この小さな母娘に幸福を!   作:赤いUFO

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裏技紹介。
番外編5:父娘の再会・後の最後を夜間モードで見るとオマケが読める。


未来のママ友?

「お久しぶりです、お姉さん」

 

「えぇ。貴女も無事だったのね。アルカンレティアは大変な事になってたみたいだから」

 

「はい。あの時はありがとうございます」

 

 あの時にしてくれた助言は途中までの勘違いでド忘れていたのだが、教えてくれた事には変わりない。

 

「お姉さんはこの街に観光ですか?」

 

「一応仕事にね。この街って温泉とか在ったりするかしら?」

 

「無いですねー。それなら私達もアルカンレティアに行かなかったですし」

 

「そうよね」

 

 気落ちした様子を見せる赤髪の女性にスズハは苦笑いを浮かべる。

 

「あ、でも大浴場は在るみたいですよ。私は行ったことありませんが」

 

 カズマやアクアが冒険者を始めたばかりの頃に使っていたという大浴場。

 何度か聞いた事があったために温泉の代わりにと紹介する。

 

「そう。ありがとう。暇を見て行ってみるわ」

 

 本心からかそれともスズハを気遣ってか、赤い髪の女性は礼を言う。

 そうして何でもない雑談に興じていると、ヒナが騒ぎだした。

 

「あーっ! あーっ!」

 

「どうしたの、ヒナ。暴れたら危ないでしょう」

 

 泣いている訳ではないが、もしかしたら赤い髪の女性と話をしていて構って欲しくなったのかもしれない。

 あらあらと赤い髪の微笑んでいると、ヒナが手にしている人形に目が向く。

 アクアが作成したちょむすけ人形だ。

 それを見て赤い髪の女性が息を呑む。

 

「少し、いいかしら?」

 

「はい。どうかしましたか?」

 

「えぇ。その子が持っている人形は……」

 

 神妙な顔をして聞いてくる女性にスズハは素直に答える。

 

「えぇ。家で飼ってる猫を模した人形なんです。この子、すぐにその猫にイタズラしちゃって。だから一緒に暮らしている方が作ってくれたんです」

 

「そ、そう……ねぇ────」

 

 女性が何かを訊こうとしたが、同じタイミングでスズハがまだ残っている用事を思い出した。

 

「すみません。わたし、もう行かないと」

 

「そうなの? 引き留めて悪かったわね」

 

「いえそんな。ぶつかったのはわたしですし、こうしてお話し出来て嬉しかったですから。あ、お名前を伺ってもよろしいですか? わたし、シラカワスズハと申します。この子が娘のヒナです」

 

 今更ながら自己紹介するスズハに赤い髪の女性は少しだけ間を置く。

 

「……バク、と名乗っているわ」

 

 やや不自然な自己紹介だったが、スズハは特に気にしない。

 紅魔族などの特殊な自己紹介もあるし、多少の違和感を今更にどうこう突っ込もうとは思えないのだ。

 

「はい。バクさんですね。この街に滞在中に会えたら嬉しいです」

 

「えぇ。また会えるわ、きっと」

 

「楽しみです。それじゃあ、また」

 

 別れの挨拶を済ませてスズハはベビーカーを押し、次の店に移動した。

 その背中が消えたところでバクと名乗った女性は小さく呟く。

 

「ようやく、見つけたかもしれないわね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんくださ────」

 

「この愚か者がぁあああああぁああっ!?」

 

 ウィズ魔道具店に扉を開けるとバニルの盛大な声が響き渡る。

 中に入るとバニルが何かの商品を指差して激怒していた。

 

「何故貴様はそうも売れもしない商品を買い付けてくるのだ! 仕入れに関しては我輩に任せて置けば良いと何度言えば────」

 

「それじゃあバニルさんのお店じゃないですか! 私はバニルさんと一緒にこの店を盛り立てて行きたいんです!」

 

「それで赤字になったら意味がなかろうが!!」

 

 などと言い合いをする2人を眺めているとバニルがこちらに気付く。

 

「ん? 滅私奉公娘ではないか。あの甲斐性なし男が頼んだ商品を取りに来たのか?」

 

「はい。カズマさんに頼まれて」

 

「それなら仕入れてありますよ。今持ってきますね」

 

 ウィズが店の奥に消えていくとバニルが重い息を吐く。

 

「ウィズさん。今度はどんな商品を入荷したんですか?」

 

 少しだけ気になって訊いて見ると何やら小さな瓢箪のような形の入れ物を見せてきた。

 

「これは肉体から魂を剥がして保管する瓢箪だ。敵の魂を剥がして無力化する事が出来る」

 

「すごい道具に聞こえますが?」

 

「発動条件に相手の了承が必要なのだ。意志疎通が出来ん相手には意味がないし、そもそも敵がそんな事を許すと思うか?」

 

「許さないでしょうね」

 

 スズハの返答にバニルが頭を押さえて陰鬱なため息を吐いた。

 

「しかも1つ辺りの値段が洒落にならん。娘よ、貴様、買うか?」

 

「要りません」

 

 笑顔で断るとバニルは返品もタダではないというのに、と文句を言っている。

 そこでウィズが戻ってきた。

 

「カズマさんに頼まれた魔法薬です。取り扱いに関するメモも添えてありますので」

 

「ありがとうございます」

 

 魔法薬の入った箱を持ち上げると中々に重かった。

 

「貴様のような小さな娘に重労働をさせる鬼畜男に伝えておけ。売れそうな商品が出来たら持ってこいと。また我輩が買い取ってやろう」

 

「はい。伝えますね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま────」

 

「うわぁああああんっ!? スズハァ!! カズマさんが! カズマさんがぁ!?」

 

 手に例の卵を持ってアクアが近づいてくる。

 

「酷いのよ! カズマがゼル帝の卵を今日の晩ごはんにするって追いかけてくるの!!」

 

「は、はぁ……」

 

 するとアクアを追ってきたカズマが異臭を放ってやってくる。

 その臭いに思わずスズハは顔をしかめて鼻を摘まんだ。

 

「……なんですかこの臭いは?」

 

「アイテムを自作してたらアクアが邪魔して薬品ぶっかけてきやがったんだよ! あー、クソッ!? 風呂に入っても臭いが取れねぇ!?」

 

「邪魔じゃないもん! カズマを手伝ってあげようと思ったの! 頑張ってるカズマの役に立とうとしたんだから怒んないでよ! ゼル帝を食べないで!!」

 

「ふっざけんなよテメェ! せっかく上手くいきかけてたのにダメにされた上にこれだぞ! その卵寄越せ! 目玉焼きにしてやる!」

 

 アクアから卵を奪おうとするカズマの異臭に顔をしかめためぐみんが話しかける。

 

「それよりカズマ。すごく臭いですよ。そんな臭いを撒き散らして動き回られても迷惑ですので、臭いが落ちるまでお風呂から出ないでください」

 

「うぐっ!?」

 

 めぐみんに臭いと断じられて泣く泣く風呂に戻るカズマ。

 カズマが風呂場に消えるとホッとしたように卵を大事そうに抱える。

 

「ありがとうめぐみん……」

 

「どういたしまして」

 

「まったくカズマったら。ゼル帝を食べるだなんてとんでもないわ! かわいそうにゼル帝。あなたはお母さんが絶対に守ってあげるからね」

 

 そう言って卵に頬擦りするアクア。

 すると何を思ったのか、卵とヒナを交互に見てからスズハの手を握ってくる。

 

「そうよ! 私もゼル帝(この子)のお母さんになるんだから! 謂わばこれってママ友って奴じゃない?」

 

「はい?」

 

 いきなりヒヨコと娘を同列扱いするアクアにスズハの表情が固まった。

 

「お互い、子育てを頑張りましょうね、スズハ!」

 

 一方通行な共感を勝手に抱かれて部屋へと戻っていくアクア。

 固まった笑顔で突っ立っているスズハにめぐみんが話しかける。

 

「スズハ。貴女今、物凄くイラッときてるでしょう」

 

「何の事やら」

 

 笑顔のままスズハはそう誤魔化した。

 

 

 

 

 

読者さんがこの作品で好きな話は?

  • 序盤
  • デストロイヤーから裁判まで。
  • アルカンレティア編
  • 紅魔の里編
  • 王都編
  • ウォルバク編
  • 番外で書かれた未来の話
  • その他
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