この小さな母娘に幸福を!   作:赤いUFO

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カズマの土下座

「ダクネスのお父さんとウィズには感謝ですね、2人のお陰ですんなり王都に着きました」

 

「あぁ。お父様には本当に苦労をかける」

 

「それよりもカズマはどうしてるのかしら? 新聞では逃げてるらしいけど。きっと害虫みたいにこそこそしてるはずよ!」

 

「ヒナちゃん、無事だといいけど……」

 

 ウィズのテレポートで王都にやって来たアクア、めぐみん、ダクネス、ゆんゆん。

 新聞で王女の事を知った4人は王都へと向かおうとしたが、ゆんゆんの来た後にダスティネス家の執事がやって来るとダクネスの父であるイグニスが王城からの使者から取り調べを受けている事を知る。

 当然取り調べにはダクネス、というか、アクアとめぐみんも含めて受ける筈だったが、イグニスが時間稼ぎをしていることを執事から伝えられる。

 その間に王都へ向かうつもりだったが、冒険者ギルド、テレポート屋、馬車など騎士団に押さえられ、身動きが取れなくなったところで現れたバニルの勧めでウィズにテレポートを使ってもらい、王都まで来ることが出来た。

 

「それで、これからどうします? カズマを探すにしても手掛かりがありませんし……」

 

 杖を突いて質問するめぐみんにアクアがチッチッチッ、と人差し指を左右に揺らす。

 

「そんなの酒場に行くに決まってるじゃない! 情報と言えば酒場。酒場と言えば情報。冒険者の常識でしょ?」

 

 ウキウキした様子で胸を張るアクアに、ダクネスが釘を刺す。

 

「酒場に行くのは構わないが、飲むなよ? 話を聞くだけだからな」

 

「な、何を言ってるのダクネス! 酒場で飲まないなんて怪しいじゃない! 失礼にも程があるわ!」

 

「アクア。私達は情報を集めに行くのですよ? 事態を理解しているのですか?」

 

「めぐみんまで!? ねぇ、お願いよ! 1杯、1杯だけ! スズハのお誕生日にはたくさん飲めると思って今日まで我慢してたのよ!」

 

 そんな風に女4人で話していると、アクアを呼ぶ声が届く。

 

「アクア様!」

 

 振り向くとそこには青い鎧の少年と2人の少女が近づいて来る。

 

「あ、魔剣のイタイ人」

 

 アクアの呟きを聞こえているのかいないのか、爽やかな笑みを浮かべて話しかけてくる少年、ミツルギキョウヤ。

 

「ご無沙汰しています、アクア様!」

 

「えぇ、そうね」

 

 単調な返事を返すアクアにミツルギは心配そうな顔で質問してきた。

 

「アクア様はこの新聞を読んでこちらに来たのですか?」

 

 ミツルギはゆんゆんが持ってきたのと同じ新聞を見せる。

 答えたのはアクアではなくめぐみんだった。

 

「そうです。今はカズマを探す為に情報を集めるところです」

 

「ねぇ、あなた。王都には詳しいの? なら、情報と美味しいお酒を出す酒場を知らないかしら?」

 

「え? なら冒険者や城の衛兵が使う酒場がありますけど」

 

「冒険者や衛兵。それならカズマさんやお城のことも少しは分かるかもしれませんね!」

 

 ゆんゆんが期待を込めて言うと、アクアが頷く。

 

「じゃあ、魔剣の人! その酒場まで案内して!」

 

「あ、はぁ。こちらです」

 

 ミツルギの案内にスキップしながら移動するアクアを見て飲む気だなとめぐみんとダクネスは確信した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ミツルギに案内された酒場で1杯飲んだアクアは宴会芸を披露しつつカズマの情報を聞いていた。

 

「みなさ~ん! この中に如何にも引きこもりのダメニート臭のする冒険者を見た方は居ないかしら! もし居たら教えて欲しいんですけど!」

 

 アクアがそんな風に呼び掛けている中、ダクネスが城の衛兵が着ている軽鎧姿の男に話しかけて城の中の事を聞いている。

 他の面々もそれぞれ情報収集をしていた。

 アクアが再び花鳥風月を見せようとした時、店に新しい逆が入ってくる。

 ダクネスが話を聞こうと出入口のところまで移動すると、目を瞬きさせた。

 

「クリス!」

 

「ダクネス! え? 何でここに!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 スズハは城の地下にある牢に拘束されていた。

 視界は塞がれ、手足は椅子の手摺と脚に革の拘束具で固定されている。

 同じ部屋に居るのはクレアとジョージの2人。

 レインはどうにかアイリスの呪いを解呪しようと腕利きのプリーストを呼んだり、留守にしている国王への報告書を書いて送ったりとしていた。

 レインは今回の件で色々と不可解な点が多いため、スズハに嘘発見器の魔法具を使ってはどうかと提案したが、ジョージによってやんわりと否定される。

 シラカワスズハによってアイリスが目の前で刺されたのは事実であり、態々魔法具に頼る必要はないと。

 頭に血が昇っているクレアもこれに同意する。

 

 今はスズハが何故アイリスを刺したのか。

 誰かの差し金なのか。それとも個人の意思か、問い質している最中だ。

 

「わたしは、アイリス様を刺しては────」

 

 パンッ! と頬を叩く音が鳴る。

 どう質問しても自分はアイリスを傷付けてはいないと言うスズハに、クレアは今日2度目の平手打ちをした。

 口を中を切り、血が垂れる。

 

「……本来なら、アイリス様を刺した貴様には聞かなければいけない事が山程ある。しかし、それを長々と訊き続けている時間も無い。本当の事を話せば痛い思いをしなくて済む」

 

「どう訊かれようと、知らないとしか答えられません。わたしは何もしてません」

 

 毅然とそう繰り返すスズハにクレアは小さく息を吐いた。

 

「アイリス様に危害を加えた者とはいえ、子供相手にこんなことをするのは気が引けるが」

 

 クレアは持ってきた道具を手に取る。

 道具はスズハの人差し指。正確には爪が挟まる形で当たる。

 ぞわりとスズハは背筋にイヤな感覚が走った。

 

「なるべく早く本当の事を吐け。そうすれば、残りの日数は苦しむこともない」

 

「────っ!?」

 

 道具によってスズハの爪が剥がされる。

 その苦痛の声を聴き、後ろに立っていたジョージは眉間を寄せて口元を押さえる。

 隠された口元がつり上がっていたのを誰かに気付かれる事は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イタタタタタタッ!? おいやめろよダクネス!? 頭から鳴っちゃいけない音が流れてるから!! 潰れる潰れる潰れるぅ!!」

 

「やかましい! お前がさっさとアクセルの街に帰ってくれば、こんなことに巻き込まれる事もなかったんだぞ!」

 

 クリスと会ったダクネス達は、カズマが保護されていると知って案内された宿屋に来ていた。

 流石に大人数なので大部屋を借り直して現在カズマをアイアンクローで制裁中である。

 ミシミシと音が鳴り、頭部がダクネスの手によって少しずつ小さくなるのを感じていると、突如手を放し、カズマは尻餅をついた。

 

「イッてぇ。脳ミソが潰れるかと思ったぜ……」

 

 頭を押さえるカズマにベビーベッドにいるヒナに構いながらめぐみんが質問する。

 

「それでカズマ。スズハを助ける良い案は有るのですか?」

 

「……正直、ここまでいっぱいいっぱいで何も思い付いてない。というか、情報が無さすぎて動けないんだよ」

 

 不貞腐れた様子で顔を背けるカズマ。

 その様子にダクネスが自分の考えを述べる。

 

「私はこれから城へ行くつもりだ」

 

「ダクネス!」

 

 ダクネスの提案に驚くクリス。

 

「そうなれば勿論拘束されるだろうが、スズハやアイリス様の現状を知れるよう動こう。その情報を何とかお前達に届けられれば良いのだが……」

 

 何か案はあるか? と視線を向けてくるダクネスにカズマは腕を組んで考える。

 しかし、やはりこれだと思う案は浮かばない。

 そこで手を挙げたのミツルギだった。

 

「それなら、僕達が遅れて城へと行くのはどうかな? これでも2回程アイリス様に冒険譚を聞かせに行った事があるんだ。これまでも何度か魔王軍の襲撃に対する防衛で活躍してるし、少しは信頼されてると思う」

 

 ミツルギの言葉にカズマが良いのか? と問う。

 はっきり言ってミツルギがカズマ達に手を貸すメリットはない。

 しかしミツルギは迷うことなく首を縦に振る。

 

「もしもあのスズハって子が何もしてないなら捕まるなんて間違ってる。サトウカズマ。僕達もあの子を助けるのを手伝うよ」

 

 ミツルギの言葉に仲間2人はキョウヤが決めたならと手を貸してくれる様子だ。こういう、善人かつ英雄な雰囲気がカズマとは合わないのだろうが、今は味方で居ることが嬉しい。

 だからカズマも素直な気持ちで礼を言う。

 

「ありがとな、コバヤシ」

 

「ミツルギだ! ここで名前を間違えるか普通!?」

 

 いつも通りなやり取りをしつつ、役割を決める。

 ダクネスが城へと行き、スズハとアイリスの様子を調べ、後から来たミツルギに情報を纏めた手紙を密かに渡す。

 それから逃亡中のカズマを捜索する名目で城を離れてこの宿屋でダクネスからの手紙を受け取り、その情報を元に手を考える。

 小さくとも光明が見えて場が少し明るくなった。

 しかし、カズマだけは沈痛な面持ちだった。

 

「……ダクネスが言ったように、さっさと帰ってれば、スズハが捕まる事なんて無かったと思う」

 

 その場合でもアイリスが刺される事件は起きたかもしれないが、少なくともこんな形で関わるなんて事は無かった筈だ。

 

「俺1人じゃあ、ヒナを連れて逃げ回る事しか出来なかった。スズハの無罪を証明するなんて絶対出来ない」

 

 悔しさから唇を噛むと、カズマは床に額を擦り付ける。

 

「ちょ!? 何してるのカズマ!」

 

「スズハの無罪を証明して、アイリスを助ける為に、お前達の力を貸して下さい……!」

 

 夢で見たスズハの処刑。

 それが現実になるかもしれないのだ。

 それを防ぐ為なら、幾らでも頭を下げる。

 めぐみんがカズマの肩に手を置いた。

 

「とりあえず、頭を上げてください、カズマ」

 

 言われた通り頭を上げるとそこには照れ臭そうな表情のめぐみんが見えた。

 

「しょうがねぇなぁ! ですよ」

 

「え……」

 

「カズマはいつもそう言って、私達を助けてくれるでしょう? だから今回は私達がそう言ってスズハを助ける番です」

 

 シャキッとしてくださいとバシバシ背中を叩くめぐみん。

 それにアクアが続く。

 

「ま、スズハはかわいいアクシズ教徒。それを無実の罪で何かされたら女神アクアの名が廃るわ!」

 

「いや、スズハはアクシズ教徒じゃないだろ。捏造するなよかわいそうだろ」

 

 なによー! と頬を膨らませるアクア。

 皆がシラカワスズハの無実を信じて行動しようとしている。

 それを部屋の端で見ていたクリスは何か尊い物を慈しむような視線で笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次の話は文字数が少々多めになる予定。久々に一万越えるかも。

読者さんがこの作品で好きな話は?

  • 序盤
  • デストロイヤーから裁判まで。
  • アルカンレティア編
  • 紅魔の里編
  • 王都編
  • ウォルバク編
  • 番外で書かれた未来の話
  • その他
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