評価10が来てテンションが上がり、嬉しくなって書き上げました。
この地で異様な格好の少女は夜の街道を苛立たしさを隠すことなく歩いていた。
この世界────少なくとも近くにあるアクセルの街では見ることない上に旅路にも適しているとは思えない民族衣装。
その少女、シラカワスズハは彼女を知る者達からすれば珍しく不機嫌さを隠せない様子だった。
「これだからアイリス様の持ってくる仕事は引き受けたくなかったんですよ! カズマさんやめぐみんさんの駄目なところばかり真似して……!」
彼女はこのベルゼルク王国の王女であるアイリスの依頼を受けてとある精霊との対話を行っていた。
この依頼自体スズハは最初受ける気はなかったのだが、お世話になっているダスティネス親子に頭を下げられて仕方なく引き受けた。
「まさか、その結果がこれなんて……」
幸いなのは、スズハ自身現状をある程度把握出来ている点か。
「今回もどうせ、ヒナに構いたくて呼びつけたんでしょうに! 王宮には専属の
別にスズハとアイリスの仲は悪い訳ではない。ただ、スズハの娘であるシラカワヒナに関する教育に対する方針の違いから対立してしまうのだ。
外から見ると教育に厳しい
「とにかく、今は元の
スズハは見えてきたアクセルの街に早歩きで急いだ。
「金がない……」
新米冒険者であるサトウカズマは頭を抱えていた。
この近くに魔王軍幹部が住み着いてからカズマ達で対処出来るモンスターは軒並み隠れ、強いモンスターのクエストしかない。
つい先日、その魔王軍幹部であるデュラハンがやって来て、ケンカを売らなければなにもしないと言っていたが、このままではどの道飢えるか凍死である。
どうするか悩んでいるカズマにアクアが呆れるように野菜スティックを齧りながら言う。
「まったくカズマったら甲斐性がないんだから。女神である私に馬小屋生活させるなんて本当は許されないんだからね? 感謝して。我慢して一緒に馬小屋で生活してあげてる私に感謝して!」
ドヤ顔でそんなことを胸を張るアクアにカズマが頬をひきつらせる。
「誰のせいで目標金額を下回ったと思ってんだこの駄女神ぃ!! お前の飲み食いのツケを払ったから、こうなってるんだろうが! 自分のツケくらい自分で払えっ!」
キレたカズマにアクアが頬を膨らませる。
「なによ! しょうがないじゃない! キャベツの中にレタスがあんなに混じってるなんて思わなかったんだもの!」
「今からでも払ったツケお前が払う事にして返してもらうか?」
「やめてよ! これ以上払わないならもう出禁するって言われてるんだから! 謝るから! 調子に乗ったことは謝るからぁ!?」
ケンカを始めるカズマとアクアそれを見ていためぐみんが嘆息し、ダクネスが考えるように腕を組む。
「ですがこのままでは本当に無一文になってしまいます。なんとか私達にもこなせるクエストを探さないと……あ、爆裂魔法が活躍できるクエストを所望します」
「そうだな。いっそのことリスクを承知で高レベルのモンスターに挑んでみるか? もちろん、モンスターの攻撃から皆を守るのは任せてくれ! 仲間を守るためにモンスターの爪と牙の餌食に────くぅ~っ! 楽しみだっ!!」
「ダメだこいつら……もう移籍したい……」
そんないつも通りの会話をしていると、ギルドの扉が開き、1人の少女が潜ると室内からどよめきが起こる。
沸き上がった声にカズマも振り向くと、驚いたように目を見開く。
(あれ、着物だよな……?)
黒に近い濃紺色の生地に肌色の帯。赤い蝶が羽ばたく柄模様が描かれた着物を着たダクネスくらいの少女。
濡れるように艶やかな黒髪に造形品のように整えられた顔立ち。
和装をしていても判る大きな胸だが、立ち姿が綺麗で品の無さは感じない。
軽くギルド内を見渡すと上品に歩く姿は様になっており、お姫様を連想させる。
「なんかあの子、こっちに来るんですけど……」
知り合い? とアクアが3人に視線で問いかけるが当然首を横に振る。
アクアの予想通りその人物がカズマ達が座っているテーブルの席まで移動すると、少し緊張した様子で話しかけてきた。
「あの……パーティーメンバーを募集してませんか?」
見続けると吸い込まれそうな黒い瞳を不安そうに揺らしながらの質問に4人が目を丸くした。
「私、あるものを探しにこの街にやって来て。それが見つかるまでの間、一時的にパーティーに加えていただけないでしょうか? 多少は、お役に立てると思うのですが……」
躊躇いがちに一時的にパーティーに加えてほしいと頼む少女。
それを聞いてアクアが怒ったように手を腰に当てて立ち上がる。
「ちょっと貴女! 何処の誰だか知らないけど、私達は魔王討伐を目標に掲げる上級職以外お断りの崇高なパーティーなの! 冷やかしなら帰って!」
一時的、という言葉が気に食わなかったのか、アクアがシッシッと手を動かす。
そんなアクアを抑えながら、カズマが質問する。
「メンバーの希望は助かるけど、何で俺達なんだ? もっと頼りになりそうなパーティーはいくらでもあるだろ?」
アクセルの街が駆け出しの街とはいえ、カズマ達はお世辞にも強そうとか有望そうに見える面子ではない。
なのに真っ直ぐこちらに向かって来て態々パーティーに加入したいと言い出す理由が分からない。
カズマの質問に相手はそんなことを訊かれるとは思わなかった、という感じで驚く様子を見せたが、すぐに取り繕って話す。
「え、と……このパーティーには私と同性の方が多いようですので。それに年齢も近いみたいで安心できるかなと思いまして」
その答えにカズマは納得する。
確かに腕は立ってもトラブルになりそうな相手とは組みたくないだろう。
このパーティーの性格面はともかく、そうした面では一目見て安心できるのかもしれない。
それに、と視線をカズマに合わせる。
「このパーティーには私と同郷の方もいらっしゃるようですので」
その言葉にカズマは相手の出身地を確信する。
めぐみんが発言する。
「ところで、貴女の名前と職業は? その格好から前衛職ではないと思いますが……」
「あ、申し遅れました。私、シラカワスズハと言います。若輩ではありますが、
一礼して自己紹介するスズハと名乗る少女にダクネスがほう、と声を漏らす。
エレメンタルマスターの職について知識のないカズマにダクネスが軽く説明する。
「エレメンタルマスターは上級職の1つだが、他の職業より稀有な才能を必要とすることからとても希少な職業なのだ。私も、王都に行ったときに見たことがあるくらいでそれ以外では会ったことがない」
「能力としてはウィザード系列に似てますが、精霊と契約して彼らの力を借りて術を行使する。精霊と出会い、契約を結ばなければならないという手間もあることから才能のある人でもその職を選ぶ人は少ないんです。スズハはいくつの精霊と契約しているのですか?」
「はい。雪精と
「ぶふぅっ!?」
指を折って契約している精霊を挙げていくスズハにダクネスが吹き出した。
「めちゃくちゃ優秀ではないか!?」
「そうなのか?」
「そうだ! 通常は1種類。有能なエレメンタルマスターでも多くて3種類だ! それだけの精霊と契約出来るのなら王宮に仕えることも夢じゃない! スカウトされるぞ!」
捲し立てるダクネスにカズマはへぇ、と感心する。
めぐみんも驚いている様子で瞬きしている。
しかしそこでカズマの中である疑念が浮かぶ。
(今度こそまともな人なのだろうか?)
カズマのパーティーに居る3人はどれも一癖も二癖もある連中ばかり。
トラブルと借金をこさえてくるアークプリースト。
爆裂魔法狂いの頭のおかしいアークウィザード。
敵にボコられるのが大好きなドMクルセイダー。
ここまで揃うと、目の前の相手も何かしら問題が有るのではないかと勘繰ってしまう。
(別に俺だって完全無欠なパーティーメンバーが欲しいなんてワガママを言ってる訳じゃない。でもこれ以上面倒事を起こす奴がパーティーに入ったら対処仕切れないんだよ!)
そんなことを考えるカズマ自身も性格に難が有るわけだが。
そんな中でアクアが胸を張る。
「でも、たくさんの精霊と契約してるだけで実戦で使えないのなら意味がないと思うの! 貴女の実力を試させてもらうわ!」
ビシリとアクアがスズハを指差した。
引き受けたクエストは繁殖期に入って大量発生したジャイアントトードの討伐。
カエルにトラウマのあるアクアとめぐみんは嫌がったが、テストならこれで良いだろ、と言うカズマと、必ず成功させます! と意気込むスズハに押されて渋々納得させられる形となった。
「カッズマさーんっ!? 助けてぇっ!? もうカエルに食べられるのはいやぁー!?」
「カズマ! そろそろ助けて下さい! 飲み込まれそうなのですが!」
「くっ! 攻撃が当たらん! というかなぜ私を無視するのだ! むしろ私を飲み込めぇ!!」
3体のジャイアントトードに追いかけ回されるアクア。
既に爆裂魔法を撃って4体倒すも倒れているところを食われて絶賛飲み込まれ中のめぐみん。
巨大カエルを追いかけながら剣を振るうが面白いくらい当たらないダクネス。
「いやぁあああああっ!?」
「あ。アクアがカエルの舌に捕まった」
カエルの口の中に入ったアクアが這い出るのと飲まれるのを繰り返している。
カズマは以前にも見た光景な為に今回は比較的冷静だった。
スズハから提案を出す。
「アクアさんは私が助けますので、めぐみんさんをお願いできますか?」
「……分かった。めぐみんがカエルを抑えてる間に仕止めるから、アクアを助けてやってくれ」
ショートソードを抜くカズマ。
「はい。カズマさんがもしも食べられたらすぐに助けに入りますので」
「不吉なこと言わないでくれ……」
苦笑しながらもめぐみんを助けるために走るカズマ。
それを見送った後にさてと、とアクアを飲み込もうとするジャイアントトードに視線を向ける。
「お願い、
緑色の服を着た小人と、水で姿を成している美女が現れる。
2体の精霊はジャイアントトードまで近づくと、先ずはアクアを飲み込んでいるカエルの腹を
一撃で両断されたカエルの口からアクアが飛び出すが、別のジャイアントトードが飲み込もうとすると
あまりにもあっさりとした手際に今までの自分達の苦労はなんだったのかと思いたくなる。
その後も数体現れたジャイアントトードをスズハがあっさりと討伐。
計13体のジャイアントトードの討伐に成功した。
「だから……カエルは嫌だって言ったのにぃ……!」
粘液まみれになって泣いているアクアにカズマが呆れる。
「それで。女神アクア様から見て、スズハのパーティー入りは反対なのか?」
「あーまで助けられて反対なんてしないわよぉ。ありがとね。本当にありがとねぇ!」
抱きついてくるアクア。鼻につく生臭さに顔をひきつらせながらも笑みを作るスズハ。
そんな中でカズマは内心ほくそ笑んでいた。
(ようやくまともな人がパーティー入りだ! それもかなり強いっぽい! 一時的にって話だが、あの手この手で引き留め続けてやる!)
一芸特化過ぎて使いづらいめぐみんとダクネスに、ステータスは高いが知性と幸運が絶対的に足りないアクア。
そんな中でやっと性格的にまともっぽく腕も立つ冒険者が仲間になったのだ。色々と利用────いや、助けてもらわない手はない。
帰路でそれぞれ別れ道に入るとスズハがアレ? と首をかしげる。
「皆さん、どうしてバラバラの道に入るんですか?」
「? そりゃあ別々だろ。俺とアクアは馬小屋。めぐみんは宿だし」
「私はこの近くに実家があるからな。スズハはどこに住んでいるんだ? 宿暮らしを考えているのなら、そろそろ取らないと間に合わないぞ」
「えーと、その……皆さん、ご一緒に暮らしているわけじゃあ……」
「あり得ませんよ。この男と同じ屋根で暮らすなんて大きな屋敷でもない限り身の危険ですから」
「んだとこら! 少なくともアクアやロリッ娘のお前相手に欲情するほど落ちぶれてねぇんだよ! それと、もし俺が大きな屋敷を手に入れてもお前追い出すからな!」
「私をロリッ娘扱いしましたね! それにカズマが屋敷を手に入れるとか夢の見すぎですよ!」
そんな風にじゃれ合うカズマとめぐみん。
スズハは口元に指を当てて馬小屋、と呟く。
「そうですね。私も宿屋での生活になると思います」
その言葉にめぐみんが反応する。
「ほう。ちなみにこれから新しいパーティーメンバーと親睦を深めるために同じ部屋を取るつもりはありませんか? いえ、別にそろそろ本当に金銭が心許ないので一緒に住まわせて欲しいと思ってる訳じゃないですからね? あくまでも親睦のためです」
「こいつ……」
今日会ったばかりの人間に対するあまりの図々しさに呆れるカズマ。
断っていいんだぞ、という前にスズハは柔らかい笑みを浮かべて了承する。
「分かりました。私もあまり余裕があるわけではないので1部屋を2人で使う形になりますが」
「充分です! ありがとうございます!」
頭を下げるめぐみん。
なら私も! とアクアがスズハに付いていこうとするが、1人だけ良い思いさせるかとカズマが無理矢理連れていった。
宿を取り、ベッドで眠っているめぐみんの髪を軽く弄って笑みを浮かべる。
「かわいい」
姉のように思っていた人物が年下となって横で眠っていればそう思ってしまってもしょうがないだろう。
疲れたように天井を見上げる。
カズマ達がまだ屋敷で暮らしてないことはスズハにとって誤算だった。
そういえば、自分がこの世界に来たばかりの頃は屋敷を借りたばかりだと言っていた筈。
そして、そういう打算込みでカズマ達に近づいた自分に若干の嫌悪感。
スズハは自分の手の平を見つめる。
そこには、いつも握っていた小さな手がここにはない。
「ヒナ……」
今頃、というとおかしな話だが、自分が居なくなって心配させて居るだろうか?
「絶対に、帰らないと……その為には……」
この時間軸に来る前に対峙していた精霊を思い返す。
「時間と空間を司る精霊。必ず見つけないと。待ってて、ヒナ。母様は、必ず帰るから……」
決意を新たにシラカワスズハは強く拳を握りしめた。
本作で通り過ぎてたイベントを中心に書きたいです。
たぶん4~5話くらい。
読者さんがこの作品で好きな話は?
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序盤
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デストロイヤーから裁判まで。
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アルカンレティア編
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紅魔の里編
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王都編
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ウォルバク編
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番外で書かれた未来の話
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その他