この小さな母娘に幸福を!   作:赤いUFO

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交流・前

「まったく。何をやっているんだ2人共……」

 

 ダイナマイトで遊んだアクアとめぐみんは帰って来たダクネスに正座させられて説教をされている。

 一段落したところでアクアが半泣きで意見する。

 

「ダクネス。もういいでしょう? カズマにも散々怒られたの。足も痺れて辛いの! ほら! お客様もいるんでしょう!」

 

「ダクネスにとっては軽い一撃でも、頭が割れるかと思いましたよ」

 

 めぐみんも、お仕置きでダクネスに落とされた拳骨に涙目だった。

 反省した様子の2人にダクネスが締めにふーっと息を吐いた。

 

「いいか、2人共。次あの魔道具を使う時は、この私に投げるんだぞ。あの爆発だ、さぞ気持ちい────」

 

「って、違うだろうがぁああっ!?」

 

「キャンッ!?」

 

 締めで台無しにするダクネスの背中にカズマが跳び蹴りを喰らわせた。

 

「珍しく真面目に説教してると思ったら! なに最後にお前の歪みきった性癖を暴露してんの!?」

 

「くっ……この容赦のない蹴り! お前はどこまで私の喜ぶツボを押さえて────」

 

「お前の為にやったわけじゃねぇっ!!」

 

 地団駄を踏むカズマ。

 そこで奥からスズハがやって来る。

 

「お説教は終わりましたか?」

 

 お茶と菓子を載せた盆を持ったスズハがカップを配る。

 

「うう……やっと終わったわ~」

 

 出来たたんこぶを擦った後にカップに口付けるアクア。

 スズハは少し離れたところで2人へのお説教タイムを見て待たされていた女性にもお茶を配る。

 

「すみません。来てもらって早々にこんなことになって」

 

「あはは。まぁ、退屈はしなかったわよ?」

 

 微妙な表情で笑う女性に頭を下げて、スズハはカズマに質問する。

 

「壊れた玄関はどうしますか?」

 

「……取り敢えず、アクアとめぐみんの貯金から修理するしかねぇよ。今晩はちょっと防犯面が不安だけど、我慢してくれ」

 

 流石に今夜、事件が起きたりはしないだろうとカズマは投げやりに答えた。

 そこでダクネスが客人に意識を向けた。

 

「ところでそちらの女性は? スズハが連れてきたようだが……」

 

「あ、はい。こちらは記者のバクさんです。魔王軍の幹部やデストロイヤーを討伐した皆さんを取材したい、という事ですので」

 

「そして、この私に爆裂魔法を教えてくれた人でもあります!」

 

 紅魔族らしいポーズを取りながらめぐみんが言う。

 それを見たカズマが内心でこう思っていた。

 

(この頭のおかしい爆裂娘がこんな常識人っぽいお姉さんから生まれた? ウソだ、イテェっ!?)

 

 最後の方でめぐみんがカズマの頭に杖を落とした。

 

「……今何か、失礼な事を考えてましたね? 顔を見れば分かります」

 

「至極当然の感想を思ってただけだよ……」

 

 痛そうに頭を擦るカズマ。

 

「それじゃあ、わたしは夕飯を作るので、取材をどうぞ。さっきも言いましたが、きっと面白おかしく話してくれますよ」

 

 そう言って台所に引っ込もうとするスズハだが、思い出した様子で立ち止まる。

 

「夕飯を終えると暗くなるでしょうから、良かったら泊まって行って下さい。アクセルは治安の良い街ですが、女性の1人歩きは心配ですから」

 

 これはダクネスがお説教中にカズマと話し合った事だ。

 既に客間の用意も終わっている。

 ゆんゆんやクリスが時折泊まりに来るので、1人分くらいならそう手間でもない。

 

「えっと、良いのかしら?」

 

 至れり尽くせりで戸惑っている女性にカズマが苦笑する。

 

「別に構わないですよ? 部屋は余ってるし。めぐみんも話したそうにしてますし」

 

 積もる話も有るだろうとカズマなりにめぐみんに気を利かせた。

 それを察したのかは判らないが、女性がペンと手帳を取り出す。

 そうしてると本当に記者っぽい。

 

「それじゃあ、話を聞かせて貰えないかしら」

 

 こうして、カズマパーティーへの取材が始まった。

 

 

 

 

 

 

 取材対象1:アクアの場合。

 

「いい? あの変態デュラハンの時もデストロイヤーの時もアルカンレティアの時も紅魔の里でも! もちろん王都でもこの私、気高く美しいプリーストであるアクア様の活躍のお陰なのよ!」

 

 胸に手を当てて自分に酔った様子を見せるアクア。

 そこからこれまで自分がどれだけスゴい活躍をしたのかを語り始める。

 実際彼女が居なければ詰んでいたのは間違いないのだが。

 

「なのによ! カズマ達もこの街の皆も、この私に対する感謝が足りないと思わない! そう思うわよね!!」

 

「そ、そうね……」

 

 話している最中に色々と思い出したのかだんだんと愚痴っぽくなるアクア。

 

「私が何回も蘇生してあげたのにっ!?」

 

「はいはい。感謝してるよ。ほら、時間も圧してるし次な次」

 

「ちょっとカズマ! 引っ張らないでよ! もっと私の素晴らしさをアピールするんだから!」

 

 アクアの愚痴に飽きてきたカズマが無理矢理交代させた。

 

 

 

 取材対象2:めぐみん。

 

「デストロイヤーと紅魔族にやって来た魔王軍の幹部はこの私が爆裂魔法で葬り去ってやりました!」

 

 自信満々にそう言うめぐみん。

 女性はそ、そう。と戸惑いつつも質問を続ける。

 

「そ、そう。じゃあ他にはどんな魔法が使えるのかしら?」

 

「使えません」

 

「え?」

 

 めぐみんの言葉に手帳を書き込んでいた女性の手が止まる。

 

「私は爆裂魔法以外を覚えるつもりはありません! 生涯を爆裂魔法に捧げるつもりです!」

 

「いや、でもそれだと……」

 

 いくらなんでもピーキー過ぎない? と口に出そうとしたが止めた。

 何と言うか、爆裂魔法に対する情熱が視線からひしひしと伝わってくる。

 

「貴女には感謝しています。貴女に教えてもらった爆裂魔法で私は最強の魔法使い(アークウィザード)として魔王を倒すことが出来るのですから!」

 

「そ、そう……」

 

 めぐみんの発言に女性は物凄く困った笑みを返した。

 

 

 

 取材対象3:ダクネス

 

「私はクルセイダーだが剣は苦手でな。はっきり言って壁役か囮役としてしか役に立たん。スキルも防御系一辺倒だしな……」

 

 自身の不器用さから少しばかり恥ずかしげに話すダクネス。

 疑問を質問に変える。

 

「……クルセイダーには剣術のスキルも無かったかしら?」

 

「それでは駄目だ!」

 

 勢いよく立ち上がるダクネス。

 

「私はモンスターの攻撃を受けたいのだ。それも力及ばずに無理矢理滅茶苦茶にされるような! 今まで戦った魔王軍幹部達それは素晴らしい痛みを与えて────」

 

「だからそう言う発言は控えろって言ってんだろぉ!!」

 

 カズマがタグネスの頭に全力チョップを落とした。

 しかし、むしろダメージがデカかったのはカズマの方で、痛そうに手を撫でる。

 

「お前はバカか! 実家のダスティネス家を変態一族にする気なの!!」

 

「い、今は実家とは関係なく1人の冒険者として話したのだから問題ないだろう……たぶん……」

 

 そうは言ってもダクネスがダスティネス家の令嬢なのは周知の事実だし、調べようと思えば簡単に調べられる。

 

「すんません。コイツの今の発言は無かった事にしてください」

 

「……その方が良さそうね」

 

 了承して女性が手帳に線を引く。

 すると台所に居たスズハが戻ってきた。

 

「皆さん、お食事の用意が出来ましたけど、今召し上がりますか?」

 

「ナイスタイミングね、スズハ! もう私お腹ペコペコよ!」

 

「今日はお客様も居ますし、お酒も多めにお出ししてますから」

 

「やったわ! これも私の日頃の行いの賜物ね!」

 

「ついさっき玄関を破壊した奴がなに言ってんだか」

 

 カズマの言葉に耳を貸さず、ウキウキした様子で食堂に行くアクア。

 スズハが女性に近づく。

 

「バクさんもどうぞ」

 

「えっと……本当に良いの?」

 

「えぇ。もう人数分作ってしまいましたし、食べて行ってくれると嬉しいです」

 

「それじゃあお言葉に甘えて」

 

 ここまで歓待されて断るのも悪いと思い、了承する。

 食堂では、いつもより豪華で様々な料理が並んでいた。

 

「今日は奮発しましたね、スズハ」

 

「これ、貴女1人で作ったの?」

 

「はい。お口に合えば良いんですけど。あ、大皿から好きな物を取って下さいね」

 

「さぁ! 早く食べましょ! 先ずはお酒を注がなきゃ!」

 

「飲み過ぎるなよ、アクア」

 

「聞いちゃいねぇよ、この駄女神」

 

 それぞれの席に着き、食事を始めた。

 アクアは酒のツマミになりそうな物を優先的に取り、めぐみんは肉と麺類を中心に。

 ダクネスはバランス良く。カズマはやや肉類を多めで野菜も食べている。

 スズハはヒナに離乳食を与えつつも合間合間に食事を摂っている。

 客人である女性もスズハの料理に口を付ける。

 

「美味しい……」

 

 自然とそんな言葉が漏れた。

 

「お口に合いましたか?」

 

「えぇ。家庭的って言うのかしら。ホッとする味ね」

 

 店で食べるような強い味付けではなく、毎日食べる為に計算された味。

 母の味とでも言うのか、安心感がある。

 女性の評価にアクアがフフンと鼻を鳴らした。

 

「そうでしょう! スズハの料理は美味しいんだから!」

 

「お前が自慢するこっちゃねー」

 

 なによー! と頬を膨らませるアクア。

 ダクネスが苦笑し、めぐみんが女性に料理を勧めたりしている。

 スズハも娘に食事をさせながら周りに受け答えをしている。

 客人を加えた和やかな雰囲気で食事が進んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 食事を終えるとカズマは流石に玄関が開けっ放しなのは不安なので、適当な板を玄関に立て掛けて塞ぎ、板の左右に穴を空けてロープを通して適当な所に引っかけて支える。

 これなら台風がくるか、外から人為的に倒さない限り倒れないだろう。一応防犯として倒れたら鈴が鳴るように仕掛けもする。

 その作業の最中にめぐみん達の声が聞こえる。

 

『お風呂に行きましょう! ここの風呂はこの人数でも余裕で入れます!』

 

『え、えぇ』

 

『あ、私も御一緒しますね。ヒナもお風呂に入れないと』

 

 そうして浴室のドアが開け閉めする音がした。

 それを聞いたカズマは数分後に作業を一時中断する。

 思えば、あの女性も大層なモノをお持ちだった。

 

「さ~て、俺もちょっと休憩するかー」

 

 わざとらしく首を左右に動かして肩を回すカズマ。

 隠蔽スキルを使用し、脱衣室に侵入する。

 足音を消して浴室のドアに近づくと、中の声が聞こえてくる。

 

『おかしいです! 何でスズハばかり胸が大きくなっているのですか! このままいくと、ゆんゆんにも追い付きそうじゃないですか!』

 

『そんな事を言われましても……あ、でも最近は母乳も出てきた、かな……?』

 

『~~っ!? 何ですか!! 自分は大きくなったから自慢ですか!』

 

『あ~。母乳が出るのに大きさは関係ないって聞くわよ?』

 

 そんな会話がされているのを聞き、カズマは息を荒くして鼻血が垂れる。

 少しだけ、バレないように浴室の戸を開こうと────。

 

 ピタ。

 

「ほわぁっ!? つっめた!?」

 

 いきなり背中に冷たい感触が走り、思わず声を上げて背中を払う。

 振り向くと、スズハの精霊である雪精(シロ)が跳ねていた。

 

「なんだよいいところで。ビックリさせ────」

 

 ガラッ。

 

 浴室の戸が開くと、そこにはバスタオルを巻いためぐみんが仁王立ちしていた。

 無表情で睨み付けるめぐみん。

 

「あーいや。そのな。俺も風呂に入ろうと思ったけど、お前らが入ってるのに気付いて引き返そうとしてたところでな……」

 

「ふんっ!」

 

「ゴッ!?」

 

 めぐみんがカズマの鼻っ面を拳で殴り倒す。

 

「スズハの精霊に見張りを頼んで正解でしたよ! もしも覗いたら、股間を踏み潰しますよ。良いですね?」

 

「あ、はい……」

 

 めぐみんの紅い瞳が輝きながらされた警告に本気を感じ取り、股間を押さえて頷く。

 戸を閉めるとまた中で楽しそうな声が聞こえてくる。

 この場に留まって居ると本気でカズマのカズマさんが潰されかねないので、大人しく立ち上がる。

 

「作業に戻っかー……」

 

 トボトボと玄関に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

読者さんがこの作品で好きな話は?

  • 序盤
  • デストロイヤーから裁判まで。
  • アルカンレティア編
  • 紅魔の里編
  • 王都編
  • ウォルバク編
  • 番外で書かれた未来の話
  • その他
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