず俺が作った回復薬でも飲んどけ、少しはマシになるはずだ」

 

「ざんぎ”ゅー…」

 

「白崎さんや辻さんが居れば回復魔法を使ってくれたかも?ま、この馬車にはいないんですけどね!」

 

 同じ馬車に乗っていた清水は清水で揺れになれないのか顔色が悪くなっている、背中をさすったり回復薬を分けて吐かない様にしないと…。運んでくれている騎士団の人たちには流石に止めてくれなどとは言えないので何も言えず、ホルアドの町へドナドナ、ド~ナされるのであった

 

 

「だからドナドナじゃないってば…」

 

 

 




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