赤い髪の女性に誘われたスズハは少しだけなら、という条件でオープンカフェで向かい合っていた。
(そう言えば、ギルドの酒場以外の飲食店を利用するの初めてかも……)
こちらに来てからは基本自炊していたし、お店でおかずや菓子を購入する事あっても、カフェなどを利用することはなかった。
あの屋敷に住んでいる間に、あの人達の役に立とうと奮起していたという理由もある。
(それに、皆さん喜んでくれるし)
自分の料理を美味しいと食べてくれたり、掃除洗濯をして喜ぶあの人達の為に家事をするのはイヤじゃない。
そんな事を考えていると、向こうの方から話しかけてきた。
「ごめんなさいね。いきなり誘ったりして」
「いえ。一度こうしたお店にも入ってみたかったので」
そう返したスズハに相手は少しだけ心配そうに眉を顰めた。
「でも。誘った私が言うのも何だけど、ホイホイ付いて来るなんて警戒心が無いのではないかしら? 不用心よ」
女性の苦言に一拍置いてから苦笑いを浮かべる。
「そうかもしれません。でもバクさんは、アルカンレティアの温泉で早く出た方が良いと忠告してくださったでしょう? 今もわたしを心配してくださいますし。そういう方なら大丈夫かなって」
スズハの返答に赤髪の女性は若干顔を赤くする。
「貴女なりに考えてるのね」
「はい。それでお話というのは?」
あまり時間が取れないので本題に入ることにする。
相手も了承の意で頷いた。
「実を言うとね、貴女がお世話になっている冒険者パーティーについてもう少し詳しく教えて欲しいの」
意外なお願いにスズハは首を傾げた。
「あの人達の事を、ですか?」
「えぇ。ほらこの間、魔王軍の幹部を倒したって言っていたでしょう? だから気になって」
相手の言葉にスズハは少し考える素振りを見せる。
「もしかしてバクさんって……」
「何かしら?」
女性は笑顔を崩さずにカップの取っ手に力が籠る。
しかしスズハの口から出た言葉は予想外の言葉だった。
「新聞記者の方ですか?」
「は?」
「てっきり、冒険者かそれに近い職の方かと思ってましたけど、記者の方なら納得です」
アルカンレティアでの警告。
その内容がずっと疑問だったが、情報を扱う職種なら辻褄が合う。
「え、えぇ。実はそうなの。でも女1人で色々なところを回るのは危ないでしょ? 冒険者風を装っていればトラブルも少ないから。多少の心得もあるしね」
「なるほど。でもそれでしたら────」
女性の言い分に納得しつつ、ある提案を口にしようとする。
その時、スズハの後ろから声をかけられた。
「ス~ズ~ハ~?」
振り向く前に頭の左右を掌で挟まれ、力を込められる。
「イタッ!? そ、その声カズマさん!?」
「商店街を捜してもいねぇし。店の人が知らない人に付いて行ったって聞いて心配したぞこの野郎。何でお前は変なところで隙だらけ何だよ!」
掌を外すと怒ってはいるが、安堵して息を吐くカズマ。
そこでスズハとお茶をしている人物に目を向けて目を大きく見開く。
「アンタは……」
「お知り合いですか?」
涙目で挟まれた頭を押さえつつ問いかける。
「知り合いっていうか……」
先日のクーロンズヒュドラ討伐の際にめぐみんの代わりにトドメを刺した爆裂魔法の使い手だと説明する。
「何でアンタが……」
「こちら、新聞記者のバクさんです。魔王軍の幹部を倒したカズマさん達の活躍を取材したいとの事で……」
『え?』
カズマと赤い髪の女性が同時に目を丸くする。
しかしカズマの方は段々と頬が緩んでいった。
「よっしゃあぁあっ!! 俺達にもようやく! そうだよおかしいよな! 魔王軍の幹部を倒したのに未だに無名扱いって! マツルギばっかり取り上げやがって!」
ようやくこれまでの苦労が報われたと拳を突き上げるカズマ。
「あ。でもそろそろ帰らないと。どうしましょうか? また後日に?」
そろそろ夕飯の準備をしないと間に合わない。
それにカズマが提案をする。
「ならお姉さん。この間のお礼も兼ねて、夕食を一緒にどうです。魔王軍を倒した時の話を詳しくお話しますよ!」
「えっと……」
やたら大仰な仕草で食事を誘うカズマに戸惑う女性。しかしスズハも賛成だった。
「あぁ。良いですね。バクさん、どうですか? 記事にするならカズマさん達が面白おかしく話してくれると思いますよ?」
カズマだけではなく、アクアやめぐみんも、水を得た魚のように話してくれるだろう。
それに魔王軍幹部の討伐ならスズハも知らない事もある。
「そ、それじゃあ好意に甘えようかしら?」
「はい。夕飯、お口に合えば良いんですけど」
3人が屋敷へ帰る。
その道中でカズマが以前アイリスに話したように延々と以下に自分が魔王軍幹部の討伐に貢献したかを話している。
それを女性は少しだけ困惑した笑みで聞いていた。
「見えてきましたよ。あの屋敷がわたし達の────」
突然玄関から爆発音が響き、玄関の扉が勢い良く吹き飛ぶ。
唖然とするスズハと女性。
カズマだけは何かを察したらしく、怒りでプルプルと震えながら屋敷に走る。
「アクアの奴まさか────!!」
カズマが屋敷に近づくと、壊れた玄関の奥からケホケホと咳をしたアクアとめぐみんが出てきた。
「おい馬鹿2人。これはどういうことか説明してもらおうかー?」
「カ、カズマさん? ち、違うのよ!? これは事故なの! わざとじゃないの!」
「喧しい! 大体なんで引き出しの奥に保管してあったダイナマイトを発見してんだよ!」
どうやらカズマの部屋に残してあったダイナマイトを室内で爆発させたらしい。
「私はただカズマの部屋に置いてあったゲームガールを取ろうとしただけなの! で、探してたらダイナマイトを見つけたの! 1本くらいならバレないかなって思ったの! 私もドカーンってやりたかったの! 扉を壊した事は謝るから許してよカズマー!?」
泣き顔で謝罪するアクア。しかしそんな理由が通じる訳もなく。
「アホか! 勝手に人の部屋の物を取ってくんじゃねぇ! つーか室内でダイナマイト使うなボケェッ!!」
「それは私のせいじゃないもん! めぐみんがこんなもの処分するって取り上げようとするから!」
「ふん! 大体ですね。爆裂魔法の使い手であるこの私が居るのに、あんな邪道な魔道具は不要なのです! これに懲りたらカズマもあんな物を作るのはやめるのです」
要するに、アクアがカズマの部屋からダイナマイトを見つけ、1本だけ使おうとした際にめぐみんとすったもんだとなり、その時に運悪く持っていたライターで火を点けてしまい、慌てて玄関に向けて投げたのだろう。
「馬鹿だ馬鹿だ思ってたら……爆発の規模から見て1番威力の弱い奴だったから良かったものの! 下手したら俺らも巻き添え喰ってたんだぞ! それに、せっかくバニルのところで売れそうなのに、警察に目を付けられて販売禁止になったらどうすんだ!」
アクアとめぐみんに拳骨を落とすカズマ。
少し何かが違ってたら死人が出た状況なのでこの制裁もやむ無しである。
それを見ていたスズハはやっぱり兄様だ、と呟く。
その光景に唖然となる赤髪の女性。
すると、屋敷の中から小さな物体が飛び出してくる。
「なーん!」
「ちょむすけ!」
屋敷から飛び出してきたちょむすけが、赤髪の女性の胸へと飛び込む。
「あ、こら!」
女性にしがみつくちょむすけをスズハが引き剥がした。
「ごめんなさい。普段はこんなことはしないんですけど」
スズハの腕の中でバタつくちょむすけを諌めた。
しかし相手は息を呑むようにちょむすけを見ている。
近付いてちょむすけの頭を撫でた。
「この、子は……?」
「はい。めぐみんさんが飼ってる猫で」
めぐみんの方を指差すスズハ。
するとめぐみんの方も呆然と様子で赤髪の女性を見ていた。
そして此方に近付いてくる。
「あ、あの!?」
めぐみんの行動にカズマが警戒する。
先日のクーロンズヒュドラ討伐で手柄をかっ拐って行った女性にどんな無礼を働くか分かったものではない。
制止しようとする前にめぐみんが口を開く。
「私の事を覚えていますか? 以前貴女に爆裂魔法を教わっためぐみんと言う者ですが……」
めぐみんの質問に全員がカズマ達は目を丸くした。
そして女性の返答は────。
「えぇ。覚えているわ」
またR18版書こうかな?
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序盤
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デストロイヤーから裁判まで。
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アルカンレティア編
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紅魔の里編
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王都編
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ウォルバク編
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番外で書かれた未来の話
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その他