全ては世界を救う為に!   作:やがみ0821

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アメリカを愛する全ての者達よ、立ち上がれ!

 十分な準備期間と休暇をとり、いよいよアメリカにおける特異点修復をカルデアは実施することとなった。

 

 オフェリアはシグルドしかサーヴァントを召喚していなかったが、それが普通であり麻菜が非常識だった。

 

 勿論、オフェリア自身に濃すぎる英霊達を纏められる自信が無かったというのもある。

 なお、一度に全員がレイシフトしては一網打尽にされる可能性があり、先発として麻菜とマシュ、続いて本隊としてオフェリアとシグルド及び麻菜の選んだサーヴァント達がレイシフトすることとなった。

 

 なお、レイシフトする場所の選定に麻菜は口を挟み、彼女の要望でホワイトハウスの近くが希望されたが、そもそもホワイトハウスがまだ完成していないということでそれはお流れになった。

 

 

 

 

 

「というわけでアメリカに来たわけだけど……うーん、鉄火場」

 

 響き渡る数多の砲声や銃声。

 独立戦争時代ということで、アメリカとイギリスが戦っているのだろうか、と思いつつも、麻菜は少し先に見える戦いの場を見やる。

 中々に大規模な会戦だ。

 

「片方はどう見ても蛮族といった出で立ちですね……」

「もう片方はどう見てもアメリカ軍ね。何だか一部、オーパーツなのが混じっているけど」

 

 とりあえず事情を聞こうと麻菜はマシュについてくるよう告げ、堂々と歩いていく。

 時折、飛んでくる砲弾を手刀でもって蛮族側に弾いたことにマシュが目を見開くが、麻菜にとってはこれくらい大したことない。

 

 ある程度の距離まで近づいたところで、蛮族側――ケルトの戦士達が麻菜とマシュを発見し、何人かが襲いかかってくるが、そんな連中は苦もなく蹴散らしたところで麻菜が口を開く。

 

「面倒くさいわね。なんかケルトっぽいからケルトに任せましょうか」

「最初からそうすれば良かったのでは?」

「たまにはマシュと2人きりでも良いのでは、と思ったので」

「……先輩」

 

 麻菜の返しにマシュはなんだか照れくさくなってしまう。

 嬉しいやら恥ずかしいやらで、彼女が顔を俯かせているうちに麻菜はさっさとカルデアへと連絡を取り、待機させているクー・フーリンとスカサハを呼び寄せた。

 

 そしてクー・フーリンとスカサハの2人が1分も掛からずにケルトの戦士達を叩きのめし、彼らをカルデアへと送還することで敵対勢力ではないというアピールをアメリカ軍に対して実施。

 このアピールが功を奏して、麻菜はアメリカ軍の指揮官と面会を果たすことに成功したのだが、その指揮官は予想外の人物だった。

 

「もっと色々とアメリカなんだからいるでしょうに……」

「私は今のアメリカを纏め上げているエジソンの縁で召喚されたのよ。前線で軍隊を率いて戦うなんて、柄じゃないと思っているわ」

 

 麻菜の言葉にアメリカ軍の指揮官、エレナ・ブラヴァツキーは溜息混じりにそう答えた。

 

「それはさておき、合衆国を救いに来たわ」

「麻菜と言ったかしら? あなた、隠蔽しているけれど中々見どころがあるわね。レムリア大陸とかに興味は……?」

「レムリアならそれなりの頻度で行ったことがあるわよ」

「ふぁっ!?」

 

 エレナは驚き、思いっきり麻菜の両肩をがっしりと掴んだ。

 

「詳しく! 詳しく教えなさい!」

「超高度な魔導機械文明よ。ちなみにこの次元には存在しないので行くのは無理」

 

 ユグドラシルにありました、なんて素直には言えないので麻菜はそれっぽい言い回しをする。

 

「本当に? 証拠は!?」

「はい、これ。あげるわ」

 

 麻菜は無限倉庫から懐中時計を取り出した。

 一見、ただの懐中時計であるが横から覗いたマシュとエレナにはそこに印字されている文字が全く見たことのないものであった。

 さらに懐中時計の時の刻み方も普通のものではなく、文字通りに反時計回りであった。

 

「他にも色々とお土産として買ってきたものが……」

 

 50分の1魔導機械兵人形であったり、レムリア魔導機械図鑑、レムリア大陸地図などをエレナへと渡した。

 

「え、い、いいの? これ、もらっても?」

「いいわよ。たくさん買ってきたから。ただし、全部レムリア語だから」

 

 エレナは感動のあまりに体を震わせる。

 そんな彼女を見つつ、マシュは尋ねる。

 

「先輩、先輩。レムリア語って読めるんですか?」

「ええ。読み書きは勿論、喋ることもできるわよ」

「先輩って普通にとんでもないですよね、今更ですけど」

「他にもエノク語も読み書き喋ったりできるし……ああ、ちなみにヴォイニッチ手稿も読めるわよ」

 

 マシュとエレナは目が点になった。

 

『な、何だって!?』

 

 カルデアもエレナとのやり取りということで通信だけは繋げっぱなしにしていた為、思いっきり食いついてきた。

 ダ・ヴィンチは勿論、ちょうどいたオルガマリーも他のカルデアのスタッフ達も。

 

「い、意味は何だったんですか?」

「教えて! 麻菜!」

 

 マシュとエレナに麻菜は意味深な笑みを浮かべる。

 

「知らない方がいい……なんてよくあることは言わないわ。異星文明の話よ。人間を餌にする植物優位の別の惑星の話。人間ってそっちだとこちらでいうところの牛や豚で、植物が人間の立ち位置にあるみたいね」

「ヤバイことは書いてありましたか?」

「どんどん体を大きくして、もっと栄養を取ろうってことで、他の星に届くまで巨大化しようとしているくらいかしら。宇宙って不思議ね。あとは植物による効率的な人間の食べ方とカレンダー、それと美女は植物のお肌に良いらしいわよ」

 

 世界の不思議が一つ解明されてしまったのだが、そこでダ・ヴィンチがピンときた。

 

『麻菜、どうしてそれが地球に存在するんだい? 遠く離れた星のことなんて分からない筈だ』

 

 そこで麻菜は笑みを浮かべた。

 とても不気味なものであり、背筋に寒気が走るようなものだ。

 

「どうして、なんて分かり切っているでしょう? 無抵抗な家畜を貪るのも飽きているから、程々に抵抗してくれる家畜が必要よね。ただ、予想外なことに誰も読めないなんて。これじゃあ、楽しめないわ」

 

 麻菜から紡がれた言葉に誰もが皆、直感する。

 読めるのは世界で唯一人、そして、その人物は何でもできる。

 

「もしかして、先輩が……」

 

 マシュは震える声でそう言うと、麻菜はぷるぷると体を震わせ、やがて大爆笑した。

 

「見事に釣られたわね! かかったな、アホが!」

 

 全てを察したマシュは無言で盾を構えた。

 エレナもまた本を構えた。

 

『やっちゃってくれ』

 

 ダ・ヴィンチのGOサインにマシュとエレナ、2人はそれぞれの得物――その角を思いっきり麻菜に叩き込んだ。

 

「いたい」

「当たり前よ! 大人をからかうもんじゃありません!」

「先輩、最低です」

 

 頭にたんこぶを2つこしらえた麻菜は両手でそれらを擦りながら、涙目だった。

 

「ちなみにだけど、本当は単なる女性向けの健康書。異星文明とかは全くの嘘。体に良い薬草とかお肌を綺麗にする薬湯とかそういうの。当時の占星術のやり方とかそういうのも書かれている。で、他に似たような本がないのは、作成した人の家で代々語り継がれてきたおばあちゃんの知恵を書物に纏めた為」

 

 麻菜の言葉に何だか残念な空気が漂った。

 解読されない方が良かった、と。

 

「ともあれ、麻菜。レムリアの方は本物みたいだから信用してあげるわ。あと、心臓に悪いから、さっきみたいなからかいはやめて頂戴」

「分かったわよ、エレナ」

「というか、レムリアの方が本物ということが凄いんですが……」

 

 マシュの言葉にカルデアの管制室にいる面々もうんうんと頷いた。

 そこでエレナは核心に触れる。

 

「麻菜って何者? マハトマ?」

「マハトマというのを高次元の存在という意味でなら、当てはまるような気がしなくもない」

「先輩って何でもありなんですねぇ……もしかしてアメリカを救うってあれですか、クトゥルフ的なものを召喚するという……」

「召喚は専門じゃないけど、幸いにも色々とそれを補えるだけのアイテムがあるので何とかなる。邪神とか見たい? グロいけど」

 

 ぶんぶんぶん、と首を左右に振るマシュとエレナ。

 

『あー、麻菜。邪神はダメだからね』

「ティンダロスのワンコは? 呼べばすぐ出てきてくれる可愛い子達なんだけど」

『うん、君の美的感覚が宇宙的にぶっ飛んでいることはよく分かった。勘弁してくれ』

 

 ダ・ヴィンチの言葉に麻菜は頬を膨らませる。

 

 ユグドラシルにおいて、ティンダロスの猟犬というのはわりとポピュラーな存在だ。

 手頃なMPコストで、なおかつ1度の召喚で非常に多い数を出すことができる為、デコイとして極めて優秀なのだ。

 

 とはいえ、現実化した今となっては単なるデコイに収まらないことは言うまでもない。

 

「とにもかくにも、さっさと終わらせましょう」

「それならちょっと来て頂戴。現状を説明するわ。エジソンに会って欲しい」

 

 

 

 

 

 

 臨時の首都へと向かうまでの道すがら、エレナは麻菜達に現状を説明する。

 要約すると、突然湧いたケルト軍に歴代大統領達の力を集約したエジソンを中心に何とか纏まって対抗しているとのこと。

 

 

 物理的な力ではエジソンも歴代大統領達も対抗できる筈がない、と麻菜もマシュも納得する。

 今、現界しているエジソンは彼をベースとした複数の霊の集合体みたいな状態だそうだ。

 

 しかし、麻菜には策があった。

 

 アメリカの象徴を規格外の英霊としてウィッシュ・アポン・ア・スターで召喚する――

 

 そうすれば楽しいことになると彼女は考えていた。

 

 

 

 

 

 

 臨時首都へと到着した麻菜達は街中を行き交う人々が非常に疲れた顔が目立った。

 エレナによればケルトの質に対抗する為には量というエジソンの方針により、中々に無茶な労働を強いられているらしい。

 それでも暴動が起きていないのは、エジソンが負ければ自分達も死ぬという現実があるからだろう。

 

 

 臨時首都にある大統王官邸、そこにある会議室へと案内された麻菜達。

 会議室には既にエジソンがおり、彼の見た目は人間離れしたものだった。

 

「……なんというか強烈ね」

 

 初めてエジソンを目の当たりにした麻菜はそう感想を口にした。

 マシュも何とも言えない微妙な顔だ。

 

「これはこれは、麗しいお嬢さん達。エレナ君から話は聞いているよ」

 

 暑苦しい外見とは裏腹に、とても紳士的だった。

 いくら紳士であれど、筋肉ムキムキマッチョライオンは勘弁願いたい麻菜だったので、さっさと用件を済ませる。

 

「単刀直入に言うわ。合衆国を救う」

「具体的には?」

「簡単よ」

 

 麻菜はそう告げながら、流れ星の指輪(シューティングスター)を指にはめて、超位魔法を発動する。

 展開される青く、巨大な魔法陣にエジソンやエレナは目を見張った。

 

 

「私は願う! 過去・現在・未来において、アメリカを愛する全ての者達よ、立ち上がれ。時空と時間、次元や架空と現実の垣根すらも超えて、あなた達の愛する祖国を踏み躙る敵を叩き潰す為に。アメリカの象徴を導き手とし、各々の力・武器を持って、自らが為したことを宝具とし、顕現せよ!」

 

 青い積層魔法陣が収束する。

 光が乱舞し、やがて消え去った。

 

 そこにいたのは白い髭を生やした初老の男性だった。

 彼は星条旗柄のシルクハットをかぶり、紺のジャケットに赤い蝶ネクタイを締めたワイシャツを着て、紅白縦縞のズボンを履いていた。

 

 マシュでも彼が誰だか知っていた。

 そして、彼のことはエレナやエジソンすらも知っている。

 

 彼はエジソンへと視線をやり、彼に手をかざす。

 すると淡い光がエジソンを覆い、やがてそれは消え去った。

 

「……とても、スッキリとした気持ちだ。まるで徹夜明けにシャワーを浴びて、美味いコーヒーを飲んだような」

 

 エジソンは穏やかな表情でそう告げ、一拍の間をおいて更に言葉を続ける。

 

「合衆国は世界の警察官であり、無法者ではない。アメリカだけが生き残っては意味がない」

 

 エジソンの言葉にエレナは目を丸くした。

 歴代大統領達の意識に影響されすぎていたエジソンから、その影響を取り除いたのではないか、と彼女は直感する。

 

 そして、彼は――アンクル・サムは己の宝具を使用する。

 

I WANT YOU(合衆国には、あなた達が必要だ)

 

 彼の宝具、それはアメリカ合衆国を愛する者達を過去・現在・未来から、現実や架空を問わずに際限なく連続召喚する。

 合衆国から侵略者が消え去るそのときまで。

 

 そして、宝具を発動したアンクル・サムは消えていった。

 

 変化は劇的だ。

 

 まずジョージ・ワシントンが現れた。

 彼をはじめとし、次々に歴代大統領が現れ、各々の為した功績を宝具として使用し、消えていく。

 

 それらはアメリカを愛する全ての者達に勇気と力を与えるものだ。

 

 事実、エジソンは体の内側から無限にエネルギーが湧き出してくるような感覚を味わっていた。

 

 最後に現れたのはフランクリン・ルーズベルトだった。

 彼が最後になったのは、ひとえにアメリカが経験した中で、もっとも規模が大きい戦争であり、またアメリカの覇権を確立した為だろう。

 

 彼は自身の宝具を宣言する。

 

Arsenal of democracy(民主主義の兵器廠)

 

 そして、彼は消えていった。

 それを見届けて麻菜は告げる。

 

「さぁ、外に出るわよ。凄いことになっていると思うから」

 

 言わずとも分かった。

 なぜならばタービン音やらエンジン音やらが会議室の中にまで聞こえてきているが為に。

 

 

 

 

 空には数多の新旧の航空機、陸にはこれまた数多の新旧の戦車をはじめとした装甲車両と新旧の歩兵達。

 

 市民達の驚きは一瞬で、すぐに歓呼の声でもって迎えた。

 

 彼らは皆、アメリカ軍であったからだ。

 

「先輩、これが先輩の狙いですか?」

 

 エジソンもエレナも言葉を失い、驚く中でマシュが問いかけた。

 

「何を言っているの? 私は架空も現実も問わなかったわよ」

 

 麻菜は微笑み、ウィンクをした。

 

 そのとき、空を飛ぶ人影がマシュに見えた。

 

「……あ、そういうことですか……」

 

 アメリカにおけるスーパーヒーローも含まれていることにマシュは気づいた。

 

「ということは、映画とかの……」

「ええ、勿論よ。キングコブラに噛まれて、5日間もがき苦しんだ後、キングコブラが死んだっていう男とかもいるわよ」

「勝ちましたね」

「ヒントはアメリカっていう意味、分かったでしょ?」

「ええ、とても分かりました。ですが現代兵器ってサーヴァントには効かないのでは?」

「兵器も込みで全部召喚された存在だから問題ないわ。侵略者に対する特攻とかついていると思うし」

 

 その言葉にマシュはしみじみと告げる。

 

「……先輩にしかできませんよね、こんなこと」

「私が見たかったからいいのよ。蛮族共め、自由と正義、民主主義の守護者に喧嘩を売ったことを後悔するがいいわ」

 

 高笑いする麻菜にマシュは悪役はこっちなんじゃないか、とちょっと考えてしまった。

 

「あ、そうだ、ちょっとあちこち移動しなきゃ。撮影的な意味で」

 

 カルデアによって映像も記録としてリアルタイムで録画されているが、撮影範囲は麻菜とマシュの周囲に限られる。

 今この瞬間しか見ることができない全力全開のアメリカの大反攻だ。

 映像を撮ってもらわねば損だった。

 

 

 

 

 

 

 

「くそったれが!」

 

 少佐は悪態をついた。

 

 エジソンが量産しているという機械兵はここには回されていない。

 機械兵の数が広大な戦線に対して圧倒的に不足しているが為であった。

 そして、少佐が率いる戦力は500名にも満たない。

 おまけに正規の軍人は1割もおらず、ほとんどが志願した者――年齢も性別もまちまちであり、老若男女の寄せ集めだ。

 

 その一方で、ここを突破されれば他にまとまった戦力と呼べるものは存在しない。

 丘の上に陣取っていること、頻繁に近隣の街や都市から補給が届くこと、ケルト軍はこれまでここに大して兵力を振り向けなかったことから、どうにか守ってこれた。

 

 しかし、その幸運も今日で尽きそうであった。

 

 目算で1000名を超える大規模な兵力が纏まってこちらに移動してきていることが昨夜、判明したのだ。

 しかもそれは先発隊であり本隊も同数か、それ以上という。

 

 移動速度は速く、彼らは肉眼で確認できる程の距離にまでやってきている。

 まだ本格的な交戦には至っていないが、それももはや時間の問題で、ケルトの戦士達の雄叫びがうるさいくらいに聞こえている。

 

 連中は野蛮で統制も戦術もあったものではなく、ただ個々人の超越した戦士としての技量と身体能力で獲物を狩るという戦法だ。

 

 普通に考えれば銃と大砲で武装した近代軍の敵ではないが、異様なすばしっこさと頑強さから、負けかねない存在だった。

 

 少佐は掲揚されている国旗を眺める。

 これから新しい国家を築き上げる筈であったのに、と悔しい思いでいっぱいだ。

 

 そのとき、彼の耳に聞き慣れない音が聞こえてきた。

 

 ふと、空を見上げた。

 西の空に黒い小さな点が幾つも見えた。

 

 芥子粒程の大きさだったそれらは、どんどんと大きくなっていき――

 

 

 それはまるで太った樽であった。

 それが無数に飛んでいた。

 概算すると最低でも200はいるようだ。

 

 その樽とは別に、もっとスマートな鳥のようなものも見え、またそれらとは翼が変な鳥も見えた。

 自然のものではないことは一目瞭然だった。

 

 だが、少佐はそれらの胴体に描かれたマークを見て、直感した。

 

 星のマーク――味方だ!

 

 そう彼が思ったとき、無数の樽と鳥達――P47とP51、F4Uの大編隊は低空へと舞い降りて、少佐達が陣取る丘の上を翼を振りながら、次々と高速で通過していった。

 

 彼らが向かう先は目前にまで迫ったケルト軍。

 そして、敵の軍勢の只中で次々と爆発が起こった。

 同時に聞こえる銃撃音。

 

 屈強な敵兵達が無残にも四肢を千切られて消し飛び、あるいはミンチと化す。

 敵は大混乱に陥り、それでも槍を投げたり、矢を射るなどしているようだが、当たるわけがない。

 

 一方的な蹂躙であったが、少佐からすれば胸がすく思いだった。

 

 

 しかし、ここはまだ生易しい方であった。

 

 

 

 

 

 

 ある戦場では無数の急行列車が通り過ぎるような音が周囲に木霊していた。

 

 それが極大にまで達したとき、敵軍の先鋒が数多の爆煙と共に吹き飛んだ。

 それらは途切れることなく繰り返され、間近で見ていたこの時代の将兵達を驚愕させ、興奮させる。

 砲撃をしている間にも、砲の射程範囲外の敵に対してベトコン殺し、キッチン以外に運べない物はない、この機体が積んだことのないのはトイレだけ、もう積めないのはバスタブだけ、などと異名と数々の逸話を持つスカイレーダーの群れが爆弾と銃弾の雨を降らせて、敵兵をズタズタに引き裂く。

 

 また、ケルト兵が間近まで迫り、彼我の距離は僅か数百m、陣地に取りつかれるのもあと少しという場所ではA-10が猛威を振るった。

 着弾して敵兵がミンチになった後に聞こえてくるベヒーモスの咆哮とも呼ばれる発射音に将兵達は歓声を上げた。

 

 大兵力が集結している地点では地域ごと根こそぎ吹き飛ばすべく、B-17から連綿と続く爆撃機の系譜がその力を発揮した。

 B-17からB-52、B-1、B-2までが揃って爆撃を実施し、文字通りに敵は地域ごと灰燼と化した。

 

 

 航空兵力で対処できない、散開している敵軍に対してはアメリカ陸軍及び海兵隊が対応した。

 M3やM4といった戦車からM1エイブラムスまで、それぞれの時代の陸軍及び海兵隊は互いに邪魔にならない程度に連携を取りつつ、大火力と物量に物を言わせて、ケルト軍を押し潰した。

 

 また東海岸の近海にはWW2から未来に至るまでのアメリカ海軍の艦艇が無数に集結し、数多の戦艦による艦砲射撃から数千機に及ぶ艦載機による連続した空襲、更に巡航ミサイルをはじめとした各種ミサイル攻撃、果てはレールガンによる砲撃まで行っていた。

 

 特異点であり、なおかつ、予算と世論、国際関係などの現実のシガラミがないからこそ、各時代のアメリカ軍はそれはもう派手に暴れた。

 基本的にアメリカはハワイやゲリラ的攻撃、テロなどを除いて他国軍による本土への大規模侵攻をされたことがない。

 そして、ハワイやテロによる攻撃でアメリカの世論は激昂する。

 

 そんな彼らに対して、独立戦争終盤という自分達の先祖が戦い、アメリカが国家として誕生するかどうかのところで、ケルトとかいう何の関係もない連中がしゃしゃり出て、それを邪魔をしたのだ。

 

 アンクル・サムに導かれて、召喚された者達は怒り心頭であった。

 だからこそ、彼らは一切の情けも容赦もするつもりがなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、何なのよこれぇ!」

 

 メイヴは涙目だった。

 

 始まりは粗末な格好をした男達だ。

 彼らはどこからともなくやってきて、マスケット銃やライフル銃を撃ってきたのだが、ケルトの戦士達にあっという間に蹴散らされ、敗走していった。

 

 その後も1分くらいでやってきて、1分で敗走していく、ということからメイヴはミニットマンと名付けてけらけら笑っていたのだが、すぐにそんな余裕はなくなった。

 

 彼女と彼女が聖杯に願って創造されたクー・フーリン・オルタが根城にしていた場所が吹っ飛んだが為に。

 

「空から来たな」

「クーちゃん呑気! すっごく呑気!」

 

 

 オルタは空を見上げた。

 とはいえ、さすがの彼も届くかどうか自信がなかった。

 

「えっと、クーちゃん。もしかして宇宙から?」

「ああ、でっかい棒が落ちてきた。二撃目が来るぞ」

 

 メイヴを抱えて、オルタはその場から一瞬で離れる。

 数秒後、轟音と共に地面に大きなクレーターが穿たれ、天高く土煙が巻き上がった。

 

 

 落下速度はマッハ9.5にも達し、高度1000kmの低軌道上から撃ち込まれる代物。

 神の杖と呼ばれる軍事衛星による攻撃だった。

 

 

「……おい、お前……何を敵に回した?」

 

 オルタの鋭敏な聴覚が捉えていた。

 こちらに向かってくる数多の飛翔音を。

 

「え、何って……」

 

 オルタはゲイボルグでもって、向かってくる無数のミサイルを迎撃する。

 投擲することで茨が音速で迫るミサイル群に絡みつき、次々と破壊するが、ミサイルは一方向からだけではなかった。

 

 四方八方から無数の飛翔音が聞こえてきた為に彼は舌打ちをし、その場を全力で離れる。

 

「で、でもクーちゃん! 魔力とか神秘が篭っていなければ大丈夫だから! セーフ! 現代兵器は無効化できるから!」

「全部篭っているぞ」

「え、まじ?」

 

 メイヴは冷や汗が出てきた。

 そのとき、脳内に突如として声が響いた。

 

『はーい、私。絶賛大ピンチのようね』

 

 その声は聞き覚えがありすぎた。

 自分の声だったからだ。

 

 ついに幻聴でも聞こえ始めたかと思いつつ、メイヴは問いかける。

 

『どこの私かしら? 今、クーちゃんに抱きかかえられているんだけど』

『ちょっと羨ましいわね……ともあれ、あなた達の敵、カルデアにいる私よ。面白そうだから、ちょっと色々と協力してもらってこうやって繋げて……マーリン! そこの棚は触るな!』

『そっちはいいから、私は何を敵に回したの?』

『うちのマスター。世界を敵に回して1人で戦えるのよ』

『は?』

『だからさ、さっさと聖杯を渡した方がいいわよ。こっちでも状況を見ているけど、今、あなた達が相手にしているのは過去・現在・未来の全てのアメリカ。架空も現実も関係ないから、ヤバイのしかいないわよ』

『で、でも私の生み出したケルトの戦士達は……』

『サーヴァントにも効果のある現代兵器がどれだけヤバイか、今、味わっているでしょう?』

 

 ぐぬぬ、とメイヴは唸るしかない。

 

「降りろ」

 

 どさり、とオルタはメイヴを地面へと落とした。

 

「ちょ、クーちゃんひどい!」

「見ろ」

 

 オルタの声にメイヴが視線をやると、そこには1人の男が立っていた。

 彼こそ、コブラが噛んで5日後にコブラが死んだなどの数えきれない程に無数のファクトを持つ人物だ。

 そして彼だけではなかった。

 

 その背後には無数のアメリカのヒーロー達。

 彼らは架空の存在であったが、紛れもなくアメリカを愛する者達だった。

 

『……降伏する。これ無理』

 

 1人とか2人なら大丈夫だろう。

 しかし、ざっと見ても数十人、下手をすればもっと増える。

 しかも、メイヴの見立てではどいつもこいつもサーヴァントと普通に渡り合えるか、サーヴァントを凌ぐような連中ばかりだ。

 

『賢明な判断ね。さすが私』

『口惜しいわ……』

『相手が悪かったのよ。仕方がないわ』

 

 自分に慰められ、メイヴは溜息を吐くしかなかった。

 

 

 

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