この小さな母娘に幸福を!   作:赤いUFO

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お待たせしました。


祝勝会

「それでは! クーロンズヒュドラ討伐祝いにぃ、カンパーイッ!!」

 

『オーッ!!』

 

 音頭を取ると店にいる冒険者達が一斉にジョッキを掲げた。

 3発目に放たれた爆裂魔法により、クーロンズヒュドラは完全に活動を停止した。

 冒険者達が戻った時には既に陽が落ちており、ギルド内に在る酒場で祝勝会をしていた。

 

 今回のクエストにより大金を手にする予定の冒険者達は思い思いに散財していた。

 

「なぁ、カズマ。今回持ってきた魔道具、もっとねぇのか?」

 

「あ~。アレな。今回はまだ試作品だけど、思った以上に効果有ったし、バニル辺りに見せてその内ウィズの店で売られると思うぞ」

 

 ダイナマイトの出来はカズマの思った以上であり、バニルのところへ持っていけば即座に商品化されるだろう。

 ライターも合わさってかなり売れる筈だと思う。

 そっかー。とダストは酒を呷った。

 別のところではアクアが宴会芸を披露しており、ダクネスは今回のクエストで助けた冒険者に礼を言われている。

 

「お疲れ様です、めぐみんさん」

 

「スズハ……」

 

 適当に料理と飲み物を盛ってきたスズハは背負っていた娘を膝に置いてめぐみんの隣に座る。

 

「早く食べないと無くなっちゃいますよ。それとも疲れてしまいましたか?」

 

「そんな事は……」

 

 飲み物を受け取っためぐみんは考え込むように軽くつまめる料理を口に入れた。

 スズハも1口果実水を飲むと、めぐみんに話しかける。

 

「今回もめぐみんさんは大活躍だったのでしょう?」

 

 スズハの何気ない質問に場が凍りついた。

 今回のクエストでクーロンズヒュドラの討伐に成功した事は知っていても、過程までは聞いてなかった。

 酒場の誰もがカズマに目をやると、本人もしょうがねーなー! と立ち上がる。

 めぐみんの感情が爆発する前にどうにか宥めなければならない。

 しかし、めぐみんの反応は意外な物だった。

 

「あぁ、いえ。今回私はあんまり……」

 

 心ここに在らずな様子で答えるめぐみん。

 その反応に周りが意外そうに目を丸くする。

 真っ先に反応したのはゆんゆんだった。

 

「ど、どうしたの、めぐみん!? いつもならここで暴れるところじゃない!?」

 

「……おい。ゆんゆんが私をどう思ってるのかじっくり聞こうじゃないか」

 

 青筋を立てて睨み付けるめぐみんにゆんゆんが自分の口を押さえて首を横に振る。

 しかしそこでスズハが質問する。

 

「それじゃあ誰が倒したのですか? ゆんゆんさん?」

 

 ゆんゆんを見て問うが本人が否定した。

 そこでカズマが今回のクエストの事を話す。

 2発目の爆裂魔法までは作戦通りだったが、3発目の撃つタイミングで見知らぬアークウィザードらしき女性が爆裂魔法を撃ってクーロンズヒュドラを討伐したと。

 聞き終えたスズハは感心した様子で唇に指で触れる。

 

「めぐみんさん以外にあんな凶悪な魔法を修得する方がいるんですねぇ」

 

「……スズハが爆裂魔法をどう思ってるのか聞こうじゃないか。それとゆんゆんやウィズも使えますからね!」

 

「ちょっと待って!? 私はめぐみんに冒険者カードを取られて無理矢理修得させられたんだからね!」

 

「それは既に過去の事です! 実際に役に立ってるのですから良いじゃないですか!!」

 

「良くない!」

 

 掴み合いを始めるめぐみんとゆんゆん。

 その様子に周囲は安心したように祝勝会を再開する。

 

「それで、その方はどちらに?」

 

「それがな。クーロンズヒュドラが倒れたのと同時にテレポートで消えてしまったのだ。おそらくは冒険者ではない旅人だとおもうが」

 

「その根拠は?」

 

 質問にダクネスが答えるとカズマが質問を続けた。

 

「通りすがりの冒険者ならば、あの場で報酬の交渉をしていた筈だ。そこらの雑魚ならともかく、クーロンズヒュドラを討伐したともなればその報酬も相当な額だしな。それを逃す理由がない。しかし、冒険者でもないただの旅人では、あのクエストに飛び入り参加しても、報酬はでないからな」

 

「そうなのか?」

 

 カズマの反芻にダクネスが頷く。

 

「その為の冒険者資格だからな」

 

 話が一区切りすると、宴会芸を終えたアクアが両手にジョッキを持って近づいてきた。

 

「どうだっていいじゃない、そんな事は! あのモンスターを倒した報酬はちゃんと貰える訳だし!」

 

 顔を上に向けたアクアが両手のジョッキに注がれているシュワシュワを同時に口へと1滴も溢さずに流し込んだ。

 その豪快かつ繊細な飲み方に冒険者達から喝采を贈られた。

 それに気を良くしたアクアが更にお酒を注文する。

 

「アクアさん、少しペースを抑えた方が……」

 

「何を言ってるの、スズハ! こんなおめでたい時に全力で飲まないでいつ飲むっていうのよ!」

 

 プハーッと追加で届いたシュワシュワを一気に飲み干すアクア。

 その様子にこの場で言うべきか迷っていると、少し顔の赤くなったアクアが若干苛立たしげに言う。

 

「何よスズハ! 言いたいことがあるならちゃんと言いなさい!」

 

「はぁ……それなら。アクアさん、最近太りましたよね?」

 

 スズハの言葉にカエルの唐揚げを食べていたアクアの手が止まる。

 

「洗った服が微妙に伸びてますし。少しお腹が出てきましたよ」

 

 アクアのお腹をつつくと以前よりも脂肪の厚みが増していた。

 スズハの指摘にアクアが目尻に涙を溜めてプルプルと震えている。

 

「太ってないわよ! 女神は太らないの!!」

 

「いや、前にぶくぶく肥えただろうが……」

 

 以前太って無理矢理ダイエットをさせた時の事を思い出す。

 

「うるさいヒキニート! とにかく今日はお祝いだからたくさん飲むの!! すいませーん、シュワシュワ追加でー!!」

 

 更に飲もうとするアクアにカズマがポツリと呟いた。

 

「明日からダイエットだな」

 

「カズマさん、アクアさんの兄様みたいですね」

 

「あんな妹要らねー」

 

 そう言いながらカズマは自分のシュワシュワを飲む。

 スズハも酔っ払ったアクアに鶏の卵は渡せないな、と自分で持っている。

 そんな中でめぐみんだけは何かを考え込むように視線を落としていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なーん」

 

「どうしたの? ちょむすけ。おやつならさっきあげたでしょう?」

 

 洗濯物を取り込んで畳んでいると、ちょむすけがスズハにすり寄ってくる。

 最近はちょむすけが何かと近づいてくるような気がする。

 それは別に良いのだ。スズハもちょむすけが好きだし、膝に乗せてると心が癒される。

 問題は────。

 

 クンクンと鼻を鳴らすちょむすけ。

 何故か近づく度にこうして臭いを嗅いでくる。

 

「臭う、かなぁ?」

 

 気をつけているつもりだが、自分の体臭というのは分かりづらいものだ。

 

「どうした?」

 

 そこでジャージ姿のカズマが話しかけてきた。

 手には袋を下げている。

 

「コレか? 残しておいたダイナマイトだよ。今日バニルに見せに行くんだ」

 

「……大丈夫なんですか?」

 

 今回売るのはコレまでと違い明確な危険物である。

 もしも街中で使う者が現れたら。

 

「スズハの懸念も分かる。そこら辺はバニルやウィズとも話し合うつもりだ。まぁ、爆発するポーションなんてのが売ってる訳だし、今更な気もするしな。それより、どうしたんだ? 渋い顔してたけど」

 

「あぁ、それは……」

 

 言うか迷ったが、相談してみることにした。

 

「えっと、その……カズマさん。わたしって臭いますか?」

 

「は?」

 

 予想外の質問にカズマは怪訝な顔をする。

 

「いえ、最近ちょむすけがやたらとわたしの臭いを嗅いできて……」

 

 ちょむすけの頭を撫でながらスズハが説明する。

 カズマとしては、スズハから変な臭いは特にしないのだが。

 

「ふむ。ちょっと待ってろ」

 

「へ? わっ!?」

 

 カズマが顔を近づけてスズハの髪や首の辺りを嗅いでくる。

 

「────カズマさんっ!?」

 

「ん。特に変な臭いはしないと思うぞ」

 

「……たまにカズマさんって大胆な事をしますよね」

 

「何がだよ」

 

 心外だと言わんばかりの態度を取るカズマ。

 

「それより、これから買い物に出るのか?」

 

「話を逸らしましたね。そうですね。洗濯物を片付けたら。出ようと思います。最近めぐみんさんも何か悩んでる様子ですし、少しだけ豪華に」

 

「そうか。なら、こっちの話が終わったら商店街の入り口で待ってるわ。そこに居なかったらウィズの店まで来てくれ。荷物くらい持つ」

 

「あ、はい。ありがとうございます」

 

 素直に喜ぶスズハ。

 実を言うと、先日の祝勝会で女の冒険者達から小さな女の子に家事を任せっきりでダラダラしてるダメ男のレッテルを貼られたのが原因なのだが。

 喜んでくれるなら荷物持ちくらい良いだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カズマが荷物を持ってくれるという事で、少しだけ多めに買い込んでいると、見知った顔を見かけた。

 

「あ、バクさん。こんにちは」

 

「えぇ、こんにちは」

 

 赤い髪の女性に近づく。

 クーロンズヒュドラの討伐クエストの際に途中からギルドの職員に呼ばれて別れるとそのままだった。

 

「またお会い出来て嬉しいです」

 

「そう……」

 

 無邪気な笑みを見せるスズハに赤い髪の女性が口を開いた。

 

「時間があるなら、これから少し、付き合ってくれないかしら?」

 

 

 

 

 

 

 

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