この小さな母娘に幸福を!   作:赤いUFO

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短い……。


突然の再会

 雨。

 雨が降っていた。

 アクセルの街から少し離れた渓谷。

 そこには数名の人影が見える。

 

「はぁっ……はぁっ……はぁ……っ!」

 

 その中心には2人の女が上下に密着していた。

 上に居るのは、その国では珍しい、着物という民族衣装を着ている十代前半の長い黒髪の少女。

 

 下に居るのは、二十代前半程に見える赤い髪の魔王軍幹部。

 上に乗っかっている黒髪の少女は逆手に持った剣を赤い髪の女性に突き付けていた。

 剣を握っている手が湿っているのは汗なのか、それとも雨なのかも判断出来ない。

 震えているのが雨の寒さなのか。それとも誰かに刃物を向けているという恐怖からなのかも。

 

「────」

 

 互いに幾つかの言葉を交わすと、赤い髪の女性はこれから起こる事を受け入れるように目蓋を閉じた。

 そのまま、黒髪の少女は握っていた剣の刃を赤い髪の女性の胸へと下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ! 見て見て! 私、ドラゴンの卵を買ったの!!」

 

 上機嫌に帰って来たアクアが大事そうに手にしている卵を見せてくる。

 

「ドラゴンの卵、ですか……」

 

「そうなの! この街に来ていた商人が売ってくれたのよ! この子が育てば、魔王軍を倒す大きな戦力になると思うの! もう名前だって決めてあるんだから!」

 

 小さな卵を頬擦りするアクア。

 スズハは隣に居るめぐみんにヒソヒソと確認する。

 

「あの、めぐみんさん。ドラゴンの卵ってあんなに小さいものなんですか? わたしには、その……」

 

「スズハの予想通りですよ。私もドラゴンの卵の実物を見た事はありませんが、アクアが持っているのは間違いなくヒヨコの卵です。おそらくはその商人に騙されたのではないかと」

 

 めぐみんの返答にスズハは小さく顔をひきつらせた。

 ソファーに座り、何か作業をしていたカズマがアクアに問いかける。

 

「どーでもいいけど。その卵、いくらしたんだ?」

 

 カズマの質問にアクアが胸を張って答える。

 

「えぇ。何せドラゴンの卵ですもの! 私の今月のお小遣いを全部使ってしまったわ。でも、この子。キングスフォード・ゼルトマン。略してゼル帝が魔王をしばき倒せば充分元が取れるわ!」

 

 そう言って小さな器に柔らかい布を敷き、その上に卵を乗せる。

 

「あぁ。早く孵化してくれないかしら?」

 

「……アホだな」

 

 興味を失くしたカズマは自分の作業に戻る。

 そこでソファーの横からちょむすけの鳴き声が聞こえた。

 

「なーんっ!」

 

 そこにはヒナに上から抱き付かれて苦しそうにもがいているちょむすけが居た。

 

「あ! ヒナ!! ちょむすけが嫌がってるでしょう! めっ! 遊ぶならこっちにしなさい!」

 

 ちょむすけ人形を手にして引き剥がそうとするが、ヒナが抱き潰さんばかりに強くちょむすけにしがみついており、無理に剥がそうとすると嫌がって暴れる。

 それでも苦しそうなちょむすけがかわいそうなので無理矢理離すとちょむすけは逃げるように別の部屋に行ってしまう。

 

「あー! あー!」

 

「ほら。ヒナはこっち」

 

 手を伸ばして暴れていたヒナもちょむすけ人形を与えるとそっちに意識が向いて本物と同様にぎゅっと抱き締める。

 どうも本物と人形の区別がついてないらしい。

 ちょむすけには今晩ご飯を少しだけ豪勢にしようと決めた。

 

「流石は私の作った人形ね」

 

 誇らしげにするアクアを見てスズハは卵の方に視線を向けるとある事に思い至る。

 

(ペットが増えますね)

 

 ヒヨコってどう飼うんだっけ? と自分の知識を引き出そうとするがすぐに止めた。

 この世界のヒヨコがスズハの知っているヒヨコと同じか分からないからだ。

 何せこの世界では野菜が動き回り、サンマが畑から採れるのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クーロンズヒュドラ?」

 

 その日の夕食。

 戻ったダクネスが近くに棲息するヒュドラについて話し始める。

 

「クーロンズヒュドラはアクセル近くの山に住み着いているモンスターだ。普段は湖の底で深い眠りについて動かないが、10年程で体内に魔力が蓄積すると暴れだす」

 

「……おいまさか」

 

「あぁ。そろそろその10年だ。明日にはギルドから通達されるだろう」

 

 ヤマタノオロチみたいな見た目のドラゴンの絵を見て、カズマが頭を抱える。

 

「10年前はどうしたんです? 冒険者の方々が対処したんですか?」

 

「いや、有志は募ったが、基本派遣された騎士団がクーロンズヒュドラの相手をして魔力を発散させるまで耐え忍んだ。しかし────」

 

 少しだけ言い淀むが続きを口にする。

 

「どうにも前の王都での件で派遣するのが遅れているようだ。もしかしたら騎士団が遅れた場合、この街の冒険者で対処するかもしれん」

 

「マジかよ……」

 

 そんな危険極まりない案件が回ってくる可能性にカズマは嫌な予感がして頭を抱える。

 そこでめぐみんが得意気に手にしているナイフを掲げて立ち上がった。

 

「その時こそ我が爆裂魔法の出番でしょう!! クーロンズヒュドラは下位とは言え、ドラゴン! とうとう私がドラゴンスレイヤーの称号を得る日が来ました!」

 

「えー! ゼル帝が生まれるのにドラゴン退治とか気乗りしないんですけどー。それに、そんな危険な目に遇うのも嫌なんですけど!」

 

 やる気に満ち溢れているめぐみんとは反対にアクアはブー垂れる。

 そんな2人の態度にダクネスは苦笑いをした。

 

「まぁ、騎士団が間に合う可能性もあるからな」

 

「そうだな。是非間に合ってほしい」

 

 こういう冒険者としての会話をしている時、スズハはちょっとだけ疎外感を覚えるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえばスズハちゃんはエリス祭はどうするんだい?」

 

「エリス祭?」

 

 商店街の宿屋で買い物をしていると、店の店主に言われて首をかしげる。

 

「あれ? 聞いてないかい? 近々、1年無事に過ごせた事への感謝をエリス様に祈る祭りだよ。この街でもそろそろ話し合いの準備が行われると思うんだけどね」

 

「へぇ」

 

 初めて知った情報にスズハは感心する。

 スズハ自身はエリス教徒という訳ではないが、女神エリスにはお世話になった。

 もしも届くのなら、元気でやっていると報告をする意味で感謝の祈りを捧げたい。

 

「祭りの当日は屋台なんかも出るよ」

 

「それは楽しみですね」

 

 良いことを聞いたと少し多めに買い物をして店を後にする。

 移動しようとベビーカーを移動させようとすると、不注意から通行人に当たってしまう。

 

「あ! すみません! 怪我はありませんか?」

 

 ベビーカーが当たった旅人風の格好の女性にスズハは謝罪した。

 

「えぇ、大丈夫よ。こっちもよそ見をして……あら?」

 

 相手の顔に視線を合わせるとそこにはどこかで見たような赤い髪の女性が居て。

 

「貴女もしかして、アルカンレティアで会った、あの……」

 

 覗き込むように顔を近づかせて言われたその言葉にスズハはハッとなった。

 

「温泉のお姉さん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




現代パロディ。

白河涼葉
小学六年生。裕福な家の娘。

白河陽愛
小学一年生。この世界では娘ではなく妹。

アイリス
小学六年生の留学生。涼葉と同じクラスの少女。

佐藤和真
高校一年生(ただし現在不登校)。父親が白河の会社の重役な関係で白河兄妹とは顔見知り程度の知り合い。

アクア。
高校一年生。学校は和真と同じクラスメイト兼トラブルメイカー。

エリス&クリス
高校一年生の双子姉妹。アクアとは同じ中学の出身でクラスメイト。彼女を先輩と呼ぶ。

めぐみん&ゆんゆん。
中学二年生。涼葉は元々ゆんゆんと知り合いでその関係でめぐみんとも知り合った。

こめっこ。
小学一年生。陽愛のクラスメイト。

ララティーナ
大学一年生。アイリスの親戚。

ウィズ。
大学一年生。

白河夏人。
大学一年生。涼葉と陽愛の兄。ララティーナとウィズとは同じ大学。

バニル。
個人経営のコンビニ店長。余計なことをする大学生を雇ってから何故か経営が赤字続きに。

とか言うのが突然頭を過った。


読者さんがこの作品で好きな話は?

  • 序盤
  • デストロイヤーから裁判まで。
  • アルカンレティア編
  • 紅魔の里編
  • 王都編
  • ウォルバク編
  • 番外で書かれた未来の話
  • その他
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