この小さな母娘に幸福を!   作:赤いUFO

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エリス祭とこめっこの居候話を同時にやろうと思った。


天敵

「オカシイと思うの!!」

 

 食後のデザートの食べている最中にアクアがバンとテーブルを叩いて訴え出した。

 アクアの訴えにデザートを作ったスズハが問いかける。

 

「え、と……プリン、お口に合いませんでした?」

 

 不安そうにしているスズハにアクアは首を横に振る。

 

「そんな事はないわ! 最近私、外でデザートの買い食いとかしなくなったもの!」

 

「じゃあなんなんだよ……」

 

 プリンを食べ終えたカズマが面倒臭そうに話を進めさせる。

 するとアクアが1枚のチラシを取り出す。

 

「これよ! これっ!」

 

 アクアが見せてきたのは今度開催されるエリス祭のポスターだった。

 

「エリス様のお祭りですね。これがなにか?」

 

「なにか? じゃないわよ! 後輩女神であるエリスを崇めるお祭りが在るのに、私のお祭りが無いなんておかしいわ!」

 

「コイツまたいらん対抗心を……」

 

 エリス祭のチラシをバンバンと叩きながらアクアが話す熱を上げる。

 それを聴いていたスズハが疑問を口にした。

 

「アルカンレティアならアクアさんのお祭りがあるのではないですか?」

 

「……」

 

「アクア、どうした?」

 

 アルカンレティアの名前を出すと途端に動きを止めるアクアに隣に座っているダクネスが肩を揺さぶる。

 

「だってぇ! 今あの街に行ったらまた怒られちゃいそうで嫌なの! それに私はこの街の人達に私のお祭りをして欲しいの!」

 

「ガキかよ……」

 

 呆れつつカズマはプリンの器を片付ける。

 そこで玄関からノック音がした。

 スズハが出ようとするが、カズマが制止して玄関に向かう。

 

「はーい。どちらさんで〜」

 

 玄関前に立っていたのは3人。

 1人はめぐみんの妹のこめっこ。

 もう2人は紅魔の里で会っためぐみんの同級生だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうぞ」

 

 3人にお茶と菓子を出して下がるスズハ。

 こめっこがいち早く茶菓子に手を付ける。

 めぐみんが妹を連れて来てくれた同い年の紅魔族2人を紹介する。

 

「ふにふらとどどんこです。ダクネス以外は学園で会いましたよね」

 

「はい。覚えてます」

 

「パッとしない2人なので別に覚えてなくていいですよ、スズハ」

 

 めぐみんの発言に2人がテーブルを強く叩いて立ち上がる。

 

「ちょっと! 学生時代にめぐみんが悪目立ちしてただけで別に私達がパッとしない訳じゃないんだからね!」

 

 そう怒る2人だが、話が進まないのでカズマが話を遮る。

 

「で? なんだってこんな時間にこめっこを連れてきたんだ? 紅魔の里でなんか遭ったのか?」

 

 カズマの質問に2人は真面目な表情になる。

 そして重たい口調で話を始めた。

 

「実は紅魔の里が魔王の娘から大軍を率いて襲撃を受けたの」

 

「その襲撃でめぐみんの家が壊されちゃって。新しいのを建てるまで、こっちで預かって欲しいって頼まれたの」

 

 話を聞いてカズマは深刻な顔をする。

 

「なぁ。何で魔王の娘が大群率いて襲撃してくるんだ?」

 

 紅魔族は確かに魔法使いとしては脅威だが、一部を除いて殆ど里から出ない少数部族である。

 あの上級魔法の雨あられを掻い潜るリスクを負ってまで、魔王の娘が態々紅魔族を襲撃する意味が分からない。

 それとも、前回のようにまだ、何かしらヤバい兵器が眠ってたりするのだろうか? 

 カズマの質問に3人は真面目な表情をする。

 

「実は里近くの山頂に観光名所で魔王の娘の部屋を覗ける展望台があるのです」

 

「それで、紅魔族は常に魔王の娘を監視してるの。それがとうとう向こうにバレたみたいで」

 

 なるほど。魔王軍側からしたら常に監視されているのは面白くないだろう。

 そこでスズハが小さく手を挙げて質問する。

 

「あの。今、観光名所って言いませんでしたか?」

 

「はい。お金を入れて魔王の娘の部屋を覗けるのです。使わない時は里のニート共が使用して癒しになっていたのですが──―」

 

「バッカじゃねぇのっ!!」

 

 真面目に聞いていたカズマがテーブルを叩いた後に頭を掻き毟る。

 そんなのいつかバレるに決まってるし、そんな理由で不特定多数にプライベートを見られていた魔王の娘には同情を禁じ得ない。

 

「なぁ。真面目な話、なんで魔王軍と人類って戦ってんの? 戦争が続いてるのって、紅魔族やアクシズ教徒が余計な事してるからじゃねぇだろうな!」

 

 カズマの指摘に3人が明後日の方角に視線を彷徨わせる。

 

「おい! 目ぇ合わせろよ!」

 

「し、失礼ですね! ちょっと毎年魔王城の近くでピクニックに行くくらいですよ」

 

「ピクニックゥ?」

 

 何でもそのピクニックは、魔王城の近くでバーベキューを楽しんだ後に城の結界に向けて上級魔法を連発し、城から兵が出たらテレポートで帰ってくるレクリエーションだとか。

 

「やめてしまえっ! そんな行事はっ!」

 

 どう見ても悪者は紅魔族だ。

 説明を終えた後にどどんことふにふらには握り拳を作って椅子から立ち上がる。

 

「とにかく! 紅魔族としてやられっ放しな訳にはいかないわ!」

 

「今、里に居座ってる魔王の娘にゲリラ活動するなの!」

 

 それで、小さな子であるこめっこの預け先を探していたという。

 

「分かった。めぐみんの妹はこっちで預かるから、そっちはゲリラ活動でも何でも好きにしてくれ」

 

 こっちを巻き込まないなら魔王軍と紅魔族の喧嘩に首を突っ込む実力も勇気はない。

 めぐみんも意気揚々と参加しようとしたが、そこでこめっこが声を出す。

 

「おかわり!」

 

 器に盛られていた茶菓子を食べ尽くしたこめっこがおかわりを要求する。

 

「えっと。今日はもう遅い時間ですから、また明日にしましょう」

 

「えー?」

 

 スズハの言葉に不満そうにするこめっこ。

 それにめぐみんが注意する。

 

「こらこめっこ! スズハを困らせない! 今日はもう歯を磨いて寝ますよ!」

 

「は〜い」

 

 めぐみんが就寝を促すと、こめっこが不満そうに返事をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……今日も暑いですね」

 

 翌日、お昼を終えた頃にカズマ、アクア、めぐみんの3人はエリス祭に女神アクアも同時に祝うようにする為に、アクシズ教の教会へと向かった。

 ダクネスは領主の娘として祭の打ち合わせに出るのだとか。

 それで必然的に屋敷に残るのはシラカワ母娘とこめっこになる。

 めぐみんはアクセルのアクシズ教のシスターと縁があるらしく、その案内で出かけた。

 こめっこもついて行こうとしたが、めぐみんが、妹とスズハ達をそのシスターに会わせたくないらしく、留守番をさせることに決めたらしい。

 

「正直、あの子の近くにヒナを置きたくない……」

 

 紅魔の里で娘を食料扱いしたのを覚えており、それがスズハの中でこめっこに対する苦手意識に繋がっている。

 だからこうして今は動きにくくても抱きかかえていた。

 こめっこは今、ちょむすけと遊んでいるだろう。

 

「う〜あ〜」

 

「ふふ……重くなったねぇ、ヒナ……」

 

 つい先日病気だったのが嘘のように元気になり、成長していく娘に微笑みながら風呂場の清掃に入る。

 お昼寝している娘を見ながらスズハは風呂場の掃除をする。

 頻繁に掃除はしているので、終わるのにはそう時間がかからなかった。

 お風呂掃除を終えてロビーに戻るとそこにはちょむすけを抱えたこめっこがいた。

 スズハを見ると、トテトテと近づいてくる。

 

「お腹空いた」

 

「あぁ。もうオヤツの時間ですね。何か作りましょうか」

 

「やったー!」

 

 スズハの言葉にこめっこがちょむすけを掲げて喜ぶ。

 その時にちょむすけの身体に幾つも噛まれた痕が見えたので、今日のオヤツは奮発してあげようと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

『こめっこには簡単で沢山作れるオヤツをお願いします。味より量です』

 

 というめぐみんの言葉に従い、ホットケーキを作る事にした。

 何枚か焼いて重ねてこめっこには提供する。

 ちょむすけにも多めにおやつを皿に盛ってあげた。

 

「それじゃあ、わたしは夕飯の準備をしてしまうので、ゆっくり食べててくださいね」

 

「はーい!」

 

 3枚重ねのホットケーキにナイフとフォークをぶっ刺して食べ始めるこめっこ。

 大人しくしてくれそうだと判断してカズマ達が戻ってくる時間を大まかに予測して夕飯の下拵えを始める。

 いくつかの野菜を切り終えると、こめっこが皿を出してくる。

 

「もうない?」

 

「え? 足りませんでした?」

 

 3枚重ねだから流石に満足するだろうと思っていたが、どうやら足りなかったらしい。

 材料は余ってるし、作るのは簡単なのだが。

 

「えっと……夕飯が食べられなくなると思うので、今日はもう終わりにしましょうか」

 

「えー! 別腹だからご飯も食べられるよ! だからもっと!」

 

 おかわりを要求するこめっこ。

 スズハは悩んだ末にもう1枚だけ、と焼く事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまー! 聞いてよスズハ! この私の活躍のおかげて見事で──―」

 

「なんてことしてくれたんですかっ!?」

 

 帰宅してアクアが今日の事を自慢しようと上機嫌で奥へと歩いていると、珍しくスズハの怒った声が届いた。

 

「なんだぁ?」

 

「行ってみましょう」

 

 食堂に行くと、腕を組んで怒っている様子のスズハと、ちょむすけを抱えて怒られているこめっこがいる。

 

「おいおい。なにがあったんだ?」

 

「あぁ。おかえりなさい、みなさん。アレを見てください」

 

 スズハが怒るのも珍しく、躊躇いがちに訊くと、彼女はテーブルを指差す。

 視線を動かすと、そこには並べられていたのだろうか料理のいくつかが食べられていた。

 

「少し目を離した隙にこの有様です」

 

「これ、こめっこが食べたんですかっ!?」

 

 姉であるめぐみんが驚きのあまり声を上げる。

 

「……はい。特にメインのグラタンは全員分。それにデザートも、ですね」

 

 スズハの報告にカズマはあちゃー、と額に手を当て、夕食を楽しみにしていたアクアは肩をガックリと落とす。

 

「こめっこ! スズハに謝りなさい!」

 

「えーっ! 食べ物たくさんあるんだからいーじゃんっ!! それにねーちゃんも前はヨソから食べ物とってきてた!」

 

「それは里で生活が困窮してた頃の話です! スズハは皆の分を用意してくれてたでしょう!」

 

 めぐみんも叱るが、どうにも反省の色は見られない。

 疲れているカズマは話を切り上げようとする。

 

「別にぜんぶ食われた訳じゃないし、子供がやった事だろ? 大目に見ようぜ」

 

「これは躾の問題です!」

 

 流石にここまで迷惑かけて叱らない訳にはいかず、めぐみんはこめっこにお説教する。

 

「あの。こめっこさん、明らかに食べてる量がおかしいんですよ。豚や金魚みたいに満腹感が判らないとかないですよね?」

 

 豚や金魚には満腹を判断する神経がなく、食事量による満足感が判らないと言われている。

 豚は脂肪に変え、飼育されてる金魚が死にやすいのは、過剰に餌を与えるのが原因になりやすいという。

 

「人の妹を豚や金魚と同じにしないでください! それよりもこめっこ! 早く謝りな──―」

 

 そこで、場の空気を感じてか、ヒナが泣き出してしまった。

 

「ヒナ。すみません。ちょっとあやしてきます」

 

 娘を抱えて食堂を出ていくスズハ。

 

「とにかくもうご飯にしましょう。ピリピリした空気で嫌なんですけど」

 

「俺もアクアに賛成だ。明日から気をつけてくれればいいじゃねぇか。ほら、めぐみんも腹減ってんだろ?」

 

 諦めたように席に着くカズマとアクア。

 めぐみんは顔を顰めるが、直後にぐ〜っとお腹がくうふくを訴えてきた。

 めぐみんも席に座ろうとすると、こめっこがバンザイした。

 

(ごはんーっ!!)

 

「こめっこはもうダメですっ!!」

 

 

 

 

読者さんがこの作品で好きな話は?

  • 序盤
  • デストロイヤーから裁判まで。
  • アルカンレティア編
  • 紅魔の里編
  • 王都編
  • ウォルバク編
  • 番外で書かれた未来の話
  • その他
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