この不審な青年に疾走を!   作:トキワ

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この素晴らしいカエルに天敵を!
青年は依頼内容を知る


 

 

 

 

 

《ジャイアントトードの討伐》

町外れの牧場に現れるジャイアントトードを五匹討伐してください。

 

 

 

「こんなのしかなかったわけだが…」

 

 

 各々準備をしたあとさあ稼ごうと仕事を探したが、案の定ろくなクエストは残っていなかった。

 冬前に懐を暖めたいのは皆同じらしい。

 

 

「肝心の報酬はおいくらだったんですか?」

 

 

 当然の質問がユウキから飛んできた。実際クエストを受ける際の大きな指標となるのが報酬であり、多少辛くとも見合う価値があるなら受託されることが多い。

 

 

 

「45KEだ」

 

「、、、」

 

 

 さしものユウキも黙ってしまった。

 

 

「カエルの内臓が見たいんでカエルをぶち殺しましょう」

 

 

 あにゃは平常運転である。ちょっと、いやかなり野性味が強いだけで頭は悪くないので報酬が安いのは分かっているはずだが…

 

 

「お前…まあいいや、ユウキはどう思う?」

 

「それでいいと思いますよ」

 

 

 彼ははにかんだ微笑を浮かべて肯定を示した。

 基本的に長い物に巻かれる男なのであまり同意を問う必要もないのだが、それはそれとして強要するのは間違っているのでいつもこの会話がまとめとなっている。

 

 

「はい、じゃあ我々ガーネットローズの次のクエストは決定しました。次はターゲットの情報が欲しいんだけど…」

 

「カエル」

 

「美味しそうなカエル」

 

「いやまあカエルなんだが…」

 

 

 ジャイアントトード。直訳するなら大きなカエルと言ったところか。

 大量発生するので安価で市場に降ろされながら、しかし肉厚で美味。さらに経験値も手に入るそこそこの食材でお馴染みである。

 グルメなあにゃも既に食べたようだが、俺が食べても実際美味しかった。別に品種改良も受けていない天然モノのはずなのだが。

 

 

「もっとなんか知らないの?」

 

「でかい!いっぱい!以上!」

 

「ああはい…大人しく職員さんに聞いてくるね…」

 

 

 パチパチと虚しく響くユウキの拍手を背に、いつもの受付のお兄さんに質問をする。

 

 

「ジャイアントトードですか?そうですね…牛や人間も呑み込む大型のカエルです。金属を苦手するそうですが、そういった装備を所持していなければ素早く呑み込まれてしまうそうですよ」

 

「はえー…ありがとうございます」

 

 

 お兄さんにお礼を言って指定席に戻る。

 情報を整理すると相当に巨大なカエルが想像できる。報酬の金額からそれほど強いわけではないのだろうが、それでも面倒そうなこと請け合いだ。

 

 

「あ、聞けました?じゃあミヤコさんとこに寄りたいんですけど、、、」

 

「ミヤコ魔法店?なんか用事あんの?」

 

 

 こくりと頷くユウキ。あにゃは何も言わず空中を見ているので文句はないようだ。

 

 

「ん、じゃあ寄ってから行こうか」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 ミヤコ魔法店。この駆け出しの街アクセルで一番良心的な道具屋さんである。

 ポーションやマナタイトの販売、果てはオリジナルのマジックスクロールの作成まで手がけている。かく言う俺も消費アイテムの購入で何度もお世話になっている。

 

 

「いらっしゃいませー!(なの〜)」

 

 

 扉を開けると二人の女性の元気な声が聞こえてきた。

 

 

「こんにちはミヤコさん。受け取りに来ました」

 

「あーお前は!品はちゃんと完成してるの。取ってくるからそこで待ってろなの〜」

 

 

 ふわふわと店の奥に消えていく幼女。割と奇抜な格好をした彼女こそが店主のミヤコさんである。明らかな日本的な名前や年齢や口調等々興味は尽きないが、失礼なので実際に聞いてはいない。

 

 …しかしこの店はワンマンで回していたはずだが…初めて見かけるもう一人の少女は店員だろうか。

 あまりジロジロと見る訳にはいかないが、なんと彼女は黒と赤のオッドアイである。異世界であるここでもオッドアイは未だ見たことがない。何か特殊な出自だったりするのだろうか。

 

 

「新人?」

 

 

 さっきまでポケーッとしていたあにゃが唐突に絡んだ。彼女の琴線に何かが触れたのだろうか?

 

 

「おや、私に声をかけるとは珍しい方ですね。いかにも私はここのしがないバイトです。よろしくお願いしますね」

 

 

 …この人もキャラが濃い!

 口調こそ丁寧だが語気がとても尊大だ。俺が大会で鼻っ柱を折ってやった奴らと似たような雰囲気を感じる。

 

 

「あらあら小さくてお可愛いこと。どことは言いませんが」

 

 

 明らかに胸をガン見しながら挑発するあにゃ。お前も大概だろうが。

 

 

「うちの者がすいません!あとで言い聞かせときますんで!」

 

 

 こいつは絶対に謝らない女なので代わりに俺が謝罪する。最近はもう慣れてきた。

 

 

「い、いえいいんですよ…ところで貴方達はこれからクエストに行くのですか?何か知らない事があったら私が教えてあげてもいいんですよ」

 

「あら、見た目に反して頼りになりそうですわね」

 

 

 折角の提案を頂いたのに、上品に手で顔を隠しそれでもやっぱり煽るあにゃ。一体どうしたんだ。彼女の何をそんなに気に入ったっていうんだ。

 

 そして店員さんはやはり強力な冒険者なのだろうか。冒険に詳しそうな口ぶりだし、今はパーティメンバーの所用とかで時間潰しにバイトをしているのかもしれない。

 

 

「じゃあ1つ聞こうかな。ジャイアントトードの弱点って知ってる?」

 

「そうですね…奴らは一部の物理攻撃に弱いので魔法で攻めるといいですよ」

 

「ほーん」

 

 

 カエルが物理攻撃に強い?地球のカエルではそんな特徴はなかったが…

 名前通り単純に巨大化しただけならば予想できる脅威な点は筋力と質量と舌、大穴で毒だろうか。

 彼らは移動の為に驚異的な筋肉量を保持しており、ぷにぷにとした感触からは信じられない程の跳躍力を発揮する。それがサイズ比のままに巨大化しただけならば重力に打ち勝てないので鈍重どころか動けるかすら怪しいことになる。

 しかし、この世界には魔力というよくわからない概念がある。逆に地球のカエルより素早く動けたとしてもおかしくはないだろう。特に受付のお兄さんからは毒や舌などの特殊な行動を聞いていないし、質量と筋力がメインと想像するのが素直だろうか。

 実際牛や人間を呑み込めるということは最低でも軽自動車並のサイズであり、それが意思を持って高速で飛びこんで─

 

 

 

「あのっ!」

 

 

「──え、ああ、すいません。なんでしたっけ」

 

「カエルにはハンマーとかの打撃系が効かないらしいぞ。だめだよ、ちゃんと人の話は聞かないと」

 

 

 こいつどの口が…

 しかしこれは有用な情報だ。おそらく柔らかい脂肪が衝撃を逃がすというハート様理論だろう。我々には斬撃系と魔法系しかいないので問題はないが、取れる選択肢を絞れるのは大きい。

 

 

「ありがとうございます。活用させて頂きます」

 

「むふー…そうでしょうそうでしょう。もっと感謝してもいいんですよ」

 

 

 腕を組んで誇らしげにする店員さん。うーんこの人も残念なタイプか。

 

 

「あっ!いいことを考えたの!」

 

 

 ユウキとの会話を中断し、こちらにふわふわと浮いてくるミヤコさん。

 

 

「クエストのついでにこいつを連れて行ってやってほしいの。森で採れる特殊な薬草が欲しいけどミヤコは忙しくていけないの…」

 

「それはいい話だ。了解した」

 

「えっ!?私に拒否権はないんですか!?」

 

「さあ準備をしたまえ小さき者よ。戦場へ行くぞ」

 

 

 すごい勢いで話がまとまっていく。本人と一応でもリーダーは決定に関われないのだろうか。

 

 

「我々としては人手が増えるだけありがたいですが…ご本人は大丈夫なんですか?」

 

「ええ…まあ私は大丈夫ですが…知識がないと見分けられない素材ですしね…」

 

 

 なるほど我々に委託しないのはそういうことか。

 この世界の住人ではない俺とユウキは薬草どころか雑草すら見分けることはできない。あにゃは…まあたぶん知らないだろう。

 

 

「では今日はよろしくお願いします。私はトキワと申します。リーダーもしているのでこいつらが何かやらかしたらご相談ください」

 

「これはご丁寧に…では私も」

 

 

「我が名はまなみん!我が故郷随一のウィザードにして最強の魔法を操りし者!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………………………!?

 

 

 

「我が名はあにゃ!この世界の征服を目論む者!」

 

 

 待て

 

 

「我が名はユウキ!この世界のすべてを感じる者!」

 

 

 待ってくれ

 

 

「さぁリーダー、、、期待してますね」

 

 

 

 

 …

 

 

 

 

「わ、我が名はトキワ…世界の全てを抜き去る者…」

 

 

 

 

「はいじゃあ戦場に赴きましょうねえ」

 

 

 

「なんなんだよ…もう…」

 

 

 

 




TIPS:12

『紅魔族』
 かつて魔法と科学をもって繁栄した亡国ノイズで生み出された改造種族。
 真紅に輝く両目が特徴で、買われた喧嘩は必ず買う重度中二病しか生まれないネタ種族。
 一応魔王軍に対抗する為に産まれただけはあり、魔法資質のサラブレットばかりで当然の様に上位魔法を扱う。
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