この小さな母娘に幸福を!   作:赤いUFO

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以前後書きで設定だけ載せた現在パロディです。
前話と平行して書いてたので。


番外編6:現代パロ

 今年小学生になった白河陽愛は、朝の微睡みに身を委ねていた。

 二度寝の誘惑に抗うこと無く一度開いた目蓋を落としていく。

 

「もう少し……もう少し……」

 

 そんな気持ちで再び眠りに浸ろうとするが、ドアをノックする音にビクッと体が跳ねた。

 

「陽愛! 起きて! 朝御飯が片付かないでしょ!」

 

 毎日自分を起こしにくる姉がいつも通り部屋に入ってくる。

 毛布を揺すってくる姉に陽愛は不機嫌そうに返す。

 

「姉さま……もう少しだけ……」

 

「そんなこと言って起きないでしょう。ほら、早く顔洗ってくる」

 

「はぁい……」

 

 ゆっくりと起き上がり、眠そうな目を擦っている陽愛。

 そんな妹に姉である白河涼葉は心配そうに息を吐いた。

 

「わたし、来年から寮制の私立中学に通うから起こしてあげられないのよ。そんな風で起きられるの?」

 

「できるよぉ」

 

 口うるさい凉葉に二度寝を邪魔された陽愛は鬱陶しそうに返す。

 早く顔洗ってきなさいと言って凉葉は陽愛を起き上がらせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはようございます、凉葉さん。陽愛さん」

 

「おはようございます! アイリス姉さま!」

 

「おはようございます……いつも遠い上に違う登校班までよく来ますね」

 

「えぇ。朝の楽しみですから!」

 

 スゴく良い笑顔で陽愛に抱きついているアイリス。

 彼女は凉葉と同じクラスの少女である。

 1年程前に日本に留学してきた彼女は、凉葉と親交を深めた。

 ある日、家に招待して遊びにきた時に妹の陽愛を紹介した。

 話している内に陽愛がアイリスを姉と呼ぶようになった事で急激にデレた。

 これには凉葉もビックリだった。

 アイリスはそれから

 少々過剰に甘やかすのでその事でちょっとした喧嘩になることもしばしば。

 それを見ていた兄の夏人は"孫を甘やかす祖母と躾に厳しい教育ママみたいな関係"などと口にしたので、一睨みしてやったらそそくさと退散した。

 

「あ! こめっこちゃん!」

 

「おはよー」

 

 中学生の姉であるめぐみんと、その友人であるゆんゆんと一緒に送られてきたのは、陽愛と同じクラスのこめっこである。

 アイリスから離れてこめっこの側に陽愛が移動すると寂しそうな顔をする。

 陽愛が同い年の子と仲良くしているのは良いのだが、1つ懸念事項がある。

 

(あの子を影響で、陽愛がズル賢い事を覚えてくるのよね……)

 

 こめっこと一緒に行動するようになってから妹が、少し(したた)かというか、ズル賢く、屁理屈をこねるようになったと感じる。

 今はまだ幼子故にかわいいと笑える範囲だが、この先がちょっと心配である。

 そんな事を考えていると、めぐみんとゆんゆんが話しかけてきた。

 

「私達はもう中学に行きますので、今日も妹をよろしくお願いします」

 

「凉葉ちゃん、下の子達を見るのは大変だろうけど、頑張ってね」

 

「あ、はい。お2人も気を付けて」

 

 こめっこを預けると2人は中学に向かう。

 

「ところでゆんゆんはなんで毎日ついてくるのですか? ちょっと鬱陶しいのですが」

 

「ひどいよめくみん!?」

 

 幼馴染みであるゆんゆんにめぐみんは冷たくあしらいながら去っていくと、ちょうど全員揃ったので凉葉が指示を出した。

 

「それじゃあ皆さん、登校しますよー」

 

『はーい!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、エリス。私、ちょっと気になることがあるの」

 

「どうしました? アクア先輩」

 

「……エリス。私達今は同級生なんだから先輩呼びはおかしいと思うの」

 

「いえいえ。私にとってアクア先輩は今でも先輩ですので。それに中学校の頃に、先輩の私を敬いなさい! と事ある毎に言ってたじゃないですか」

 

 エリスの言葉にアクアが渋い顔をする。

 

「そ、それは昔の事よ! それにアンタが私を先輩先輩って呼ぶから! 留年した事がクラスの皆にバレちゃったんですけど!」

 

「来年は私が先輩にならないと良いですね」

 

 エリスが軽い調子で恐ろしいことを言うと、アクアが歯軋りをする。

 

「アンタ、あんまり調子乗ってるとその胸がパッ────」

 

「わぁっ!? やめてくださいアクア先輩っ!?」

 

 アクアの口を塞ぐエリス。

 そこでチャイム2分前に駆け込むように入ってくる少女。

 それはエリスと同じ銀色の髪だが、エリスと違い短く切られている。

 

「ギリギリセーフッ!! あ、エリス! 何でアタシを起こさないで先に行っちゃったの! おかげで朝ごはんも食べられなかったんだけど!」

 

「起こしましたよ。起きないから先に行ったんです」

 

「ブーブー」

 

「これでも食べてなさい」

 

 双子の姉妹がいつものやり取りをすると、アクアが話の軌道修正をかける。

 

「それよりもエリス! 私、訊きたい事があるの!」

 

「どうしたの? アクアさん」

 

 エリスから渡されたカロリーメイトを食べるクリスが会話に入ってくる。

 するとアクアが空席を指差した。

 

「もう新学期になって1ヶ月経つけど、あの席の子、全然来てない気がするの? なんで?」

 

「あぁ。確か最初の1週間くらいは登校してましたけど、それからは見てないなー。前に先生が家に電話かけてるのを見たことあるけど、何かずっと家に居るらしいですよ」

 

 アクアの質問にクリスが記憶を掘り返して答える。

 

「ふーん。要はヒキニートって奴ね。なっさけないわねー。それで、あの席の奴、なんて名前だっけ?」

 

「確か……佐藤和真さん、だったと思います」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 教室で凉葉とアイリスは中学受験で受ける学校の資料を見ていた。

 

「この学校は中高一貫ですからね。進学校でもありますから大学受験の時にもかなり有利になると思います」

 

「なるほど。寮生活ですし、かなり勉強漬けの生活になりそうですね。女子校ですし、お父様が勧めてくる訳です」

 

「私の父もですよ。お母様がこの学校の出身というのもありますが、ここなら間違いも起きないだろうって」

 

 そんな話をしていると、クラスメイトの少女が話に入ってくる。

 

「何かもう受かった時の心配してるけど、落ちる可能性は考えない訳?」

 

『ないですよ。何でです?』

 

「コイツら……」

 

 ハモらせる2人にクラスの女子は渋い顔をした。

 そこでアイリスが話題を変えた。

 

「そういえば凉葉さん、御自宅では着物を着てるのに、学校では着て来ないんですか? とても似合っていて綺麗なのに」

 

 アイリスの質問に凉葉はピクッと肩を動かし、スーッと視線が険しくなる。

 その理由を知っているクラスの女子は苦笑して代わりに答える。

 

「この子、1年の最初だけは着物を着て登校してたのよ。それをクラスの何人かにからかわれて……」

 

「そうなんですか?」

 

 思い出したくないのか凉葉は顔を逸らして答えない。

 1年の頃に着物を着て登校した際に、変な格好だの、古臭いだの目立ちたがりなどと散々言われた。

 日常的に着物を着ていた凉葉にとってはそれが自然体だったのだが、周りがそう見る筈もなく、周りに合わせた服装をするようになった。

 それでもプライベートではやはり着物が落ち着くので着ている訳だが。

 

「でも私は、着物姿の凉葉さん、好きですよ。とっても似合ってます!」

 

「うんうん。それにはさんせー。なんていうか、無理に着てる感じが無いんだよね」

 

「……ありがとうございます」

 

 そこで思い出したようにアイリスが話題を変えた。

 

「そういえば、森岳誠さん、警察に捕まったと聞きましたが……夏人さんとは小さい時からの仲なのでしょう?」

 

「そうですね」

 

 森岳誠の名前に凉葉がどうでも良さそうに返した。

 彼は兄の年上幼馴染みであり、小さい時から兄に嫌がらせをしてきた男だ。

 どうやら数年前から少し大人っぽく見える小学生や中学生を対象に、水商売とまではいかないまでも、少しいかがわしいアルバイトを紹介して仲介料を貰っていたらしい。

 その中の中学生がストーカー被害に遭い、そこから芋づる式に誠も警察のご厄介になったらしい。

 これを受けて誠は法大学を中退。親からも絶縁され、父親は社会的制裁として大手事務所を辞めて田舎に帰り、小さな事務所を構えるらしい。

 

(それよりも、わたしと誠さんの婚約話が出ていたのには驚いたけど……)

 

 誠が逮捕された後に知ったが、親同士で2人の婚約が勝手に進められていた事だ。

 幸いまだ口約束程度で流れたのが幸いだった。

 ましもこの話がどこかで正式発表されてたなら、凉葉にもマスコミが接触していただろう。

 悪い事をすると、やっぱり罰が当たるんだな、と思って凉葉は出していた資料をしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 佐藤和真は現在引きこもりの少年である。

 せっかく合格した高校も10日程通ってからは共働きの親の目を誤魔化して全然登校していない。

 オンラインゲームを終えた和真は一眠りした後に、予約していたゲームを買いに家を出ていた。

 その時間が既に下校時間だったのは、もう彼には昼夜の感覚が曖昧だからだ。

 買ったゲームを抱きながら和真は家へ戻っている。

 そんな和真に2人で歩く小学生女子が横断歩道の向こうにいた。

 黒い髪の女の子と外国人の金髪少女。

 和真にロリコンの気があるとかそういう事ではなく、ただ楽しそうにお喋りをして下校するその様子が、何だが眩しく思えたからだ。

 横断歩道ですれ違うと、横から大きな黒い影が迫ってくる。

 それをトラックだと思った和真はまだ気付いていない2人の小学生を突き飛ばして助けようと動く。

 

「危ねぇっ!?」

 

 2人を押そうとした瞬間に、黒い髪の女の子はひょいっと和真の手を避け、金髪の女の子は逆に和真の腕を掴んだ。

 

「ふっ!!」

 

 一息と共に和真は金髪の女の子にお手本にしたくなるような一本背負いを極められ、背中を地面に打ち付けた。

 

「いってぇっ!?」

 

「凉葉さん、変質者です! 早く警察に連絡を!!」

 

 腕を後ろに回して関節を極めてくる金髪少女の指示に和真は慌てて訂正した。

 

「ちょ、待てよ! 俺はただお前達をトラックから助けようと────」

 

「トラック?」

 

 不思議そうに目を丸くする黒髪の少女。

 周囲を見回すと、トラックなど1台も無く、道路に在るのは1台のトラクターだった。

 そのトラクターの運転手も不思議そうに顔を出している。

 

(え? これってつまり……俺が必死な顔で小学生女子に襲いかかろうとしたヤバい奴に見えね?)

 

 それを察した和真は関節極められた状態で地面に額を擦り付けた。

 

「すみませんでしたーっ!!」

 

 大声で謝る和真。

 その姿に黒髪の少女が何かを思い出した様子で口を開いた。

 

「もしかして、佐藤和真さんですか?」

 

「は?」

 

 2人の少女。凉葉とアイリス。この2人の出会いが佐藤和真が再び学校に通うきっかけとなるのだが。

 それはもう少しだけ先の話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

読者さんがこの作品で好きな話は?

  • 序盤
  • デストロイヤーから裁判まで。
  • アルカンレティア編
  • 紅魔の里編
  • 王都編
  • ウォルバク編
  • 番外で書かれた未来の話
  • その他
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