「まったくカズマは!! スズハも人が良すぎます!」
プンプンと言った様子で不機嫌な顔のめぐみんは苛立ちから杖の先端で何度も地面を突く。
前方には魔王軍の兵が進軍してきていた。
そんな状況でカズマは何度も文句を言われてうんざりした様子で聞いている。
「悪かったよ。だけど、他に思い付かなかったんだから仕方ねぇだろ」
「何ですか! あの王女に絆されたんですか! アクアの言うとおり、本当にバブみにでも目覚めたんですか!」
「……おい、そこの爆裂娘。あんま調子に乗ってると魔王軍を蹴散らした後にとんでもない目に遭わせるぞ」
ドスの利いた声で威圧するとゆんゆんが慌てて口を挟む。
「あ、あの、2人共! もう魔王軍が近づいてるからぁ!」
「そうですね。ではさっさと蹴散らしましょうか」
めぐみんが詠唱を始める。
めぐみんとゆんゆんの役割は魔王軍の迎撃だ。
爆裂魔法の1発で魔王軍に大打撃を与えた後に見えやすい位置でゆんゆんが爆裂魔法の準備をする。
それで撤退してくれれば御の字だが、もしも進軍を止めなければ2発目の爆裂魔法を撃つ。
それで魔王軍側は粗方片付くし、もしも死なばもろともと特攻してきても、少数の人員でも対処できるだろう。
その為には先ずめぐみんのド派手な1発が必要なのだ。
出来ればその1撃で帰ってほしいのがカズマの本音である。
爆裂魔法を撃つ寸前にめぐみんが呟く。
「ここ最近は色々と溜まってますからね。遠慮なくぶちかまします」
スズハとカズマが城で生活してる間にあのだだっ広い屋敷の家事をする事となった。
屋敷に住み始めてすぐにスズハを預かる事となり家事の殆どを引き受けてくれていたが、帰って来ないせいでめぐみん達が家事をする。
特にストレスだったのは食事だ。
店での食事も3日以上続けば段々と飽きてくるし財布にも宜しくない。
カズマも居ないことでクエストも受けられないのでなおのこと不安でストレスが溜まっていた。
「ですから! 魔王軍には私の八つ当たりの犠牲になってもらいます! いきますよ、エクスプロージョンッ!!」
特大の爆裂魔法が魔王軍に襲いかかった。
逃げ遅れている市民に水の獣が襲いかかる。
その爪が小さな子供に襲いかかろうとした時、ダクネスが割って入り攻撃を受け止めた。
「んはぁんっ!?」
何故か艶のある声が出るとその一瞬にミツルギが水の獣をバラバラに斬り捨てる。
「あまり先行しないで! いくらクルセイダーでも、敵の攻撃を受け続けてたらやられてしまう!」
「何を言っている! これだけ敵が居るのにでもったいな────いや、民を守るために我々が盾にならずしてどうする!」
緩みきった顔でそう言うダクネスだが、なんとか表情を引き締める。
ダクネスの剣と鎧は城に置いてきており、私服で市民の救助に当たっていた。
ダスティネス家のご令嬢ということもあり、一部からは後方で指揮を取るように言われたが、王女が1番危険な場所に飛び込むのにジッとしていられないと動いていた。
デコイで敵を引き付け、盾となり別の者が敵を討つ。
水で有るが故にすぐに元に戻るが、市民を救出するくらいの時間は稼げる。
それでも────。
「それで、死傷者は?」
「この騒ぎだからね。既に事切れてる人もいる。その人達は兵士の方達に運んで貰ってるよ」
「この騒動が解決したら、アクアの蘇生魔法で蘇らせられるからな」
そうでなければやってられない。
負傷者は冒険者や兵士の中にいるプリーストに治させ、死者はアクアに生き返らせる。
だから、亡くなった人も丁重に運べと言い含めていた。
とにかく今はこのまま城に向かった3人が事態を解決してくれると信じるしかない。
「頼んだぞ、スズハ」
ダクネスは次の救助者の下に走った。
「正直、自信はないんですよね」
城への侵入が成功してスズハの第一声がそれだった。
「わたし、今まで精霊から求められて契約はしてきましたけど、自分から説得するなんて初めてだから」
「……ねぇ、今更そんな事を言われても困るんですけど」
前を歩いているアクアが不安そうに言う。
現在、水の詰まった城の内部でアクアの力を用いて進んでいた。
何かに守られているように水は3人を避けている。
アイリスは驚きつつも感嘆の声を漏らした。
「それにしてもスゴいですね。これだけの水を遠ざけるなんて」
「当然よ! この水の女神アクア様にかかれば、この程度の芸当朝ごはん前なんだから!」
「水の女神……」
「アクアさんは、アクシズ教の御神体である女神様、なんですよ……信じられないかもしれませんけど」
「ちょっとスズハ! 最後の一言が余計なんですけど」
ぷくーっと頬を膨らませるアクア。
スズハもそれに謝罪していると、アイリスはなにかを考え始める。
「どうしました、アイリス様」
「何々? この私の神々しさに敬服してエリス教に替わってアクシズ教を国教として奉るつもりかしら?」
「あはは……考えておきます」
期待の籠った視線を送るアクアをアイリスが受け流す。
話していると先程の噴水のある庭に戻る。
「スズハさん。
「スキルで捜してますけど正確な位置はちょっと。城の内部なのは確実だと思いますが」
「きっと、玉座よ! せっかくお城を占拠したんですもの。1番偉い人の場所を陣取るのが定番ね!」
アクアの推測に2人は曖昧な笑みを浮かべる。
そもそも精霊が玉座に興味を示すのか不明だが、どちらにせよ城の中には入らなければならないのだし。
「とにかく先ずは中で
しましょう、とスズハが続けようとすると、辺りに変化が起きる。
城を沈めていた水が消え始めて、別の形へと変化していく。
その姿。
「ねぇ。アレ、ドラゴンに見えるんですけど……」
「ドラゴン、ですね」
アクアの呟きにアイリスが同意する。
ドラゴンの姿をした水の塊は唾を飛ばすように口から水圧を発射する。
その攻撃が地面を大きく抉り、石柱を破壊した。
攻撃の威力に固まっていると水のドラゴンがこちらに突進してくる。
「ひゃああああっ!?」
アクアは叫びながら持ち前の身体能力で避け、アイリスはスズハを抱えて跳ぶことで回避した。
通り過ぎた水のドラゴンは旋回し、アクアに襲いかかる。
「ちょっと!? なんで私を狙ってくるの!!」
「アクアさんを倒せばわたし達が全滅するからじゃないでしょうか!」
アクアを消せばまた城を沈めれば良い。
ならば最優先で狙うのも当然で。
水のドラゴンが水圧の唾を飛ばして後ろから攻撃するがアクアは頭を抱えながら走り、器用に回避している。
「助けてカズマさーんっ!?」
泣いて逃げるアクア。
そんな追いかけっこも距離が詰められていると、アイリスが聖剣でドラゴンの首を落とす。
だがやはり、というべきか、予想通り斬り落とされた首はすぐに元に戻る。
「どうするの!? 結構ピンチなんじゃないの、これぇ!!」
水のドラゴンに追いかけ回されるアクア。
スズハは城の中を窓ガラスから見る。
(城の中の水も抜けてる)
城に使っていた水を全てドラゴンに集めているのだろう。
今ならアクアの力を借りなくても城内に入ることが可能だった。
「すみません! ここはお願いします! わたしは中で
そう言って城の中へと走るスズハ。
「待ちなさい、スズハ! あんたが死んだらカズマ達に怒られるの私なんですからね!! うわぁっ!?」
雨のように降ってくる水の弾丸にアクアは全速力で走って避ける。
「スズハさん」
聖剣を構えてアイリスはドラゴンに攻撃を仕掛けた。
「これが、アイリス様を刺した呪いの短剣か」
「えぇ。昔の仲間から奪い取った強力な武器です」
縛られて転がされているジョージの体をクレアが調べて出てきた、忘れもしないアイリスを刺した短剣。
それはかつてジョージと一緒にパーティーを組んでいた仲間が転生特典として貰った物だ。
ジョージが所属していたパーティーに居たもう1人の転生者。
そのパーティーが城へとやって来た際に
幸い向こうも、切り捨てた元仲間の事など数年で忘れたらしく、目の前に現れても気付きもしなかったが。
クレアが質問を投げ掛けようとする前に、ジョージの方から話しかけた。
「シラカワスズハさん。彼女に
「そうだ。その為に、アイリス様も一緒に城内へと向かわれた」
「殺されますよ」
確信を持ってジョージはクレアに言う。
「あの少女は
もしも最初に手を取っていれば、ジョージから契約を奪い取るか、契約を破棄させる事くらいは出来たかもしれない。
だが、シラカワスズハはそうしなかった。
精霊は基本、心が純粋で有るが故に、自分に背いた者を許さない。
「遅かったのですよ。たった一度のチャンスを逃したシラカワスズハさんに、妻と心を通わせる資格はない」
スズハは精霊を察知するスキルで
見つけたのは謁見の間に置かれている玉座。
そこに座る女性の姿を象る水の精霊。
同じ水の属性だからこそ察せられたのか。
それともただの偶然か。
それはどちらでも良くて。
スズハは唾を飲んでから謁見の間の中へと足を進める。
数日前、彼女を見捨てた事をやり直す為に。
半分程距離が縮まると、スズハは
そして、何かを言おうとする。
「え?」
右肩に激痛が走った。
見ると
「いっ、あ……はぁ……!?」
痛みで脂汗を滲ませ、表情を歪ませる。
水の刃が縮むと、スズハの肩から血が吹き出た。
読者さんがこの作品で好きな話は?
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序盤
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デストロイヤーから裁判まで。
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アルカンレティア編
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紅魔の里編
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王都編
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ウォルバク編
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番外で書かれた未来の話
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その他