指定させた決闘場所にカズマ達は陰鬱な表情で向かっていた。
「めぐみん、本当にあの人が? 何かの間違いじゃなくて?」
「さっきからそうだと言ってるでしょうゆんゆん。同じ事を何度も訊かないでください」
イライラとした様子を見せるめぐみんにゆんゆんは黙り込む。
以前クーロンズヒュドラを討伐してくれたお姉さんが魔王軍幹部だとはゆんゆんには未だに半信半疑だった。
渓谷に近付いた事で先頭を歩いていたカズマが足を止める。
「とにかく問題は爆裂魔法だな」
「任せろ。私が囮になって爆裂魔法を食い止めて見せよう。ふふ。めぐみん以外の爆裂魔法……どれ程のモノか」
頬を染めて身体をくねらせるダクネスにカズマは眉をヒクヒクと動かしつつ却下する。
「おい。そこのアダマンダイトより硬い脳筋騎士。お前は馬鹿か? 態々お前1人がノコノコ現れて、爆裂魔法なんて使うわけねぇだろ! ちょっとは頭使えよ!」
どれだけ硬かろうが、ダクネス1人に爆裂魔法なんて間違っても使わないだろう。
(当たらないが)剣士なら別の魔法で対処すれば良いのだから。
「おいカズマ。私だって乙女の端くれ。言われて傷付く言葉もあるんだぞ?」
「首絞めながら言うんじゃねぇ! 折れるだろ! 決闘前に殺す気か!!」
ダクネスの力で首を絞めれば窒息する前に首の骨を折られ────いや、砕かれかねない。
何とかダクネスの手を外して首を撫でるカズマ。
「いいか。相手が爆裂魔法を使うからって1発だけとも限らないんだぞ!」
魔力を回復するアイテム。もしくは肩代わりするアイテムが無いとも限らない。
それでも爆裂魔法が破格に燃費が悪いのも事実だ。
「2回……いや、3回は爆裂魔法を使ってくると考えた方が良い。しかも今回は見晴らしの良い場所だ。待ち伏せする側が圧倒的に有利なんだよ」
考えれば考えるほど嫌になる。
これならウォルバクの部隊にアクセルを襲わせて、冒険者全員で対処した方がマシなのではないかと思ったが、爆裂魔法で大損害を被る未来しか見えない。
「くそ! 普段は燃費が悪くて使った後はお荷物な癖に使い処が難し過ぎる頭のおかしい爆裂魔法なのに! 敵が使うとこんなに厄介なのかよ!」
「おい。爆裂魔法の悪口を言うのはやめて貰おうか」
カズマの愚痴にめぐみんが抗議する。
そこでアクアがカズマに話しかける。
「ねぇねぇ、カズマさんカズマさん」
「なんだよ」
「今回、私の出来ることは少ないと思うの」
「そんな事ないだろ」
蘇生は勿論、補助魔法など、本人の頭を除けば一流なのは間違いない。
むしろアクアを外すとか命綱を自分から切るような物である。
「だってぇ! 爆裂魔法なんか喰らったら1発で終わりじゃない! 恐いんですけど! 私だけ帰っちゃダメ?」
「お前あんだけ挑発しといてなに言ってんの? もしここで逃げだしたりしたらタダじゃおかねぇからな?」
「う~」
カズマの脅しに呻くアクア。
「そろそろ渓谷に着くぞ。さっさと終わらせるからなっ!」
ウォルバクは渓谷で岩を背にして隠れる形で待ち構えていた。
サトウカズマのパーティーを視認したら即座に爆裂魔法を叩き込んで終わらせるつもりで。
「一応魔力を肩代わりさせるマナタイトも用意してあるけど。どう出るかしらね、あの子達は……」
そんな事を思っていると魔力を感知して岩から動くと、そこには爆裂魔法の魔法陣が空に刻まれている。
「まぁ、そう来るでしょうね!」
真面目にウォルバクを探さず、広範囲の爆裂魔法を撃って倒す。
ここいらに居るのは分かっているのだから。
ウォルバクもマナタイトを1つ使い、爆裂魔法での相殺を試みる。
発動には僅かに遅れたが2つの爆炎が衝突し、数秒かけて消滅する。
「さて、これで向こうはもう爆裂魔法は────えぇっ!?」
今しがた相殺した筈の爆裂魔法。その魔法陣が再び空間に刻まれる。
「あの子にそこまでの魔力がっ!?」
魔王軍幹部のウォルバクですら爆裂魔法を素の魔力で使えるのは1日に1回が限度。
残りはテレポートを使うくらいの余力しか無いのに。
もしかしたら向こうもマナタイトなどの魔力を肩代わりする道具を用意しているのかもしれない。
「えぇい!」
焦りと苛立ちから自分の魔力で爆裂魔法を発動させた。
先程より威力が弱いのか、此方が押すも、押し切るより先に消え去る。
少し警戒したが、3発目はどうやら発動しないらしい。
「切り札を出し終えたのか。それとも……」
ウォルバクは爆裂魔法が発射された地点を睨んだ。
「あークソッ!! やっぱ仕留めきれてないか!!」
もしかしたら1発しか爆裂魔法を使えないのではと賭けてめぐみんとゆんゆんの順で爆裂魔法を撃ったが、どうやらハズレたらしい。
「ゆんゆん、コレ飲め。魔力回復用のポーションだ」
「あ、ありがとうございます……」
カズマからポーションを受け取って飲むゆんゆん。
「カズマカズマ! 私にもポーションをください」
「ねぇよ! 運悪く、ウィズのところに置いてたそれが最後の1本だったんだ!」
「なっ!? だったら何故ゆんゆんにポーションを渡したのですか!!」
「どうせお前にポーションを渡しても爆裂魔法を使えるまで回復しないだろうが! だったら汎用性の高いゆんゆんを少しでも回復させるわ!」
「なんですとーっ!!」
自分が役立たず宣言された事と、ライバルであるゆんゆんを優先した嫉妬でめぐみんは倒れたままカズマの脚をゲシゲシと蹴る。
めぐみんの蹴りを距離を取って止めさせると、ゆんゆんに話しかけた。
「ゆんゆん! 相手がどこら辺から爆裂魔法を使ったか分かるか! そこまでテレポートで移動出来るか!」
「あ、はい! 本来なら登録した場所しか跳べませんが、目に見える範囲くらいだったら!」
「よし! 頼むぞ! 近付けば爆裂魔法は使えねぇんだ! アクアとダクネスが注意を引き付けてくれ! 後は俺が気配遮断で近付いて背後からあのお姉さんをブッ刺す!」
カズマが作戦を伝えるとアクアが異を唱えた。
「えー。そんな事しなくても。いつもみたいに私の魔力をめぐみんとゆんゆんにあげれば良くない? 今日は特別に、私の神聖な魔力を渡してあげるから!」
「そんなチンタラしてる間に向こうが爆裂魔法を撃ってくるわ! あのお姉さんがあと何発爆裂魔法を使えるのか分からねぇんだぞ!」
どうやって連発したのかは知らないが、近付いてしまえば爆裂魔法は使えない筈。
「しかしなんだ。カズマ、お前はいつから
「どやかましいっ!! 元はと言えばお前の剣がまともに当たるなら、俺がこんな危険な橋を渡る必要は無かったんだぞ! これが終わったら、剣術関係のスキルを絶対に修得して貰うからな!」
「断るっ!」
カズマの命令をバッサリと切り捨てるダクネス。
彼女にも譲れない物があるのだ。例えそれが、他人から見て意味のない拘りだとしても。
青筋をカズマが立てるとゆんゆんがアワアワとしながら通告する。
「と、とにかく跳びますね! テレポートッ!!」
魔法による移動を行った。
お互いが爆裂魔法の射程距離に入る距離まで移動する。
ダクネスを盾にしながらもっと近づき、気配遮断で相手の視界外から弓矢でも剣でも攻撃する。
ウォルバクのところまで走ろうとした。
しかし────。
「おうわっ!?」
突然沼になった足下に沈んで動けなくなる。
「ボトムレス・スワンプッ!?」
足を止めさせた魔法を叫ぶゆんゆん。
彼女自身修得している魔法だ。
「カズマさんっ!? アレ! アレェッ!?」
自分達の頭上には爆裂魔法の魔法陣が刻まれている。
いつの間にかウォルバクは距離を取り、スキルで視力を上げたカズマだけがその唇の動きを見ていた。
────エクスプロージョン。
「ねぇ!どうするの!?どうするのよ、カズマさぁんっ!?」
(やべえ! コレ、マジで終わっ────)
最強の魔法がカズマ達に向かって落ちてきた。
テレポートしなかっためぐみんは1人爆炎に呑み込まれる仲間達を見ていた。
「アクア……ダクネス……ゆんゆん……?」
信じられない様子で仲間の名前を呟く。
これまで数多くの強敵を屠ってきた自分の仲間が一瞬で消え去ってしまった。
「う、あ、あ、あぁ……っ!?」
現実を認めたくなくて、首をイヤイヤと左右に振るめぐみん。
爆裂魔法の痕には誰も残って居なくて。
「カズマァアアアアアッ!?」
めぐみんの叫びが渓谷に響いた。
次回でウォルバク編は終了です。
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序盤
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デストロイヤーから裁判まで。
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アルカンレティア編
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紅魔の里編
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王都編
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ウォルバク編
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番外で書かれた未来の話
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その他