この小さな母娘に幸福を!   作:赤いUFO

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城内争乱

『奥様は────ですよね?』

 

 城への来客である少女に話しかけたのは、ただの気紛れだった。

 同じ精霊使いとして少々教授してやろうと考えただけ。

 だが、少女は此方を見ただけでこの8年間ずっと隠し通してきた事を看破した。

 

『え、えぇ。申し訳ありませんが、その事は内緒にしてもらえますか? 周りに妻が奇異な目で見られますので』

 

『はい。それはもちろん』

 

 その瞬間に自分と契約している精霊が檻から手を伸ばすようにして少女の下へと行こうとした。

 それを施した術式で無理矢理抑え込む。

 何だこいつは? 

 問答無用で精霊の存在を惹き付ける怪物。

 それを理解して冷や汗が伝った。

 ありえないありえない。

 俺が従えるのにどれだけ苦労したと思ってる。

 なのにお前はそれ以上の場所へ才能という二文字だけであっさりと飛び越えて行くのか。

 認めない。

 ふざけるな。

 一礼して去っていく幼い精霊使いを見送ると、ジョージはギリッと奥歯を噛んだ。

 計画の準備は既に終わっている。必要な物は手の中だ。

 だから────。

 

「この国もろとも、お前の全てをぐちゃぐちゃにしてやる……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 堀居丈治と名乗った日本からの転生者。

 その事実を聞いてアクアが激怒する。

 

「日本からの転生者!? ちょっと! せっかくこの私が第2の生を与えてあげたっていうのに、間抜け面ってどういう事よ! もっと感謝して、私を誉め称えなさいよ! 天罰を下すわよ!」

 

 怒りをぶつけるアクアだが、カズマは逆にチャンスだと思い、前に出る。

 

「おいアンタ! アンタも転生者なら、アクアが女神だって知ってるんだろ! こいつなら、スズハを処刑しなくてもアイリスの呪いを解く事が出来るんだ! 頼むから俺達を行かせてくれ!」

 

 カズマは必死で訴える。

 アクアはパッと見、見た目が良いだけのうるさいアークプリーストだが、女神という事実を知っているならそこからアイリスの解呪に協力してもらえるかもしれない。

 そんなカズマの希望は此方の言語に戻したジョージに打ち砕かれる。

 

「分かっていますよ。アクア様ならアイリス様の呪いを解ける事は。だからこそ、あなた方を行かせる訳にはいかないんじゃないですか」

 

「え?」

 

 笑みを浮かべたまま、ジョージは訳の分からない事を言う。

 何で? と訊く前に、彼は話し始める。

 

「そうでしょう? この城に研究者として入り込んで8年。王都を崩壊させるための準備を整えるのに6年。そしてこの2年、アイリス様を暗殺する機会を狙い、ようやく達成されようというのに、態々解呪されては意味がない」

 

 ニコニコと人の良い笑みで理解できない事を喋るジョージ。

 カズマは掠れた声で何で、と気の抜けた表情で返した。

 

「それが魔王軍から信頼を得る為に提示された条件だったのですよ。王族1人の首を討ってこい、と。国王陛下や世継ぎの王子よりは難易度が低いと思っていたのですがね。思ったよりも時間がかかりました」

 

 そこでいつからそこに居たのか。ジョージの妻であるホーリー・マリィが後ろから現れて彼の後ろ隣に立つ。

 

「ですが、目的を達する時は呆気ない物ですね。まさか、ここまで楽に嵌まってくれるとは思いませんでしたよ。こんな手にね」

 

 ジョージがマリィの顔を手で遮りゆっくりと下へと下ろしていく。

 二十代半ばだった筈のマリィの姿は十代初めくらいの少女に変化する。

 そしてその姿は────。

 

「スズハ……?」

 

 手を下ろし終えるとその姿は、シラカワスズハと瓜二つへと変化していた。

 その無感情な表情を除けば、カズマ達にすら見分けがつかない。

 

「紹介しましょう。私の(パートナー)であり、唯一契約している精霊。水精霊(ウンディーネ)です」

 

水精霊(ウンディーネ)……」

 

 事態が飲み込めずカズマは混乱する頭を押さえつつもあの夜、アイリスの下へと向かったスズハがの言葉を思い出す。

 ホーリー・マリィは話せないと思う、と。

 声が出せないでも喋れないでもなく、話せない。

 その意味が、人間の言葉を話せないという意味だとしたら? 

 考えを纏めようとするカズマに、そんな事をお構い無しでジョージは話を続ける。

 

「この国の王族は勇者である転生者の血筋を受け継ぎ続けたせいか、素質のずば抜けた子供が産まれてくる。その上、金に物を言わせて高級食材でレベルを上げ続ける彼らは、ただ生活するだけで最強クラスの戦士に成長する。子供だからと言って油断してはいけない。あの可憐なアイリス様も、既に兵器と言って良い程の実力を備えているのですから」

 

 ジョージの見立てでは、実戦経験こそ無いものの、アイリス個人でも魔王軍幹部クラスを倒せる実力はあると思っている。

 嗜み程度の訓練と高級食材の力で、だ。

 

「直接戦うのは現実的ではありませんし、馬鹿正直にアイリス様への暗殺が成功してもお縄になるだけですからね。その後の事も含めて、犯人に仕立て上げられる存在を探してたんです。そういう意味ではシラカワスズハさんはまさに理想的な生け贄でした」

 

 スズハの名前が出て、カズマは目を見開く。

 

「アイリス様自身が心を許しつつも、クレア殿やレイン殿のように長い付き合いでもないので、多少不審な行動を取らせても偽者だとは気付かれ難い」

 

 クレアやレインなら普段の癖や態度で呪いの短剣で刺す前に警戒されて失敗していたかもしれない。

 また、アイリスと同い年の同性というのも適任だった。

 大人よりも子供の方が警戒心を抱かれ難いのだから。

 それにシラカワスズハ自体も、戦闘能力が低い事も理由だ。

 お陰で楽に拐う事が出来た。

 それらが重なり、シラカワスズハは本当にうってつけの生け贄(スケープゴート)だった。

 

「これが半分くらいの理由ですかね」

 

「半分?」

 

 これまで黙っていたクリスが呟く。

 

「彼女は、私の妻が水の精霊であることを一目見て看破しました。バレないようにと気を遣い、城の者や他の精霊使いにすら気付かれなかったのに」

 

 そこまで話して笑顔だったジョージの表情は嫌悪感により歪む。

 

「私が精霊使いとしてこの世界で活動して20年。精霊達を探し求め、契約し、使役するのにどれだけ苦労したか。しかしあの少女は違う。精霊達に愛され、彼女の力になりたいと契約し、自らの意思で力を貸す」

 

 それは、精霊使いの理想だ。

 それを意図も容易く体現するその才能。

 シラカワスズハの存在自体が、ホーリー・ジョージの精霊使いとしての在り方の否定そのものだ。

 そして本人はその事に気付きもしないのだろう。

 

「本当に素晴らしい素質です。いっそ憎しみすら覚える程に。だからこそ、あんな小娘────存在自体がおぞましい……!」

 

 身勝手な内心を吐き捨てるようにして言うジョージに、カズマの中で何かがキレた気がした。

 ヒナを挟んで笑顔で話すスズハとアイリス。その光景を思い出す。

 まだぎこちなくはあるが、普通の友達みたいに仲を深めていたのに。

 そんな馬鹿げた理由でスズハの偽者を作ってアイリスを刺させたのか。

 今まで思い通りにならず、トラブルばかり起こすパーティーメンバーに怒鳴り散らした事は何度もあった。

 しかし、ここまで怒りを覚えたのは初めてだった。

 人間は本当にキレると逆に頭が冴えるのかと他人事のように俯瞰する。

 

「ちょ、ちょっとカズマさん!」

 

 様子のおかしいカズマにアクアが話しかけるが、それを無視して腰のちゅんちゅん丸を抜いた。

 

「ぶっ殺してやる……っ!」

 

 ジョージを斬ろうと襲いかかるカズマ。

 その刃がジョージに届く位置まで走ると、庇うようにしてスズハの姿をした水精霊(ウンディーネ)が腕を広げて前に出る。

 

「っ!?」

 

 スズハの姿をした精霊にカズマの動きが鈍くなると、その隙を突いて水精霊(ウンディーネ)の足下から発生した水圧に弾き飛ばされた。

 

「ゴフッ!?」

 

 アクアの近くまで転がって弾かれるカズマ。

 寄ってきたアクアが回復魔法をかける。

 

「ちょっとカズマ! 冷静になりなさいよ! よわよわなカズマさんが、真っ正面から戦って勝てる筈ないでしょ!」

 

「う、うるせー……!」

 

 アクアから真っ当な指摘を受けて舌打ちする。

 どうやら頭が冴えたと思ったのは血が昇りすぎて冷静さを失っていた事にすら気付かなかったらしい。

 ここは私に任せなさいとアクアが水精霊(ウンディーネ)を指差す。

 

「この私の前に、水の精霊で挑むなんて良い度胸だわ! 本当の水魔法の攻撃を見せてあげる! 格の違いを思い知りなさい! セイクリッドォ────」

 

「ま、待ってアクアさんっ!?」

 

 クリスが止めに入るが聞き入れずにアクアは魔法を発動させた。

 

「クリエイト・ウォーターッ!!」

 

 しかし何も起こらない。

 あれ? と疑問に思ったアクアは何度も水魔法を発動させようと繰り返す。

 

「クリエイト・ウォーター! クリエイト・ウォーター! クリエイト・ウォーター!!」

 

 何度も魔法を使うがやはり発動しない。

 目に涙を溜めてカズマに訴える。

 

「カ、カズマさん!? 水の魔法が使えないの! 水の眷属達が私を無視して言うことを聞いてくれないの! ねぇどうして!? 私女神なのに! 水の女神なのにぃ!?」

 

 泣きながら地団駄を踏むアクアに、ジョージが腹を抱えて笑う。

 

「この8年。いえ、私がこの水精霊(ウンディーネ)と契約してからずっと準備してきましたからねぇ。彼女は元々、王都の水源を管理していた精霊です。契約を交わしてからずっと、王都に居を構え、この地の全ての水を蜘蛛の糸を張り巡らせるように少しずつ支配下に置いてきました。ここでは、如何に水の女神といえど、私の許可無しに水の力は使えない」

 

「ちょっ!?何よそれっ!たかだか地方の精霊風情が生意気よ!反則よ反則!!」

 

 宣言するジョージにアクアがブーイングしつつも後退る。

 クリスがマジックダガーを構えて質問する。

 

「……君が王女様を暗殺したのは分かったけど。何で人類を裏切って魔王軍へ就こうと考えるかな?」

 

 ジョージは人間であり、城で働ける程にこの国の者に認められている。

 契約している精霊を用いれば、冒険者としての再起も可能だろう。

 態々リスクを犯して魔王軍側に就く理由が有るだろうか? 

 

「……」

 

 目を瞑り、沈黙するジョージ。

 

「1人になって気付いたんですよ。私の本当の望みに……」

 

「本当の望み?」

 

 怪訝な顔で反芻するクリス。

 

「私達の世界では、勇者と魔王が戦う話が使い古されるほどに溢れていました。ゲームやマンガ。アニメに小説。前世ではそういうの、結構好きだったんですよ。そしてそのエンディングは大抵、魔王を勇者が仲間と協力して打ち倒し、世界は平和になりました、とね。素晴らしい事です」

 

「なら────」

 

「だからこそ、ですよ。ありふれているエンディングだからこそ、思うでしょう? "つまらない"と」

 

「つまらない?」

 

「そう。飽きた、と言っても良い。魔王が倒され、世界が平和に。お話の中で何度もそれを迎えるのを見れば、こうも思うでしょう? 悪い魔王が勝利するエンディングが見てみたい、とね」

 

 あまりにも子供染みた理由に3人は言葉を失う。

 カズマとて地球でそういう想像をしなかった訳ではないが、この世界に来て気の合う仲間や隣人が出来た今、そうなって欲しいとは思わない。

 積極的に魔王退治をしようとは思わないが、見知った誰かが危ないなら力を貸そうくらいの善性はある。

 そんな心情を無視して熱くなったジョージの言葉が続く。

 

「いいえ! 見たいのではなく、私の手で作りたい! 魔王が勝利するエンディングをっ!! その先に人類がどんな扱いを受けようと、魔王側に居る私には関係ない!」

 

 そこで大きく息を吸った。

 

「その為にも、勇者の国であるこの国は、確実に滅んで貰います」

 

 話を聞き終えるとカズマはアクアを見る。

 

「おいアクア。デストロイヤーを造った奴といい、お前はなんでああいう危ない奴を弾かねぇんだ」

 

「な、何よ! 私の所為だって言うの! 言っときますけどね! 私はやって来る死者を本人の希望に沿って案内してるだけなんですからね! 元々アイツのおかしいだけじゃないの!! それに、それを言うならカズマさんだって問答無用で天国か赤ちゃんに生まれ変わり確定なんですからね!」

 

「んだとコラ!」

 

 ケンカを始めるカズマとアクア。

 それを見て肩を竦めるジョージ。

 

「さて。ではあなた方にはここで侵入者として消えて貰いましょう。アクア様、再び貴女に会えて、嬉しかったですよ。どうか私の悪夢と共に消えてください」

 

 水精霊(ウンディーネ)の腕が鋭利な鞭へと変わり、襲いかかろうとする。

 それが突き刺さろうとする瞬間、カズマがアクアを庇おうとしたが、その前にドーム状の檻で上の水が破壊された。

 

「アクア様っ!!」

 

「魔剣の人っ!?」

 

 城に滞在していたミツルギキョウヤが落ちるように飛び込んでくると、カズマとアクアを狙った水の鞭をグラムで叩き斬った。

 

「御無事ですか! アクア様!」

 

 綺麗に着地してアクアに無事か問うミツルギ。

 

「ナ、ナイスタイミングだわ! 魔剣の人!」

 

 無事なのに安堵しつつ、剣を構える。

 そこでジョージがミツルギに話しかける。

 

「邪魔をしないで頂けませんか? 魔剣の勇者殿。私は今、城へ侵入した賊を排除している最中ですので。いえ、むしろ貴方も彼らを処するのに協力を要請します」

 

 城に仕える精霊使いとして協力を要請しだす。

 それにアクアが怒った顔でミツルギに告げる。

 

「騙されないで魔剣の人! そいつは転生者で、王女を殺そうとした真犯人よ! 魔王軍に寝返ろうとしてるわ!」

 

「えぇ!?」

 

 与えられた情報にミツルギが混乱する。

 

「そのような賊の言うことを信じないでもらいたい。さぁ。共に侵入者を撃退しましょう」

 

 ジョージが誘ってくる。

 しかしミツルギは首を横に振った。

 

「僕は、アクア様を信じる! それに、何故彼女が貴方の隣に居る!」

 

 水精霊(ウンディーネ)はまだ、スズハの姿を模している。

 それを指摘されて、ジョージは何も答えずに精霊の姿を元に戻した。

 

「アクア様。この騒ぎで、外ではクレアさんがスズハちゃんの処刑を今行うつもりのようです! お急ぎ下さい」

 

 スズハの奪還を恐れたクレアは今、処刑を決行しようとしている。

 思った以上に事態が悪くなって居ることにカズマは焦る。

 するとクリスが言った。

 

「助手君! アクアさんならこの壁を突破できる筈だよ! 王女様のところへ急いで! こっちは何とかするから!」

 

「クリス!」

 

「時間がないよ!」

 

 促されて、カズマはアクアの手を取った。

 

「行くぞ、アクア!」

 

「え、えぇ!」

 

 アイリスの部屋の方角に走ろうとすると、水の鞭が襲いかかる。

 だが、ミツルギがそれを斬って防いだ。

 

「おらぁ! アクアバリアーッ!!」

 

「ちょっと、カズマさん!?」

 

 アクアの背中を押して水の壁に突進すると、そのまま突破して去っていく。

 

 それを見たジョージは苛立たしげに息を吐いた。

 

「もう少しのところで……このままだと本当に最後の手段を使うことになりかねませんね……」

 

「訳の分からない事を言うね。王女様の呪いが解けたら、君のくだらない夢も終わりだよ」

 

 クリスの言葉にジョージはクックッと笑う。

 

「忠告しておきます。事を丸く収めたいなら、私をあまり追い詰めない方が良い。王都を、滅ぼしたくなければ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴様っ!!」

 

 水の壁を突破すると、そこには既に騎士達に取り囲まれ、近くに居た騎士がカズマとアクアに襲いかかる。

 

「バインドッ!!」

 

 即座にバインドを使い、騎士の1人を拘束する。

 

「スティールッ!」

 

 もう1人の騎士から剣を奪い、兜を被ってない頭に剣の腹を落として気絶させる。

 

「行くぞアクア!」

 

「待ってよカズマさん!」

 

 潜伏スキルが発動出来るところまで行こうとする。

 近づいてきた兵士が剣を振ってくる。

 バインドで拘束しようとするが、その前に割って入った少女の槍が剣を受け流し、蹴り飛ばした。

 

「お前!?」

 

「キョウヤに頼まれてるんだからしょうがないでしょ! ここは任せて行った!」

 

 ミツルギの仲間である槍使いの少女、クレメアがカズマとアクアを庇う。見ると盗賊職のフィオも騎士達を撹乱してくれている。

 

「わ、悪い!」

 

「ありがとう! 魔剣の人の仲間! もし殺されても、蘇生魔法で生き返らせてあげるわね!」

 

「縁起でもないこと言わないで!」

 

 そのまま城の内部へと駆け込む。

 配置されて居た騎士と遭遇すると、カズマがバインドやスティール。初級魔法で応戦して無力化していく。

 

「カズマさんが無双してるんですけど!? 全然似合わないわよ!」

 

「うるせーバカ! いいから走れ。そんな事言ってると……!!」

 

 曲がり角に移動すると、弓矢を構えている兵士が2人待ち構えていた。

 

「射てっ!」

 

「スティーッ!?」

 

 咄嗟にスティールを発動させて弓矢を奪おうとするが、相手が射る方が速い。

 矢がカズマ達に向けて放たれる。

 すると、カズマの位置と弓兵の間の横通路から金の髪が突っ込んできた。

 

「にゅんっ!?」

 

「ダクネスッ!?」

 

 矢が鎧のないダクネスに当たるとなんとも艶のある声を出す。

 驚いているのはカズマ達にだけではなかった。

 

「ダスティネス様! これはどういうっ!?」

 

「……すまない」

 

 邪魔をした事を問い質そうとする兵士。

 それをダクネスが問答無用で殴り飛ばした。

 ダクネスに殴られて兵士2人が気絶する。

 

「ダクネス、お前……」

 

「……これだけの騒ぎだからな抜け出すのも簡単だったさ。行くぞ、アイリス様はこちらだ!」

 

「もう剣を使わずに拳で戦えよ」

 

 ゴンッと壁に額を打ち付けるダクネス。

 

「今そういう事を言うなーっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ダクネスという硬い壁を得たことでアイリスが寝かされている部屋までスムーズに移動出来た。

 部屋の前の兵士をバインドで拘束し、無理矢理押し入って、中でアイリスを看ていたレインの首にカズマちゅんちゅん丸の刃を当てる。

 

「ダスティネス卿! これはどういう……!?」

 

「すまないが、大人しくしてくれ。我々はアイリス様に危害を加える気はない。助けるために行動している。アクア!」

 

「ようやく私の出番ね! 本物の解呪ってのを見せてやるんだから!」

 

「ま、待ちなさいっ!?」

 

 部外者がアイリスに近づこうとするのを止めようとするが、カズマに拘束されて止められない。

 レインが無理矢理にでも拘束を解こうとする中で、アクアが呪いを解く魔法をアイリスに施す。

 すると、今まで苦しそうに呻いていたアイリスの呼吸が正常な物に戻り、青白くなった肌に赤みがます。

 そして、呪いの証である胸の紋様が掻き消されていった。

 

「ん……」

 

 胸の紋様が消えると目蓋を開いたアイリスが大きく息をして左右に首を動かす。

 カズマを視界に捉えると彼を呼んだ。

 

「おにい、さま……?」

 

 カズマは自身の額から流れる汗を拭った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 スズハが座らされている部屋にクレアは手に毒杯を持ってその場にいた。

 

「本来なら、明日に処刑が決行される予定だったが、事情が変わった。貴様が連れ去られる前にここで命を絶って貰う」

 

 視界を封じていた布は取られ魔法によって意識が混濁しているスズハはぐったりとした様子で目の前の杯に焦点の合ってない瞳を向ける。

 

「せめてもの慈悲だ。この毒なら苦しむことなく逝くことが出来るだろう。アイリス様を救うために大人しく死んでくれ」

 

 クレアは毒の入った杯をスズハの唇へと近づけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




GWが終わるので、ここからは更新ペースが落ちます。

読者さんがこの作品で好きな話は?

  • 序盤
  • デストロイヤーから裁判まで。
  • アルカンレティア編
  • 紅魔の里編
  • 王都編
  • ウォルバク編
  • 番外で書かれた未来の話
  • その他
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