トラウマ克服を兼ねた18くらいのスズハとカズマの初めてとかを前後編のR18を書いてて遅れました。
まぁ、結局それも執筆が止まった訳ですが……。
赤ん坊の世話をしているクリスは残っているギルド職員等に奇異な眼で見られながら端っこでヒナの世話をしていた。
もうすぐ太陽が昇る時間。とっくに就寝だったヒナはこの状況にも関わらずぐっすり寝ている。
母親と再会出来たことが余程心の安らぎになったのか、簡単には起きなさそうだ。
安らかな様子で寝入っている赤子を見て頬を緩める。
(ヒナ……陽愛、ね……)
以前、屋敷に遊びに行った時に教えて貰ったその名に込められた白河涼葉の想い。
陽のように必要とされて沢山の人に愛されて欲しい。
『わたしのように誰かの道具じゃなくて、心から必要されて、愛し愛される子に育ってくれたら。あはは。高望みですかね』
どこか自身無さげに笑う少女。
その時の事を思い出してプッと吹き出した。
(まさに、今のスズハじゃん)
今回、スズハが捕まった件でどれだけ周りが心配して彼女を助けようとしたのか。
その理由は、決して道具などではなく、シラカワスズハという少女が大切だったから。
それはきっと、この世界に来て数ヶ月。彼女が周りの人達と関わり、積み上げてきたことの証。
そんなあの子なら、娘を育てられると信じられる。
「だからスズハさん……ちゃんと帰ってきてくださいね」
クリスは誰にも聞こえない声量で呟いた。
右肩に触れている左手は僅かに発光していた。
(
スズハが自分の治療に使っているのはこの世界に訪れる時にエリスから特典として貰った腕輪の力だった。
アクアの魔法みたいにすぐに完治する訳ではないが、止血くらいならどうにかなる。
スズハの着替えを持ってきたゆんゆんから渡された際に、カズマに渡そうと思った。
街で怪我をした人に使って欲しいと。
カズマにはアクアが一緒とはいえ、もしもの時の為に持っていけと断られたが。
その予想は的中した。
しかし、そう考えている間にも
街にも生み出されたその獣がスズハに襲いかかってきた。
「っ!?
精霊を使役して
その後ろから水の鞭が伸びて襲いかかってくるのを移動して柱の陰に隠れる。
「そう、ですよね……簡単には……」
こうして対峙しただけでその怒りが伝わってくる。
スズハ自身、これが初めての精霊との交渉ときた。
「大見得、切っちゃいましたからね」
これ以上被害を出さない為にも何としても
「それじゃあ、いきましょうか。力を貸してね」
胸を撫でて自分と契約した精霊に語りかけた。
「
「アクアさーんっ!?」
水のドラゴンに呑み込めれたアクアは腹の位置で泳いでいるというか、洗濯機のように流されていた。
アイリスが近づいて救出しようとするとその位置にアクアを持ってきて思うように剣が振るえず、変わらずに地面に穴を開ける唾を飛ばしてくる。
ドラゴンの攻撃を回避し続けるがアイリスの体力とて無限ではない。いずれは速度や動きの精細さを欠いていく。
どうするかと悩んでいると、アクアがドラゴンの中でもがき始める。
「
アクアが浄化魔法を使うと腹の1部分が形を崩し、拘束から解放される。
「うぎゃんっ!?」
着地に失敗したアクアは顔から地面に突っ込んだ。
「無事ですか! アクアさん!?」
「無事じゃないわよ!! もー! なんで私がこんな目にーっ!!」
頭を振って水を飛ばすアクア。
そしてキッと水のドラゴンを睨み付けた。
「水で作ったドラゴンのくせに、水の女神を食べるなんて良い度胸だわ!! どっちの立場が上か分からせてやるんだから! おりゃああああああああっ!!」
「ア、アクアさんっ!?」
アイリスが止める間もなく頭に血が昇ったアクアはドラゴンに突撃していく。
「喰らいなさい、女神の怒りを! ゴッドブローッ!!」
拳を突き出し、突進するアクア。
それを真正面から迎え撃つドラゴンは、拳が頭部に当たる瞬間にその大きな口を開いた。
「へ?」
マヌケな声を出したアクアはそのまま再びドラゴンの口から腹へと招待された。
「あぶぶぶぶぶぶっ!?」
「アクアさーんっ!?」
状況が振り出しに戻り、アイリスから悲痛な声が響いた。
「つっ!?
水の鞭は渦巻きに絡まり、水飛沫を飛ばして無力化する。次の行動に移られる前に
「はぁっ……はぁっ……はぁっ……!」
魔力を消費する慣れない疲労感にスズハの息が上がる。
それも当然。
今まで多少カズマ達のサポートをする為に精霊の力を借りた事は有るが、単独での戦闘などこれが初めてなのだ。
どれだけの魔力を消費すれば爆裂魔法を使っためぐみんのように倒れてしまうのかイマイチ解らない。
早く
「土精霊《ノーム》!」
スズハでも持てるように薄く面が広い盾を。
「それでも、重いけど……
炎を纏わせた盾。
それを前に出すと攻撃に使われる水の鞭が盾に当たると蒸発する。
水の獣と騎士は
ジリジリと、しかし確実に迫ってくるスズハに危機感を覚えたのか、それとも煩わしい敵を早々に消したいのか、
すると、この謁見の間の床全体が濡れ始めて、水位が少しずつ上がってきた。
「っ!?」
城を沈めたように、この部屋だけに水を詰めてスズハを溺死させるつもりだと判断した。
スズハは重たい盾を即捨てて
「ぶはぁっ!? ねぇ、まだ!? もうこれで6回目なんですけどっ!! 私ダクネスじゃないから恐いのとか痛いのとか好きじゃないんですけど!!」
「もう少しお願いします! だんだんと確実に小さくなってますから!」
水のドラゴンに喰われて6回目の脱出。
その回数に応じてドラゴンの体は小さくなっていく。
アクアが浄化魔法を使う度にその分だけ
動くドラゴンに浄化魔法をかけるのは至難な為、喰われてから浄化、脱出を繰り返している。
本来ならドラゴンの中で溺死するなりで危険だが、水の女神であるアクアなら問題ない。
だが、何度も繰り返している内に嫌になってきたアクアはアイリスの肩を揺さぶる。
「ねぇ! あの中って結構と恐いのよ! 体を色んな方向に回されるの! 落ちる時も痛いのぉ!」
「本当にあともう一度だけお願いします! そうすれば、私がどうにかしますか、らっ!?」
水圧の唾を飛ばされてアイリスはアクアを庇いつつ回避する。
穴の空いた地面を見てアクアが歯軋りした。
「もう! アクシズ教徒の皆が居てくれたら、あんな似非ドラゴンなんて1発で浄化出来るのにぃ!」
アルカンレティアで温泉全てを水に変えたことを思い出しながら再びドラゴンの中へと突っ込んでいく。
7回目飲み込まれたアクアはこれで最後というわけで、全力で魔法を使う。
「ピュリフィケーションッ!!」
アクアの浄化魔法により、水のドラゴンは最初の半分近くの大きさまで縮んだ。
少々高い位置から落下したアクアが小さな悲鳴を上げる。
「アイリス! 言われた通り頑張ったんだから! 私もう食べられなくて良いわよね!?」
「はい! ありがとうございます、アクアさん!!」
小さくなった水のドラゴンを見据えてアイリスは聖剣を構える。
アレを消し飛ばすだけならここまでする必要はなかったのだが、聖剣の力を全力で解放すると、城にまで多大な被害が出て中にいるスズハにも被害が出るかもしれないと考えて遠回しな手段を用いた。
(後は、ドラゴンがもう少し上に移動してくれれば!)
これまでの戦闘でドラゴンの行動パターンは大体解ってきた。
次こっちに突進してくるのを回避すれば目論み通り上へと移動してくれる筈。
構えた聖剣に光が帯びる。
ドラゴンが上昇し始めてところでアイリスは聖剣を振り下ろした。
「セイクリッド・エクスプロード!!」
斬撃と共に放たれた眩い光が完全にドラゴンを消し飛ばした。
その際に城の一部に当たり破壊されてしまう。
聖剣の輝きはドラゴンと共に消え、アイリスは城の方へと視線を向けた。
「急ぎましょう、アクアさん。スズハさんが心配です」
聖剣の威力を見たアクアはブンブンと首を縦に動かした。
(思った以上に水位の上がりが早い!)
既に室内にはスズハの膝の部分まで水位が上がっている。
着物を着ている事もあり、前に進むのも一苦労だった。
(だけど……)
どうにも手段が遠回りに思える。
スズハを殺すつもりなら、態々悠長にこの部屋に水を敷き詰めるよりスズハの体だけを沈めれば良い。
何なら、首から上だけでも。
もしそうされたら、火傷覚悟で
この部屋に入ってからの初手もそうだ。
肩など狙わず、人間の急所を狙えば良い筈。
嬲るつもりなら肩ではなく足を狙うだろう。
殺意を持った相手がどこを狙うのか、シラカワスズハは経験から知っている。
何せ彼女は自分の母に刺されて一度は命を失ったのだから。
第一水に浸かった自分など、どうするのも簡単だろうに。
だからこそ
(まるでわたしを自分から遠ざけたいみたい)
思い違いかもしれないが、そう感じる。ただ自分に近づけたくないだけなのだと。
だから先ずは触れ合える距離まで近づく。
(魔力ももうそんなに残ってない。恐らくは次が最後。それ以上使ったら、動けなくなるかもしれない)
1歩1歩、転がらないように進む。
それでも、上がった水位が腰まで達して、歩くどころか立っているのがやっとだった。
いくら普段から着ていると言っても、着物で水中を歩いた事などなく、バランスを取るのが精一杯だった。
そんな中で
「あぁ!?」
謁見の間から押し出されようとした、が────。
「スズハさん!」
ここまで追い付いて来たアイリスとアクアがスズハを受け止める。
「もう! 1人で突っ走っちゃって! スズハに何か遭ったらカズマ達に怒られるの私なんですからね!!」
「ご、ごめんなさい?」
「何で疑問系なんですか?」
突然現れたアイリスとアクアに頭が追い付かず、つい気の無い返事を返してしまった。
しかしすぐに頭を切り替えてお願いする。
「すみませんアクアさん。精霊のところまで道をお願いします。アイリス様は────」
「護衛ですね! 当初の予定通り!」
「ふん! あの躾のなってない精霊! どっちが水を司るのに相応しいか教えてあげるわ! 女神の本気、見せてやるんだから!」
言うと、アクアが水位が上がり続ける室内に手を入れ、魔力を流す。
この城へと侵入した時は自分達が歩く範囲だけだったが、今は
「スズハ! あの精霊をシバき倒しなさい!」
「はい!」
アクアに言われて走るスズハ。
アイリスも動きすぐにスズハの前に出る。
スズハの足並みに合わせて動くアイリスは、
走って近づいてくる2人に、水の壁を作って防ごうとする。
「
アイリスがそれを斬ろうとするが、何かしら仕掛けが有ることが予想されて
水が氷へと変わった瞬間にアイリスが数回氷の壁を斬って人が通れるスペースを作った。
「スズハさんっ!!」
「はい!!」
飛び込むように駆けてスズハは
それに驚いたのか、掴んだ腕と反対の手はスズハのお腹を突き刺さった。
流れ込んでくる。
精霊の記憶と感情が。
王都の水源である川に存在していた
流れる川その物である精霊は人前に現れる事もなく、人の住む都に供給される水を感じながらも穏やかに存在し続けていた。
その静寂が破られたのは人の世の時間にして約10年前。
突然感じた不快な力の流れ。その原因である人間が立っていた。
スズハが知るより幾分か若いホーリー・ジョージ。
彼は穏和な笑みを浮かべて
「色々と考えてみたんだけど。やはり応用の範囲が広い水だと思うんだよ」
訊いてもいないのに勝手にジョージは口を動かす。
「最初はこの世界で精霊使いとしてそれなりに楽しく過ごせれば良かったんだ。まぁ、生きるのに必死ってのもあったけどさ。でも、仲間だと思ってたアイツらは俺を簡単に切り捨てるし、何で俺の死に様を嘲笑った女神の言うとおり魔王退治に精を出さなきゃならんのだと気づいた訳」
肩をすくめておどけて見せるジョージ。
「アイツ、水の女神とか言ってたしさ。同じ属性で魔王軍を勝たせるのも意趣返しとしては面白いと思って。だから協力してもらうぜ」
ジョージが此方に手の平を向けてくる。
すると
力も意識も無理矢理目の前の男と繋がり、上塗りされるような不快感。
「精霊を強制的に従わせる術式。貰い物だけど、魔力だけは自信がある。お前の意思とは関係なく契約を結ばせて貰う」
醜い笑みと共に
場面が切り替わる。
城の中にある人気の無い通路。
そこでは男が
「な、んで……」
どうして自分が刺されたのか理解できない様子の男に隠れていたジョージが薄ら笑いを浮かべて現れる。
「相変わらずだな。そうやって人の女に手を出そうとする性癖は。パーティーを組んでいた時にそれで何度も迷惑を被ったのも今では懐かしい」
「お前……どう……!?」
「忘れたか? そちらからすれば、切り捨てた元仲間なんて数年もすればどうでもよくなるんだろうな」
元仲間らしい男に近づいてジョージは近づくと懐から短剣を奪う。
「実は、魔王軍から仲間になりたければこの国の王族の首を1人分持ってこいと言われててね。お前達と組んでいた時は魔王軍ともやりあってるから中々信用されないんだ。その為にはお前のチートアイテムも貰っておきたくてね。悪く思うなよ?」
そう言うと、男の喉を奪った短剣で刺した。
アイリスを刺して呪いをかけた短剣も、喉を刺されれば即死は免れない。
短剣に付着した血を拭き取る。
「やはり狙うなら世間知らずの王女だな。聖剣の事もあるし。この短剣なら確実に殺せる筈だ」
そうしてジョージが
「ありがとう。俺の
場面が替わり、次は王族を騙そうとしていた商人を告訴した。
侵入してきた賊を騎士達より早く始末する。
その他諸々の功績でジョージは王城の者達の信頼を積み上げていった。
その時に
────もういや。
────帰りたい。
────こんなことはしたくないのに。
────辛い、苦しい。
────助けて。
そんな様々な負の感情が蓄積されていく中で、出会った
シラカワスズハは自分の正体に気付いていた。
だから、助けを求めようとした。
しかし、
「スズハさん!?」
「!?」
悲鳴のようなアイリスの呼びかけにスズハはハッとなる。
(今のは……?)
流したのか流れたのか判らないが。
刺された腹から血が流れていて当然痛い。
何か良くないモノでも憑いてるんじゃないかと思うほど運が悪い気がする。
(エリス教会ってお祓いもやってますかね)
そんな事がふと過ったが、すぐに
「ごめんなさい……」
正体に気付きながらも見て見ぬふりをしたこと。
助けて欲しいという願いに袖を振ったこと。
あの時にこの手を取っていれば、こうはならなかったのに。
「ゴホ……っ!?」
口から血を吐きつつも、手を伸ばして
10年間の契約による拘束。
ずっと耐え続けるだけの日々。
「がんばったんですね……偉、かった、ですよ……」
記憶を見て、スズハは
帰ってくる子供を迎え入れるような温かさで。
「おいで……もう……だれも、あなたを傷つけたり……」
しない、と言い終える前にスズハの体が床に崩れ落ちた。
ポーションなどで誤魔化していても、スズハはとっくに限界を超えてたのだ。
「────!?」
倒れたスズハを見下ろしている
「え!?」
夜が明けて空が白み始める時間。爆裂魔法を使って魔王軍を追い払っためぐみんとゆんゆんの2人を抱えて水の人形達を避けて移動していたカズマは事態の変化に驚いていた。
城下町で暴れていた水の人形達が次々と形を失い、水に還っていく。
「成功したのか、スズハが……?」
中の様子は分からないと理解しているが、千里眼スキルを使用して城の方へと目を向ける。
昇り始めた陽が差して城の姿が見えた。
そこで見えたモノにカズマは目を瞬きさせた。
カズマが見たのは宙に浮かんでいる
昇る朝陽の光を受けて、精霊に抱えられているスズハ。
それは息を呑む程に幻想的な画だった。
カズマだけでなく、城を監視していた者や、その他にも、その光景を見た者達は、その姿が焼き付いていた。
後2話でこの章も終わりです。
この章が終わったら番外編でヒナ(7歳)と父親を再会させるんだ!
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序盤
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デストロイヤーから裁判まで。
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アルカンレティア編
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紅魔の里編
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王都編
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ウォルバク編
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番外で書かれた未来の話
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その他