この小さな母娘に幸福を!   作:赤いUFO

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デストロイヤー内部戦は原作と同様なので省略。


デストロイヤー攻略戦・後

「なぁ。なんか言ってるけど、どうなるんだ?」

 

「確証は無いけど……爆発するのかも。こういう場合のお約束で」

 

『!?』

 

 クエストに参加した冒険者の疑問にカズマが答えると皆が青ざめる。

 

「ど、どうするんだよ!? あんなのが爆発したら、街だってヤバイんじゃないか!」

 

 誰かの言葉に皆が息を飲んだ。

 もしかしたらちょっと地面にクレーターが出来るくらいで街には影響がないかもしれない。しかしそれは希望的観測と言うものだろう。

 

「カズマッ!?」

 

 ほとんど悲鳴に近い声音で叫ぶ相手にカズマは難しい表情で言う。

 

「乗り込むしかないな」

 

『えっ?』

 

「乗り込んで爆発をどうにかして止める。停止してる今なら乗り込めるだろうし。中のゴーレムとかを掻い潜って爆発を止めるしかねぇよ!」

 

 カズマは断言するがそれはとても危険な賭けだった。

 中のゴーレムをどうにか出来る保証もない。

 例え動力部に辿り着けてもどうやって止めるかも不明。

 かと言って他に選択肢が無いのも事実だが。

 

「みんな!! 元々このクエストは自由参加だ! アクセルの街を本気で守りたい奴だけ付いてきてくれ!」

 

 カズマの言葉に冒険者一同は奮い立つ。

 

「駆け出しの冒険者が偉そうにすんな! 俺も行くぜ! この街には世話になってるからな」

 

「俺もだ。レベル30になってもこの街に居続けてるのはこうしたときの為だしな」

 

 次々と男性冒険者が乗り込みに志願した。

 彼らはアクセルの街にあるとある店の常連客であり、それを失う訳にはいかないのだ。

 理由は分からずとも、それに呼応して、女性冒険者たちも次々と志願した。

 

「よーし、お前らぁ! 機動要塞デストロイヤーに乗り込む奴は手を挙げろぉ!!」

 

『おぉおおおぉおおっ!!』

 

 拡張器で叫ぶカズマに多くの冒険者たちが吠えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すごい音でしたね」

 

 住民の避難を手伝っていたスズハがヒナを背負って爆裂魔法の音を聞いて呟く。

 それにギルドの職員が苦笑する。

 

「いつもはうるさくて迷惑な爆裂魔法(アレ)も、今回ばかりは頼もしいわ」

 

 その言葉にスズハは視線を逸らすしかない。

 すると、どういう訳か背負っているヒナがキャッ、キャッ、と喜んでいる。

 ヒナは何故か爆裂魔法を撃つと喜ぶ。

 将来、もしかしたらめぐみんと同じ爆裂狂いになるかと思うとスズハは身震いした。

 

(今後、めぐみんさんには爆裂魔法を控えてもらいましょう……)

 

 拳を握って誓うスズハ。

 住民の避難は思ったより順調に進んでいる。

 特に商店街の面々はスズハが避難誘導すると、驚くほど大人しく従う。

 むしろ、率先して手を煩わせないように動く。

 

「それにしても助かったわ。冒険者の皆さんが率先してデストロイヤーのクエストに動いてくれて。警察は基本的に街の中の事が専門だから」

 

「領主様が積極的に動いてくれれば負担も減るんですけどね……」

 

 ルナが疲れたように苦笑いを浮かべる。

 その言葉にスズハは首を傾げた。

 

「あの、領主様……居たんですか? わたし……この街に来て聞いたことがないのですが……」

 

 スズハの質問に2人は言いづらそうにする。

 

「居るには居るんだけど……あまり評判の良い方ではなくて……」

 

「スズハちゃんがアクセルの街に来る少し前にベルティアっていう魔王軍幹部が街の外にある城にやって来てたんだけど、領主様は特に対応を取らずに放置してて。この街に来た事があったのよ。本来なら、王都から騎士団を派遣するように要請するモノなのに」

 

 ちなみに魔王軍幹部がここに来た理由はめぐみんがベルティアの住み着いた城に爆裂魔法を叩き込み続けた事が原因なのだが。それを話さないのはめぐみんと仲の良いスズハへの配慮だ。

 

「その幹部をカズマさんたちを中心にアクセルの冒険者の皆さんが倒したんだけど……その時に壊した門の修繕費をカズマさんたちに負担させて。結局、その修繕費もダスティネス家が出してくれたみたいなのに……」

 

 ルナたちからすれば、魔王軍幹部を討ち取ったカズマたちに報奨を支払うべきだと思うのだが、命懸けで戦い、出されたのは修繕費という借金。

 これでは冒険者稼業などとても成り立たない。

 事実、その件からアクセルの街で冒険者登録をする者は減少してしまった。

 

「ダスティネス家」

 

「王家の懐刀と言われてるとても偉い貴族様よ。あの人が領主になってくれればこっちも楽なんだけど……」

 

「本来なら今回の件も、冒険者の方々が真っ先に逃げられたら、対応のしようもありませんでしたからね」

 

 今回、デストロイヤーの結界を破れるアクアが居たが、そうでなくとも住民の避難を始め、仕事はたくさんある。

 と言うか、本来は駆け出ししか居ないこの街の冒険者にどうこう出来る問題(クエスト)ではなかったのだが。

 そうした対応を取るのも領主の仕事だが、デストロイヤーの接近に気付いて自分だけ安全な場所に避難してしまったらしい。

 それを聞いてスズハはなんとも言えない表情になる。

 

「とりあえず、消耗品の確認ね。大きな怪我は前線にいるプリーストが治すだろうけど、打ち身とか、軽い火傷とかしてくる冒険者の人もいるだろうし。スズハちゃん、手伝ってくれる?」

 

「はい! 喜んで!」

 

 両手を握って意気込むスズハに2人のギルド職員はいい子だなぁ、と微笑ましそうに見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しばらくすると、デストロイヤーに乗り込んで戻ってきた冒険者たちが即席で使わせてもらっている休憩所にやって来た。

 

 魔力切れのウィザードやプリーストが休憩に戻ってきたり、デストロイヤーの中で戦闘をして戻ってきた前衛職の者も。

 その中で、スズハは自分でも出来る応急手当や、比較的酷い怪我を負った冒険者を特典で貰った腕輪で治療したりしていた。

 

 忙しく動き回るスズハは今日、ゆんゆんとめぐみんに心の内で感謝する。

 

(洋服でよかった。流石に和服じゃ動きづらかったかも)

 

 そこで見知った顔がやってくる。

 

「だぁ、いってぇ!」

 

「調子に乗るからだよ、バカ!」

 

 リーンに肩を貸してもらって戻ってきたのはカズマの悪友的な人物であるダストだった。

 

「どうしたんですか?」

 

 スズハとも知り合いであり、声をかけるとリーンが頬を掻いて説明する。

 

「心配しなくてもいいよ。調子のって腰打っただけだから」

 

 どうやらデストロイヤー内部でのゴーレムとの戦闘で周りに良いところを見せようとして失敗し、腰を強く打ったらしい。

 近くにプリーストが居なかったことと、ちょうど魔力が切れかかっていたリーンがここまで運んだ来たらしい。

 

 ダストを適当に寝かせて休ませると、スズハから水の入ったコップを渡されてありがと、と受け取ると一息つく。

 それからダストのうつ伏せになっているダストの腰を失礼しますと触れる。

 打った箇所が他の箇所より熱を持っていた。

 

「これなら冷した方が良いですよね」

 

 氷水に浸したタオルをうつ伏せになっているダストの腰に置いた。

 ちなみにこの氷水、シロが作った氷を溶かした水である。

 

「少ししたら、湯に浸けたタオルに換えますので、大人しくしててくださいね」

 

「お、おう!」

 

 一礼して怪我をした別の冒険者のところに行くスズハ。

 その赤子を背負った後ろ姿を見てダストはポツリと呟いた。

 

「あの子、カズマのところからうちのパーティーに来てくんねぇかなぁ」

 

「ダストみたいな性根の曲がった奴の側になんて置けるわけないでしょ」

 

「それ、カズマだって変わんねぇだろ!」

 

 ダストとリーンがぎゃあぎゃあ騒いでいると、スズハの方から焦る声がした。

 

「シロ! 待って!」

 

 雪精が休憩所から飛び出して行ってしまったのだ。

 それを慌てて追いかけるスズハ。

 もし他の冒険者に見つかって勘違いで討伐されたら大変だ。

 

 そう思って、自分が初めて契約した唯一の精霊を追いかける。

 背負った娘を落とさぬように気を使いながら。

 繋がっているパスから大体の居場所は分かる。

 シロがいたのはデストロイヤー側の城壁だった。

 

「もう! どうしたの!」

 

 そこでその場所に違和感を覚えた。

 なんというか、雪精(シロ)以外に精霊の気配を感じる気がする。

 

(もっとも、まだレベルって言うんですか? それが低くて正確に知覚できないんですけどね)

 

 元々クエストにも行かず、モンスター等は倒したこともない。せいぜい食事で得られる経験値くらいしかないので、レベルが上がらないのだ。

 

(シロなら正確な場所が分かる?)

 

 というか、さっきからそれを教えようとしているのではないか? 

 

 そう思ってシロが跳ねている場所に感覚を研ぎ澄ます。

 

「あそこ……?」

 

 城壁近くにある建物。その声は入口付近を探る。

 何か、近くにある筈なのに見つからない失せ物を探している気分だった。

 不慣れな感覚を研ぎ澄ましてそれを探そうとする。

 

「……小人?」

 

 見つけたそれは手の平に抱えられそうな小さな子供だった。

 緑色の服を着た絵本に出てくる妖精のようだった。

 その小人は苦しそうに痛みを堪えていた。

 どうするのか、と悩んでいるとシロの方から意思を伝えてくる。

 

「え? 魔力を与えればいいの?」

 

 シロがポンポンと跳ねながら首肯するように動く。

 本当にそれで良いのかと思ったが、他に方法があるわけもなく、その提案通りにすることにした。

 

「ごめん、触りますね」

 

 その緑の小人に触れた。

 

 それから程なくして今日2度目の爆裂魔法が炸裂したデストロイヤーの脅威が消失した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 機動要塞デストロイヤーが破壊されて数日。

 そのクエストに参加した冒険者は今回の報酬に期待を寄せて待ちわびている。

 アクアが上機嫌に体をくねらせる。

 

「デストロイヤー討伐の今回の報酬はかなり期待出来るわ! 借金なんてチャラよ、チャラ! しばらくは遊んで暮らせる筈だわ!」

 

「どうせだったらあの家も買い取りたいな。いつまでも貸家のままってのもな」

 

 あの豪邸はかなり安い賃金で住まわせてもらっているが、やはりマイホームには憧れる。

 住んでいて愛着も湧いた。

 これを機にカズマはあの邸宅を買い取るつもりだった。

 

「私も今回2度も爆裂魔法を撃てて満足です。今回の報酬で実家にもかなり仕送りが出来ます」

 

 上機嫌なパーティーにスズハが話に加わる。

 

「皆さん、今回は大活躍だったと聞いてますよ」

 

 スズハの言葉にアクアがふふん、と鼻を鳴らした。

 

「当然よ! 私がデストロイヤーの結界を破らなかったらどうしようもなかったし! 中でもカズマや他の冒険者もバンバン治してあげたんだから! 最後にはめぐみんとゆんゆんに魔力を分け与えて、デストロイヤーを完全破壊させてあげたわ!!」

 

 有頂天に自分の活躍を誇示する。

 実際、今回アクアが居なければデストロイヤーに対して逃げることしか出来なかったのだから、その誇らしさに見合う働きだったと言えるだろう。

 

 次にめぐみんが腕を組んで話す。

 

「私も今回、爆裂魔法を使ってデストロイヤーを消し飛ばしてやりましたからね! まぁ、ゆんゆんとセットの活躍というのが少し気に入りませんが」

 

「なんでよめぐみん! というか今回私、めぐみんに冒険者カード弄られたり色々と納得いかないこともあったんだからね!」

 

「しつこいですね! 街を守るために貢献したんだから良いじゃないですか!! ゆんゆんだって本当はもっと撃ちたいでしょ?」

 

「撃ちたくないよ」

 

 言い争いを始める親友同士。

 そこでウィズがカズマに近づく。

 

「カズマさんも今回は大活躍だったじゃないですか。皆さんの指揮を取って。ゴーレムを倒したり、コロナタイトを取り出したり。最後にはめぐみんさんとゆんゆんさんにアクア様の魔力を渡したりと」

 

 カズマ個人の活躍としてはアクアやめぐみんには劣るものの、現場を指揮し、鼓舞し、様々なサポートで活躍した。

 最弱職の冒険者としては有り得ないほど。

 

「そういうウィズだって相当活躍しただろ。爆裂魔法とか。それに、今回取り出したりコロナタイトもウィズがどっかに跳ばしてくれたおかげで街が無事に済んだ訳だし」

 

 各人、今回の健闘を称え合う。

 

「すごかったんですね。私はずっと後ろにいましたし」

 

 謙遜するスズハにめぐみんがフォローを入れる。

 

「何を言っているんですか! スズハだって私達が戻ったときに、怪我をした冒険者の手当てに走り回ってたじゃないですか」

 

 大きな怪我はプリーストが治したが、ダストの打ち身などの怪我を手当てするのにずっと動き回っていた。

 

「そうだぞ。今回のクエストが終わっても、人生は続くんだ。それに、街の人の避難を手伝ったりと助かったってルナさんが言ってたぞ。そういうのも大事な仕事だろ? お前はお前に出来ることをやったんだから。それに────」

 

 カズマはスズハの頭に乗っている小人を見た。

 

「風精とも契約出来たんだろ? それだけでも大した戦果だよ」

 

 シロと一緒に助けたのは風の精霊だった。

 彼女は助けた際に契約した。

 風精は、デストロイヤーから逃げ回ってアクセルの街に辿り着いたらしい。

 今はスズハに懐いて頭に乗っている。

 

「スズハも、本格的にエレメンタルマスターらしくなってきたわね」

 

 皆で笑っていると少し離れたところにいるダクネスに話しかけた。

 

「ダクネスさんも、今回はすごかったのでしょう?」

 

「う!」

 

 期待を込めるスズハの視線にダクネスがたじろぐ。首を傾げるスズハにカズマが事実を告げた。

 

「いや、こいつは街の外でぼーっと突っ立ってただけ」

 

「カズマ貴様ぁ!!」

 

 カズマの肩を掴んで揺さぶるダクネス。

 そこで次にアクアとめぐみんから追撃がかかる。

 

「そういえば、ダクネスは街の外で立ってるだけだったわね。なんで?」

 

「そうでしたね。はっきり言って邪魔でした」

 

 2人にも言われてダクネスは膝を折って床にのの字を書き始める。

 

「えーと……次は頑張りましょう?」

 

「スズハ……そんな慰めはいらないんだ……」

 

 ダクネスがいじけていると、ギルドの扉が開かれる。

 

 そこに現れたのはスーツ姿の眼鏡をかけた女性に鎧を着た騎士達。

 その一団は、此方に近づいて来ると、何やら1枚の紙を取り出した。

 

「サトウカズマ。貴様には現在、国家転覆罪の容疑がかけられている。自分と共に来てもらおうか!!」

 

 

 この場にいる誰もがその言葉を理解出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、スズハの激おこ回の予定。

読者さんがこの作品で好きな話は?

  • 序盤
  • デストロイヤーから裁判まで。
  • アルカンレティア編
  • 紅魔の里編
  • 王都編
  • ウォルバク編
  • 番外で書かれた未来の話
  • その他
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