あくまでも今回は、可能性の1つとして読んでください。
本編がこの未来になるかは未定です。
「我が名はヒナ! 精霊の巫女の娘にして(将来的に)全ての精霊を従えし者!」
「ふふ。ヒナもだいぶ紅魔族の名乗りが様になってきましたね」
「はい! ししょー!」
わたしはシラカワヒナ。高名な
「おい、めぐみん。スズハが留守の間、ヒナの世話を頼まれてたんだろ? いったい何を教えてんだよ」
「何って、紅魔族流の自己紹介ですが? これでヒナは何処に行っても恥ずかしくありません」
「いや恥ずかしいよぉ!? お前、いたいけな5歳児になんつうもん教えてんの!」
この自己紹介。おかあさまの前でやるとスッゴく渋い顔をします。何ででしょう? とってもカッコいいのに。
頭をかかえているカズ兄さまはめぐ姉さまに近づきます。
「しかし残念です。ヒナがもしもエレメンタルマスターではなくアークウィザード志望ならば、我が奥義である爆裂魔法を授けられたのですが」
「ホントいい加減にしとけよ? その内スズハが泣くぞ」
「何を言うのです。きっとスズハが戻って来たら今のヒナを見て感激する筈ですよ」
「んなもん、
そんな風にカズ兄さまとめぐ姉さまが話しているとお客さまがやってきました。
「やっほー! みんな、久し振りね! このアクア様が遊びに来てあげたわよー! たくさんのお酒を持って! さぁ! 感激して敬いなさい!!」
「あ。アクアおばさま。いらっしゃいです」
ズタァー!
アクアおばさまが勢いよく顔からころびました。イタそうです。
「ヒナァ! おばさん呼びはやめてって言ってるでしょ!」
「? だってカズ兄さまが……」
『いいか? アクアはあれでかなりの
「って」
「ちょっとカズマさん! アンタのせいでヒナがあり得ない呼び方するんですけど!」
「だってBBAなのは事実だろ?」
「人間換算で言わないでくれる!! 女神は年取らないの! 肉体的には今のカズマよりピチピチなんですからね!」
アクアおばさんが泣きそうな顔で話してます。
しばらくするとキョロキョロとし始めました。
「アレ? ダクネスとスズハは? 留守」
「アイツらは今王都にな。何でも王都周辺の湖が水位が上がってるとかで。その調査っていうか、水精霊との対話の依頼が来たんだよ。ダクネスはその案内だ」
お母さまはよく精霊さんとの話し合いのご相談を受けてます。その関係で色々な名前があります。
精霊の巫女。
人と精霊の調停者。
精霊に愛されし娘
ほかにもたくさんの名前がありますが、それを言うとお母さまは困ったように笑います。
「ふーん。だったらヒナも連れて行った方が良かったんじゃない? アイリス。あの子、ヒナのこと溺愛してるじゃない」
アイリス姉さまはわたしをとても可愛がってくれます。
この間も遊びに来て馬車いっぱいにつめたおかしやオモチャをくれました。
でも、お母さまはそれがあまりおもしろくないのかいつも言い争ってます。
でも。
「アイリス姉さまにあいたかったなぁ……」
王城、謁見の間。
「スズハさん! 何でヒナさんを連れてきてくれなかったのですかっ!!」
「今回の依頼は湖に住む精霊との対話との事でしたので。無関係な娘には留守番してもらいました」
「ヒナさんに喜んでもらおうと私、王族でも滅多に呼べない超一流のパティシエを呼んだり! スズハさんが精霊と話している最中に一緒に遊ぼうと思って時間を調整したんですよ!」
「そうやって娘を甘やかそうとするから滅多に連れて来れないんです」
「スズハさんはイジワルです! 鬼です! 悪魔です! 魔王を超える鬼畜です! なんて酷い……!」
「オホホホホホ」
(早く
「
「食うか喋るかどっちかにしろ!」
鍋の具を口に入れながら喋るアクアにカズマが叱る。
それに不服そうにしながらもゴクンと飲み込んだ。
「スズハが告白した件はどうなったのー」
「ぶっふーっ!?」
「キャアァアアアアアアアアっ!? なんすんのよカズマァ! キッたないわねぇ!!」
カズマが吹いた汁がアクアの顔面に直撃し、抗議する。
「喧しいわ! お前がくだらねぇこと言うからだろうが!」
手にしていた箸でアクアを指差すカズマ。
「何よカズマ! ちょっと気になったから聞いただけじゃない! それとも何? あれからまったく進展してないのー?」
最後の方は小馬鹿ににするような口調のアクアに、カズマはヒクヒクと口元と眉を動かす。
アクアの疑問に答えたのはめぐみんだった。
「えぇ。まったく進展していませんよ。カズマはヘタレで答えをのらりくらりと避けてますし。スズハもスズハで、急かさず待ってます」
「おい、めぐみん! テメェ!」
「スズハもかわいそうに。こんな男に引っ掛かって毎日甲斐甲斐しく世話もしてるのに」
「そういえば、スズハってばそれなりに有名人らしいじゃない。王都で色んな男に声かけられてたりしてねー」
「うっせ、うっせ。べ、別に俺はスズハが誰とくっついても祝福するつもりだっての! アイツは、俺にとってアイリスと同じ妹みたいなもんで……」
「なるほど。カズマは妹と思ってる相手をいつもあんな舐め回すようなエロい視線をむけるのですか。さすがですね。ドン引きです」
「うっさいな!? だってスズハの奴、最近は最初に会ったときとは別人みたいに育ってんだぞ! それに風呂上がりとか酒飲んだ時とか! お前らと違って妙に色っぽくてだなぁ!」
この5年。シラカワスズハは色んな意味で成長した。
性格もこの世界に訪れた時以上にしっかりしてるし、肉体的にも背が伸び、特に胸の発育はこのままいけばダクネスやウィズに匹敵するのではないかと言うほどのメロンに育っている。
それを見て何も感じないほどカズマは男を捨てていない。
喚き立てるカズマ。
ヒナは鍋の具に美味しそうに食べながら、肩に乗っている雪精と話していた。
「シロ。食べます?」
初めてスズハが契約した精霊。本来冬場にしか出現しないそれは、スズハの魔力供給を受けて常時その姿を現している。
娘の遊び相手に丁度良いという理由もあった。
さすがに鍋物を口にする気はないらしく、その丸い体を小刻みに横へと振って拒否していた。
そんな風に夕食を過ごしていると、アクアがとんでもない提案をしてきた。
「明日、クエストに行きましょう!」
何言ってんだこいつ、とカズマとめぐみんが見る。
「久々にジャイアントトード狩りなんてどうかしら!」
「いや、行かねぇからな? 何だって急にクエスト行きたいなんて言い出すんだよ? 以前はむしろ働きたくないって駄々こねてたろうが」
「だってだって! 魔王を倒したせいで日本から魂をこっちに転生させる必要が無くなって! 私、スッゴく暇なの! たまには刺激が欲しいのよー!」
「こいつはぁ……」
そんな遊び感覚でクエストに行きたいなどと言われては堪らない。カズマは断固拒否しようとするとめぐみんが発言した。
「私は反対です。聞き分けが良いとはいえ、ヒナを1人で留守番させるのは不安ですから」
スズハに直接娘の面倒を頼まれた者としてめぐみんも反対意見だった。
それにアクアはチッ、チッと指を動かす。
「馬鹿ねぇ、めぐみん。それならヒナも連れて行けばいいじゃない」
「馬鹿はお前だ! モンスターの前に、こんな小さな子を連れていけるわけないだろ!」
「なによー! 私たちは魔王を倒したパーティーなのよ! ダクネスやスズハが居なくったって、ジャイアントトードくらい指先1つでダウンでしょうが!!」
そしてめぐみんにビシッと指差す。
「それとも何? めぐみんの爆裂魔法はヒナを守りながらジャイアントトードも倒せないわけ?」
その挑発にめぐみんが青筋を立てる。
「聞き捨てなりませんね。私は爆裂魔法を操る最強のアークウィザードです。ジャイアントトードなど、アクアやカズマの出番など回さずに一瞬で倒せますよ!」
「なら、良いじゃない! 御自慢の爆裂魔法を撃って、ヒナの目の前でジャイアントトードを倒しなさい!」
「望むところです!」
女2人が盛り上がっている最中、カズマは誓った。
(もしヤバくなったらヒナを抱えてとっとと街の中に逃げよう。2人を囮にして)
アクセルの街を出てジャイアントトードがいる草原にカズマ、アクア、めぐみん。そして雪精であるシロを抱えたヒナが居た。
「ジャイアントトードがウヨウヨ要るわね! 狩り尽くしてやるわ!」
ボキボキと指を鳴らすアクア。早速爆裂魔法で目標の5匹を狩ろうとするめぐみんにアクアが待ったをかける。
「ここは私に任せなさい! 5年前とは一味違うところを見せて上げるわ!」
「おい! 止せアクアァ!」
宣言して、もっとも近いジャイアントトードに突っ込んでいく。
それを見たカズマが止めに入ろうとするが間に合わない。
ジャイアントトードまで近づいたアクアは己が必殺の一撃を繰り出す。
「ゴッドブローッ!!」
炎のように光輝く拳がジャイアントドートの腹にめがけて直進する。
「ゴッドブローとは! 女神の怒りと悲しみを乗せた必殺の拳! 相手は死ぬぅ!!」
5年前にジャイアントトードに一切通用しなかった技。
5年越しに繰り出した拳。
余談であるが、水の女神アクアは最初からステータスがカンストしており、その能力は5年前と一切変わっていない。そんな女神の拳が通用するかと言われれば────。
ぼよん。
ジャイアントトードの腹にヒットした拳は僅かにその脂肪を揺らすだけに留まり、まったく効いていなかった。
「……カエルのお腹って、トランポリンみたいで素敵だと思うの」
アクアの言葉を当然聞く耳持たずでそのまま格好の獲物となったアクアを口に中に入れた。
「アクアおばさま!?」
まさか、あんなにも自信満々に飛び出してあっさり食われるとは思わなかったのだろう。ヒナは悲痛の声をあげた。
「カッズマさぁん! 助けてぇ!? 呑み込まれる! 少しずつ落ちてくぅ!!」
ジャイアントトードの口から出たり落ちたりしながら抵抗しているアクアにカズマは頭を掻いた。
「なんで学習しねぇんだアイツは! おいめぐみん! 俺がアクアを助け出すから! 下がったら爆裂魔法だ!」
「分かりました!」
カズマは腰に差したちゅんちゅん丸を引き抜き、アクアを食べているジャイアントトードに突っ込んでいく。
「でぇい!!」
アクアを口に捕らえているジャイアントトードの腹を何度か斬り付けて仕留めた。
「大丈夫かアクア!?」
「ヒック……私、またカエルなんかに汚されちゃった。女神なのに……私、女神なのにぃ……!」
「泣いてる余裕があるなら下がれよ! 俺たちがここにいるとめぐみんが爆裂魔法を撃てな────」
そこでカズマはめぐみんとヒナに近づいているジャイアントトードに気付いた。
めぐみんはこちらに気を取られて近づくモンスターに気づいていない。
「めぐみん! ヒナを抱えて逃げろぉ!?」
カズマの指示にめぐみんは意識を周囲に向けて、自分たちに近づくジャイアントトードに気付いた。
しかし遅い。このままではジャイアントトードにめぐみんとヒナは捕食されてしまうだろう。
「クソッ!」
半ば反射的に2人の下へと走るカズマ。
しかしその横を金の髪が高速で通り過ぎた。
迫るジャイアントトードの長い舌。
だが、その舌がめぐみんとヒナに襲いかかる前に、別の者が割って入った。
「あぁん♥️」
それは、苦痛と恐怖ではなく歓喜と快楽に染まった声だった。
「ダク姉さま!?」
突然現れたダクネスがめぐみんとヒナを庇ってジャイアントトードの口の中へと引っ張られる。
だが何故か本人は幸せそうに頬を赤くしていた。
「あぁ、今私は仲間を庇ってカエルの口の中に吸い込まれている! そして粘液を全身に塗られながら少しずつ捕食されていくのだ! いい! これはこれで堪らない刺激だぁ!」
「もういい! お前は黙ってろぉ!」
「ヒナ。聞いてはいけません。貴方にはまだ、ダクネスの嗜好を知るには早すぎます」
突然ダクネスが現れた驚きよりも反射的にカズマはツッコミを入れ。めぐみんはヒナの耳を塞いだ。
「まったく。何をしているんですか貴方たちは」
呆れるような。怒るような声がカズマたちに届く。
瞬間、ダクネスを捕らえているジャイアントトードが無数の風の刃で切り裂かれた。
「あん♥️」
落とされたダクネスが小さく悦びの声を出す。
現れた人物にヒナの顔が喜びの笑みに変わる。
「お母さま!」
カズマとアクアの近くに居るスズハは、眉間にシワを寄せて顔を押さえている。
「なんでここにヒナが居るんですか?」
「いや、それは……」
「訳は後で。取り合えず、この状況を何とかしますね。
スズハは手の甲に乗っている緑色の服を着た、少年とも少女ともつかない小人に指示を出す。
すると、風精霊は頷き、周辺に居るジャイアントトードを風の刃が切りつけて討伐していった。
「すっげ」
その光景にカズマが感嘆の声を上げた。
周囲にジャイアントトードが居なくなるとヒナがスズハの下へと駆け出す。
「お母さま!」
飛び付くヒナをスズハは抱き上げた。
「なんでここに貴女がいるの?」
ヒナは答えず、嬉しそうに母に抱きついていた。
その様子にいいか、と割り切り、カズマたちに視線を向けた。
「さて。どういうことか説明してもらっても?」
カズマとめぐみんとアクアはガクガクと震えながら大きく首を縦に振った。
ジャイアントトードの換金を終えて屋敷に戻ると3人は床に正座させられており、スズハは椅子に座って3人を腕を組み、冷たい視線で見下ろしている。
カズマたちが大量の冷や汗を流している原因はスズハの横にいる白い鎧武者。
冬将軍。
数年前にスズハと契約したその精霊は、手にしている刀をチラつかせている。
「私、ちゃんと頼みましたよね? 王都に行ってる間、
「はい!」
「確か、ヒナの事は任せてください。もし彼女に何かあれば、我が首を差し出しても構いません! って言ってましたよね?」
「はい、言いました。大口叩いてすみません!」
視線を下に向けて謝罪するめぐみん。その身体はガクガクと震えていた。
「カズマさん」
「はいぃ!」
「貴方も、仕事が終わったらちょっとくらい王都で遊んできてもいいぜ。たまには羽を伸ばすのも必要だろ? ヒナは大人しいから、数日遅れたって大丈夫だって言ってくれましたよね? まぁ、仕事が終わったら急いで戻りましたが」
「今回の事は言い訳のしようもありません。ホントごめんなさい……」
土下座するカズマ。
そして最後にアクアへと視線を向ける。
「わ、私は別に何も約束してないわよね! だから────」
「今回、クエストを受けるワガママを言い出したのも、ヒナを連れていくのを提案したのもアクアさんだと聞いたばかりなのですが? 本当に責任がないとでも? ん?」
「……はい。今回は本当に申し訳ありません。でもきっと大丈夫だと思ったんです。悪気はなかったんです。だから、その……冬将軍の刀をカチカチ鳴らすのやめてください、お願いします」
そんな3人を見下ろしていたスズハは大きく息を吐くと指をパチンと鳴らす。
すると、冬将軍はその場からキレイさっぱりと姿を消した。
「まぁ、いいでしょう。反省してくれたみたいですし」
何だかんだでこのメンバーに甘いスズハは怒りを収めることにした。
「夕飯の準備をしますから、お風呂に先に入ってきてくださいね。特にアクアさんとダクネスさん」
エプロンをまとい、キッチンに向かうスズハ。
それに安堵の息を吐く。
「わたしも手伝います!」
その中でヒナが手伝いを申し出た。
「いいわよ。今日は恐かったでしょう? 休んでて」
「ひさしぶりにお母さまとお料理したいです!」
そう言われてしまうと断りづらくスズハは苦笑した。
「なら、手を洗ってきなさい。エプロンもかけてね」
「はい!」
手を洗い、エプロンをかけてきたヒナは卵をかき混ぜる作業を任せられる。
その作業を真剣な様子でこなしながら、スズハに話しかけた。
「お母さま。今日は大きなカエルさんに襲われて、とても恐かったです。でも、まちの外に出て、すごくドキドキしました。また行ってみたいです!」
好奇心旺盛な娘にどう答えるべきか悩むスズハ。その様子に気づかず、ヒナは真っ直ぐにスズハを見た。
「その時は、お母さまも一緒にきてくれますか?」
不安そうな問いにスズハは笑みを浮かべた。
「もちろんよ。ヒナが大きくなって、冒険者になったその時に、ね」
そう答えてスズハはヒナの額にキスをした。
するとヒナは本当に嬉しそうに満面の笑顔を浮かべた。
○月×日
きょうは大きなカエルさんをたくさん見て、食べられそうになったところをお母さまに助けていただきました。
とてもカッコいいお母さまが見れてわたしはとても嬉しかったです。
信じられますか?スズハはこの時点でまだ16歳なんだぜ。
描写してませんがヒナはスズハと同じように着物を着てます。これがエレメンタルマスターの正式衣装だと勘違いしてます。
読者さんがこの作品で好きな話は?
-
序盤
-
デストロイヤーから裁判まで。
-
アルカンレティア編
-
紅魔の里編
-
王都編
-
ウォルバク編
-
番外で書かれた未来の話
-
その他