「実は、誠さんの嫌がらせを止めさせる事が出来るかもしれないんだ。だから涼葉。その、手伝ってもらっても良いかな?」
申し訳なさそうに頼む兄に、わたしの返答は決まっていた。
「本当ですか! 良かったぁ……! もちろん、わたしに出来ることなら何でも仰って下さい、兄様!」
十近く離れた兄が、あの男に虐められず済む。それはわたしにとって、とても嬉しい未来だった。
兄があの男に理不尽な扱いを受けているのは当時のわたしには堪えがたい事で。
これを期に、あの男と顔を合わさずに済むかもしれないと思うと心が軽くなる。
この時のわたしはまだ、兄の事が大好きだった。
強い期待を寄せてくる両親や習い事の先生達。
そんな家の中で、兄だけが肩の力を抜いて接する事が出来る相手だったから。
もしも兄が虐められなくなったら、少しだけ我儘を許してくれるだろうか?
そんな期待を胸に懐く。
だから、想像もしていなかった。
兄は確かに悪人ではない。
だけど、どうしようもなく心の弱い人だった。
気が弱く、抗うより、流されてしまう性根の人。
だから、両親の期待が兄からわたしに向いていた事も理解していた。
それでも、どうしてあんなことが予想出来るだろう?
大好きな兄が、わたしをあの男に差し出すなんて未来を。
あの男に汚されて丸1日経ち、自室から出ないわたしに兄が会いに来た。
「涼葉……その……」
何か言おうとして口を閉ざし、視線を背ける兄。
そんな兄をわたしはどんな顔で見ていたのか。
全てが億劫になり、何の反応も示さなかったわたし。
「ごめんな、涼葉……」
それだけ告げると、二度と兄はわたしの部屋に来ることはなかった。
その後、妊娠したわたしの世話をしてくれた主治医が今回の事件で引きこもったわたしの事を騒ぎ立てないように指示していたのが兄だと後で教えてくれた。
でも、もうどうでもいい。
謝罪するくらいなら、どうしてあんなことをしたのか。どうして助けてくれなかったのか。
誰を信じれば良いのか、涼葉にはもう分からなかった。
いつの間にか膝枕をしてスズハの髪を指で溶いているクリス。
「スズハの髪はきれいだね。くせっ毛とか全然なくて指に絡まないし、サラサラしてる」
「ありがとう、ございます……」
それが気持ち良いのか、目を閉じて頭を預けていた。
しかし、そんなとりとめのない会話が続く筈もなく、また沈黙に戻る。
だから、クリスは話題を戻す事にした。
「スズハは、カズマ達の事が好き?」
「……は、い……大好き、です。この世界で、カズマさん達と一緒に暮らせて、本当に幸せで……なのに……」
スズハの目から涙が落ちて体が震えていた。
「わたしが、壊して……」
「壊れてなんかないよ。帰ったら、きっといつも通り迎えてくれるよ、あの子達は……」
クリスの言葉にスズハは身を小さくする。
「スズハはさ、ちょっと自分に厳しすぎるよ。そんなことくらいでスズハを嫌いになるなら、あたしはカズマ達に預けなかったよ」
髪を溶いていた手は、頭を撫で始めた。
「確かにスズハはヒナのお母さんだけど、まだ子供なんだから。もっと周りに頼って甘えて良いんだよ? 恐い事は怖いって、嫌な事は嫌だって言っても大丈夫なんだ。ダクネス逹だって、そうしてるでしょう」
凍っている思考を融かすような優しい声で言うクリス。
だけど、長いこと封をしていた価値観はそれだけでは解き放てなくて。
「だけ、ど……父様逹も受け入れてくれなかったのに、それ、なのに……」
思考が堂々巡りする。
親ですら完璧でない白河凉葉を捨てたのに、他人が自分を受け入れてくれると信じられない。
そんな自分にすら嫌悪感を抱いて追い詰めている。
「幸せになって……」
「え?」
頭を動かすと、心配そうな顔で凉葉を見るクリスを見上げている。
「これまでずっと辛かった分、幸せになっていいんだ。ううん、ヒナと一緒に幸せにならなきゃ駄目だよ。エリス様はその為にスズハをこの世界に送った筈なんだよ?」
「それは……」
他の転生者と違って、シラカワスズハは魔王軍と戦うためにこの世界へと送られた訳ではない。
前の世界では手にすることが出来なかった幸せを、この世界で掴んで欲しくて、チャンスを貰ったのだ。
その意味を噛み締めていると、ドカドカと部屋の外から足音が聞こえる。
「オラァ! 家出娘はここかぁ!」
勢い良く扉が開かれると、カズマとダクネスが現れた。ビックリして起き上がるスズハ。
「むっ。クリスと一緒だったのか?」
「あ、うん……ダクネス逹の屋敷に行こうとしたらスズハを見つけてさ。なんか、泣いてたから……」
突然やって来たカズマに面食らってクリスも戸惑いつつ説明する。
ズカズカと近づくカズマに怯えた様子でクリスの後ろに隠れるスズハ。
見下ろす形になり、ボリボリと頭を掻いた。
「帰るぞ。ヒナに何を食べさせたら良いか、分からねえんだから」
「あ……ヒ、ナ……」
娘の食事について、今思い出す。
ここまで、その事まで頭が回らなかった。
「だから、もう帰る────」
「ヒッ!」
掴もうとする手が、あの日、自分を押さえつけた腕を連想させてベッドの上で逃げる。
その恐怖に染まった表情に若干傷付きながら、嘆息して問い質す。
「お前、俺の何が不満なんだ? 俺、スズハに何かしたか?」
苛立つような声にクリスが止めに入る。
「待ってよカズマ! スズハは────」
「クリス!」
タグネスが黙っていてくれと視線で訴えると悩んで動きを止める。
ここに来るまでにダクネスと話して、バニルから聞いた事も含めて本人から吐き出させる事にした。
前に言いたくないなら言わなくて良いと言ったが、今回は放置出来ない。
そうしなければ、結局同じ事の繰り返しになる。
ジーッと見つめるカズマにスズハは俯いたまま、しどろもどろ言葉を口にする。
「ちが……カズマさんが、悪いんじゃなくて……わたしが、ダメなのが、全部……」
「……」
辿々しく口にするスズハにカズマはパシッと軽く頭を叩いた。
ビックリした表情でカズマを見る。
「そういう建前はいい。自分が悪いって終わらせて、酔ってるのを見るとイライラするんだよ。ほら、階段から突き落とすくらいなんだから、俺に何か気に食わない事があるんだろ? 言ってみろ」
追い詰めるような言い方。
クリスはカズマらしくないと思いながらも、信じて見守っている。
胸を押さえながらスズハは、呼吸を調える。
子供の頃から培った感情制御で上辺だけども取り繕い、ベッドの上に手を付いて頭を下げた。
「他意は、ありません。カズマさんを傷付けてしまったのは、わたしの不徳が致す所です。申し訳ありま────」
今度は力の入ってない拳骨を落とした。
驚いてカズマの顔を一瞬見る。
それはとても辛そうで、すぐに視線を落としてしまう。
「そんな、逃げるような言い方するなって言ってんだよ」
「逃げて、なんて……!」
「ならどうして、さっきから俺を見ようとしないんだ!」
親に怒られることを怯える子供のように身を小さくしているしているスズハ。
その態度に腹が立つ。
バニルから話を聞いた時もだ。
そのくらいで、ここ数ヵ月に積み上げてきた物が失くなるなんて勝手に思われていることにも。
カズマに睨まれて、スズハは再び呼吸を荒くする。
嫌な汗が流れ、そこの窓から飛び降りて逃げてしまいたい衝動に駆られる。
「だっ、て……」
────言っては駄目。
────でも、もう……我慢が、でき……。
「だって! 恐いんですもの!」
弾けるようにそう叫んだ。
「カズマさんには分からない! 男の人には、絶対に分からないっ!」
────やめて。聞かないで。
────こんな、醜いわたしを見ないで。
「わたしは嫌だって! 痛いって! 助けてって、何度も何度も叫んだのに! 貴方は!
泣きながら表情はくしゃくしゃになり、嗚咽を漏らす。
「ちがう、のに……カズマ、さんじゃないのに……おと、この人が、マコトさんに、見え、て……」
────止まって。こんなことを口にさせないで。
「恐くて、こわくて、堪らない、んです……」
スズハの荒い呼吸だけが室内に響く。
こんなのは八つ当たりだとスズハ自身が1番理解してる。
心に溜まっていた膿を吐き出したからと言って、心が晴れる訳もなく、重い後悔が胸にのし掛かり、吐きそうだ。
「そっか」
カズマから出たのはそんな一言だった。
「ありがとな。きつかったろ」
それは先程とはうって変わって優しい声音だった。
戸惑っているスズハにカズマは小さく息をする。
「これくらいで怒ると思ってたのかよ? 俺はいつもこいつらに振り回されて、街中の奴に頭下げてるカズマさんだぞ。これくらいのことで責めたりしねぇよ。出来れば、そんなに追い詰められる前に話してほしかったけどな」
「おい待て。私はそれほどお前に謝らせた覚えはないぞ。むしろ、お前逹がダスティネス家の名前を好き勝手使って私が後処理に回ることもあるんだからな?」
「そんなことはどうでもいい!」
勢いで誤魔化すカズマ。
未だに信じられないように言葉を続ける。
「だって、また……わたしの所為でカズマさんに怪我させてしまったら……」
「気ぃ使いすぎだろ。ま、そん時はアクアがいるし、何とかなるだろ。だから、何の問題もないんだ。さっさと帰るぞ」
「いいん、ですか……?」
スズハの疑問に、呆れるように笑うと、恥ずかしそうに頬を掻く。
「今さら居なくなられても、その……淋しいだろうが」
ダクネスがスズハを抱き寄せた。
「スズハは、完璧でない自分に価値はないと思っているのだろうが、私だってダスティネス家の令嬢として完璧とは言えん。お父様を不安にさせてばかりだからな。ここには、スズハを縛る家はないんだ。もう少し気楽に自由を満喫していいんだ。私逹の事ももう少し頼ってもな」
「むしろ、ダクネスはスズハを見習った方がいいんじゃないか?」
「うるさい! ぶっ飛ばすぞ!」
カズマのからかいにダクネスは顔を真っ赤にして怒る。
呆然としていたスズハは、震える声で質問する。
「わたし、は……帰っても、いいんですか……?」
「当たり前だろ。て言うか、帰ってきてもらわないと、俺達が困るんだ。男が苦手なことだって、手伝えることなら手伝ってやるから」
当たり前の事を訊くなと言うカズマ。ダクネスに視線を移すと、頭を撫でて頷いた。
その優しさが染みて、ジワッとまた目頭が熱くなる。
「カズマさん……わたし、みなさんの事が、大好きで……だから嫌われたくなくて……」
「そっか」
ボロボロと泣いているスズハに今度は安堵したように頷く。
それから、スズハが気の済むまで泣き止むのをまった。
その間、クリスがカズマに近づくと小声で話す。
(ありがとね、カズマ。スズハを受け止めてくれて)
(これくらいはな。あいつらが起こす問題に比べればマシだよ)
(本当に、貴方逹にスズハさんを預けて正解でした。感謝します、カズマさん)
そう言って微笑んだクリスの顔は会ったことのある誰かを幻視させた。
スズハが泣き止み、屋敷に戻る。
あそこまで醜態を晒して、帰ることに躊躇いがあったスズハだが、屋敷に帰るとそんなものは吹き飛んだ。
「あ! 帰ってきたのね、スズハ! ダメじゃない、ヒナを置いていっちゃ! でも見て! このヒナの喜んだ姿!」
めぐみんが抱えているヒナはキャッキャと喜んで身動ぎしていた。
しかし、そんなアクアの言葉もあまり耳に入らない。
「そうか。それは頑張ったな。それで、この屋敷の惨状はどういうことだ?」
カズマの質問にアクアとめぐみんが視線を背ける。
屋敷全体が中で洪水でも起こったように水浸しであり、玄関は足首が浸かれるくらい水深があり、屋根の一部分が何故か消し飛んでいた。
「っていうかこの水浸しはアクアのせいだな! んで、屋根が破壊されてるのはめぐみんの爆裂魔法だろ! 俺らが帰ってきたときに丁度ぶっ放してたもんな!!」
「ち、違うのです! これには深い訳が!」
「そうよ! 私逹はお母さんが居なくて不安そうなヒナを喜ばせようと頑張ったのよ!」
2人の話を纏めると、どっちがヒナを喜ばせるか勝負したらしく、アクアは何も入ってない壺から水が温泉のように吹き出る芸を披露した。
それを見てヒナが興味深そうに喜んでいたので水を止めるのを忘れ、放置した。
アクアに対抗しためぐみんが爆裂魔法を上空に、もちろん威力は抑えて、だが。発射角度をミスって屋根の一部分を消し飛ばしてしまったのだという。
「馬鹿か! 本当に馬鹿なの! こんな水浸しで風邪引くわ! めぐみんも! 屋根が消し飛んでんの、俺の部屋の位置じゃねぇか! 屋根が無くなって、風通しが良いにも程があるわ!!」
喚くカズマのアクアがあーだこーだ言い訳している中、めぐみんがヒナをスズハに渡した。
ヒナを抱くと、安心したようにヒナの表情が柔らかくなる。
「やっぱり、スズハの腕の中が1番落ち着くみたいですね。私やアクアが抱いても、ここまで安心しないです」
力を抜いて身を委ねるヒナに、スズハは胸に秘めていた事を言う。
「本当はわたし、ヒナを愛せているのかずっと不安だったんです」
好きでもない男との間に出来てしまった娘。
自分が世話をしなければ死んでしまう命。
赤ん坊の誕生は祝福されるべき事。
だからスズハは、この子を愛しているふりをしているのではないか? と心の何処かで思っていた。
そんなスズハにめぐみんは苦笑する。
「バカですね、スズハは。ヒナの世話をしているとき、自分がどんな顔をしているか分かってますか?」
それは本心から我が子を想う母親の顔。
最初はどうだったかは知らないが、今のスズハは間違いなくヒナの母親だった。
「……いつか、この子が大きくなった時に、わたしの娘に産まれて良かったって思ってくれるでしょうか」
「当然でしょう? もし、そんな親不孝な事を言うようなら、たくさんお仕置きしてやります!」
フフンと腕を組んで宣言するめぐみんに、スズハは噛み締めるようにお礼を言った。
自分の部屋の天井が消えたので、余っていた別の部屋で寝転がるカズマ。
今日は色々とありすぎて、頭が考える事を拒否している。
このまま眠ってしまおうと目蓋を閉じると、扉がノックされた。
「なんだよもう……はいはーい!」
扉を開けるとそこにはスズハが立っていた。
「どうした?」
「はい。やっぱり、今日のことでちゃんと謝罪とお礼を、と思って」
「マジメだなぁ」
スズハの生真面目さに呆れつつ、部屋の中に通す。
「今日は、ありがとうございます。おかげで、スッキリしました」
「大丈夫そうなのか?」
カズマの質問にスズハは首を横に振った。
それはそうだ。そんな簡単に全て払拭出来る訳もない。
きっとこれからも長い間、トラウマはスズハを苛むだろう。
難しい顔をするカズマにスズハはお願いする。
「あの、カズマさん。お願いしてもいいですか?」
「なんだよ。今更遠慮すんな」
「はい。その、立って、後ろを向いてくれませんか?」
訳が分からなかったが、特に嫌がる事でもないので言われた通りにする。
するとスズハは、後ろからカズマに抱きつく。
回している手は震えていた。
「わたし、男の人が苦手なのを、ちゃんと克服したいです。恐がらずにカズマさんと接したいです。だからこうして、手伝ってもらってもいいですか?」
「お、おう……俺で良ければ、任せろ」
カズマの返事を聞き、体を離すスズハ。
もう良いのか、と視線を送ると、コクンと頷く。
そんなスズハにカズマは笑った。
「ま、なんだ。お前は充分スゴいからな? 前にあいつに会った時もちゃんとヒナを守ろうとしたんだろ? 俺、またオークのメスに遭遇したら、小便漏らして動けなくなる自信があるからな?」
冗談っぽく話すカズマにスズハはありがとうございますと答える。
そこで話題が少し変わる。
「この間、めぐみんさんの故郷に行った時に死んで、わたし、エリス様に会ったんです」
「あぁ。そういう仕事らしいからな」
「はい。それで、すごく怒られちゃったんです。エリス様は、あんな風に死なせるためにわたしとヒナをこの世界に送った訳じゃないって」
「そりゃそうだろうなぁ」
あんな死に方されて喜んだら、カズマは完全に女神不信になるだろう。
「それで、あの時、真剣に怒ってくれて、叱ってくれたエリス様を見て思ったんです。わたし、エリス様を母様みたいに思ってたんだって」
「は?」
スズハのカミングアウトに瞬きするカズマ。
「初めてだったんです。わたしの両親が叱る時はいつも、家に恥をかかせるな、って感じで、わたし個人をあんな風に想って怒られた事がなかったから。だから、とても嬉しくて。怒られて嬉しいっていうのも変ですけど」
恥ずかしそうに笑うスズハ。
そこから一拍置いた。
「わたし、ちゃんと幸せになります、ヒナと。エリス様が望んでくれたように。その為にもカズマさん。トラウマを克服する協力、お願いします! ヒナが大きくなった時に、男の人が寄る度にビクビクする情けない姿なんて、見せたくないですから」
「わ、わかった。任せろ」
安請け合いのような気もするが、手伝える事は手伝うと言った手前、断る選択肢はなかった。
それに、いつまでもこのままではカズマも困る。
スズハがはにかむと、部屋の外からダクネスの悲鳴のような大声が響いた。
顔を向き合わせてすぐに玄関まで急ぐ。
「どうした、ダクネス!」
「い、いや! 何でもないぞ! 騒がせてすまない。今日は疲れただろう? ゆっくり休んでくれ!」
手紙を握りしめて怪しい様子を見せるダクネス。それに何故かダスティネス家の執事が居た。
アクアとめぐみんも集まる。
「もしや、ダクネスさんの実家で何か問題でも?」
「いや、そうじゃないんだ! 本当に何でもないから! そ、そうだ! 明日はちょっと豪勢な宴会でも開かないか? 知り合いも呼んで! 数日に及ぶ大宴会をな!」
どう見てもおかしい様子のダクネス。
握られている手紙が原因らしい。
「スティール」
問答無用でスティールで奪い取るカズマ。
「あぁ、おい!? いつもは下着が盗れるくせに、なんでこういう時だけピンポイントに盗るんだ! 返せっ!!」
ダクネスがカズマから手紙を奪い返そうとするが、避けながら手紙を読む。
「えーと、何々。数多の魔王軍幹部を倒し、この国に偉大なる貢献を行った冒険者、サトウカズマ殿。貴殿の華々しい活躍を耳にし、是非お話を伺いたく。つきましては、お食事などをご一緒に出来ればと思います」
手紙には王家を示す印と差出人に、ベルゼルグ・スタイリッシュ・ソード・アイリスと記されている。
それは、この国の第一王女の名だった。
手紙を呼んで、カズマ、アクア、めぐみんがそれぞれ邪悪な笑みを浮かべる。
「おい、まさか行くなんて言わないよな? ほら、カズマ逹は王宮の作法には疎いだろ? もし無作法があったら首が飛んでもおかしくないんだぞ? だからこの話は断ろう! 頼む!」
カズマ逹が何かやらかして同じパーティーであるダスティネス家まで巻き添えを食うことを恐れて断ることを望むダクネス。
しかし、カズマ達の反応は全くの別だった。
『俺達の時代が来た!!』
その反応にダクネスは涙目でカズマ達の腰にすがり付いた。
次章予告。
「シラカワスズハ。アイリス様暗殺未遂の容疑で、貴様を拘束する!」
訪れたベルゼルク王国の王都で突如掛けられた王族暗殺未遂の容疑。
シラカワスズハ処刑まで────
残り5日。
冒険譚を聞かせる為に訪れた王都。
そこで出会ったのは儚げな王女。
「わ、私も! ヒナさんのお母様になりますっ!」
「…………お子さんが欲しいのなら御自分で産んでください」
城へ滞在するカズマ達を巻き込む陰謀。
「ねぇ、おかしいんですけど!? 王都に来てから私、水の魔法が一切使えないの! 私女神なのに! 水の女神なのにぃ!?」
「アイリス様は今も眠り続けておられる。あの晩、いったい何があった?」
「覚えてないんです。アイリス様に呼ばれた、あの夜の事は……」
「……貴様の処刑する日が決まった。アイリス様をあのような状態にした罪、楽に死ねると思うな」
スズハの無罪を信じ、走り回る仲間達。
「最悪の場合、爆裂魔法であの城を消し飛ばしてスズハを救出し、他国に逃げましょう。何も問題はありません!」
「問題だらけだよめぐみん!」
「サトウカズマ。あの子の無実を晴らすために僕達も協力する。だから、必ず助けよう!」
真実は、少しずつ紐解かれていく。
「それじゃあ、あんな良い子にふざけた罪を擦り付けてくれた犯人を炙り出しに行こうか、助手君?」
「そうですねぇ! それで、何か良い方法はあるんですか? エリス様」
「魔王様への手土産に、この国の王女の首と聖剣。確実に貰い受けましょう」
ただ1人の少女の無罪を証明する。
その願いは届くのか!
「わたし、実はもうすぐ12歳の誕生日なんです。だからお祝い、期待してますね?」
「スズハァアアアアアッ!!」
そして事態はベルゼルグ王国最大の危機へと発展する。
「ねぇ!?このままだと、街に住んでる人達も含めて、誰も助からないんですけど!!どうするの!ねぇ、どうするのよ、カズマさんっ!?」
「あぁもう!しょうがねぇなぁああっ!!」
この小さな母娘に幸福を!
六花の王女と精霊の愛し子編、2021年、公開予定!
「それでは、エスコートをお願いします、アイリス様」
「はい。ベルゼルグ王族の名に賭けて、脅威は全て凪ぎ払いましょう。ですから、この地に住む方々の命をスズハさんに託します!」
ちょっと予告とかやってみたかった。
今年はもう、この作品を投稿しません。来年の2月か3月を目標に再開します。
王都編は、大体予告のような感じに進めるつもりです。
メインはスズハとアイリスで。
ミツルギとゆんゆんの出番は削るかもしれません。
ちょっと予告を追記。投稿10分前に書いたインスタントだと物足りなかったので。
読者さんがこの作品で好きな話は?
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序盤
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デストロイヤーから裁判まで。
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アルカンレティア編
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紅魔の里編
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王都編
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ウォルバク編
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番外で書かれた未来の話
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その他