全ては世界を救う為に!   作:やがみ0821

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待ち受けていた試練

 

「フハハハ! 本当に予想外のことをやらかしてくれたな!」

 

 オジマンディアスは大爆笑していた。

 あまりの笑いっぷりにニトクリスがオロオロと困っている。

 

 そんな彼女を横目に見ながら、ひとしきり笑ったオジマンディアスは告げる。

 

「ほれ、くれてやる。余の予想を斜め上に越えていった褒美だ」

 

 玉座に座りながら、オジマンディアスは聖杯を麻菜へと放り投げたのだ。

 それを受け取り、彼女はすかさず無限倉庫へと収納した。

 

 そのとき、またもやオジマンディアスは笑いが込み上げてきた。

 彼の視線は麻菜の横に悠然と佇む獅子王に固定されている。

 オジマンディアスの下へと来るにあたって、キアラは既にカルデアへと返していた。

 彼女がいると面倒くさいことになりそう、という麻菜の判断だ。

 

 さて、オジマンディアスの予想ではエジプト側への侵入者対策に警戒させていたニトクリスあたりでも見つけてカルデア一行が事情を聞いて、というところから話が始まると思っていた。

 しかし、そんな彼の予想をあっさりとカルデア側も、そして獅子王側も上回った。

 

 カルデア側がやってきた直後に獅子王は宝具を遠慮なくぶっ放し、カルデア側もそれに応じて真っ直ぐにエルサレムを目指したのだ。

 

 ニトクリスはカルデアがオジマンディアスを頼らないことに憤慨していたが、彼としては面白い結果になったので全く問題がない。

 

「余も手助けくらいはしてやろう。お前のように突き抜けた気質を持つ者は嫌いではない。たとえ、そこに至った過程がどうであろうともな」

「私が言うのもなんだけど、あなたも一瞬で見抜いてくるわね」

「当然だ。しかし、お前が王の器かというと……微妙なところであるな。良い統治をし、繁栄はもたらすだろうが、基本的には代理を置いて遊び呆けていそうだ。それもまた王の形であるかもしれんが……」

 

 オジマンディアスの評価に麻菜は告げる。

 

「基本的に私は自分が面白いか、利益があるか、気持ち良いか、楽しいかという基準で動くので……私が民の幸福を自分にとって楽しくて面白いと感じたら全力を尽くすと思う」

「暴君であるが名君でもある。極端を行ったり来たりするお前にはぴったりだな」

 

 麻菜は軽く頷いたところで、何だか嫌な予感がした。

 こちらに来てから一度も感じたことがないものであったが、前世のリアルではそれなりの頻度で感じていたもの。

 オジマンディアスが何かを話してくれているが、麻菜の耳には入らなかった。

 

 その感覚は急激に高まっていくが、彼女は慣れていた。

 こういう場合、その嫌な感じが一番強いところには近づかない方がいいと彼女は知っている。

 前世のリアルはそれで己を狙ったテロから何度も逃れてきたのだ。

 

 しかし、その嫌な感じがもっとも強いところはオジマンディアス――彼の首だ。

 彼は英霊であり、既に死んでいる存在。

 ここで殺されたとしても座に帰るだけ――と麻菜は思わなかった。

 

 前世のリアルでも彼が築いた遺跡が残っていた程で、また学生だった頃に歴史の授業で習った太陽王が目の前にいる。

 恩を売れるならば売っておくのが麻菜の主義である。

 

 故に彼女は逡巡することなく動いた。

 

「ファラオ、無礼を働くわ」

 

 そう言いながらも、彼女はオジマンディアスの返事を待つことなく一息で彼が座る玉座との距離を詰め――

 

 甲高い音が玉座の間に響き渡った。

 

 

 

 

「見事なり」

「それはどうも。昔っからこういう気配には敏感なのよ」

 

 

 現れた大男の称賛に対し、麻菜はそう答えつつ彼の全身を見る。

 こいつやべぇ――彼女は見た瞬間にそう感じたが、それを表情には出さない。

 

「見るからに死神って風貌をしているわね。ハサンの親玉? キングハサン……みたいな?」

「我は山の翁。我が名はもとより無名、好きに呼ぶが良い」

 

 彼はそう答え、一拍の間をおいた後に告げる。

 

「汝が我が力を必要としたとき、我を呼ぶが良い」

 

 そう言ってキングハサンは姿を消した。

 それとともに麻菜が感じていた嫌な感覚は綺麗さっぱり消え去った。

 

「……おのれ、あの暗殺者め……一度ならず二度までも!」

 

 ようやく事態を理解したオジマンディアスは怒りの言葉を発した。

 

「一度目があったの?」

「ああ。ともかく、それはいいとして……」

 

 さすがに一度目は首を落とされてから気がついた、とは彼のプライド的に口が裂けても言えない。

 

「よくぞ襲撃に気づき、余を護った。しかし、アレは余からしても規格外であったのだが……」

「昔から嫌な予感がしたら、こういうことが起こってきたのよ……とはいえ、たぶんわざと教えてくれたんじゃないかしら」

「その理由は?」

 

 オジマンディアスの問いに麻菜は素直に告げる。

 

「彼は私に気づかせることなく、殺れていた筈よ。獅子王、あなたもそう思わない?」

「肯定しよう。奴ならば私が聖槍を保有している状態であったとしても、対抗できるだろう」

 

 獅子王はそう答えた。

 そこでオジマンディアスはあることに思い至る。

 

「……奴なりの試練であったのかもしれん」

「試練を越えたから、手を貸してくれる……みたいな展開なのかしらね」

「おそらくはな。余を試練の題材として使うなど、不届き千万だが……!」

 

 そう言ったところでオジマンディアスは咳払いを一つして、麻菜に告げる。

 

「お前の呼びかけには如何なる時でも余は応じよう。それをもって褒美となす」

「もしかして……本気の太陽王が見れるの?」

「無論だ。そこな獅子王が早々に屈服しなければ、この地で披露していただろうがな」

「……私は麻菜と戦ってはいない、故に負けてもいない。対話によって解決しただけだ」

 

 獅子王の言葉にオジマンディアスは笑ってみせる。

 

「負けず嫌いめ。だが、以前の態度よりは良い。さしずめ、神霊でありながらヒトの心と感情を取り戻したというような状態であろう」

「そういうところまで見抜けるの?」

「当然だ」

 

 オジマンディアスの言葉にニトクリスもまた胸を張る。

 しかし、麻菜にはニトクリスはファラオっぽくないというか、近所にいそうな世話焼きお姉さんという印象である。

 

 そのとき、遂に特異点の修復が始まった。

 

「それじゃあ、カルデアに戻ったら呼びかけるので」

 

 麻菜はそう言って、獅子王と共に消えていった(・・・・・・・・・・・・)

 それを見てオジマンディアスは笑い、ニトクリスも獅子王の状態に気がついた。

 

「もしや……獅子王は彼女の……?」

「うむ。アレは本来ならば存在してはいけないモノだが……奴め、それすらも己の内に受け入れおった。奴と共にアレもまた在り続けるだろう」

 

 やはり面白い奴だ、とオジマンディアスは満足げに頷いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、カルデアへと帰還した麻菜は獅子王を伴ってオルガマリーらに報告し、また獅子王から次の特異点に関する重大な情報がもたらされた。

 特異点の特定やその他必要な準備にしばらく時間が掛かるということで、麻菜は休暇をオルガマリーより言い渡された。

 とはいえ、いつも通りに召喚は行い、オジマンディアスやニトクリスと再会し、新しいサーヴァント達を迎え入れている。

 

 それらを全て終えた段階で、麻菜はマイルームにて獅子王と2人っきりとなった。

 

 

 

「ぐへへへ……獅子王、否、アルトリア……お前は私のモノ……!」

「調子に乗るな」

 

 両手をワキワキさせながら迫ってきた麻菜の頭に拳骨を叩き込む獅子王。

 あまりの痛みに、うめき声を上げて床を転がる麻菜に対して彼女は告げる。

 

「私はあそこで終わった方が良かったのだ……それをお前が強引に……」

「そんなの関係ないわね。あなたが好きにやったんだから、私も好きにやっても問題はない」

 

 立ち直った麻菜に言われ、獅子王は困ってしまう。

 相手の理念――この場合は主張であるが――そういうものを尊重してしまう癖が彼女にはあった。

 麻菜は更に言葉を紡ぐ。

 

「どうせ消えてしまう存在なら私が保護して、いい具合に扱き使っても問題はない……それにさっきの召喚でアグラヴェインどころかベディヴィエールまで来たし」

 

 そう言われると獅子王としても弱い。

 ベディヴィエールは聖剣の返還をできなかったIFの自分の記憶もあるらしく、彼は獅子王を見て安堵したのだ。

 そこで改めて獅子王が彼を労ったのだが――感激のあまりにベディヴィエールはぶっ倒れてしまった。

 

「お前は私に何を望む?」

「コヤンスカヤと同じく、私のサポートかしらね。あ、何なら騎士として仕えてくれてもいいのよ?」

「騎士として仕えて欲しいなら、ふざけた態度を直すことから始めるといい」

 

 見事なカウンターで返されて、麻菜は悔しげな顔となる。

 その顔を見て獅子王はくつくつと笑いつつも告げる。

 

「だが、このような私でも必要としてくれたこと、私の在り方を肯定してくれたこと。そこは感謝しよう」

「じゃあ私を大切にして頂戴。むしろ愛して」

 

 麻菜の言葉に対し、獅子王は――物凄く嫌そうな顔をした。

 

「どうして私がお前を大切に……ましてや愛さなければならない?」

「私だって一応は人類よ。健康診断で異常とかなかったし、ちゃんと人間って出たし」

「お前はその分類から外れていることを私が保証しよう」

「嬉しくないわね……他のアルトリア達を見せて、色々と価値観を破壊してやる」

 

 獅子王はその言葉に何だか嫌なものを感じた。

 

 そのときだった。

 

「セイバー死すべし! 慈悲はない!」

 

 ベッドの下から出てきた謎のヒロインXは獅子王に斬りかかってきた。

 難なくそれを聖剣でもって受ける獅子王。

 

「ぐぬぬ……! 流石にやりますね……!」

「……麻菜よ、コレは何だ?」

「謎のヒロインXって言って、セイバー絶対殺すウーマンらしいわよ。サーヴァント・ユニバースだとかからやってきた」

 

 麻菜の言葉にヒロインXは訂正する。

 

「よく間違われますが、ユニヴァースです。ヴァース! バースじゃないですよ!」

「……麻菜」

 

 獅子王は何かを言いたげな顔で麻菜の名を呼んだ。

 しかし、呼ばれた方も困ってしまう。

 

「悪い子じゃないのよ。あとヒロインXのもうちょっと大人バージョンのヒロインXXっていうのもいる。他にはヒロインXのオルタも……」

「……いったいどうしてそうなったんだ?」

 

 獅子王は困惑するしかない。

 そんな彼女に麻菜はけらけら笑いながら、ヒロインXにお願いする。

 

「ヒロインX、獅子王をいい感じにカルデアを案内してくれないかしら? あと他のアルトリア達と会わせて」

「む……それはちょっと……私にはそこの獅子王なるセイバーをぶっ倒す使命がありまして……」

 

 麻菜は無言で懐からヒロインXへとあるものを差し出した。

 それを見て彼女は顔色を変えた。

 

 それこそまさに、麻菜がマスターという立場を最大限に悪用して作成した、エミヤにどんな料理・デザートでも作ってもらえる食券――万能食券である。

 何だかんだで人が良いエミヤは無闇矢鱈にばら撒くなという条件で、渋々了承していた。

 とはいえ、基本的には食堂で注文すれば何でも作ってもらえるのだが、そこは雰囲気というやつである。 

 麻菜はエミヤとの約束通り、これをサーヴァントにあまり渡さない。

 その為にこれを持っているだけで特別な気分になれる上、使えば皆からの視線を独り占めである。

 

 それを麻菜から3枚も提示されてはヒロインXといえど、頷くしかない。

 

「分かりました。私が万全に獅子王を案内しましょう!」

「頼んだわよ。さぁ、獅子王。色んな意味で衝撃を受けてきなさい」

 

 麻菜はドヤ顔で獅子王に言ったのだった。

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